角田信朗  冷徹なリングでモロに感情を露出させる愛と涙と感動のファイター!

角田信朗 冷徹なリングでモロに感情を露出させる愛と涙と感動のファイター!

K-1や空手のトーナメントでの優勝経験ナシ。 なのに正道会館の最高師範代であり、メディアへの露出度も多い。 特筆すべきは彼の試合は、その人間性や感情があふれ出てしまうこと。 これは選手としても、レフリーとしてもそうで、インテリとむき出しの感情を併せ持つ愛と涙と感動の浪花男なのである。 最近、ダウンタウンの松本人志との騒動が話題になり、角田信朗の人間性を批判する人もいるが、私はその批判している人の人間性を疑っています。


学生時代に納得のいくまで空手をやり抜いてみようと思った角田信朗は1年間大学を休学。
アルバイト先のスポーツクラブでは本格的な競技エアロビクスを行った。
また関西外国語大学ボクシング部キャプテンで、高校ではインターハイ群馬代表にもなった坂井武に出会い、週2回、ボクシング部へ出稽古。
顔面に青タンをつくり鼻血を出しながらパンチのテクニックを習得していった。
また時間が許す限り正道会館総本部に行き、中山猛夫師範に金魚の糞のようにひっつき、左レバー打ち(左ボディブロー)、左レバー蹴り(左ミドルキック)でガードを下げさせ顔面を蹴って倒すという技術を盗もうとした。

正道会館神戸支部長

しかし角田信朗は、第2回全日本大会、第3回全日本大会を共に3回戦で敗退。
第3回全日本大会では、関西外国語大学でも道場でも後輩の佐竹雅昭が全日本初出場でベスト4に入るのを目の当たりにした。
1年休学して5年間、大学に通って空手に専念した角田信朗は就職を考え始めた。
教員採用試験は受けなかったし、大学からもらった大手の一流商社の話は、
「ウーン、商社マンか。
少なくともクマを倒すような空手家になることは無理だな」
と断った。
角田信朗はできるだけ空手に携わって生きていく方法の1つとして、アルバイトをしていたエグザスへの就職を考えていた。
しかしそんなときに正道会館が神戸支部をオープンさせることになり、その支部長にならないかという話が舞い込んできた。
「空手に専念して食っていける!」
角田信朗は2つ返事で受けた。
そして1985年3月、英語教員免許を取得し関西外国語大学を卒業し、4月には正道会館神戸支部長に任命され、単身神戸に赴いた。
道場は神戸三宮の新築テナントビルの3階を借り切り、道場スペースとトレーニングスペースを併設した立派で近代的なものだった。

この正道会館神戸支部の道場にはオーナーがいた。
谷本竜子。
「20歳のときにケニアのナイロビ空港を計画した」
「阪神高速道路を計画したのはウチや」
「南紀白浜サファリパークを造ったんはウチや」
などという謎の、任侠っぽい60歳前後と思われる女性だった。
神戸東灘の家は要塞のような豪邸。
グルメで食べることに月1000万円近く使っていた。
谷本竜子は、初めて角田信朗に会ったとき
「あんた!
ウチに恥かかすなよ!」
といった。
年末の全日本大会について
「あんた、何位になるつもりや?」
「押忍。
出来るならベスト8に入賞したいです」
「何?
チャンピオン違うんかい」
と露骨に嫌な顔をし
「ベスト8に入れへんかったらどうするつもりや?」
「押忍。
頭丸めて辞表出します」
「ホォーッホッホッホ」
と豪快に笑った。
また知り合いの社長に、全日本大会のチケットを100枚単位で押しつけ、
「ここへ振り込んどき!」
なにかあれば
「ウチは惚れたわけでもない男のためになんでこんなことせんとあかんのよ」
と角田信朗をヒールを履いたまま蹴った。
道場の初期投資費用は軽く1000万円以上。
家賃が月々150万円。
仮に200名の道場生を集めても、月会費5000円×200=100万円で赤字。
利益を上げるためには、多くの道場生を集めなければならない。
強い弟子を育てなければならない。
自分も全日本で勝たなくてはならない。
経営などまったくわからない角田信朗はとにかく必死のパッチでがんばった。

1985年12月、第4回全日本大会で角田信朗は、当初の目標ベスト8を超えてベスト4に進出。
準決勝で優勝した川地雅樹に、3位決定戦で今西靖明に共にローキックで倒された。
「ハイハイ、今日道場閉めたらご飯食べにおいで」
試合翌日、谷本竜子に自宅に呼ばれていくと、日本料理店吉兆から取り寄せられた料理、100g10万円のステーキ、1本50万円のワインが用意されていた。
「あんた、よぉがんばったやないの」
笑顔の谷本竜子に声をかけられ、目から涙があふれ出た。
正道会館神戸支部は約300名にまで道場生を増やした。

他流試合

角田信朗は総本部を離れたため強い相手との組手が少なくなり、ウエイトトレーニングに力を入れ、得意技、中山猛夫直伝の左ボディブローを磨いた。
少林寺出身で極真空手の全日本大会でベスト8入りした田中正文館長が主催する第3回全日本拳武道選手権大会に出場し2位になった。
2回戦から準決勝まで4試合すべてが左のレバー打ちによる一本勝ちだった。
1回戦で角田信朗の必殺の左ボディブローに耐えて倒れなかったのが村上竜司だった。
角田信朗を含め、正道会館は「挑戦」をテーマに、他流派の空手トーナメントにも参戦し「他流試合」を行った。
他流派の試合に出ると、どうしても判定では勝ち抜くい。
「じゃあ、倒せばいいんだ」
と「倒す空手」を追求。
やがてありとあらゆる流派の大会を総ナメにし「常勝軍団」と呼ばれるようになった。

正道会館神戸支部存続の危機

正道会館神戸支部はトロフィーの数も道場生も増やし、順調だった。
谷本竜子が海外出張から帰ってくるため、角田信朗は大阪伊丹空港に出迎えに行った。
しかしゲートから出てきた谷本竜子を10名ほどの屈強な男たちが取り囲んだ。
角田信朗は助けにいこうとしたが腕をつかまれた。
「角田くんやな?
兵庫県警の捜査一課や。
君、大人しくしてくれよ?
君が暴れたときのために表に機動隊が30人待機してるんや」
角田信朗は説明を求めたが
「谷本さんは逮捕された。
身柄は拘束されたので彼女とは今日は会えないから帰ってくれ」
とだけいわれた。
翌日、角田信朗は事情聴取のため兵庫県警に呼び出された。
丸一日、聴取され、ポリグラフ(嘘発見器)にかけられ、両手10本の指の指紋を採取された。
県警の事情聴取は道場生にも及んだ。
谷本竜子は証拠不十分ですぐに釈放され、事件は不起訴となったが、300人いた道場生は30名にまで減った。
また石井和義は、これ以上、谷本竜子から援助を受けることはできないと判断し、三宮の大道場は閉鎖された。
道場生はさらに減り15名になった。

角田信朗は練習場所を探した。
最初は週3回、神戸市中央体育館を借りたが、使用量が1回1万円。
月会費5000円×15名=7万5000円。
週2回でも赤字になる。
角田信朗は、正道会館の理事長からの依頼で、奈良県の薬湯健康ランドの警備員の仕事をした。
この薬湯健康ランドがオープンしたため地元の同業者から依頼され嫌がらせをしたり、みかじめ(用心棒代)を要求する暴力団。
酔った客の迷惑行為。
角田信朗は、道場の稽古のない日は泊まり込み、24時間体制で、何かトラブルが起きたら現場に駆けつけた。
ズボンの下には金的カップをつけ乱闘に備えた。
実際、刺青をいれた人の入店を断ったとき、いきなり金的を蹴られたこともあった。
手を出されたら極力相手にダメージを与えないように気をつけながら制したが、その後は報復を警戒し、車に乗るときなど周囲に気を配った。
この仕事の報酬は日当1万5000円。
半年ほど続けた。

半年の用心棒稼業で得たお金は新道場開設につぎ込んだ。
元門下生のお肉屋さんに、ある物件を紹介された。
それはたくさんから借金してたくさんの抵当権(お金を貸す際に不動産や動産(自動車や機械、船舶、飛行機など)に設定する担保)がついて所有権も分散しているという建物でだった。
2階建ての家屋で、1階はお肉屋さんが牛を解体するのに使っていた作業場、2階は事務所と居住スペースだった。
1階のガラス窓には銃弾を撃ち込まれた弾痕があった。
お肉屋さんは家賃はあるとき払ってくれたらいい、ないときは気持ちだけでいいという。
角田信朗は、作業場にこびりついた血と脂を洗剤とブラシで洗い流し、要らないものを奥にしまい、人工芝を敷いた上にトランクルームに預けてあったトレーニングマシンを置いたトレーニングマシンスペースと畳を敷いた道場スペースをつくった。
2階も掃除をして自分が住んだ。
こうして1ヶ月かけて蓄えをすべてつぎ込んで改装した道場をスタートさせた。
門下生を集め家賃を払っていけばいいと思っていた矢先、お肉屋さんから電話が入った。
「角田君。
君、先月家賃1円も入れてないやろ?
それはあかんわ。
先方(所有権を主張する債権者)から1ヶ月以内に出ていってくれっていうてきてるわ。
わしの顔潰さんとってや!」
確かに1万円でも入れておくべきだったと反省しつつ、あまりのことに角田信朗はついついケンカ腰になって言い返した。
「ちゃんと元通りに直して明け渡せ!」
お肉屋さんのおっちゃんもヤクザ口調になった。
汚かった部屋を貯めたお金と自分の体を使ってキレイにしたら「元通りにせよ」である。
再度、トレーニングマシンをトランクルームに戻し、何もない状態で明け渡すと、
「元通り違うやないかい!」
と電話が入った。
(なんやとぉ?)
角田信朗は片づけておいた備品をぶちまけ、天ぷら油をまき散らした。
悲惨な状態で出場した第5回全日本大会。
前年4位の角田信朗には「神戸の猛牛」というニックネームがつけられていたが3回戦で敗退した。

角田信朗は、ラーメン屋で働き、王子公園近くに部屋を借りて、近くの安いレンタルスペースで週3回の稽古、陸上トレーニング、そして三宮のジムでトレーニングした。
ラーメン屋の営業時間は17時から5時。
仕事後、そのまま寝ず王子公園陸上競技場サブトラックで走り込み。
その後、食事をとって、カーテンが買えないので窓にアルミホイルを貼って朝日をカットした部屋で5~6時間寝た。
週3日はレンタルスペースで空手の稽古。
この日はラーメン屋に入るのは22時。
それ以外の日は、ラーメン屋に入る前に三宮のジムでウエイトトレーニングとエアロビクス。
エアロビクスはインストラクターが好きになって週5回も通っていたが、2時間ブッ通しでやっているうちに運動能力が改善された。

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