「フーテンの寅」こと車寅次郎として、日本中の人々に愛された俳優・渥美清。彼がこの世を去ってから、2026年で30年という大きな節目を迎えます。この記念すべき年に、本の街・神保町に位置する名画座「神保町シアター」では、渥美清の映画人生を振り返る特集上映『没後30年 俳優・渥美清』が、3月14日(土)から4月3日(金)までの期間で開催されます。
「寅さん」だけではない、表現者・渥美清の真髄
渥美清といえば、ギネス世界記録にも認定された長寿シリーズ『男はつらいよ』のイメージが強いですが、そのキャリアは実に多彩です。浅草のストリップ劇場「フランス座」でのコメディアン修行に始まり、テレビ黎明期のバラエティ番組で頭角を現した彼は、映画界でも喜劇から時代劇、重厚な人間ドラマまで、幅広いジャンルでその圧倒的な存在感を発揮してきました。
今回の特集では、彼の代名詞である「寅さん」シリーズはもちろんのこと、一人の俳優としての凄みを感じさせる選りすぐりの12作品がラインナップされています。
ファン投票で選ばれた「寅さん」と、貴重な主演作の数々
本特集の大きな目玉の一つが、神保町シアター公式X(旧Twitter)で実施された「男はつらいよ」人気投票の結果を反映したセレクションです。
マドンナに浅丘ルリ子を迎えたシリーズ屈指の人気作『寅次郎ハイビスカスの花』や、俵万智のベストセラー短歌集をモチーフにした『寅次郎サラダ記念日』、そして都はるみがゲスト出演した『旅と女と寅次郎』など、ファンが選んだ珠玉のエピソードをスクリーンで堪能できます。
さらに、寅さん以外の「俳優・渥美清」を深掘りする作品群も見逃せません。
純朴な一等兵を演じてその演技力が絶賛された出世作『拝啓天皇陛下様』、戦友たちの遺書を届ける復員兵を演じた社会派ドラマ『あゝ声なき友』、さらには名探偵・金田一耕助を演じた異色作『八つ墓村』など、彼がいかに多様な顔を持つ表現者であったかを証明する作品が並びます。
フィルム上映で味わう、古き良き日本映画の息遣い
神保町シアターのこだわりは、これらの作品を「フィルム」で上映することにあります。デジタルリマスター版とは異なる、フィルム特有の質感や光の揺らぎは、昭和という時代を懸命に生き、笑わせ、泣かせた渥美清の姿をより鮮烈に、そして温かく現代に蘇らせてくれるはずです。
1988年に紫綬褒章を受章し、1996年には国民栄誉賞を贈られた「日本の顔」。没後30年が経った今もなお、彼の演じたキャラクターたちが色褪せないのは、そこに普遍的な人間の悲喜交交(ひきこもごも)が宿っているからに他なりません。
かつて劇場で寅さんの帰りを待ち侘びた世代も、テレビや配信でしか彼を知らない若い世代も。この春、神保町のスクリーンを通じて、渥美清という不世出の俳優が遺した「映画の魔法」に触れてみてはいかがでしょうか。
東京・神保町
「神保町シアター」
■【開催概要】
特集名: 没後30年 俳優・渥美清
開催期間: 2026年3月14日(土) ~ 4月3日(金)
会場: 神保町シアター(東京都千代田区神田神保町1-23)
入場料金: 一般1,400円/シニア1,200円/学生1,000円
上映作品(全12本):
『拝啓天皇陛下様』『あゝ声なき友』『友情』『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』『僕はボディガード』『父子草』『喜劇・男は愛嬌』『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』『東海一の若親分』『あいつばかりが何故もてる』『八つ墓村』『男はつらいよ 旅と女と寅次郎』