妊娠のショックを隠しきれない診療所からの帰り道、吉里に声をかけられる。「誰が女郎の子の父親に名乗りをあげるもんか。絶対産んじゃダメだ」と親身になって自分で子をおろす方法などを教えてくれた。そして、野口の借金返済に50円どうしても足りないので伸輔に借りてもらえないかと相談してきた。「酒もやめる、好きな男を助けたい」という吉里を応援する若汐。
けん
その夜、若汐は警察から呼び出される。ゆうきちは、造船所の金庫から金を盗み指名手配になっていた。なんともいえない脱力感におそわれる若汐だった。
けん
野口の借金の全額を用意できた吉里。しかし野口は「実家に立て替えてもらえた、実家に帰る」と冷たく別れを告げた。まるで借金を作ってしまったのが吉里のせいだと言わんばかりに。
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同じ頃、警察からの帰り道、急な腹痛に苦しむ若汐。川に飛び込むと水面は出血で真っ赤に染まった。
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野口が帰ったあとヤケになって酒を呑み同じく馴染みの越後屋とはしゃぎながら、「一緒に死のうか?」「お前とだったらいつでも死ねるよ」などと会話しながら朝を迎える。
けん
野口に捨てられ半分冗談で言った「一緒に死ぬ」を実行しようとする吉里。カミソリを振り回しているうちに金魚屋を切りつけてしまう。周囲に人だかりができる中、彼女は追い詰められていく。
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「こんな所にいるんじゃないよ!お逃げ!」金魚に語りかけ自殺した。
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堕胎して倒れている所を車屋に発見され廓に運び込まれた若汐は、うわごとで「若さん」を繰り返す。女将から連絡が行き傍についていてくれた伸輔。吉里の自殺で野次馬から上がった悲鳴を聞かせないように若汐の耳をふさいでくれた。
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秋。看板花魁の1人、小花は写真館で弟に送るための写真を撮影してもらっていた。小花は徳川の血を引く名家の出だが、両親を亡くし弟の大学の費用を出すため中梅楼にきたという。
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明るくクセのない性格でただ一人の肉親の弟を大切にしている小花は後輩女郎の憧れでもある。若汐も伸輔に小花の姉弟の事を美談のように伝えていた。
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若汐は自分を指名して長く通ってくれている伸輔が自分を抱こうとしないことを哀しく思っていた。「なんで抱いてくれないんですか?」とついに聞いた若汐に伸輔は、裸を見せてくれと頼む。若汐の美しい裸体を前にして、「妄想の中でしか抱けない。なにをやっても中途半端な情けない人間だ。」と自分を責めた。
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同じ頃、年季明けを目指して客をとり続け無理がたたった小花は、咳こみながら血を吐いてしまう。治るまで客は取れないと病院に入れられる。
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小花に弟の連絡先を聞くが「聞かないで」の一点張り。唯一の肉親である弟に小花の病気を知らせてやりたい若汐たちは、過去を知っているとされる演歌師の元をたずねる。「母親は女郎で父親は誰かわからない。弟なんていない。8歳の頃から実の母を名乗る女に売春させられていた」と衝撃の事実を聞かされる。
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小花の過去と嘘にショックを受け川原で座り込んでしまう若汐。
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そこに「久ちゃ~ん!」懐かしい明るい声で振り返ると、そこには品川に移った菊川がいた。「こんな私でもって言ってくれる人がいてさ!」と所帯を持つ事になり挨拶に来たと嬉しそうに話すのだった。
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小花の件でショックを受けていた若汐は明るい笑顔の菊川がとても眩しくいつまでも後姿を見送った。
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小花に代わって御職の花魁となった若汐は花魁名跡「紫」の名を継ぐ。紫の豪華な積夜具(布団など)が元は小花が使っていた部屋に運び込まれる。そんな中病院を抜け出した小花が中梅楼に現れた。自分の部屋にまっすぐ向かう小花。自分の部屋に紫の積夜具を見た小花は激怒し、カミソリでズタズタに切り裂く。
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そこへお座敷から戻った紫と伸輔。小花は怒り狂い「泥棒猫!ここは私の部屋だよ!出ておいき!」と絶叫。怒りに震える紫は声を発することもできぬまま、伸輔に腕をつかまれ引きずられるように部屋から出されてしまう。
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「嘘だらけのこの世界、小花の嘘なんて可愛い。許してやれ。」それでも小花への罵倒をやめない紫に、「君は心底娼婦に成り下がってしまったんだな」と伸輔。「この嘘だらけの世界で私は大輪の花を咲かせて見せますよ!」伸輔と紫の別れだった。そしてこの吉原で登りつめるという覚悟が決まった瞬間だった。
けん
小花の様子を見に行く紫。折檻される布団部屋では縛られた小花が血を吐きながら一人暴れていた。
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