少女たちの夢が詰まった「おとめチック」ブームの再来
1970年代後半、少女マンガ雑誌『りぼん』(集英社)から、ひとつの大きな文化が生まれました。アイビーファッションに身を包んだ「ふつうの女の子」が、日常の中にある小さな幸せや恋に胸をときめかせる——。そんな優しく、繊細で、どこか知的な作風は「おとめチック」と呼ばれ、当時の少女たちのバイブルとなりました。
2025年に創刊70周年を迎えた『りぼん』の歴史の中でも、ひときわ輝きを放つこのムーブメント。その熱狂を牽引した3人のレジェンド、陸奥A子、田渕由美子、太刀掛秀子の画業を丸ごと一冊に凝縮した書籍『陸奥A子・田渕由美子・太刀掛秀子 りぼん70'sおとめチック☆エポック』(河出書房新社)が、2026年1月23日に発売されました。
本書は、単なる懐古録に留まらず、彼女たちが築き上げた「カワイイ」の源流を、圧倒的なビジュアルと貴重なインタビューで紐解く、まさにファンにとっての「聖書(バイブル)」と呼べる一冊です。
250点を超える圧巻のカラーイラストと豪華コンテンツ
本書の最大の魅力は、なんといってもその豪華なビジュアル。3作家が描いた『りぼん』の全表紙ギャラリーをはじめ、口絵や扉絵など、250点以上のカラーイラストが惜しみなく収録されています。
「こんぺい荘のフランソワ」(陸奥A子)、「フランス窓便り」(田渕由美子)、「花ぶらんこゆれて…」(太刀掛秀子)といった、読者の心に深く刻まれた名作の原画が、鮮やかなリマスタリングのような美しさで甦ります。
さらに、本書でしか読めない豪華対談やインタビューも充実しています。
■陸奥A子×萩岩睦美
「おしゃべりTea Time」と題し、共に『りぼん』を支えた作家同士の親密なトークを展開。
■田渕由美子×岩井俊二
映画監督の岩井俊二氏が、田渕作品から受けた影響や「おとめチック」の普遍性を独自の視点で語ります。
■太刀掛秀子ロングインタビュー
長らく公の場に登場することが少なかった彼女が、「『りぼん』がくれた居場所」をテーマに自身の創作活動を振り返る、非常に貴重な内容となっています。
また、『ときめきトゥナイト』の池野恋氏や、『姫ちゃんのリボン』の水沢めぐみ氏といった、後の世代を代表する人気作家からの特別寄稿も寄せられており、いかに「おとめチック」が後の少女マンガに多大な影響を与えたかが伺えます。
時代を超えて愛される3人の作家たち
特集されている3人は、それぞれ異なる魅力で少女たちの心を掴みました。
陸奥A子は、1972年にデビュー。独特のユーモアと、甘酸っぱい恋心を優しく包み込むような作風で絶大な支持を得ました。彼女の描く「ふろく」は社会現象を巻き起こすほどの人気となり、「乙女文化」の象徴的存在となりました。
「オリオン座から流星にのって」扉原画『りぼん』1979年2 月号(集英社)
田渕由美子は、都会的なセンスと情緒豊かな風景描写が特徴。少女たちの憧れのライフスタイルを提示し、洗練された「おとめ」のイメージを確立しました。
「やさしいかおりのする秋に」扉原画『りぼん』1976年11月号(集英社)
太刀掛秀子は、第6回「りぼん新人漫画賞」で初の「入選(大賞)」を受賞してデビュー。瑞々しく透明感のある筆致で、多感な時期の心の揺れを繊細に描き出しました。
『りぼん』表紙原画 1980年4月号(集英社)