タモリこと森田一義のこと(1) 最強の素人時代 戦後最大の素人芸でブレイク

タモリこと森田一義のこと(1) 最強の素人時代 戦後最大の素人芸でブレイク

タモリは、実は無計画、無責任、無反省、無目標、無国籍、無専門、無向上心。過去にも未来にも自分にも他人にも期待せず、ただひたすらその時、その時間を肯定していく。そう「これでいいのだ!」


夜は毎晩、新宿で宴会。
「めちゃくちゃのためならなんでもする」
というタモリは半裸、全裸もいとわない上、
「俺の尻は色白でプリンプリンしていてキュンと持ち上げってて、すごくかわいくてカッコいい。
芸能界一だね、この美しさは」
と自負している。
あるときは何も知らない客がいる銭湯で素っ裸でイグアナのモノマネをして洗い場を這い、湯船に飛び込んだ。
あるときは全裸で足を組んで週刊誌を読み、そこから火をつけたロウソクをケツに突っ込み上げ気味で、4足歩行。
あるときは前触れもなく静かに服を脱ぎ出し、小道具を入れた紙袋からムチを取り出し、足を差し出し
「おナメ!」
と「SMローソクショー」
あるときは金粉を塗って半裸で踊り、黄金に輝く愛染恭子(AV女優)の胸を鷲づかみにする「金粉ショー」
その裸芸は新宿ゴールデン街で「恐怖の密室芸」といわれ恐れられた。

自分が居候し始めると赤塚不二夫はまったく家に帰って来ず、タモリは
「別に住むところがあるんだろう」
と思っていた。
しかし赤塚不二夫は自分の家に帰りづらくなって仕事場のロッカーを倒してベッド代わりにして泊まっていた。
どうしても必要なものがあって取りに帰るときは
「今から行っていい?」
とタモリにお伺いを立てた。
着る服がなくなりやむなく一時帰宅したとき、探していた服をタモリが着ていたこともあった。
居候を始めて半年後、赤塚不二夫が仕事場で寝泊まりしていることに知ったタモリは
「もう出ます」
と言おうと思ったが
「せっかくの好意がグチャグチャになっちゃあ居候道に反する」
と思い直した。
タモリいわく居候の秘訣は
「卑屈にならないこと」
だという。
「堂々としてなきゃ。
お前はすごいぞ、俺を見つけたんだからすごい!
そう思わせないと向こうもなんでこんな奴に金かけてやってるんだって、出ていけってことになる」
そういうタモリは福岡に残していた妻を呼び寄せ、2人で居候を続けた。

赤塚不二夫の家での居候開始と同時に、柏原A子ママを社長、山下洋輔が常務とするマネジメント事務所「オフィス・ゴスミダ」が設立され、タモリはタレントとして所属。
1975年8月30日、テレビ朝日の「土曜ショー」という番組の夏休み特集「マンガ大行進 赤塚不二夫ショー」に出演しインチキ牧師などのパフォーマンスを披露。
たまたま番組を見ていた黒柳徹子は、その夜のうちに赤塚不二夫に電話。
「今の人、誰?
すごいじゃない」
そしてタモリは「徹子の部屋」の前身番組、「13時ショー」で2回目のテレビ番組出演を果たす。
秋になり京都大学の学園祭「11月祭」に出演。
このとき主催者と金銭トラブルが発生し、力不足を痛感したオフィス・ゴスミダは解散。
ステージ自体は好評で、タモリはその後、数年間、11月祭に呼ばれた。
「呼ぶ会」はすぐに次の所属事務所が探したが、特異な芸風から中々決まらず、やっと田辺エージェンシーと契約を結ぶことになったタモリは9ヵ月間の居候生活にピリオドを打ち、妻と共に赤塚不二夫邸を出た。

1976年、「欽ちゃんのドンとやってみよう」がスタートし、萩本欽一は素人イジりで大爆笑をとった。
素人をテレビに出すことに反対する意見もあったが、萩本欽一は
「プロを出せという人こそテレビの素人」
と素人や素人っぽさの重要性を主張。
同年、30歳のタモリは、バラエティ番組「金曜10時!うわさのチャンネル!!」の単独コーナー「タモリのなんでも講座」にもレギュラー出演。
半年後、深夜番組「空飛ぶモンティ・パイソン」内の「The TAMORI Show」という数分間のコーナーにもレギュラー出演。
萩本欽一の予言通り、会社勤めを経て30歳でテレビデビューを果たした最強のアマチュア、タモリは戦後最大の素人芸でブレイクした。
タモリは、萩本欽一と同様の意見を以下のように述べている。
「誰も厳密さなんて求めていないという気がするんですけど。
ナマだったらナマなりの期待があって、誰か失敗するんじゃないかとか・・・
少しくらい失敗してもそのほうがイキがいいわけでしょう。
テレビはそれをやったほうがいい」
「テレビは完成品には向いていない。
テレビっていうのは状況ですから。
状況を流すことに1番の威力を発揮するメディアだから、作られたものはちょっと向いていないかもしれない」

1976年10月6日、テレビでレギュラー番組を持ったタモリは、ラジオでも毎週水曜、25時~27時の生放送「タモリのオールナイトニッポン」をスタート。
(そして7年間継続)
きっかけは新宿ゴールデン街のメンバーの1人、マンガ家の高信太郎がパーソナリティを務めるオールナイトニッポン(火曜日)への出演。
ゲスト出演していたアグネス・チャンに、熱狂的中国人ファンとしてブッツケ本番で電話し、デタラメな中国語を一方的に喋りまくり、会話は成立しなかったが、反響を得て初冠番組につながった。
オープニングは、銅鑼が鳴り、アメリカンショー風ナレーションが流れ、最後に、
「Mr.タモリィ・ショー!」
そしておなじみのオールナイトのサンバにつながる。
タモリは提供読みで

「社長の顔がデカい角川書店グループ」
「堅実な経営を誇る東芝EMI」
「股間の恋人B.V.D.フジボウ」
「ニューミュージックから演歌まで社長自身がタレント化して売り込むキャニオンレコード」
「人事異動はまだか 、人事異動が待ち遠しいCBSソニー」
「何をつくってるのかわからない武藤工業」
「(ここを出ても職が無いと言いかけたがディレクターからの指示があったのか言い直し)ここを出ればあなたも一流カメラマン東京写真専門学校」
「社長の息子が慶應永谷園」
「レモンとコーヒーがドッキングポッカコーヒー」
「アイドル映画も制作する東宝東和」
「数々の名作を提供する日本ヘラルド映画」
「若者の股間を締め付けるビッグジョン」
「お菓子ひとすじブルボン」
「名前が清潔白泉社」
「一生、寛斎、森英恵は卒業していない東京デザイナー学院」
「南極物語もウケた学研」

などと勝手にスポンサーにキャッチコピーをつけた。

そしてユニークでマニアックなコーナーをつくっていった。
代表的なのがNHKニュースの音源をつなぎ合わせデタラメのニュースをつくる「NHKつぎはぎニュース」
リスナーからカセットテープで作品を募り、ハイレベルな作品が集まり盛り上がったが、3ヵ月後、無断で使用していたためNHKから
「面白いんですけど、やめていただけませんか」
とクレームが入り終了。
その他、「青年の主張」「夜の憩い」など数々のNHKのパロディコーナが登場した。
タモリが中国語の放送をパロディ化したレコードを出そうとしたらレコード倫理委員会から「待った」がかかり、その委員の中に慶應大学の教授がいたため「大学対抗悪口合戦」というコーナーを開始。
麻上洋子の「おはよう・・・・海!」、扇ひろこの「新宿ゴールデン街」などのレコードを本来、45回転のところ、33回転で流し、回転を遅くすることでオカマのような声になった。
あのねのねが「みかんの心ぼし」という新曲を出したとき、タモリは
「ただかけるだけじゃあ面白くない」
と清水国明に毎週電話をかけさせ、クイズで出して正解したら「みかんの心ぼし」をかけ、答えられなかったらライバル曲をかけることにした。
2ヵ月間、清水国明は毎週電話したが、タモリが絶対答えられない問題をつくったため新曲がかかることはなかった。
「ハードコアコーナー」は、タモリが女性リスナーと電話で話し、最後は女性リスナーとのキスで終わった。
「森繁の口調を真似ると、なんでもないことまで全部ジンセイを感じさせる」
と前置きした後、
「クルマで信号待ちをしておりますとネ・・・・・
赤信号が青にかわる・・・・
人の世のイトナミもまたこのように儚い明滅でありましょうか・・・・」
などと20分間、1日の出来事を森繁久彌風に語った。
いきなり女性の声を短く聞かせ、
「このひとはだれでしょう?来週までに正解をハガキで募集します!」
とリスナーに挑戦。
多くのハガキの中で正解したのは2人。
声の主は、春子夫人。
タモリは
「なんでわかったのかね?!」
と驚いた。
耕運機をプレゼントし、当選したのは横浜在住のリスナーだったこともあった。

トンガッていたタモリは、日本文学、ミュージカル、演歌、評論家、名古屋人、さまざまな嫌いなモノや嫌いなヒトに牙を剥き、コキ下ろし笑いをとった。
タモリが埼玉県民を
「ダ埼玉」
といったこと語源となって
「ダサい」
という言葉が出来たという説もある。
タモリは日本の純文学と純文学作家が特に嫌いで
「何の役にも立たん!」
「日本の湿った文化風土」
「何がイヤってあの暗さ。
あれ最悪ですね。
暗ければいいという。
悩むことが人間の1番崇高なことであるとか。
なんかああいうのってイヤなんですね。
非常に」
「病人が作った文学でね。
本当、対処すりゃいいものをそこでとどまってジーっとねえ。
病んでいく自分が好きだとか」
「ワビ、サビっつうのは余計なおせっかいだと思うんですよね」
「芭蕉なんか日本の文化を悪くしているんだろうなあ」
と強く批判。
中でも五木寛之(「青春の門」などベストセラー多数)に対しては
「イカンなぁ。
あーゆーもんが文化人面してのさばられるとねえ……
あれはね、ちょっと殺さないかんのじゃない?」
「五木って人は、一体あのカッコつけたナリと態度で、どうやって女を口説いているのか。
遠くを見つめながら「人生は……」とか真面目くさって言うんだろうな。
イヤなやつ」
と悪意むき出し。
五木寛之はタモリと同じ福岡出身だが、福岡空港でスチュワーデスに
「お客様は禁煙席になさいますか?」
と聞かれ
「僕がタバコ吸わないの、君知らないの」
と横柄な態度をとる五木寛之をタモリが目撃したことに端を発するというが、深刻なフリ、高級なフリをして、威張ったりチヤホヤされたりすることにガマンならぬようだった。

音楽では、さだまさし、谷村新司、オフコースに代表されるニューミュージックを
「ハッキリいって音楽のガン」
「優しさ、思いやり、温かさ、青春、愛、こういう言葉を散りばめてりゃ、即ミュージシャンになっちゃうのがイヤ」
「彼らが売れるということは日本の文化も信用できない。
日本の音楽文化は絶望に近い」
「歌詞がまた愚劣なんです。
散文にもなっていない、文章にもなっていない」
と口撃。

音楽に対して
「思想のない歌こそ素晴らしい。
思想のある歌はゴミだ」
「歌は軽薄でいい」
「非現実的なほうがいい」
「無愛想で明るく単純に楽しむのが音楽」
というタモリは「ニューミュージック撲滅」を目的にテレビ朝日の「題名のない音楽会」をパロッた「思想のない音楽会」というコーナーをつくり、ニューミュージックとは対極にあるナンセンスソングを紹介。
高田浩吉が歌う「白鷺三味線」を
「この思想のなさ、ノリ1発という明るさ、コレですよ、コレ。
歌っていうのはこういうのではなきゃダメ」
と大絶賛。

「父親が飲み屋から持って帰ってきた」
という高校生リスナーから自主制作のレコードが送られてきて、タモリは謎の男性歌手がこぶしをつけずに淡々と歌うムード歌謡を気に入り毎週流した。
同曲、さいたまんぞう作、「なぜか埼玉」は、大手レコード会社から発売され、12万枚のヒット。
タモリのオールナイトニッポンにゲスト出演した井上揚水は
「僕の歌は今まで思想がありすぎました。
それに暗い。
これからは過去を断ち切って思想のない歌を歌います」
と反省の弁を述べ、タモリいわく、それから井上揚水の歌が明るく変わったという。

関連する投稿


赤塚不二夫が生誕90周年!RIP SLYME、氣志團ら豪華出演陣が渋谷に集結する記念音楽フェス詳細発表

赤塚不二夫が生誕90周年!RIP SLYME、氣志團ら豪華出演陣が渋谷に集結する記念音楽フェス詳細発表

漫画家・赤塚不二夫の生誕90周年を記念したミュージックフェスティバル「コニャニャチハのコンバンハ!」の詳細が解禁されました。2025年12月5日・6日にLINE CUBE SHIBUYAで開催。RIP SLYME、氣志團、小泉今日子らが赤塚スピリッツ溢れるステージを披露します。チケット先行抽選は10月20日(月)からスタート!


2丁拳銃    愛人12人の小堀裕之と経験人数、生涯1人の川谷修士、そしてその妻、小堀真弓、野々村友紀子は、同じ1974年生まれ

2丁拳銃 愛人12人の小堀裕之と経験人数、生涯1人の川谷修士、そしてその妻、小堀真弓、野々村友紀子は、同じ1974年生まれ

NSC大阪校12期生、1993年結成の2丁拳銃が、2003年にM-1への挑戦を終えるまで。


【1945年生まれ】2025年で80歳!見えない!若々しい人気女性俳優たち!

【1945年生まれ】2025年で80歳!見えない!若々しい人気女性俳優たち!

2025年(令和7年)は、1945年(昭和20年)生まれの人が80歳を迎える年です。ついに、昭和10年代生まれの人は全員が80歳以上となり、昭和20年代生まれが80歳代を迎える時代になりました。今の80歳は若いとはと言っても、数字だけ見ると後期高齢者。今回は、2025年に80歳となる意外な人気女性俳優7名をご紹介します。


月亭八方 借金地獄を生き延びて送る、愛と夢と希望の楽屋ニュース。

月亭八方 借金地獄を生き延びて送る、愛と夢と希望の楽屋ニュース。

大阪府大阪市福島区出身、福島区在住。天下獲る野望ナシ。1番でなくてもヨシ。借金地獄を生き延びて送る、愛と夢と希望の楽屋ニュース。


「欽ちゃんライブ~新番組が決まるか?!東貴博、試される舞台~」が開催!東貴博が新番組テレビの1000人ライブ出演をかける!

「欽ちゃんライブ~新番組が決まるか?!東貴博、試される舞台~」が開催!東貴博が新番組テレビの1000人ライブ出演をかける!

萩本企画 欽劇事務局が主催する「欽ちゃんライブ~新番組が決まるか?!東貴博、試される舞台~」が、11月17日にバティオス(東京都新宿区歌舞伎町2丁目45-4)にて開催されます。


最新の投稿


徳永英明、40周年記念盤『COVERS』に玉置浩二、吉井和哉らが賛辞!豪華コメント到着

徳永英明、40周年記念盤『COVERS』に玉置浩二、吉井和哉らが賛辞!豪華コメント到着

1月21日に発売される徳永英明のデビュー40周年記念アルバム『COVERS』。そのリリースを前に、楽曲のオリジナルアーティストである根本要(スターダスト☆レビュー)、吉井和哉、玉置浩二、AIから祝福のコメントが到着した。名曲たちが徳永の歌声でどう生まれ変わるのか、アーティスト間のリスペクトが垣間見えるメッセージと共に紹介する。


不朽の名作『銀牙 -流れ星 銀-』の限定グッズが復刻!「カワセルくじ」でファン待望の再販スタート

不朽の名作『銀牙 -流れ星 銀-』の限定グッズが復刻!「カワセルくじ」でファン待望の再販スタート

高橋よしひろ氏による不朽の名作漫画『銀牙 -流れ星 銀-』のオンラインくじが、ファンの熱烈な要望に応え「カワセルくじ」にて復刻再販を開始しました。ビッグサイズのクッションや名シーンを再現したハンカチ、ユニークなパズル型キーホルダーなど、ここでしか手に入らない限定グッズが多数ラインナップされています。


あの頃の初恋が香りで蘇る!『きまぐれオレンジ☆ロード』鮎川まどかの香水や世界観を楽しむグッズが新登場

あの頃の初恋が香りで蘇る!『きまぐれオレンジ☆ロード』鮎川まどかの香水や世界観を楽しむグッズが新登場

まつもと泉原作の伝説的アニメ『きまぐれオレンジ☆ロード』の新作フレグランスとグッズが発売。ミステリアスなヒロイン・鮎川まどかをイメージした香水や、80年代の都会的でポップな世界観を再現したディフューザー、アニメの名場面を使用したアクリルスタンドなど、ファン必見のラインナップが勢揃いしています。


ユニクロ「UT」×集英社100周年!歴代名作マンガ100柄がTシャツ化、第1弾は3月発売

ユニクロ「UT」×集英社100周年!歴代名作マンガ100柄がTシャツ化、第1弾は3月発売

ユニクロのグラフィックTシャツブランド「UT」が、集英社の創業100周年を記念したスペシャルコレクションを発表。歴代の名作マンガから厳選された100種類のデザインがTシャツとなって登場する。第1弾は2026年3月16日より発売。『こち亀』『キン肉マン』『呪術廻戦』など、新旧の傑作がラインナップされる。


槇原敬之×大貫妙子、名曲「都会」をリメイクカバー!PANAM55周年企画で豪華コラボ実現

槇原敬之×大貫妙子、名曲「都会」をリメイクカバー!PANAM55周年企画で豪華コラボ実現

日本クラウンのPANAMレーベル設立55周年企画第5弾として、槇原敬之 feat. 大貫妙子による「都会」のリメイクカバーが1月14日より配信開始された。世界的シティポップの名曲を佐橋佳幸プロデュースで再構築。両名のコメントやリリックビデオも公開され、歴史的レーベルの節目を祝う豪華な仕上がりとなっている。