伊東 浩司 100m10秒00 アジアで初めて9秒台をノックした男。

伊東 浩司 100m10秒00 アジアで初めて9秒台をノックした男。

伊東浩司は、100m10秒00のアジア新記録を出した。 この記録は、日本では2017年に桐生祥秀が9秒98を出すまで19年間、破られなかった その間、大きな壁となり多くのスプリンターをはじき返した。


高地トレーニング

1998年2月、伊東浩司は、単独でアメリカに行き、ニューメキシコ州アルバカーで高地トレーニングを行った。
日本では長野オリンピックが行われ、鈴木博美が開会式で聖火リレーを行っていた。
午前中はアパートからレンタカーで15分ほどのところにある高校で練習。
午後はウエイトトレーニングを行った。
40日間の滞在の終わり頃、練習場にトイレがなかったので原っぱで小便をしていた。
すると尿が真っ赤だった。
初めての血尿だった。
高地から下りてきた伊東浩司は速かった。
しかし4月にはわき腹が痛くなって走れなくなった。
高地トレーニングで呼吸筋を痛め、肋間神経痛だった。
春の兵庫リレーカーニバルの200mでは予選落ち。
静岡国際の200mでは決勝に残ったものの最下位。
大阪グランプリの100mは10秒61で6位だった。
焦った伊東浩司は、試合をキャンセルし、鳥取のワールドウイングスにいって小山裕史にバランスを修正してもらった。
そして6月の全日本実業団対抗戦の200mで3年ぶりの優勝。
100mでも2位だった。
その後のドイツでは、例の腹痛が始まり病院へ運ばれた。
医者は手術することを薦めたが、伊藤浩司は試合があるので断った。
そして「たとえ死んでも文句はいいません」というような文面の書類にサインし退院し試合に出た。

100m 10秒00

帰国後、間もなくアジア選手権に出場。
アジア記録を持つ伊東浩司は200mで優勝した。
7~8月は鳥取にこもった。
ワールドウイングスでトレーニングを行い、自分の筋肉の質や骨格、可動域を考え、競歩の感覚を取り入れたすり足のような走りを研究した。
初動負荷トレーニングマシンで臀部、大腿二頭筋、広背筋群を徹底的に強化。
これに股関節の柔軟性を高めるトレーニングを組み合わせた。

1ヵ月のトレーニングで筋肉が異常に発達し、東京まで車で帰った翌日、川崎市選手権の200mで20秒43。
アジア選手権より速かった。
その数日後、南アフリカのヨハネスブルクで行われた第8回ワールドカップに出場。
200mはフランク・フレデリクスが19秒97で優勝。
伊東浩司は3位と同タイムの20秒40で4位。
南アフリカから帰国して2日後のスーパー陸上の200mでは、20秒61で2位。

9月末から5日間にわたって行われる日本選手権は12月のバンコク・アジア大会の選考会を兼ねていた。
伊東浩司は200mの予選で20秒16の日本新、アジア新記録を出した。
100mは、予選で10秒41、準決勝で10秒10の大会新記録。
そして決勝では10秒08で朝原宣治の持つアジア記録と同タイムだった。

1998年12月6日、タイのバンコクで開かれた第13回アジア大会が始まり、初日、女子マラソンで高橋尚子が日本最高記録で優勝した。
12月13日、伊東浩司は100mの予選を10秒03。
そして2時間後に行われた準決勝で伊東浩司は、追い風1.9mの好条件の中、中盤からグッと加速し、他を大きく離してフィニッシュ。
最後は体を前に倒さず胸を張るように余裕を持ってトップで走り抜けた。
そして事件が起こった。
速報表示の数字は「9秒99」だった。
スタジアムはどよめいた。
伊東浩司は大きく跳びはね、歓喜のガッツポーズを繰り返し、スタンドも熱狂した。
しかしほどなく公式記録は「10秒00」に訂正された。
国際大会では、コンピューター画像処理によるゴール前写真で分析した公式計時のほかに、ゴールライン上に赤外線を当て選手が通過した際に自動的にタイムが出る非公式の電光計時も行っている。
後者の難点は、脚でも腕でも最初に選手の体の一部が赤外線に触れた時点でゴールと判定してしまうこと。
国際陸連のルールでは、フィニッシュは「胸の通過時点」
この誤差が生じた結果だった。
アジア人が初めて10秒の壁を破る歴史的瞬間はお預けになった。
観衆の歓声は大きなため息に変わった。
しかしアジア人が初めて9秒台をノックした瞬間だった。
それにしても伊東浩司が後の備え最後は流したことが惜しまれた。
もし決勝がこの日行われていたら9秒台が出た可能性が高い。
しかし決勝は翌日だった。
結局、伊東浩司は10秒05で優勝した。
100m決勝の翌日(12月15日)の4×100mリレーでは、アンカーで走り日本は優勝し2連覇した。

12月17日の200mの準決勝で20秒41の大会タイ記録。
12月18日の決勝は20秒25の大会新記録で圧勝した。
伊東浩司は第13回アジア大会の全競技を通してMVP(最優秀選手)に選ばれた。
賞金は10万ドルだった。

19年間破られなかった

桐生祥秀(左)と伊東浩司(右)

伊東浩司の10秒00は、アジア記録としては2007年にサミュエル・フランシスの9秒99に塗り替えられた。
日本記録としては、2017年9月9日に、桐生祥秀が日本人初の9秒台となる9秒98を出すまで19年間破られなかった。


栄光の裏側

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