20世紀終盤、日本の女子マラソンが黄金期を迎える

20世紀終盤、日本の女子マラソンが黄金期を迎える

マラソンという競技は、1896年に開催された第1回オリンピックのアテネ大会から行われている競技です。人が走るだけの競技なのですが、あまりに観客を熱狂させたためにオリンピックに定着しました。因みに女子マラソンが始まったのは、1984年のロサンゼルス大会からで、オリンピックでの歴史はまだ浅いですね。


1984年ロサンゼルス・オリンピック

1984年に開催されたロサンゼルス・オリンピックの女子マラソン。日本からは、増田明美・佐々木七恵選手が出場しました。オリンピックにおける女子マラソンは、このロサンゼルス大会から。第1回から行われている伝統の男子マラソン、しかし女子マラソンはこのロサンゼルス大会からだったのです。

もっと昔から競技種目だったような気がしますよね。この大会の女子マラソンは、真夏の酷暑の中での開催となり、暑さで体調を崩し棄権する選手が続出でした。増田明美選手も途中棄権に終わっています。もう一人の佐々木七恵選手は、検討しましたが19位のゴールでした。

そしてこの時、世界中の人を感動させたのが、スイス代表のガブリエラ・アンデルセン選手です。1位でゴールしたアメリカ代表のジョーン・ベノイトから遅れること20分。ふらふらでスタジアムに入ってきたアンデルセンをみて、観客の皆さんは目を疑いました。酷暑による脱水症状からかスタジアム付近から、まともに真っすぐ走れない状態になっていたのです。約1周半のトラックを進むのに5分もかけながら、必死で前に進みます。なんとか最後の直線まできて残り100mになった時は、もうまともに歩くこともさえきない状態。係りのスタッフも直ぐ近くで彼女と一緒に歩くのですが、手を触れると棄権になるので、本人も拒否することから手を出せません。ひたすらゴールを目指すアンデルセンに、観客からは上位の選手よりも大きな拍手が贈られ続け、感動のゴールになるのです。倒れこんで救護者に乗せられて退場する彼女に、感動の各種は鳴りやみませんでした。

1992年バルセロナ・オリンピック

1992年に開催されたバルセロナ・オリンピックの女子マラソンには、有森裕子・山下佐知子・小鴨由水の3選手が日本代表で参加しました。やがて到来する日本女子マラソンの黄金時代、まずその門を開いたのがその中の有森裕子選手でした。

スタートをして29km付近、有森選手はその時まだ3位集団を走っていました。しかしここから一気にペースを上げ、トップを走るロシアのワレンティナ・エゴロワに追いつきます。そこから2人のデッドヒートが繰り広げられ、6kmにおよぶ上り坂でエゴロワ選手に振り切られてしまいます。有森選手がゴールしたのはエゴロワ選手から遅れること8秒差で2位でした。しかしこの瞬間、日本女子がオリンピック・マラソンにおいて初めてのメダリストになったのです。

更には山下選手も4位入賞で、日本女子マラソンの明るい未来が感じられる大会となりました。有森選手の銀メダルは、1928年アムステルダム大会での人見絹枝選手以来、なんと64年ぶりの快挙となる日本女子選手が陸上競技におけるメダルでした。有森選手は4年後の1996年アトランタ大会にも出場、この大会でも3位に入り銅メダルを獲得しています。フィニッシュ後のインタビューで、涙を流しながら自分で自分をほめたいといった言葉は、大きな爽やか話題となりましたね。

2000年シドニー・オリンピック

2000年開催のシドニーオリンピック、この大会は高橋尚子選手が大きな話題をさらいました。そうです、いよいよ日本に金メダリストが誕生するのです。1998年に行われたアジア競技大会で、2位に13分以上という圧倒的な強さを見せつけて優勝した高橋尚子選手が、満を持してオリンピックの舞台に登場したました。
スタート後の18km地点、高橋選手が給水所の直後に1回目のスパートをかけます。このスパートの付いていけたのが市橋有里選手とルーマニアのリディア・シモン選手の3人だけになってしまいます。シモン選手と一騎打ちになっていた34km過ぎ、高橋選手は2度目のスパートをかけ、40kmを過ぎたころには単独でトップに立っていました。そのままスタジアムに入り、1位でフィニッシュテープを切ったのです。高橋選手が勝負を決めたスパートの際、外したサングラスを投げ捨てたのが合図になったと話題になりましたね。

高梨尚子選手の記録は、2時間23分14秒で、オリンピック記録の更新となりました。日本選手がオリンピックの陸上競技で、記念すべき初めての金メダリストになったのです。

2004年アテネ・オリンピック

2004年開催のアテネオリンピック、この大会には野口みずき選手が日本の代表で参加します。スタートは酷暑を避け午後6時に変更されましたが、それでも気温は35度もありました。
レースの方は、中盤まで野口選手・イギリスのポーラ・ラドクリフ選手・ケニアのキャサリン・ヌデレバ選手など、世界でもお馴染みの強豪たちが先頭グループを作っていました。25km付近で、野口選手が軽く早めのスパートをかけます。そして27km付近でもう一度スパート。早めのスパートで、心配もされましたが、ここから一人旅が始まります。
当時の世界記録保持者ラドクリフ選手も、野口選手についていけず途中棄権。37km付近にきて、ペースを上げてきたヌデレバ選手が迫ってきましたが、野口選手は逃げました。結局トップでパナシナイコ競技場に入り、そのままトップでゴールしたのです。記録は2時間26分20秒で、高橋尚子選手に続いて日本選手によるオリンピック女子マラソン2連覇が達成されたのでした。

アフリカ勢がそんなに強い?

その後、勝てなくなってきた日本の女子マラソン。最近のマラソンでは、アフリカ勢が強すぎて日本人選手はメダルをとれないという声の聞かれます。しかし、勝ってはいますがアフリカ勢ってそんなに速いのでしょうか。2008年以降で開催されたオリンピック女子マラソンでの優勝タイムを調べてみました。
・2008年北京大会 2時間26分44秒 コンスタンティナ・トメスク(ルーマニア)
・2012年ロンドン大会 2時間23分07秒 ティキ・ゲラナ(エチオピア)
・2016年リオ大会 2時間23分07秒 ジェミマ・ジェラガト・スムゴング(ケニア)
・2020年(2021年)東京大会 2時間27分20秒 ペレス・ジェプチルチル(ケニア)

これら記録からわかるのが、最近の大会の優勝タイムが、高橋尚子選手(2時間23分14秒)や野口みずき選手(2時間26分20秒)の記録とほぼ同じなんです。両金メダリストの記録は、決して色あせていません。さすがに金メダルを取った選手、実力的にもずば抜けて速かったといえますね。
2004年のアテネ大会で金メダルを獲得した野口みずき選手。翌年のベルリンマラソンでは、2時間19分12秒で走っています。これまでの日本選手で2時間20分を切ったのは、野口みずき・渋井陽子・高橋尚子の3選手。ただ、皆さん2,001年から2005年に出したものです。2020年以降では、一山麻緒・松田瑞生の両選手が2時間20分台を出しました。2時間20分台で安定して走れる選手なら、決してアフリカ勢に引けを取ることはないでしょう。第2機の黄金時代を期待したいものです。

関連する投稿


吉田沙保里  強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

吉田沙保里 強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

公式戦333勝15敗。その中には206連勝を含み、勝率95%。 世界選手権13回優勝、オリンピック金メダル3コ(3連覇)+銀メダル1コ、ギネス世界記録認定、国民栄誉賞、強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子。


室伏広治の学生時代「アジアの鉄人」と呼ばれた父親とやり投げの「幻の世界記録保持者」によって覚醒。

室伏広治の学生時代「アジアの鉄人」と呼ばれた父親とやり投げの「幻の世界記録保持者」によって覚醒。

ハンマー投げは、パワー×技×精神力、そして人間の本能を呼び覚ませ!!!


「キン肉マン」超人オリンピックに出場したスイス出身の『ウォッチマン』のフィギュアが登場!!

「キン肉マン」超人オリンピックに出場したスイス出身の『ウォッチマン』のフィギュアが登場!!

ハイクオリティフィギュアの製造・販売で好評を博しているSpiceSeed フィギュア事業部より、キン肉マンシリーズのフィギュア『ウォッチマン』が発売されます。


イベンダー・ホリフィールド  圧倒的!!  無敵のクルーザー級時代。

イベンダー・ホリフィールド 圧倒的!! 無敵のクルーザー級時代。

悲劇のロスアンゼルスオリンピックの後、プロに転向。超タフなドワイト・ムハマド・カウィとの死闘を制しWBA世界クルーザー級チャンピオンとなり、WBA、WBC、IBF、3団体のタイトルの統一にも成功。すぐに「最強」の称号を得るため、マイク・タイソンが君臨するヘビー級への殴りこみを宣言した。


石井慧  運動オンチ少年がオーバーワークという暴挙で起こした奇跡。

石井慧 運動オンチ少年がオーバーワークという暴挙で起こした奇跡。

石井慧の幼少児から国士舘大学に入るまで。地球上で60億分の1の存在になる、人類で1番強い男になるための序章。


最新の投稿


『頭文字D』の世界が千葉に!名車モチーフの雑貨が揃うポップアップストアが期間限定オープン

『頭文字D』の世界が千葉に!名車モチーフの雑貨が揃うポップアップストアが期間限定オープン

人気漫画『頭文字D』のポップアップストアが、グランサックス イオンモール千葉ニュータウン店に登場。伝説のハチロク(AE86)を再現したウェットティッシュケースや、RX-7型の無線マウス、366日分のバースデーキーチェーンなど、ファン垂涎の公式ライセンスグッズが勢ぞろい。日常を彩る名車アイテムの魅力を紹介します。


昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

昭和の大横綱「千代の富士」の肉体がスーツから甦る。NY発OVERCOATが挑む究極のパターンメイキング

ニューヨーク発のブランド「OVERCOAT」が、昭和の名横綱・千代の富士との異色のコラボレーションを発表。生前愛用したテーラードスーツから身体寸法を逆算し、伝説の肉体をパターン(型紙)として再現。特別展示や限定アイテムの販売を行うポップアップイベントを、2026年3月より東京・ニューヨークで順次開催します。


伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

伝説の「プロレスリング・マスター」武藤敬司、その足跡を網羅。『Gスピリッツ選集』第3巻が待望の発売!

辰巳出版は2026年3月6日、プロレス専門誌『Gスピリッツ』の証言集第3弾『Gスピリッツ選集 第三巻 武藤敬司篇』を発売しました。平成の新日本プロレス黄金期を支え、日米を股にかけて活躍した武藤敬司のキャリアを、本人や関係者の貴重なインタビューで振り返る一冊。新録インタビューも追加された、全プロレスファン必携の保存版アンソロジーです。


没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

没後30年、俳優・渥美清の軌跡を辿る。神保町シアターで「寅さん」から知られざる名作まで12本を特集上映

東京・神保町の名画座「神保町シアター」にて、2026年3月14日より特集上映『没後30年 俳優・渥美清』が開催されます。国民的映画『男はつらいよ』シリーズの人気作をはじめ、主演を務めた貴重なラブコメディや社会派人間ドラマなど、全12作品をフィルムで上映。日本映画界に多大な足跡を残した稀代の名優、渥美清の多才な魅力を再発見する貴重な機会です。


『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

『ドラゴンボール』亀仙人の「カメハウス」が超精巧フィギュア化!内装まで再現した豪華セットが登場

バンダイスピリッツより、ドラゴンボールの聖地「カメハウス」を立体化した『ワールドコレクタブルフィギュア PREMIUM-カメハウスセット-』が登場。全高約22cmのハウス本体は室内まで作り込まれ、悟空や亀仙人など7体のフィギュアが付属。日常シーンから名場面まで自由に再現可能なファン垂涎のアイテムです。