伊東 浩司 100m10秒00 アジアで初めて9秒台をノックした男。

伊東 浩司 100m10秒00 アジアで初めて9秒台をノックした男。

伊東浩司は、100m10秒00のアジア新記録を出した。 この記録は、日本では2017年に桐生祥秀が9秒98を出すまで19年間、破られなかった その間、大きな壁となり多くのスプリンターをはじき返した。


タイから帰国すると、成田空港でマスコミに取り囲まれた。
テレビではワイドショーにまで取り上げられていた。
そのまま記者会見をして、テレビ局に直行。
大晦日は高橋尚子とNHKの紅白歌合戦にも出演した。
新聞、雑誌、テレビ、アジアチャンピオンになった後、取材陣の数は急激に増え、知名度も上がった。
どこに行っても
「あ、伊東浩司だ!」
といわれ、おちおち買い物も出られなくなった。
「次は9秒台を出してやる」
と思いながらもアジア大会以前の環境で練習や試合ができることはもうなかった。
マスコミに対してストレスを感じることも多かった。
試合前にもアップのときからカメラに追いかけられた。
誰もいないスペースを探し
「なんでコソコソしないといけないのだろう」
と腹が立った。
走ったの後も次のレースがあるのに質問攻めにあった。
試合の度に9秒台を期待されるのは苦痛だった。
出せるものなら早く9秒台を出して楽になりたかった。

1999年になると精神的に追い詰められ始めた。
どこへも行けず家にこもるようになった。
常にイラつき、強い不信感があった。
3月に行われた第7回世界室内選手権の200mの準決勝で、伊藤浩司は1番外側の6レーンに入った。
するとトラックの外側に並ぶスポンサーの広告フェンスの隙間からカメラが狙っていた。
すぐ目の前のことだった。
伊東浩司は審判員に「レースに集中できないから」といってカメラマンにどいてもらった。
しかしスタートするときにはまた元の位置に戻ってカメラを向けていた。
それでも伊東浩司は20秒63のアジア新記録で2着となった。
決勝では20秒95で5着。
1着はフランク・フレデリクス。
20秒10の大会新記録だった。
伊東浩司は60mのときもカメラでカシャカシャ撮られた。
走り終え記者に囲まれ
「スタート遅れましたね?」
と聞かれ
「あれでは気になって出られませんよ」
と答えた。
すると翌日、新聞には
「決勝に残れなかったのはマスコミのせい」
と書かれた。
世間やマスコミからの注目度が上がれば上がるほど自分の殻に閉じこもってしまい誤解を招くこともあった。

シドニーオリンピック

オリンピックに的を絞り、1999年は早々にシーズンを終え、腰の治療に専念した。
腰のケガが完治した後、練習を再開したが、左脚ハムストリングスを痛めた。
春の試合はすべてキャンセルし調整を続けた。
世間がオリンピック、オリンピックと盛り上がっていく中、焦った伊東浩司は、6月、鳥取で行われた全日本実業団対抗に強行出場。
9ヵ月ぶりの試合だったが100mの予選を10秒38、準決勝を10秒45で走ったが、決勝は辞退した。
その後、練習中に左脚ふくらはぎが肉離れを起こす。
シドニーオリンピックを控えて、いつケガをするかわからない時限爆弾を背負った状態で、綱渡りのような恐る恐るの練習が続いた。
9月9日のスーパー陸上では100mで10秒26で3位。
200mは練習でも1本も走っていなかった。


30歳で迎えた3度目のオリンピック。
9月22日、男子100mの1次予選と2次予選を3着で通過。
準決勝は2組あり、各組上位4名が決勝に進める。
伊東浩司は10秒39で7着だった。
9月27日、200mの1次予選は20秒75で2着。
4着までが準決勝に進める2次予選で20秒56で4着。
準決勝は20秒67で7着。
8着は末續慎吾だった。
9月29日、4×100mリレーでは2走となり準決勝で38秒31のアジアタイ記録を出し3着で決勝進出。
決勝は38秒66で6位。

セミのような人生

中学1年生からおよそ20年の競技人生で、華やかだったのは一瞬。
伊東浩司は、セミのような人生だったという。
しかしその鳴き声は強烈で、後世にインパクトと輝きを残した。
陸上競技の練習は地味で、楽しいのは記録が出たときや試合に勝ったときで、それが次の苦しい練習に耐える原動力となる。
伊東浩司は、中学で全国で1番になったプライド。
高校、大学で走れず「伊東は終わった」と陰口を叩かれたことへの反骨心。
プライドと反骨心が20年間の競技生活を支えた。
帰国後、入社10年目前後を対象とした3泊4日の富士通の社員研修会に参加。
人前で話すことやリーダーシップをとることは、同世代のサラリーマンよりうまかったが、経済の話題となるとまったくわからなかった。
同僚の苅部俊二は、指導者になるために契約社員になって大学院に通っていたが、伊東浩司は現役引退後も会社に残り仕事を続けるつもりだった。
しかし2001年、地元である兵庫県神戸市の甲南大学で陸上部の指導者となった。


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