ミッツ・マングローブ  修平くんだった時代  徳光家の呪い  宿命の慶應義塾 覚醒と解放

ミッツ・マングローブ 修平くんだった時代 徳光家の呪い 宿命の慶應義塾 覚醒と解放

高身長、高学歴、アサーティブネス、オネエ、「これでハーフだったら完璧だったのにね」という超レアハイブリッド。「男は男らしく、女は女らしく」から「自分らしく」に変わっていった時代の先駆け。その幼少期から学生時代にズームイン!


高1の秋、通っていた英語塾のハロウィンパーティーで初めて女装をした。
「とにかく女装癖が大爆発してしまい、あまりの本気具合に周りがドン引きしちゃった。
今と比べたら化粧やスタイリングの技術も全然なかった頃だから、とてつもない汚さだったはずなのに、なぜか冗談にならなかったの。
あの浮かれた空気が一瞬にして凍りついた感じは今でも鮮明に覚えてる」
その後も女装解放欲は高まる一方だったが、文化祭ではKを含むクラスメイトと「カラオケ喫茶」をやった。
その日は男子校である慶応義塾高校に女性が入ることが許され、彼女たちを相手にお茶を出しておしゃべりをして、教壇をステージ代わりに歌謡ショー。
女性に下心がまったくないためにオカマバー的なノリとなり、女性からすれば安心して入れたので売り上げが全校トップ5に入るほど人気だった。

とにかく毎日歌いまくった結果、成績はギリギリ落第を免れるくらいまでに低下。
なんとか高3になるとA組からR組まで18クラスある中、3年P組、略して「3P」になった。
「歌手になる」
と本気で思っているものの、何の根拠もプランもない。
それでも
「勘違い妄想」
は日に日にエスカレートしていき
「そろそろ歌手デビューが決まって、来年当たり紅白に出場する」
と思い込み、わざわざ職員室にいって担任教師に
「そういうことなので大学に進学できなくてもかまいません」
と申告。
後日、職員室に呼ばれ、
「卒業証書は親がお前に買ってくれたものなのだから、それを手にするためでは、たとえ意味がないと思っても学校に通いなさい」
と諭された。
「よくよく考えてみたら慶応大学を出るまでがお務めであって、入っただけでは、それを果たしたことにならないだよね。
ようやく歌と大学は関係ないということに気がついた」

慶應義塾高校の修学旅行は、男子校ならではのノリだった。
行き先は、北海道だったが、
「修学旅行にいく前に、教師がコンドームのつけ方とか教えて。
もう、配る勢いよ」
すすきのでの自由行動は、
「遊ぶ人とウニ丼食べる人たちの2班にわかれたの」
そういうミッツ・マングローブは、何回もお風呂に入った。
「のぞき放題っていえばのぞき放題だったからね。
班にわかれて入るんだけど、忘れ物したとか、班長でタイミング逃したっていって一晩で3回くらい入ってたのよ。
みたい子がいる時間にお風呂にいって」

ミッツ・マングローブは、慶応大学法学部政治学科に進学。
法学部に入ったのは、単に学校側が成績順に振り分けた結果だったが、偶然、Kと同じクラスになった。
「まさかの縁の強さに、しばしばつき合ってるんじゃないかといわれることもあったけど、ふざけて手をつないだことすらない」
そして大学1年の終わり頃、Kの姉に
「多分行ったら2人は楽しいと思う」
と半ば決めつけるようにいわれ、Kと一緒に新宿2丁目へ連れていかれた。
そこには
「みたことないような、みたことあるような男の人や得体のしれない変な人」
がたくさんいた。
彼らと自分が同じなのかはわからなかったが、
「好きなタイプの男の話をしてもいいんだ」
という解放感があった。
こうして見事に20歳で2丁目デビューを果たしたが、ミッツ・マングローブが、本格的に女装をし出しすのは20代半ばで、この頃は、まだ男性的な出で立ちをしていた。
「修平として生きる時間が多かったにも関わらず、男モノの服を買う余裕は金銭的にも気持ち的にもなかった。
だから修平はオシャレを放棄し、古い服をボロボロになっても着続けていた。
服だけでなく男としての趣味、好み、理想などもサッパリなくなってしまっていた」

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