ミドルエッジ世代の皆さんは、覚えているだろうか?70年代の中頃から、いわゆる「パニック映画」というジャンルの作品が、日本で公開されるようになったのを。そう、飛行機や巨大客船が事故にあったり、海で鮫や巨大タコに襲われたり、大地震が襲ってきたり。何故か映画館が、やたらと危機な場所へと変わってしまったあの頃だ
その後のCG技術の進歩により、よりリアルでスケールの大きい災害や破壊が描かれる様になった現在でも、たまにテレビで放映されるとついつい見てしまうこれらの「パニック映画」たち。
そんな中でも、未だに超大作パニック映画の代名詞として使われるのが、今回紹介する1975年日本公開の映画「タワーリング・インフェルノ」だ!
「タワーリング・インフェルノ」劇場版ポスター
当時の2大スター夢の競演に加えて、138階立て超高層ビルの大火災は、日本映画には到底真似できないスケールのデカさだけに、当然日本でも大ヒットを記録!
実は後述する様に、2種類のコミカライズ版が存在する程の話題作だった「タワーリング・インフェルノ」だが、子供向けの内容では無いからと、当時映画館に連れて行って貰えなかった子供たちが多かったのも事実。
そんな当時の子供達の心を満たしたのが、これから紹介するコミカライズ版の存在だ。
当時劇場に行けなかった人も、テレビで初めて見てその迫力と濃密な人間ドラマに魅了された人も、是非当時の思い出と共に読んで頂ければ幸いです。
映画「タワーリング・インフェルノ」とは?
当時、同じような超高層ビル火災の映画を製作しようとしていた、ワーナーブラザースと20世紀FOXが、この二つの企画を両社の合作で1本の映画にすることを決定!こうして映画史上空前の大作パニック映画として制作公開されたのが、この「タワーリング・インフェルノ」だ。
初公開時の関東地区新聞広告
元々は、リチャード・マーチン・スターン原作の『ザ・タワー』をワーナーが、トーマス・N・スコーティアとフランク・M・ロビンソンが書いた『ザ・グラス・インフェルノ(ガラスの地獄)』を20世紀FOXがそれぞれ別々に映画化しようとしていたのだが、あまりに似通った内容と、巨額な制作費がかかることが予想されたため、それなら両者の企画をまとめて共同制作で1本の映画として製作した方が効率的だ、となったわけだ。
珍しい、出演者の集合写真
もっと詳しく本作について知りたい方は、下記のリンクからどうぞ。
タワーリング・インフェルノ - Wikipedia
実は、2種類のコミカライズ版が存在する!
新宿・渋谷・銀座など、1つの地区で2カ所の映画館を使って上映する、「拡大ロードショー」方式が初めて用いられた作品としても知られる本作。実は、コミカライズ版も2種類の作品が描かれており、それぞれが別の少年マンガ誌に掲載されていた。
一番有名なのは、もちろん後述する「月刊少年チャンピオン」の劇画ロードショー版だが、実は週間少年サンデーの巻頭ページにも、オールカラーで本作のコミカライズ版が掲載されている。
さいとうたかを先生版、掲載号表紙
映画のスチル写真を組み込んだ、このコミカライズ版の作者は、なんとあの「ゴルゴ13」の、さいとうたかを先生!
さいとうたかを先生版の扉絵
写真を加えた絵物語形式だった
迫力の見開きページ!
驚くべきことに、何と本作は全7ページしか無い!しかし、この翌年から同じ週刊少年サンデーで「サバイバル」を連載開始する、さいとうたかを先生だけに、僅か7ページながら判り易くまとめているのは見事!特に見開きページで描かれた、迫力ある火災シーンや消火シーンは必見の凄さだ。
月刊少年チャンピオンに比べて、週間少年サンデーは比較的入手しやすいので、気になった方は是非入手して読んで頂ければと思う。
劇画ロードショー版「タワーリング・インフェルノ」概略
田辺節男先生版の掲載号表紙
本作が掲載されたのは、月刊少年チャンピオンの1975年5月号。
実は「タワーリング・インフェルノ」本編の上映時間は、何と165分という長さ!そのため昔のテレビ放送では、前編と後編の二週に分けて放送されるのが普通だった。さて、それだけ大量の情報量を僅か39ページでまとめるために、本作で田辺節男先生が取った方法とは?
それは、人間ドラマを大幅にカット・整理し、更に女性キャラクターの存在を徹底的に排除するという、思い切ったアレンジだった!結果的にヒロインのフェイ・ダナウェイは登場せず、恋愛ドラマ要素が完全に消滅することになった本作。
だが、そのお蔭で主演の二人、ニューマンとマックイーンが映画以上に活躍する内容になり、読者にとっては面白さが倍増!
こうして、男同士が巨大高層ビルの大火災に挑む骨太のアクションとして、本作は見事に蘇ったのだ!
劇画ロードショー版「タワーリング・インフェルノ」紹介
地上550メートル・138階、サンフランシスコの空高くそびえ立つ世界最大の超高層ビル「グラス・タワー」。
記念すべきその落成式の日に、この高層ビルが数百人の人々の生命を奪う炎の地獄と化すとは、この時誰も予想していなかった。
火災発生!
本編扉絵
手抜き工事が発覚!
映画では登場人物の人間関係や恋愛模様が描かれる序盤の30分を、ページ数の関係で一気に省略!
最初のページからもう火災が発生しているという、このコミカライズ版の展開は見事!
消火活動開始!
田辺先生独自の解釈による名セリフが炸裂!
この田辺節男先生版での一番の見せ場、それはマックイーン扮するオハラハン隊長が、武闘派の男として描かれているという点。映画で見せた冷静沈着な隊長では無く、時に自身の感情を露わにする熱い男として描かれているのが最高!この独自のアレンジこそ本作最大の特徴であり魅力だと言えるだろう。
最上階に取り残された人々の運命は?
炎に包まれる招待客!
唯一動く展望エレベーターで脱出!
最上階のパーティー会場に取り残された招待客を次々に襲う火災の猛威!
宙吊りのエレベーターを救え!
突然の爆発でまた危機が!
事故の原因とは?
決死の展望エレベーター救出シーンや、事故発生の原因などが描かれるが、読者層に合わせてドラマ部分はかなりのアレンジがなされている。
第二の救出プランとは?
極限状態で明らかになる人々の本性・・・。
田辺先生の名セリフ、その2。
「災害は・・・人間の本性を出させる・・・」
最後の頼みの綱だったゴンドラによる救出も、極限状態の人間の本性の前に敢え無く失敗。
映画には登場しないセリフが素晴らし過ぎる!
田辺先生の名セリフ、その3
最後の救出作戦に賭ける男たち!
ついに男達は、生きて帰れる保証のない最後の賭けに出る!
ここでも田辺先生入魂の名セリフが炸裂!
炎に包まれた屋上に到着!
爆弾セット!残された時間は5分。
果たして最後の賭けは成功するのか?
見よ、迫力の洪水シーン!