男!! 江夏豊 王との対決は三振かホームランかの直球、力勝負

男!! 江夏豊 王との対決は三振かホームランかの直球、力勝負

剛速球と芸術的コントロール、王貞治との力と力の真っ向勝負、奪三振記録を王貞治からとるためにほかのバッターはわざと打たせる、3回しか投げられないオールスターゲームでの9連続三振、自らのサヨナラホームランでノーヒットノーラン、日本初のリリーフエース、江夏の21球、優勝請負人、大リーグ挑戦などなど記録と武勇伝のオンパレード


若干18歳で
シーズン225奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得
オールスターゲームにメンバー入りを果たす
「オールスターゲームは
今はそうでもないけど、
当時はパ・リーグが自分達の存在を世間に知らしめる唯一のチャンスという感じだったんだよ
普段はどうしてもファンの注目がセ・リーグに集まっていたので
パ・リーグの選手は内心穏やかじゃなかった
この時とばかりに「セ・リーグをブッ叩いてやろう!!」というパ・リーグの選手の気概を強く肌で感じたね
今にして思えば1年目から出してもらったと言っても
実力で勝ち得た出場権じゃなかったと思うんだよ
当時のセ・リーグのメンバーを見渡すと
堀内君以外はベテランが多かったから、
川上監督としては「いつでも使える便利で元気な若い選手」が欲しかったんじゃないかな?
あの頃は巨人の選手がたっくさん選ばれていたので
第一印象は「オールスター戦と言ってもまるで巨人対パ・リーグだな~」っていう感じだったね
練習の時から巨人の選手だけはひとかたまりになってて他球団の我々からしたら近寄りがたい雰囲気があったよね
当時は巨人が9連覇を続けていた時代
強いということは勝負の世界では絶対的な権威だからね
オールスターっていうのはもちろん「お祭り行事」みたいな部分もあるんだけど、
やっぱり巨人の選手と他チームのグループに壁はあったよね
憧れの先輩と話をさせてもらういい機会だったはずだけど
今ほど私語が許されている時代ではなく、
ベンチで冗談は言い合ってもグラウンドでは挨拶以外の話はなかったからさ
もしもアドバイスを受けたいなっていう時はロッカーなど人目につかない所で聞く
そんな時代だったよね
金田(正一)さんとロッカールームで出くわしてさ、
『コラ若造、何サボっとんじゃ
早くベンチで応援して来い!!』
って言うわけさ
そしたら当然、今度はベンチで顔を合わせるでしょ? 
すると今度は
『オマエら、こんなトコで座ってないでブルペンに行けっ!!』
って言うんだよ
『ブルペンに行け』っていうのは『勉強してこい!!』ってことなんだよ
オールスターに出てくるような各チームの主力投手がどういうピッチングの調整をしているかをよ~く見とけっていう最高の親切だったんだ
でもあの人は口が悪いからああいう言い方になるんだけどね
この目で見るっていうのは絶対に必要なことだったからね
でも次の日も同じようにブルペンで見てたら、
『こんなトコでサボっとらんで、ベンチで応援して来い!!』
だって
「この人、その時によって言う事ちゃうな~」って
でもそれ以来かな、金田さんに親しみを持たせてもらったのは」

宿敵

当時の阪神のエース:村山実は
節目の記録となる三振を常に長嶋茂雄から奪うようにしていた
村山がON(王・長嶋)を指さし
「俺はこっち(長嶋)お前はあっち(王)や」
と江夏に命じた
村山実は
長嶋茂雄との対決に異常なまでの執念を燃やしフォークボールを連投した
江夏は思った
「村山さんは長嶋さんに向かう時、ロマンチストになった
それなら自分は王さんに対してプライドを武器にしよう」

新記録は王貞治から

1968年
9月17日
甲子園球場
読売ジャイアンツ戦
「王さんから新記録(シーズン奪三振記録)を奪う」
江夏は試合前からそういっていた
試合のスコアは0-0
緊迫したゲーム展開だった
しかし江夏は公約を守るため
バッターをわざと三振を獲らずアウトにしていくという曲芸のような投球を披露した
投手の高橋一三も低めの球でセカンドゴロに打ちとった
「森(昌彦)さんとピッチャーは三振を取らないようにするのがむしろ大変だった」
そして再び王の打席が回ってきた時
見事記録更新となる354個目の三振を奪った
しかし、試合のスコアは依然0-0
延長戦に入った
11回裏
バッターボックスに入った江夏は自らサヨナラ打を放った

三振かホームランか

王との名勝負は続いた
通算57の三振を奪い
20本の本塁打も打たれた
1度の死球もない
王から最も多く三振を奪った投手は江夏で
江夏から最も多く本塁打を打った打者は王である
王は江夏との対決について後にこう語っている
「江夏君のストレートは150km/hは出ていない
にもかかわらず打てない
それはズシリと重いからだ
あんなボールを投げる投手はいなかった
江夏は僕には殆どストレートしか投げなかった
それが僕には解っていたし、
江夏君は僕が解っていた事を解っていてストレートを投げてきたものだった」
江夏が生涯でもっとも本塁打を多く打たれたのは王の20本
その20本は全てストレート
江夏は王との対決でカーブもチェンジアップも使ったがウイニング・ショットはストレートのみであった
ストレートを待つ王
それを承知でストレートを勝負球に使う江夏
ストレートにこだわる理由は何か?
それは江夏の「プライド」だった
江夏は
シーズン401奪三振の世界記録と
通算1000奪三振記録を
「王さんから獲る」
と志願の登板
王に対しストレートの握りを見せて勝負を挑むという
今では野球漫画でも見られなくなったパフォーマンスをしたが
王は2ホーマーを放ち江夏を粉砕
新聞は
「個人記録に拘りチームの勝利を犠牲にした」
と一斉に批判
プロ野球に「勝負の美学」が残っていた時代の最後の逸話だった

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勝敗以上に大切なモノ

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