男!! 江夏豊 王との対決は三振かホームランかの直球、力勝負

男!! 江夏豊 王との対決は三振かホームランかの直球、力勝負

剛速球と芸術的コントロール、王貞治との力と力の真っ向勝負、奪三振記録を王貞治からとるためにほかのバッターはわざと打たせる、3回しか投げられないオールスターゲームでの9連続三振、自らのサヨナラホームランでノーヒットノーラン、日本初のリリーフエース、江夏の21球、優勝請負人、大リーグ挑戦などなど記録と武勇伝のオンパレード


甲子園球場での巨人戦
ペナントレース終盤に来て阪神と巨人の差は僅か0.5ゲーム
事実上の優勝決定戦と言われたゲーム
ここで江夏の「プライド」が阪神の運命を決めた
7回表
阪神が2点リード
1死
末次民夫が四球で歩き
土井正三がセンター前ヒット
高田繁が三塁前に意表をつくバントで揺さぶりをかけ満塁
ここで打席に王を迎える
江夏はここでもストレート一本の攻め
いきなり2-0と王を追い込む
遊び球はない
次の3球目
外角低めの最高の1球
文句なしのストライク
キャンプではこの「外角低め」のコントロールを磨く為に1日250球も投げ続けた
「勝負あった!」
主審・谷村
「ボール!」
無情の判定
江夏
「ストライクやないか!」
バッテリーを組んでいた辻”ダンプ”恭彦も食い下がる
が、当然判定は覆らない
ここからが江夏の真骨頂
2-1となった4球目
全く同じコースの外角低めに渾身のストレートを放る
「ボール!」
2-3からのラストボール
内角低めのストレート
左打者に対する膝元へのコントロールは
江夏の前に江夏なし、江夏の後に江夏なしとまで言われる最高の1球
そんな自信のある1球
「ボール!」
押し出し
なお満塁
バッター:長嶋茂雄
王との対決で精魂尽き果てた江夏に
もはや長嶋に対する術はなかった
逆転の一打がレフト線に飛んだ
なぜ江夏は王に対して「渾身のストレート」しか投げなかったか?
「それは・・・・オレがオレであることを確かめたかったんだ」
江夏豊という投手のプライドを賭けた王貞治との対決
「勝敗以上に大切なモノがある」
今の野球ファンには到底理解できない心情であろう

9連続奪三振

1971年のオールスターゲーム第1戦
1回裏
全パの先頭打者有藤(ロッテ)を三振に始まり
3者連続三振
2回表
自ら西宮球場の右翼席上段に3ランを叩きこむ
2回裏
3者連続三振
3回裏
3者連続空振り三振
連続9人から三振を奪う
9人中8人が空振り三振
9人目の打者:加藤がバックネット側に打ち上げたファールを追おうとした捕手:田淵に
「捕るな!」
と叫んだ
オールスターゲームでは投手は3イニングまでしか登板できないため
9連続奪三振は最高の成績である

「この年のシーズン前半は6勝9敗と肩の故障もあってあんまり成績が良くなかったんだよ
だから本来であれば監督推薦で選ばれることはなかったのに
有難いことにファン投票でオールスターに出られることになった
ボク自身にしてみればあの時ほど「ファンって有難いなぁー」と思ったことはなかったね
嬉しくもあり、正直、照れくさい気もしていたんだ
そんな時、ある親しい新聞記者から冗談まじりに
「こんな数字でも出してもらったんだから
お返しのためにファンを喜ばせるようなことをしろよ!!」
って言われてね
そんなこと言われてもマウンド上で一曲歌うわけにもいかんしねー
じゃあ、去年は8つ取ったんだから、今年は9ついってやろうと
何をしようかと思ったら、自分の場合は三振を多く取るしかないと
(この前年のオールスターで連続ではないが計8個の三振を取っていた)
1人も走者を出さず、「9者連続」ってのは自分でも夢にも思っていなかったよ
そんなことができたらマンガの世界ですよ
そこまでボクは自信家じゃなかったしね
「9個の三振を取りたい」っていう願望はあったけど連続ってのはまさに予想外というか
1回を3者連続で取った時は「ワー」、
2回で6者連続になったら「オー」になってきて
そして3回
7人目のバッターを三振に取ったら観客の歓声がほとんどなくなって
俗に言う「水を打ったように静けさ」になったんだよ
8人目を三振に取った時はバックで守っているミスターや王さんの声が聞こえてくるほどでね
普段は歓声が大きいから守りの選手の声なんて聞こえないものなんだけど
先頭打者から8人連続で三振を取ってとうとう9人目
その最後のバッターがキャッチャーの後方にファールを打ったんで
咄嗟にキャッチャーの(同僚の)田淵に
「追うな!!」
って叫んだんだよ
よくマスコミには「江夏が捕るなと言った」と書かれることがあるけど、
実際は「どうせスタンドに入るんだから、早く座ってくれ」という意味で叫んだんだよ
というのもキャッチャーが捕りに走ると時間が取られてこっちの集中力が途切れるから
待たされなければ三振を取る自信があったから早く投げたくて仕方なかった
最後の球がキャッチャーミットに収まった瞬間、
それまでの静けさがウソのように、もの凄い歓声が上がってさ
ただ意外とあっけないなという感じだったね
「なーんだ、こんなモンか」と
自分でもホっとしたのは確かだけど
最後の三振を取ったボールを田淵がてっきりボクに渡してくれるもんだと思っていたら、
彼はいつものようにマウンドの方へポーンって投げちゃうんだよ
それを自分で取りに行くのもカッコ悪いと思ってそのままベンチに戻ったら、
何と王さんが拾ってボクに届けてくれたんだよ
あの時からかな、ボクが真剣に王貞治のファンになったのは
「それに比べてオマエは冷たい男だなー」と田淵には後々何回も文句を言ったけどね
毎年オールスターの季節になるたびにいろいろな人に話題にしてもらえるのは
この年齢になるととてもありがたいと感じるね
思い出は押し売りできないもので
自分にとって印象的なことでも他人にもそう思ってもらえるとは限らない
それを一般の方にも「あれは凄かった」と言ってもらえるのは選手にとって最高に嬉しいことだよね
あの9連続奪三振っていうのはボクの個人的な記録であって、
あの試合にはもっともっといろんな記録が重なってるんだよ
ボクの後に渡辺さん(巨人)から最後は小谷さん(大洋)まで5人の継投で繋いでノーヒットノーランを達成したゲームなんだよ
さらに5人合計で「1試合16奪三振」でしょ
これも未だに破られていないオールスターでの記録なんだ
ボクの9連続奪三振ばかりが表面に出るけど
それを中心にして5人で作った大記録がさらに2つもあるってこと
たまたまボクはその試合の先発だっただけ
未だに破られていないのは誇りに思っているけどね
投手から見ればね
バッターからしたら「コノヤロー!!」っていう試合だよ」
オールスターゲーム第3戦は
6回から登板
江藤(ロッテ)を三振
野村克也(南海)が初球をバットに当ててセカンドゴロにし記録はストップ
前年(1970年)のオールスターゲーム第2戦2回一死から5連続三振を合計し
オールスターで15連続奪三振を達成
通算1000奪三振を記録

ノーヒットノーラン&サヨナラホームラン

1973年8月30日
中日ドラゴンズ戦
阪神:江夏vs中日:松本の投手戦となった
9回表
中日打線をノーヒットに抑える
0-0のまま延長戦
10回表、11回表、中日打線をノーヒットに抑える
11回裏、打者:江夏
初球をライト側ラッキーゾーンにホームラン
サヨナラ勝ち
劇的な自らのサヨナラホームランでノーヒットノーランを達成
朝日放送のアナウンサーが興奮のあまり
「バンザーイ!
江夏大バンザイ!」
と万歳を連呼
後日、公平性を欠くと注意を受けた
その時の江夏のコメントが
「野球は1人でも出来る」
これが論議を呼んだ
一切言い訳をしない性格がそれに拍車をかけた

阪神が江夏を放出

江夏は主治医から
「今の無茶な生活を続けていれば間違いなく数年以内に命を落とす
酒、タバコ、女、麻雀、どれかを止めろ」
と言われた
どうしてもタバコだけはやめられず酒を断つことを選び
それは現在にまで至っている
1974年、通算150勝を達成
血行障害や心臓疾患が悪化
肩痛・肘痛を抑える痛み止めの影響で体重が激増
成績は年々下降
金田正泰、吉田義男両監督との確執などから
「一匹狼」
「ローンウルフ」
といった異名をつけられ
フロントとの対立がクローズアップされる
1966年から1972年まで6年間連続最多奪三振、
1968年、1973年に最多勝利投手
1969年、最優秀防御率
1975年までに完封44試合を含む159勝を記録していた
そんなチームの大功労者に対する契約更改交渉がもめていた
そして日刊スポーツに「江夏放出」の見出しが躍った
江本孟紀(南海)とのトレード話が進行しているとの内容で
当時の江本は5年目で52勝57敗の成績で
江夏とは通算成績で100勝以上も差がありトレード相手としては不釣合いだった
当然、江夏は不信感を抱くが
球団はこれをデマだとして全面否定
しかし契約の話になると、25%ダウンを提示、飲めないならトレードだと通告した

南海ホークスへ

1976年1月28日
阪神、南海による2対4のトレード
(阪神:江夏豊、望月充、南海:江本孟紀、長谷川勉、池内豊、島野育夫)
が成立
トレード発表の記者会見ではこう話した
「僕は心機一転という言葉は使いたくない
精一杯やるだけです
今日はちょうど28日
(江夏の背番号は28)
この日で阪神の江夏はすべて終わった」
江本とのトレードについて
「なぜあんなレベルの選手と・・・」
それを聞いた江本は
「言いたい放題言いやがって・・・・」
と一触即発の状態に陥った
しかし後に和解し良友となる

藤本定義(元阪神監督)は
「世間知らずの野球バカをあんな惨いかたちで追い出すなんて
江夏は10年に1人のピッチャーです
大投手になれたのは
あのわがままでひねくれた性格があったからこそなんですよ
昨年、一昨年と成績が悪かったのは使い方が悪いからです
私が監督のころは
片親がいない貧乏な家庭に育った者には父親代わり兄代わりになってやったものです
江夏もそうで、父親のいない貧しい家庭環境で育っています
そこのところを知ってやらねばいけません
それを会社や監督は理解してやらなかった
配慮が足らなかった
私は今年の吉田内閣はそうとういけると踏んで楽しみにしていたんです
しかしこれで終わりです
残っている計算の立たない10勝クラスではとても優勝なんかできるものではありません 」
とこのトレードについて痛烈に批判している
当の吉田義男監督は
「フロントが決めたことで、私は知らなかった」
と弁明した
当時の長田睦夫球団社長に
「君は江夏のトレード話は知らないことにしておこうや」
との意向に従ってしらばっくれたともいわれている
また江夏豊自伝「左腕の誇り」には
阪神・吉田監督のほうから南海・野村克也監督に江夏のトレード話の打診があったと記されている
ちなみに阪神は
江夏を放出した後、
1976年こそ2位という成績だが、
1984年まで9シーズン中6度のBクラス
1978年には最下位という屈辱を味わう

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