酒井法子  私を「あたピ」「あたくピ」「わたピ」「わたくピ」などというのりピー語でアイドル界を席巻。そしてドラマ「ひとつ屋根の下」で女優としてもブレイク。

酒井法子 私を「あたピ」「あたくピ」「わたピ」「わたくピ」などというのりピー語でアイドル界を席巻。そしてドラマ「ひとつ屋根の下」で女優としてもブレイク。

松田聖子に憧れ、中学卒業前にオーディションを受けて福岡県から上京。16歳でレコードデビューし、のりピー語で大ブレイク。ドラマ「ひとつ屋根の下」で女優としても本格的デビュー。


酒井法子は、1971年2月14日 に福岡県で誕生。
2歳のときに両親が離婚し、父親の実家である佐賀県の寺に預けられ、さらに数年後、東京近郊の借家住む父親の姉の家に引っ越した。
幼く状況が把握できない酒井法子は、その伯母を、
「お母さん」
新聞記者をしている伯父を
「お父さん」
7歳上の従兄弟を
「お兄ちゃん」
と呼び、本当の家族だと思いながら育った。
その後、伯父が埼玉県狭山市に2階建ての家を建てたので、引っ越し。
幼稚園は定員オーバーで入れず、昼間は自宅で1人で遊び、園が終わると近所の友達と合流。
この頃、初めてのレコード「およげ!たいやきくん」」を買ってもらった。
小学校に入って間もなく、ムツゴロウ王国の影響でセントバーナード犬をせがむと、ときどき家にやってきて、会う度に欲しいものを買ってくれる、
「親戚のおじさん」
がセントバーナードの子犬をくれた。
酒井法子は
「デカ」
と名付けたが、本当にみるみる大きくなり、いくら食べても足りない顔をするので給食で余ったパンや牛乳があると持って帰った。

伯母は、あまり料理が得意ではなく、食事はインスタントヤキソバや湯で温めるハンバーグなどが多かったが、酒井法子が体調を崩すと本を読みながら焼きリンゴをつくってくれた。
7歳のとき、その伯母に呼ばれ、かしこまった空気の中、向かい合って正座。
「お前はウチの子じゃないんだよ。
本当の父親が引き取りたいといっているけど、どうしたい?」
といわれ、酒井法子は初めて本当の父親がいること、そしてデカを買ってくれた「親戚のおじさん」が父親であることを知った。
「どうしてそんなこというの」
最初、さみしくなって泣いた酒井法子は、少しの間、悩み、迷ったが、埼玉を離れて本当の父親と暮らすことを選んだ。
「今思うとお父さんやお母さんは、それまで娘同然に育ててきた私が、いきなり気持ちを切り替えて離れていくのは辛かったかもしれない」

こうして酒井法子は、小学校2年生のときに福岡県へ。
家は博多の中心部から少し離れた場所にあり、父親と義母(父親の再婚相手)、まだ赤ん坊の義弟の4人家族。
酒井法子は、父親を
「パパ」
義母を
「ママ」
と呼んだが、埼玉のお母さんと違って福岡のママは厳しく、叱るときはビンタが飛び、食事のときにピーマンを残すと
「食べなさい」
と何時間も食卓に座らされた。
「埼玉にいた頃は欲しいものを買ってもらいえないと店で座り込んでせがんだけど、福岡に来てからは怒るとおっかないからねだらなくなった。
何もねだらないと「アンタ、偉いわね」てホメてくれて、それがうれしくて、また我慢してしまう。
そうやって大人の顔色をうかがうことをこの時期に覚えた気がする」
義母が叱るのは自分を大切にしてくれているからだと思いつつも、やはりツラく、最初は本当の父親のそばにいられるうれしさが勝っていたが父親と義母の仲が良くないこともあって、やがて埼玉が恋しくなって自ら帰りたいと希望。
酒井法子は、5年生のとき、埼玉に戻り、車が家に近づいたとき、うれしくて窓を開けて
「お母さん」
と叫んだ。

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伯父と伯母の姓に戻った酒井法子は、福岡に行っている新設された小学校に通い、頭上に自衛隊入間基地から飛び立った飛行機をあおぎながら、近所の子と一緒に駄菓子屋にいってたのきんトリオのプロマイドを買い集めた。
高校で生徒会長を務め、ギターとオーディオデッキを持っている従兄弟(お兄ちゃん)の影響もあって音楽が好きで、最初に自分で選んで買ったレコードは、あみんの「琥珀色の思い出」
学校のお楽しみ会では、ピンクレディのケイ役で「ウィンテッド」を歌った。
色々な音楽を聴いたが1番好きだったのは、松田聖子。
ラジオで「制服」という歌を聴いたのがきっかけで、その「赤いスイートピ」ーのB面に入っていた曲をカセットにダビングしてもらい何度も繰り返し聴いた。
部屋には松田聖子のカレンダーが貼ってあったが、もったいなくて1枚もめくれず、いつも表紙を眺めながら
「こんなかわいい人がいるのか」
とため息をつき、松田聖子の歌を夢中で聴き、学校の寄せ書きの『将来の夢は?』の欄には
「アイドル」
と書いた。

小学校卒業まで1ヵ月というタイミングで、酒井法子は再び福岡に転校。
酒井姓に戻り、パパと住み始めた。
そして3番目の母親と出会い、最初、
「こんにちは」
と挨拶され、
(美人で優しい人だな)
と思った。
こうして博多湾に近い福岡の中心部にある3LDKのマンションで3人暮らしを開始。
1ヵ月間だけ小学校に通って
「よく知らない人たちとちょっとだけ仲良くしてうれしさも悲しさも感動もない卒業式を迎えた」
中学に進むと義母に
「部活をやりなさい」
といわれ、ユニフォーム姿がかっこよかったのでソフトボール部に仮入部。
それは福岡の中学では屈指の強さを誇るソフトボール部で、他の部に移りにくい雰囲気になって正式に入部。
放課後、2~3時間、声を出しながら走って、キャッチボール、素振り、ノック、筋トレとみっちり練習。
練習後のグラウンド整備もロープをつけたタイヤを引っ張って行った。

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雨の日も雪の日も、
「お前ら、ボールが見えなくなるまで練習じゃ」
と顧問にいわれながら練習。
「7秒ノック」は、内野手と外野手が2人1組でノックを受け、顧問が
「ノーバン」
といいながら打つとノーバウンドで補給し、7秒以内に内野を中継し、キャッチャーまで戻さなければならない。
7秒を超えたり、エラーや悪送球をすれば、夏はケツバット、冬はビンタ。
練習中、酒井法子が
「肩が痛いです」
と訴えても
「投げ方が下手ったい」
と休ませてくれず、
「星飛雄馬の世界が、そこにはあった」
真っ暗になるまで練習した後は、部活の仲間と一緒に禁じられている買い食いをしながら帰り、帰宅後も夜遅くまで電話をかけ合った。
食べることと共に着るものに対する執着がすごく、長いスカートを履きたくて、セーラー服のウエストを縫い上げて長くみえるように工夫し、カバンはペタンコにした
福岡出身のチェッカーズが流行り、仲間とその話で盛り上がり、中森明菜や小泉今日子も人気があったが、酒井法子の1番は変わらず松田聖子。
矢沢永吉も好きで、朝の目覚めには「ロッキンマイハート」を聴いた。

異性には奥手で、小学生時代に1人だけ好きになったが、まったくしゃべることができなかった。
中学では3年間で2人の男子を好きになり、1人目は野球部で、ラブレターを書いて、プレゼントも贈った。
中身はフェルトで野球のアップリケと彼の名前をくっつけた手作りの巾着袋だったが、遠くから投げるように渡した。
廊下で相手が向こうからくると後ろを向いて逃げ、一緒に歩くどころか、まともに会話することもなく、
「向こうも好きらしい」
と友達から聞くだけで満足し、後は妄想にふけるだけで終わった。
2人目は、想いを伝えた後、自転車に乗って彼の新聞配達に付き合った。
ドキドキして張り切りすぎて大きなガラス戸に激突し、おでこと上唇を強打。
何もなかったフリをして帰ったが顔は大きく腫れ上がり、それっきり恥ずかしくて会えなくなった。

酒井法子は父親を
「パパ」
と呼んでいたが義母には
「ママっていわれるのは嫌だから、お母さんって呼んでほしい」
といわれ、その通りにした。
義母は中洲のクラブで働いていて、酒井法子が学校から帰ると卵焼きや唐揚げ、カレーなどがつくってあり、それを食べていると出かけていった。
そしてどんなに遅くに帰ってきても、ご飯をつくり、酒井法子を起こして一緒に食べ、玄関で登校を見送った。
義母はいつも
「男の子を家に呼んじゃダメ」
と注意していた。
あるとき義母が仕事に出た後、女友達が家に来て遊んでいたが、何かを受け取るために男の子を呼んだ。
それをマンションの管理人が目撃し、夜中に帰ってきた義母に
「留守中に男の子が家に入っていった」
と報告。
義母は家に入るなり、寝ていた酒井法子を起こしてビンタし、
「約束したのに、なんでこんなことするの!」
酒井法子は、
「それはわたしじゃないし、部屋の中に入れていない」
といって泣いた。
義母に手を上げられたのは、この1度だけで、このときも
「想ってくれている表れ」
だと思えた
その後も義母とケンカし、酒井法子は怒られて腹が立つと、部屋のドアに
「入らないで」
と張り紙して閉じこもった。
すると義母も
「お母さんの部屋だから入らないで」
と張り紙。
そしていつもバカバカしくなって仲直りした。

一方、パパはあまり家にいなかった。
それまで酒井法子は、出かけたいときに出かけ、たまにフラと帰ってくるパパを
「自分の人生を楽しんでいる」
「ゴーイング・マイ・ウエイな人」
そして
「正直、何をしているのかわからない」
と思っていたが、この頃になると小さいときに一緒にお風呂に入ったとき体に掘られた花をきれいだと思った記憶と十数年の人生経験で事情を理解。
そして自然に避けて過ごすようになり、パパとの間に緊張感が漂うようになった。
流行りの長いスカートをはいて遊びに出ようとしたとき
「そんなカッコウで外に出るな」
と注意されたが、無視して玄関へ。
「ちょっと待て!」
といわれ腕をつかまれ、初めて殴られた酒井法子は、殴り返した。
そして跳ね飛ばされて冷蔵庫で顔を打ち、
「貴様、なんばしよっとか」
と怒鳴られ、
「お母さん、助けて」
と風呂に入っていた義母に助けを求めた。
その後、ますますパパを遠ざけるようになった。

中学3年生になると、あまりの厳しさに同級生のソフトボール部員は10人になり、酒井法子は、レフト、打順9番でレギュラーを獲得。
夏、顧問が
「必守必打」
と書いた赤いハチマキを巻き、全国大会出場をかけて福岡県大会に出場し、決勝戦でドラマチックな逆転サヨナラ負け。
酒井法子は
「中学時代は毎日が部活で精いっぱいで、それによって生活が充実していた」
といい、ソフトボール部員との友情は大人になってもずっと続いたが、あるとき最後の決勝戦の試合の内容を
「忘れてしまった」
というと
「マジでいいようと?」
といわれた。

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