バンカラ、この熱さを伝えたいのだ!

バンカラ、この熱さを伝えたいのだ!

バンカラ作品は熱い!熱いどころか全ての作品がオーバーヒートしています。なかでも1970年と1975年はバンカラ作品の当たり年でして、熱いにも程があるってな作品ばかり。ちょっと覗いてみませんか?!


バンカラ

一部を除き死語といっていいほど一般的には使われなくなった言葉「バンカラ」。ですが、この言葉は「熱い」!熱すぎるとも言われていますが、今の時代にこそこの「熱さ」が必要なのではないかと思われる今日この頃です。

そもそも「バンカラ」とは何か?と言えば、明治維新後に欧米化の波が押し寄せてきますが、この欧米化を「ハイカラ」と呼び「バンカラ」は、その対義語です。
反骨精神を表すために使われた言葉とも言われており、ハイカラ同様にバンカラも一世を風靡しました。
「バンカラ」の要素を取り入れた作品は近年でも多々ありますが、特に70年代の作品は「熱い」です。先ず見て頂きたいのは漫画「昭和バンカラ派」。激しく直球で勝負したタイトルにシビレます。

著者:司敬

バンカラ(「昭和バンカラ派」より)

駿河屋 -昭和バンカラ派(13) / 司敬(青年(B6)コミック)

「昭和バンカラ派」の内容はこうです。

バンカラの精神を今に伝えるという金沢にある成巽閣高校に、能登の山奥から男を磨くために主人公の南部修作はやってきます。この「男を磨く」というところが重要です!
しかし、あろうことか成巽閣高は全国からの不良たちが集まるワルの巣窟と化していたのです。な、な、なんで名門高校がそのようなことになるのか!オープンキャンパスなどがなかった時代とは言え、そのように重大なことに何故入学するまで気づかなかったのか?!南部修作も呑気といえば呑気。災難と言えば災難です。
そして、南部修作の前に金持のエリートで21世紀のヒットラーとならんとする石動大輝が現れます。石動大輝は文武両道の天才にしてハイカラなのです。こうしてバンカラ対ハイカラの熱く激しい戦いの火ぶたが切って落とされます。

如何です?いかにも面白そうでしょ?更にもう一作見て頂きたい作品「魁!!男塾」。

著者:宮下あきら

魁!!男塾

南部修作と「魁!!男塾」の主人公・剣桃太郎(つるぎももたろう)を比べて頂くと分かるように、ファッションがよく似ています。
「バンカラ」は旧制高校や旧制中学の学生服が基本。その上にマントを羽織り、高下駄で闊歩したのが始まりです。そして弊衣破帽と言うのだそうですが、学生服はボロボロを良しとしています。
いえ、良しとするというよりもファッションに無頓着なのですね。実際、ファッションに気を遣う暇がないくらい勉強に専念したそうですよ。

「魁!!男塾」の主人公・剣桃太郎も授業中はよく居眠りをしていますが、ネイティブ並みの英語やフランス語など複数の言語がしゃべれ、数々の秘技・秘拳を体得しています。まさに文武両道。
しかも、男塾卒業後は東京大学に入学しており、続編である「天より高く」ではその後ハーバード大学に進学し、内閣総理大臣にまで上り詰めています。

本物の「バンカラ」は能力が高い!

外見的な特徴となると、学生服(それにマント)、下駄履き、ポケットにしのばせた手拭い、ボサボサの髪の毛ということのようです。

であれば、南部修作や剣桃太郎よりももっと適した人物がいます。「俺の空」の主人公・安田一平です。

著者:本宮ひろ志

俺の空

どうです?マントも着てますし、学生帽も敗れています。絵にかいたような(漫画ですが…)見事な「バンカラ」ぶりです。

男一匹ガキ大将

「俺の空」だけではなく、「男樹」「サラリーマン金太郎」などなど、本宮ひろ志の作品は全てといって良いほど根底にバンカラ精神が流れています。その作風を確立したのは「男一匹ガキ大将」でしょう。

作者:本宮ひろ志
出版社:集英社
掲載誌:週刊少年ジャンプ
発表号:1968年11号~1973年13号

男一匹ガキ大将

実は人気絶頂時にも関わらず作者は「男一匹ガキ大将」の掲載を何度も終了しようとしたそうです。「男一匹ガキ大将」は、永井豪の「ハレンチ学園」とともに創刊間もない「週刊少年ジャンプ」を一躍人気少年誌に押し上げた作品ですからね、そう簡単には終了させてもらえず編集者に説得されて無理やり描かされていたのだそうですよ。

我が良き友よ

バンカラのテーマソングといえば、かまやつひろし の「我が良き友よ」でしょう。
「下駄を鳴らしてヤツがくる。腰に手ぬぐいぶら下げて」ですからね。この男、学生服は着ているのですが歌詞からは破れた学生帽をかぶっているのかどうかは分かりません。かぶっててほしいですけどね。作詞・作曲は吉田拓郎です。

当時人気絶頂だった吉田拓郎がこのような曲を作ったことに多くの人が驚きました!しかし、もっとも驚いたのは かまやつひろし だったようで、最初は歌うのを嫌がったのだとか。
というのも、かまやつひろし はオシャレでしたからね。そう、バンカラどころかハイカラだったのです。イメージじゃないということでしょう。しかし、この歌は かまやつひろし の声によく合ってますよね。累計売上枚数は90万枚という大ヒットを記録しています。

嗚呼!!花の応援団

「我が良き友よ」がリリースされたのは、1975年2月5日。同年の10月からバンカラ漫画の代表作ともいえる「嗚呼!!花の応援団」が掲載開始されています。
「週刊プレイボーイ」で「俺の空」の連載が開始されたのも1975年ですから、この年はバンカラの当たり年といえそうですね。

作者:どおくまん
出版社:双葉社
掲載誌:週刊漫画アクション
発表期間:1975年10月16日~1979年

嗚呼!!花の応援団

作品から生まれた「ちょんわちょんわ」 をはじめ「クェックェックェッ」や 「シビア~」といったセリフがやたらと流行りました。なかでも衝撃的なセリフは「おめこ」でしょう。関西以外の多くの人は意味を知って腰を抜かしたものですよ。まぁ、この作品でこの言葉は一般化されたと言えるかと思います。

「嗚呼!!花の応援団」は現在までのところ、4度も映画化されています。

漫画は荒々しいタッチで描かれていますし、ギャグの要素が強い作品なのですが、実は、応援団という組織の本質がリアルに表現されていることでも知られています。これ、けっこう感動するんですよね。

ダウンタウン・ヒーローズ

「バンカラ」をテーマにした作品はモチロン漫画ばかりではありません。小説にも映画にもあります。代表的な作品としてお勧めしたいのは、1966年に刊行された鈴木隆の小説「けんかえれじい」ですね。同年、鈴木清順監督、高橋英樹主演で映画化されています。小説、映画共に素晴らしい出来栄えです。
そしてもうひとつ。1984年8月号から1986年7月号まで小説新潮に連載され、1986年9月に刊行された「ダウンタウン・ヒーローズ」。山田洋次監督によって映画化され、1988年に公開されました。

監督:山田洋次
原作:早坂暁
脚本:山田洋次、朝間義隆
出演:薬師丸ひろ子、中村橋之助、柳葉敏郎、尾美としのり、杉本哲太、石田えり

ダウンタウン・ヒーローズ

小説も面白いのですが、映画がこれまた面白いんです。なんといっても山田洋次監督作品ですから面白くないはずがない!わけですよ。ヒロイン役の薬師丸ひろ子イイです。
しかし、それよりなにより映画版は内容が小説とは大きく異なってるんですよ。

小説と映画、どちらが優れているか?これは評価の分かれるところかもしれませんが、ま、どちらも素晴らしいが満点の回答と言えるでしょう。

ところで、女性用の作品にも「バンカラ」ものがあるんですよ。タイトルもズバリの「バンカラ太陽」。いいですねぇ、いいタイトルです。
浦野千賀子の作品で1970年7月号から1971年2月号の別冊マーガレットに掲載されていました。女の子でバンカラってのもスゴイですね。

浦野千賀子
掲載:別冊マーガレット1970年7月~1971年2月号

バンカラ太陽

少年院帰りの主人公が学園の悪と戦う!といった内容なのですが、これは同じ1970年に女因を主人公にして大ヒットした漫画「さそり」と同傾向ですね。ただ「さそり」をバンカラのカテゴリーに入れるには無理がありますが。。。
そう言えば「男一匹ガキ大将」が劇場映画化されたのも1970年ですね。何かあったのでしょうか?1970年もまたバンカラの当たり年だったみたいですね。

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