極真分裂.03 他流試合

極真分裂.03 他流試合

大山倍達没後、2年目。一見、クールだが一番ガンコな松井章圭 vs 不屈の男、三瓶啓二。


1999年11月、第7回世界大会では、決勝戦でフランシスコ・フィリョと数見肇が対戦。
2度の延長戦でも明確な差が出ず、試割り判定にもつれ込み、1枚差でフランシスコ・フィリョが勝った。
初の外国人チャンピオンだった。
「極真が世界中に拡散して約半世紀が経ち、王座流失という事態はある意味必然といえるかもしれません。
極真空手、すなわち直接打撃制空手という新しい格闘技文化が、海外にも正しい形で根づき、
極真会館が真に国際的な組織として深く根を下ろしたということの証明であるのかもしれません」
厳密にはそういう松井章圭自身が第4回に置いて優勝した時点で初の外国人チャンピオンである。
数見肇は、第24回~30回全日本大会まで7年連続決勝戦に進出、優勝4回。
世界大会は2回連続2位。
すさまじい戦績だったが、初めて外国人に王座を明け渡した戦犯として極真の十字架にかけられることになる。

1999年12月4、5日、三瓶派が東京体育館で第7回世界大会を開催。
最終日の試合終了後、
「重大発表がある」
と急遽、代表:三瓶啓二、副代表:緑健児、高知県支部長:三好和男らが記者会見を開いた。
「先月行われた松井側の世界大会で外国人選手がチャンピオンになり日本敗北と騒がれていますが、日本は負けていないと。
僕らとしては極真は1つだと思っていますが、もう1つ世界大会があったことは事実であり、それなら世界一を決める統一戦も辞さない。
日本は絶対に負けていないということを伝えたいと、もしあちらが望むのであれば受ける方向で考えています」
意気込んで臨んだ会見だったが
「松井派側は望んでるんですか?」
「望まれれば受けるという受け身の姿勢なのか、自ら働きかけて実現の方向に持っていきたいという攻めの姿勢なのか、どちらなのでしょうか?」
「選手は知っているのですか?」
などとマスコミの反応は鈍かった。
テレビなどメディアの露出で勝る松井派にとって統一戦や対抗戦にメリットがあるとは思えなかった。
明らかに塚本徳臣の優勝を見届けた三瓶啓二の見切り発車だった。
1999年12月6日、世界支部長会議(三瓶派)で、西田幸夫は組織離脱を表明した。
「松井派と接触するのは、ここ数年の自分たちを否定すること」
(西田幸夫)
西田幸夫だけでなく多くの支部長が三瓶啓二の統一戦発言に強い違和感を持った。
「統一選構想は首脳陣の暴走」
(桑島保浩)
「自分たちが否定した団体に対抗戦を呼びかける自体、大きく矛盾していますよ。
なぜあんな暴挙に出たのか理解できない」
(増田章)
三瓶啓二の統一戦の呼びかけを松井派は相手にしなかった。
「うちの選手と戦いのであれば我々の主催する大会に参加すればいいのではないのでしょうか」
(松井章圭)
「大山総裁のマネをしたのでしょうが何をバカなことをいっているんだという感じでした」
(浜井識安)

2000年1月、増田章、中川幸光(岡山県支部長)が三瓶派を離脱。
この後、三瓶派所属の道場の指導者や選手、道場生が大量離脱が始まると
「西田による引き抜き」
「西田主導のクーデター」
と疑う声も出たが、西田幸夫は自分の道場「極真空手・西田道場(現:極真空手・清武会)」に専念し、以後、騒動に加わることは
2000年1月24日、津浦伸彦が、極真会館総本部(旧会館)で記者会見を開き、「極真会館宗家」の発足と「大山倍達記念館」の設立を発表。
極真会館宗家の宗主は、大山智弥子。
記念館は、道場の横の一室に併設され、道場の指導は、世界大会で優勝した塚本徳臣が行うという。
しかし塚本徳臣は、三瓶派所属の選手だった
取材を受けた塚本徳臣は
「組織は辞めません。
移籍といえば移籍ですが(三瓶派の)大会にはドンドン出ます。
組織には許可を取っているし智弥子さんのためにがんばりたいという気持ちです」
といったが、三瓶啓二や緑健児が許さすとは思えなかった。
次に
「総裁のご遺族と指摘に関係を持った挙句に絶縁される。
そんな代表に誰がついていけますか?、
長年尊敬してきた先輩ではありますが、三瓶師範には心底失望しました」
と三瓶派を脱退した増田彰を宗家師範代にするという案が浮上。
大山喜久子(三女)は、増田彰に「2代目・大山倍達」を襲名することを提案した。
最終的に運営の金銭的な問題で折り合いがつかず増田章は宗家から身を引き、弟子の鈴木義和が指導員として宗家に移籍することになった。
師範代は、1995年に分裂騒動を仲介しようとした3長老の1人、三宅進が就任。
「宗家総本部は極真の中では吹けば飛ぶような存在ですが、「極真の父は大山倍達だ」と胸を張っていえるのは宗家だけでしょう」
津浦伸彦も最初は大阪から東京まで来て指導に参加していたが、大山喜久子(三女)と金銭的な問題で衝突し、やがて大阪の自派「極真大山道場」に専念するようになった。
大山倍達記念館は、生前、大山倍達愛用の品や、全国の有志からもらったり借りた物が飾られ、当初は多くのファンが訪れたが、次第に減って閉鎖された。

2000年3月9日、三瓶派の緊急理事会が開かれた。
理事会だったが本来出席しなくてもいい支部長が所属の指導者、選手、道場生の大量離脱に危機感を抱いて多数出席。
まるで支部長会議な異様な雰囲気のなか、代表である三瓶啓二主導で会議は進んでいった。
すると突然、数名の支部長が立ち上がった。
「会計が不透明で我々一支部長には各道場から上がる金銭が一体何に使われているのかまったくわからない状態です。
世界大会の収支報告もないというのはおかしいおんではないでしょうか」
「(会計担当の)大濱支部長は毎週のように広島から上京し、そのまま北海道に飛んで数日過ごしている。
支部を開拓する目的でいっていると聞いたが、実際はゴルフ三昧で、それらも組織から出ていると噂になっている」
「塚本(徳臣)の写真集も私たちが知らないうちに出版が決まっていたり、出版したらしたで何冊も支部に買い取らせたり、これも一切報告がないのはおかしいのではないですか」
「極真魂(機関紙)を毎月100部も買い取らされて、どれだけ売れているのかも何部発行しているのかも教えてもらえない」
「松井を降ろしたときの「会計の不明瞭」そのものじゃないか」
大濱博幸は平然と答えた。
「必要なものに金を使っているだけですよ」
「北海道でのゴルフはどう説明するんですか。
何人も証人がいるんですよ」
「まあゴルフくらいは自分で出すべきだと思うが、大濱も極真のために一生懸命動いている点は理解してやらないと」
三瓶啓二はフォローしたが納得できない支部長たちは収支報告を要求した。
「とにかく今は経済的に非常に苦しいところがある。
そんなに支部の支出が大変だというなら会員制度を導入して全国の道場生から年会費を徴収するようにすればいい。
それが1番効率的だ」
松井章圭が会員制度を導入しようとしたとき反対した大濱博幸がいった。
「この件は責任をもって善処する。
大濱にも反省するところは反省してもらいたい。
可能な限り極真会館として定期的に収支報告をしてもらう」
と三瓶啓二はなんとか収めた。

「ほかになにか議案はありますか?」
三瓶啓二の声に木元正資が手を挙げた。
「三瓶師範のスキャンダルについて全国的に噂になっている現状なので、あえて質問させていただきます。
例の一件は本当なのですか?
それともただの中傷ですか?
この場ではっきり答えていただけませんか?」
三瓶啓二は沈黙した。
「自分は真実が知りたいだけなんです。
事実なら事実として一言でいいから謝罪が欲しいだけです」
(桑島保浩)
「この数年で何人もの支部長が辞めていきました。
それも三瓶師範の問題と無関係ではない。
三瓶師範がここでちゃんとした態度を示していただけないと、また辞めていく者がでてきてしまいます。
どうなんですか、師範」
(木元正資)
三瓶啓二は腕を組んで苦笑い。
さらに数名から同じ質問を浴びた。
「先輩!
このままでは何も解決しませんよ。
ハッキリしてください」
(柳渡聖人)
「要は俺に代表を降りろということか」
(三瓶啓二)
「自分にやましいことがあるなら辞めるべきなのではないですか」
(木元正資)
「それじゃ辞めさせればいいだろ」
(三瓶啓二)
「それは筋が違います。
辞めさせるのではなく辞任してください。
自ら責任を取って辞めてください」
(柳渡聖人)
「世界大会もいい形で終わって、ご勇退ということで結構ですから」
(坂本恵義)
「俺は噂を認めていない。
認めていない者が責任を取る必要はないだろう・
だから辞任はしない。
みんなに解任された形なら俺は認めていないんだから面目を保てる。
だから解任すればいいんだ」
「辞める、辞めさせるじゃなくて、あの噂についてデマならデマとハッキリ答えてください」
(桑島保浩)
「いいから、解任してくれればそれでいい」
(三瓶啓二)
「先輩、俺はあんたを見損なった
三好和男は立ち上がり議長席に詰め寄った。
「今まであんたを信じついてきた。
誰かが遺族との噂のことをいっていたら「そんなデマ信じるな」と口止めまでしてきた。
なのに事実をいわず、挙句に辞めさせればいいだろうなんて・・・
まるで事実と認めているようなもんじゃないですか。
これ以上議論しても仕方ない。
先輩が辞めるも何も理事会で決めればいいでしょう。
辞任も解任も関係ないですよ」
三好和男を無視する三瓶啓二をみて桑島保浩が席を立った。
「もういいです。
自分は辞めさせていただきます」
数名の支部長も続いた。
「もう1度話そう。
頼むから戻ってくれ」
緑健児が追ったが、さらに小鳩殉也(千葉県支部長)、三和純(城西支部長)、園田直幸(宮崎県支部長)らが出て行った。
残された面々は、しばらく時間をおいてから会議を仕切り直すことにした。

数時間後、会議が再開。
三瓶啓二は、自分が代表を降りる代わりに次の代表を選ばせて欲しいといった。
「三瓶先輩に続けてもらえばいいのではないか」
数名が三瓶啓二の代表継続を要求したが、大多数は無言で反対の意を表した。
「俺は代表を続けるつもりはない。
だが疑惑を認めていないし会計の問題は大濱が辞任することでケジメをつけたいといっている。
じゃあなぜ代表を降りるのか。
それはつまらない噂で会議を混乱させたから、だから解任しろといった。
特別大きなトラブルを起こしたわけじゃない。
ならばせめて次期代表の指名権くらいもらってもいいんじゃないのか」
しかし三好和男は、新理事は前理事の承認を得て選出され、倫理時による選挙で代表理事を選ぶという規約に則って新代表を決定しようと提案。
過半数の賛成を得た。
そしてまず新理事の選出が行われた。
緑健児、小林功、七戸康博、木元正資、入来武久、坂本恵義、三好和男、田畑繁が選ばれた。
すぐに8名の新理事による新代表の選挙が行われた。

緑健児 4票(緑健児、小林功、入来武久、三好和男)
七戸康博 3票(木元資、坂本恵義、田畑繁)
木元正資 1票(七戸康博)

こうして

代表:緑健児
理事:小林功、七戸康博、木元正資、入来武久、坂本恵義、三好和男、田畑繁

と決まった。
後で緑健児は坂本恵義にいった。
「なんで俺に入れてくれなかったんだ」
「先輩はなぜ自分に入れたんですか」
「自分しか適任者はいないと思ったから」
七戸康博が自分に入れていれば同票だった。
2000年3月1日、緑健児が記者会見で代表就任を発表。
緑健児には、松井章圭同様、クリーンなイメージがあるのに加え、単純明快でフレンドリーなイメージもあった。
緑派は、従来の全日本大会、全日本ウエイト制大会、世界大会を継続しつつ、会員制度、ワンマッチ、プロ格闘技への参戦など、かつて大山派、あるいは支部長協議会派時代に否定していた松井派の手法もどんどん導入するなど、柔軟で大胆な改革を行っていった。

「極真分裂.04 みんな極真を愛していた」に続きます。

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