良い作品です。渡部篤郎は日本アカデミー賞において新人俳優賞を受賞していますし、俳優陣は頑張った。しかし、障碍者というテーマがもしかすると重かったのかもしれません。商業的には大失敗。伊丹十三作品としては最低の興行成績となってしまいました。前作の「大病人」も思わしくなかったので、2作続けての失敗によって伊丹十三は追い詰められてしまいます。
スーパーの女
やはり「大病人」、「静かな生活」とテーマが重かったんでしょうか?敗北。そんな言葉が頭をよぎる程の大失敗。もう後がないということで、宮本信子を主役に据えて選んだテーマは分かりやすいスーパー再建。困ったときには宮本信子、タイトルからして彼女が主役と分かる「スーパーの女」が9作目として1996年に公開されました。
起死回生。そういって良いでしょう。「スーパーの女」は、伊丹十三最大のヒット作「ミンボーの女」とほぼほぼ肩を並べる程の大ヒットを記録したのですよ。やっぱり、この底抜けに明るい感じが良かったのではないでしょうかね。いや、伊丹十三作品は葬式だの病気だの脱税だのと、ネガティブに捉えられがちなテーマを扱ってはいても明るいんです。上質のユーモアが溢れているんです。それが受け入れられたんですねぇ。
マルタイの女
「スーパーの女」が大ヒットしたことでホッと一息つくのかと思いきや、翌年には早くも「マルタイの女」を公開します。また興味をひく上手いタイトルを付けたものですねぇ。「マルタイ」というのは警察用語で捜査や護衛の対象となる人間の事です。
ただ残念なことに、本作が伊丹十三の最後の監督作品となってしまいました。
「マルタイの女」が公開されたのは1997年9月27日。伊丹十三が亡くなったのが同年の12月20日です。死因は謎を残しつつも、ビルからの飛び降り自殺とされています。
伊丹十三作品の面白さを支えたのは個性的な俳優陣ですが、中でも宮本信子が居なかったならどの作品も成立しなかったのではないかと思われるほどです。良き女優であり、良き妻であった。最高の理解者が伊丹十三のすぐそばに居たからこそ、このような作品を作り出せたのでしょう。
