80年代の日本アート・シアター・ギルドの作品紹介

80年代の日本アート・シアター・ギルドの作品紹介

ATGこと日本アート・シアター・ギルド。映画好きにはこたえられない優れた作品を配給し続けたことで知られています。今回は若手の映画監督を積極的に起用した80年代の代表作を紹介します。


ATG

日本アート・シアター・ギルド。略してATGは、1961年から1980年代にかけて活動した日本の映画会社です。大ヒット作も生み出しましたが、全体的にはアート志向というか、マニアックなというか、独特な雰囲気を持った作品で知られています。

ATGの第1期(1961 - 1967年)は主に外国映画の配給を行い、第2期(1967 - 1979年)では低予算ながらも映画製作に移行します。そして第3期(1979 - 1992年)になると若手監督を積極的に採用した作品を世に送り出しました。

今回は第3期、80年代の代表的なATG作品を紹介します。

ヒポクラテスたち

一般に1979年からがATGの第3期とされているようですね。
1979年に制作されたのは、小笠原裕監督の「青春 PART II 」、新藤兼人監督の「絞殺」、クロード・ガニオン監督の「Keiko」、神代辰巳監督の「赫い髪の女」。そして東陽一監督の「もう頬づえはつかない」です。計5本。
中でも総計50万部を売り上げるベストセラー小説を映画化した「もう頬づえはつかない」は大ヒットし、主演の桃井かおりは一躍人気女優となりました。

で、1980年。この年は橋浦方人監督「海潮音」、大森一樹監督「ヒポクラテスたち」、神代辰巳監督「ミスター・ミセス・ミス・ロンリー」に鈴木清順監督の「ツィゴイネルワイゼン」の4作品を制作・配給しています。
やはり話題となったのは「ツィゴイネルワイゼン」でしょうね。第54回キネマ旬報ベストテン第1位、第4回日本アカデミー賞最優秀作品賞など多くの賞をかっさらいました。

が、今回お薦めするのは「ヒポクラテスたち」です!

監督:大森一樹
脚本:大森一樹
製作:佐々木史朗
出演者:古尾谷雅人、伊藤蘭、光田昌弘、狩場勉、柄本明、西塚肇、真喜志きさ子、内藤剛志、斎藤洋介、手塚治虫、原田芳雄、渡辺文雄
音楽:野秀一
撮影:堀田泰寛
製作会社:シネマハウト
配給:日本アート・シアター・ギルド
上映時間:126分

ヒポクラテスたち

第3期のATGが若手監督を多く起用したのは、実績のある監督は予算の関係から使えないという懐事情があったのではないかと推察されます。しかし、それが結果として多くの才能ある監督を掘り起こすことになったわけですから、日本映画界にとっては不幸中の幸いですね。

「ヒポクラテスたち」は、監督デビュー作「オレンジロード急行」で早々に注目されていた大森一樹を起用して見事に成功した作品となりました。
何といっても医大生たちの日常を描くというストーリーが斬新で、その医学生を演じる古尾谷雅人、伊藤蘭たちが新鮮でした。内藤剛志、斉藤洋介の映画デビュー作としても知られています。

なんでこんなにリアルな医学生が描けたのかと言えば、脚本も担当した大森一樹監督は医学部卒業なんですよ。納得の出来栄えです!
それにしてもキャンディーズ時代から可愛かった伊藤蘭ではありますが、この作品でも輝いています。

「ヒポクラテスたち」は、1980年度キネマ旬報ベストテン日本映画部門第3位、第2回横浜映画祭助演女優賞を獲得しました。

遠雷

「ヒポクラテスたち」「ツィゴイネルワイゼン」と2本のヒット作で80年代幸先の良いスタートを切った日本アート・シアター・ギルド。勢いそのままに1981年には6本の作品を送り出しています。しかもその6本がどれもこれも素晴らしいときています。

井筒和幸監督「ガキ帝国」、根岸吉太郎監督「遠雷」、大森一樹監督「風の歌を聴け」、岡本喜八監督「近頃なぜかチャールストン」、大林宣彦監督「転校生」、長崎俊一監督「九月の冗談クラブバンド」。映画好きにはどれもたまらない作品ですよね。

「転校生」はイイ。「風の歌を聴け」や「ガキ帝国」も素晴らしい。が、お薦めとなるのは「遠雷」です。

監督:根岸吉太郎
脚本:荒井晴彦
出演者:永島敏行、ジョニー大倉、石田えり、横山リエ、ケーシー高峰
音楽:井上尭之
撮影:安藤庄平
編集:鈴木晄
製作会社:にっかつ撮影所、ニュー・センチュリー・プロデューサーズ、ATG
配給:ATG
上映時間:135分

遠雷

この時点で、根岸吉太郎は日活ロマンポルノを7本監督していて、「遠雷」は一般映画の第1回監督作品で、通算で8作目となります。
こんなに素晴らしい監督を埋もれさせておくのは勿体ない!とばかりに制作された「遠雷」は、期待にたがわぬ名作となりました。

地上げが進む地方都市でトマト栽培を営む青年の物語です。地味。こう言われると、なんか地味。で、クライマックスは自宅で行われる結婚式です。確かに地味な物語だ。ですが、だからこその感動があるんですよ。
結婚式の最後に桜田淳子の「わたしの青い鳥」が歌われるのですが、このシーンで泣かない人っているんですかね?素晴らしい演出だと思います!最後の遠雷のシーンには強烈な余韻が残る。

主演の永島敏行はモチロン素晴らしいですが、ジョニー大倉、石田えりといった他の出演者全員が素晴らしいです。熱演という言葉がぴったりの作品。まぁ、いい映画と言うのはそういったものなんでしょうけど、熱演あっての名作というものを実感します。

「遠雷」は、「第55回キネマ旬報賞」日本映画ベスト・テン第2位、読者選出日本映画第4位、主演男優賞:永島敏行。
「第24回ブルーリボン賞」監督賞:根岸吉太郎、主演男優賞:永島敏行、スタッフ賞:安藤庄平。
「第6回報知映画賞」作品賞、主演男優賞:永島敏行、新人賞:石田えり。
「第5回日本アカデミー賞」新人俳優賞:石田えり。
「第5回山路ふみ子映画賞」などを受賞しています。

家族ゲーム

映画をヒットさせるというのは大変なことのようです。良い作品だからといってヒットするとは限りませんからねぇ。難しいところです…

1981年に頑張り過ぎたのかATGは翌年、高橋伴明監督「TATTOO<刺青>あり」、中川信夫監督「怪異談 生きてゐる小平次」、浅井慎平監督「キッドナップ・ブルース」の3作品のみ。
しかも更に翌年の1983年は僅か1作品しか配給していません。

が、しかし、その1作品が大ヒットしたんですよ。森田芳光監督の「家族ゲーム」です。

監督:森田芳光
脚本:森田芳光
原作:本間洋平
製作:岡田裕、佐々木史朗
出演者:松田優作
撮影:前田米造
編集:川島章正
製作会社:にっかつ撮影所、NCP、ATG
配給:ATG
上映時間:106分

家族ゲーム

関連する投稿


名バイプレーヤー【宮川一朗太】10代の頃はどんな作品に出ていた?

名バイプレーヤー【宮川一朗太】10代の頃はどんな作品に出ていた?

数々のヒット作品に出演し存在感を放つ宮川一朗太さん。2023年にデビューから40年を迎えました!この記事では、そんなベテラン俳優である宮川一朗太さんが、まだ10代だった頃に出演されていた作品について振り返ってみました。


土屋名美という宿命の女を多くの女優が体を張って演じた「天使のはらわた」シリーズ

土屋名美という宿命の女を多くの女優が体を張って演じた「天使のはらわた」シリーズ

長きにわたり支持され続けてきた「天使のはらわた」シリーズ。過酷な運命に翻弄される土屋名美の存在感は圧倒的です。水原ゆう紀、泉じゅん、速水典子、小野みゆき、大竹しのぶ、余貴美子など多くの女優が土屋名美を演じています。


【志水季里子】映画『マルサの女』で存在感を発揮!廣瀬昌亮とのご結婚やかつて披露した官能シーンなどもピックアップ!

【志水季里子】映画『マルサの女』で存在感を発揮!廣瀬昌亮とのご結婚やかつて披露した官能シーンなどもピックアップ!

1980年代を中心に活躍し、その確かな演技力でロマンポルノ後期を支えた志水季里子さん。その後もベテラン女優として活動し、2010年代まではテレビドラマ・映画に出演されていましたね。今回の記事では、そんな志水季里子さんにスポットを当て、その全盛期を少しエロ目線を加えて振り返っていきたいと思います。


映画「セーラー服と機関銃」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

映画「セーラー服と機関銃」をフルで無料視聴できる動画配信サービスを比較!

『セーラー服と機関銃』は、1981年公開の日本映画。赤川次郎の同名小説の映画化作品。監督相米慎二、脚本田中陽造。薬師丸ひろ子、渡瀬恒彦、風祭ゆきらが出演したこの作品を無料視聴できる動画配信サービスをご紹介します。


【宮本信子】お葬式・マルサの女で有名!旦那・伊丹十三やあげまんで披露したおっぱい!

【宮本信子】お葬式・マルサの女で有名!旦那・伊丹十三やあげまんで披露したおっぱい!

伊丹十三作品といえば、宮本信子さん。『お葬式』『マルサの女』『あげまん』など、ミドルエッジ世代の記憶に刻まれているような映画も多数です。今回の記事では、そんな彼女をフォーカスして、その全盛期の活躍ぶりやプライベート・ヌード情報などもリサーチしてみました。ぜひ記事をご覧になってくださいね。


最新の投稿


工藤静香、全国7都市を巡るプレミアム・シンフォニック・コンサート開催決定!本日より一般チケット発売

工藤静香、全国7都市を巡るプレミアム・シンフォニック・コンサート開催決定!本日より一般チケット発売

工藤静香のフルオーケストラ共演シリーズ第3弾「PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2026」の開催が決定。2026年3月から全国7都市を巡るツアーに挑みます。栁澤寿男、柴田真郁ら名指揮者と共に、往年のヒット曲から最新曲までを大胆かつ繊細に再構築。本日より一般チケットの販売が開始されました。


シティポップ再評価の決定版!DJシーザー最新作『昭和100年』ベストMIX第2弾が2月に発売

シティポップ再評価の決定版!DJシーザー最新作『昭和100年』ベストMIX第2弾が2月に発売

DJシーザーによる人気MIX CDシリーズ最新作『昭和100年 JAPANESE CITYPOP NON-STOP BEST MIX Vol.2』が2月18日に発売決定。大貫妙子や米米CLUB、ピチカート・ファイヴなど、国内外で愛される珠玉の35曲を極上のノンストップMIXで収録。世代を超えて「都会」のムードを堪能できる、新時代のシティポップ入門編です。


【箱根ホテル小涌園】昭和100年を祝うレトロな100日間!「懐かしのあの頃ドリンクフェア」開催

【箱根ホテル小涌園】昭和100年を祝うレトロな100日間!「懐かしのあの頃ドリンクフェア」開催

2026年の「昭和100年」を記念し、箱根ホテル小涌園の「Bar1959」で期間限定フェアが開催。バイオレットフィズやテレビの砂嵐をイメージしたドリンクなど、昭和を知る世代には懐かしく、若い世代には新鮮なメニューが登場。駄菓子付きのフォトジェニックな体験で、世代を超えた会話が弾む特別な100日間をお届けします。


松山千春デビュー50周年!U-NEXTが配信パートナーに就任、伝説の周年ライブ3作品を独占配信開始

松山千春デビュー50周年!U-NEXTが配信パートナーに就任、伝説の周年ライブ3作品を独占配信開始

デビュー50周年を迎えた松山千春の配信パートナーにU-NEXTが就任。第1弾として30・35・40周年の記念ライブ3作品とMV11本を独占配信。さらに2月には自伝小説の実写映画『旅立ち~足寄より~』の配信も決定。半世紀にわたるキャリアを凝縮した特別企画で、アーティストの信念と歌声に迫ります。


国民的アニメ『サザエさん』が台湾で放送開始!55周年の節目に初の海外本格進出、家族の笑顔を世界へ

国民的アニメ『サザエさん』が台湾で放送開始!55周年の節目に初の海外本格進出、家族の笑顔を世界へ

日本で放送開始55周年を迎え、「最も長く放映されているテレビアニメ番組」としてギネス記録を持つ『サザエさん』が、台湾での放送をスタート。現地の大手代理店MUSE社を通じて、台湾のお茶の間にも磯野家の日常が届けられます。本記事では、台湾版の豪華キャストや現地での期待の声、歴史的な背景を詳しく紹介します。