腰の回転可動に至っては、腰にラバー素材まで使用しているというのに、ちょっと捻るのが精一杯で、ここ、あきらかに20年前のベストメカコレクション版よりも退化している始末。
肘関節。何もわざわざABS樹脂関節を黒で統一しなくても……
各関節の可動も、20年前のベストメカコレクション版よりは深く曲げたりが出来るとはいえ、肘などはいざ曲げてみると、黒いABS樹脂フレームが丸見えで、興がそがれること山のごとし。
スーパーロボットがムーバル・フレームを内蔵しているわけがないのだから、ただでさえ事実上、塗装不可能なABS素材なのだから、せめて関節単位で、腕や肘の色に合わせて成型できなかったのか、バンダイ?
成型色とシール補完で、顔の再現はさすがに完璧。しかしフェイスガードが……
加えてこのキット「1975年のキットと同じ、ゴッドバードへの変形ギミック」と「1981年のキットと同じく、フルアクションでポージングを」を両立させようとして、ものの見事に「二兎を追う者は一兎をも得ず」を体現してしまっている。
まずは、ゴッドバードへの変形時に閉まるべきフェイスガードが、ライディーン時に安定しなくて落ち着かない。オープン時のロック機構がどこにもないからであり、かといってゴッドバードへ変形させればしっかりフェイスガードが閉まるのかと思えば、こちらでも、ピッタリ塞がらずに隙間が出来る体たらく。
オプションパーツ一覧
付属してくるオプションは、基本的にゴッドブロックとゴッドゴーガン用のオプションと、ゴッドバード変形用のオプションの2方向性。
ここまで、あえて黙ってきたが、ベストメカコレクション版と同じくゴッドゴーガン構え用手首が専用でオプションで付いてくるが、これも拳も、手首は全部なぜかラバー素材パーツ。
ここでラバー素材を使う意味が、まったく分からない、理解できない、理解したくない。
オマケに。ゴッドバード形態での、鷹の爪みたいなハンドパーツも、ついでにラバー素材。
なんだろう。バンダイはこの時期、ABS樹脂納入業者と、ラバー素材原料納入業者に、社長の親族でも人質にとられていたのだろうか?
そうでも考えないと、手首にラバー素材を使う意味が、万に一つも思いつかない。
大河さん、そろそろこの辺りで、このキットに何も求めてはいけないのではないかと思い始めてきた。
しかし、現実はその絶望すら凌駕して襲い来る。
ゴッドバード。ゴッド……バード……。
もうヤケだから書いてしまえば、多分これ、ウィングのパーツは大河さんによる付け間違えなんだと思う。
いくらなんでも、ゴッドバードのウィングが、こんな(文字通りの)斜め上に跳ね上がってるわけがないし、多分、パーツを左右で付け間違えるとか、そういうケアレスミスを起こしてしまったんだと思う。
そうとでも思わなければ、これはさすがに納得がいかない。
でも。
ぶっちゃけ、製作ミスは認めるが、それを差し引いてなお、この、なんというか「くつろいで寝そべっているだけのライディーン」を、ゴッドバードとは呼べない大河さんの気持ちも分かって欲しい。
ウィングはともかくとしても、この脚の変形。
変形というか、そもそもゴッドバードへの下半身の変形自体が、普通のロボットの脚の可動範囲の領域のはず。
なのに、歴代の超合金やプラモデルは、それなりにちゃんと脚が曲がって伸びたのに、このゴッドバードの、緩い脚の角度かかもしだすリラックス感はなんだろう?
股関節も膝も、中途半端な曲がり感で、「仕事に疲れたおっさんが、家で畳の上でくつろいでる」的なポーズしかとれない技術力は、とてもじゃないが1985年の時点で、1/100 Zガンダムを完全変形させたメーカーの商品とは思えない。
この「ゴッドバード的ななにか」は、もはやスーパーロボットでも神秘の力でもなんでもない、サンエックスのゆるキャラみたいにしか見えないのだ。
正面から見たゴッドバード(になるはずだった代物)
膝はともかく、腿があがらないのは、これ確実にラバー素材のブルマのせいだよね?
しかも、正面から見ると、フェイスガードがしっかり閉まりきっていないのがアリアリと分かってしまうという……。
……うん。あらためて、あえて言おう。
このキット、失敗作だよね?
机上の空論どころじゃない、夢想家の社会構造改革みたいなものを、本気で国家がやっちゃった成れの果てみたいな。空前絶後の失敗作プラモデルだよね?
なんか、かっこよさげなポーズ
オマケにこれ、関節の保持力がゼロ(特に肩)に近いので、腕を上げるなら上げる、曲げるなら曲げるで、重心とテンションを微妙にコントロールしながら大胆にポージングしないと、すぐに腕も脚もだらんとたれさがってしまうという「HGABの悪夢再び」間違いなしなキットなので、イメージ再現画像では、極端なポーズをさせた上で、背景でハッタリを効かせて誤魔化すしかないという。
ゴッドゴーガン発射!
ゴッドゴーガンなんてね、これ、写真を撮る瞬間だけなんとか矢が乗っかってるけど、シャッターを切ったコンマ数秒後には、撮影ステージの下に零れ落ちてましたからね。
大河さん「ひょっとすると、拳がラバー素材なのは、ゴーガンの矢をラバーの摩擦で保持するためかも!」って期待もしたんですけど、そんな素敵な物理学は、このガッカリ模型上では発生しません、はい。
20年の時を経て、揃い立つ2体のライディーンキット
かたや「今から37年前の、ポリキャップすらも使われていない、白一色のキットだが、関節、ギミック、プロポーション的には最良のプラモデル(300円)」かたや「多色成型、ABS樹脂やラバー素材など、新素材をこれでもかと注ぎ込み、スナップフィットでフルアクション、多色成型で塗装要らず、オマケにゴッドバードへも変形する、究極のライディーンキットを目指した結果、底なし沼のような地獄絵図が待っていて、抱いた願いは何一つかなえられないトンデモなプラモデル(2000円)」
「私はライディーンのファンだ」という方がいたら、どちらを選びますか?
少なくとも大河さんは「ABS樹脂フレームとラバー素材カバーの組み合わせには、人を不幸にする呪いがかけられている」としか、学べませんでした……。
市川大河公式サイト