『ガンプラり歩き旅』その65 ~番外編 ゆけ! ゆけ! 勇者! ライディーン!~

『ガンプラり歩き旅』その65 ~番外編 ゆけ! ゆけ! 勇者! ライディーン!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は『ガンダム』の富野由悠季監督のロボットアニメ初監督作品『勇者ライディーン』(1975年)の、バンダイ製の当時のプラモデルや近年のキットを紹介していきます!


ライディーン! ライディーン! たちまち溢れる神秘の力!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回の番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『勇者ライディーン』(1975年)の作品紹介をするので、そこで再現画像に登場させる、ライディーンのプラモデルを紹介していきます!


勇者ライディーン ベストメカコレクションNo31 1/400 1981年10月 300円

ガンプラブーム真っただ中での、スーパーロボットの凱旋キット化パッケージ

今もなお日本の模型業界のトップを張るガンプラが、最初はバンダイのベストメカコレクションという「アニメや特撮に登場するロボットやメカを、300円で模型化する」商品枠の中から始まったことに関しては、この連載の第一回(もう1年以上前なんだなぁ)の「『ガンプラり歩き旅』その001~アニメの中から登場した、初めてのガンダム!~」(リンク https://middle-edge.jp/articles/IHaIN )でも書き記した

ベストメカコレクションは、記念すべき第1作目が『電子戦隊デンジマン』(1980年)のいわゆる「戦隊ロボ」のダイデンジン(1980年6月 300円)だったわけだが、ガンプラ第1号、1/144 ガンダムは、ベストメカコレクションではNo.4に当たっている。
その後、ベストメカコレクションでは、『ウルトラマン80』(1980年)の戦闘機等も出しながら、どんどんガンプラ一色に染まっていくことになるのだが、ガンダムの劇場版『機動戦士ガンダムⅡ 哀・戦士編』(1981年)の公開が終わったころに、いきなりベストメカコレクションからNo.31として「勇者ライディーン」が発売された時は、誰もが驚くとともに、バンダイによるシリーズの路線の幅のアピールに舌を巻いた。

直前期までベストメカコレクションは、ビグ・ザム、ビグロ、グラブロ、エルメスと、『ガンダム』の1/550スケールのモビル・アーマーがラインナップを重ねていただけに、エルメスと同時期に店頭に並んだライディーンのインパクトは大きかった。

完成したベストメカコレクション ライディーン

確かにライディーンは、もともと模型化版権をバンダイが所持しており、本編放映当時も、プラモデル化されてはいた。しかし、その当時のライディーンプラモは、メインギミックはゴッドバードへの変形であり、関節可動も変形にともない脚部が折れ曲がるというだけのもので、ゴッドバード形態がゼンマイギミックで走行するという、レトロそのものの玩具仕様であった。

それから6年が経過して、バンダイが自社の版権を有効利用しようとしたのか、それともアオシマによる『無敵超人ザンボット3』(1977年)『無敵鋼人ダイターン3』(1978年)商品化のヒットを脇で見て、自社のガンダム以外で「過去の富野由悠季監督作品のロボットは売れる」と判断したからなのか。
ガンプラブームの真ん中で、300円サイズで再生されたライディーンは、ゴッドバードにこそ変形しないものの、関節可動とプロポーションを両立された「ガンプラ的ライディーン」へと、劇的に変化していた。

組立説明書 そもそもこのフォーマット自体が「ガンプラの」ではなく「ベストメカコレクションの」であったことがわかる

多少デザイン論的なことを差し挟めば、70年代からのスーパーロボットのデザイン歴史は、『マジンガーZ』(1972年)からの「手足が円柱」というダイナミックプロ特有のデザインから始まって、その後『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)以降は「手足が箱型」が主流になるようになって、ダイターン3やガンダムもそのカテゴリに入る。

完成したライディーンのサイドビュー

なので、ガンプラはもとより、当時の主流だった戦隊ロボもアニメロボも箱型が基本で、バンダイはそういった概念を可動タイプの模型化するノウハウは得ていたが、スーパーロボットの基礎である「手足円柱型」に関しては、しっかりとした立体化方程式を持っていなかったのだ。
そこへきての、いきなりの「手足円柱型」のライディーンの模型化であるが、これがいきなり完璧と言い切れる出来栄えであった。

完成したライディーンのバックビュー

アニメ版のライディーンのデザインは、スポンサーだった旧ポピー(後にバンダイに合併吸収)から提示された物を、作画監督を務める安彦良和氏がクリンナップしたものだが、このベストメカコレクション版は、安彦デザイン特有の、やや末端肥大な末広がりの手足を忠実に再現し、なおかつクリアランス設計の難しい肘や膝に、この時期としては最大級の可動領域を確保しつつ、アニメでは二次元の嘘で誤魔化すしかなかった肩まで、上げられるように設計されている。

デザイン上、破綻なく曲がる肘が見事に設計されている

なおかつ、腰まで回転可動させた辺りは、さすがガンプラブームピークで、脂が乗り切ったバンダイならではという出色の出来であった。

デザインと完成形からは想像できないぐらいによく動く

ガンプラがバンダイにもたらした自信、というものは大きくて、この時期「ゴッドバードに変形するわけでもないライディーン」を商品化するという企画側の挑戦状を、設計の現場が見事に結実させてアンサーとしたわけである。

ライディーンの顔のアップ。複雑な面取り構成を必要最小限のパーツで正確に再現している

ベストメカコレクション自体は、この後何事もなかったかのように、1/144 旧ザクのガンダム路線へ戻った後、およそ一年の月日を経て1982年12月、それこそスーパーロボットの温故知新の原点、マジンガーZの1/144キットを、No.52で発売したのだが、むしろマジンガーZはシンプル過ぎたのか、多少腕の長さが悪目立ちするプロポーションになってしまった。

ライディーンのオプション一覧

先ほど「ゴッドバードに変形するギミックを捨てた」と称したベストメカコレクション版ライディーンだが、むしろ「ゴッドバード変形以外のギミック」に関しては、放映当時版模型も、大ヒットしたポピーの超合金もオミットしたギミックを数々用意している。
まずはパッケージにも描かれているゴッドゴーガン。この弓矢の発射ポーズを再現するために、当時のガンプラではまだまだ取り入れられることは殆どなかった「差し替え手首」が左右一つずつ導入されているのが驚きだ。

右手のゴッドブロックこそ、ゴッドブレイカーとゴッドブーメランの、三択組立固定選択式だが(むしろ、その三つの中から選択できる仕様というのも画期的だった)、ゴッドゴーガンの矢は別パーツで用意されていて、左手の弓の方は可動式で、収納状態と展開状態に自在に開閉できる。

弓部分が開閉ギミック付きの左腕

ポリキャップが使用されていないとはいえ、この精度、ギミック、プレイバリューのライディーンプラモが、この時期ベストメカコレクションで300円で発売されていたこと自体が、バンダイがいかに「ガンプラだけのメーカーではないか」を証明している。
筆者は今回、『勇者ライディーン』のイメージ再現画像において、主役のライディーンは後述するメカニックコレクション版を使ってしまったが、純粋にキットのクオリティとバランスで考えるならば、こちらのベストメカコレクション版を、徹底的に細部塗装して使うべきだったかもしれないと悔やんでいる。

ゴッドゴーガンポーズもびしっと決まる、まさにベストメカなライディーン

このキットは、現代でもたまに再販がかかるので、ライディーンがお好きな人であればぜひに、とお勧めしたい出来である。

ライディーン メカコレクション 2002年6月 1944円

「20年前の感動を、最新技術で!」とばかりに、ベストメカコレクション版のパッケージを忠実に模倣したデザイン。気概は認めるが……

えっとですね……。
いきなりここから口調が変わるのもなんなんですけどもですね。
大河さん、シミルボンとミドルエッジの連載のために、掛け値なくここ一年半で200体のアニメメカロボプラモを作ったっていう、自慢じゃないけど「やっちまった」感があるわけですが……。
そうするとですね。古いものだと70年代のアンティークプラモデルから、新しいものだと最新のバンダイの究極系キットまで、食玩からプレミアキットまで、まぁ隅から隅まで毎日プラモを作り続けてきたわけですよ。
そうなるとね、もちろん中には「こいつは傑作だ!」「これは隠れた名作キットだ!」って惚れ惚れするプラモデルに出くわすこともあるんですが、一方で「これは……。メーカーの気合も頑張りも新境地開拓への意欲も分かるんだけど……。コレは客から金とって売ったらアカンやつや……」としかリアクション出来ない、超地雷系のキットとも出くわしてしまうわけです。

完成した、メカニックコレクションライディーン

そんな「超地雷系キット」。これまでの連載に登場したキットでいうなら、1/144 RGガンダム、これでしょう。組み立てるのがめんどいわ、上手くパーツがはまらないわ、完成したそばからぽろぽろパーツが零れ落ちるわ、写真撮るためにポーズ付けてるとぽろぽろパーツが零れ落ちるわ、本当にね、もう一度アレを組み立てろと言われたら、僕は1万円は要求しますね(せこいがキット代は別途計算で)。
だけどね。

よくあるネットのネタで「ふっふっふ。奴などは我々から見れば、まだまだ雑魚の一人よ」っていうのがあるけど、それじゃないけど、上には上がいてね
どうせこの連載では紹介しないからここで書くけど、バンダイが一時期「気の迷い」でシリーズ化していた、HGABシリーズ。『聖戦士ダンバイン』(1983年)のオーラバトラーをHGでキット化するシリーズね。アレね「はまらない。可動しない。可動させると次の瞬間割れる」ABS樹脂製関節と、今でも謎の「曲げさせない、組ませない、表面処理させない、塗装させない」ラバー素材パーツのおかげでね、どれもこれも糞キットなんですよ。

まだね、シリーズ後半で、慌てて仕様改善したビアレスなんてまだマシな方でね。
シリーズ序盤で出された、おそらくダンバインファンなら待ち焦がれていただろうズワァースなんてね。
「似てない」「立たない」「関節が曲がらない」「立たない」「シールが貼れない」「立たない」「ラバー素材の手なので剣が握れない」「曲げたはずの関節が戻ってくる」「立たない」っていう、一体バンダイ社内で何が起きたのか。新手の内部テロじゃないのかっていうぐらい、哀しい出来になっちゃったわけですよ。

ライディーンのサイドビューとバックビュー。パーツ色分けとシール補完で、ほぼ塗装は不要な仕様

例えば、ABS樹脂製部品のデメリットっていうのは、筆者はこれまでもガンプラのHGUC解説なんかで何度も訴えてきたんだけれども、一時期バンダイ内部には、カルト宗教なみの「ABS至上主義教徒」が実権を握っていた時期があるんじゃないかって疑いもあるぐらいで、その「ABS樹脂のダメなところを凝縮して出来た骨格フレーム」に「過去、パトレイバーシリーズとかHGABとかで、徹底的に不評しか買ってこなかったはずのラバー素材パーツ」を被せて、つまりHGABのダメなところだけ特攻野郎Aチーム化させて、スーパーロボットシリーズの決定版模型を作ろうとして、致命的地雷版模型が仕上がったのが、今回紹介するメカニックコレクションのライディーン(シリーズの他のは知らん)なのである。

ポーズつけてる瞬間「だけ」を見ているとカッコいいように見えるが、騙されてはいけない

このキット。
先ほども書いたが、志だけは高い。
バンダイのガンプラの下地を作り上げたベストメカコレクションを、現代の最新の技術とマテリアルで、20年の歳月を経た最新版で市場に送り出そうという気概も買おう(まぁ半分以上は、スパロボで70年代のロボットを知ったユーザー向けだったのだろうが)。
その気概を丸々現したかのように、このキットのパッケージは、20年前のベストメカコレクション版ライディーンのパッケージを、忠実にリメイクしている(アニメ研究家の氷川竜介氏等も、パッケージへの参考意見を述べたらしい)。
ところが、そこで用いる「最新の技術とマテリアル」が、こともあろうにABS樹脂フレームとラバー素材という、最悪の地雷新技術到来の地獄絵図商品爆誕への一本道だったのである。

上半身。油断していると、すぐにフェイスガードパーツが狭まってきて、ゴッドバードに変形しようとしてくるので気が気で無い

とりあえず、罵詈雑言だけ並べたてても仕方がないので、具体的な批判に入りたいと思う。
まずこのキット。内部フレームがABS樹脂製で、ネジ止めで組み立てていくのだが、ネジ系がネジ穴にあってない上に、上半身の腕保持フレームなんて、2か所同時にネジ止めしないと、片方のネジがポロリとこぼれる、の連続で、ストレスが溜まること半端じゃない。
しかも、その上半身腕保持フレームが、どんなにギッチギチにネジをしめようとも、肝心の肩のボールジョイント関節がユルユルで、結果保持力がゼロに等しい。

開脚角度はまぁこんなものか(これだったら腰パーツがプラのままでも問題なかったんじゃ……)

脚の前後可動。膝はまぁ、ゴッドバードに変形するし……

下半身の方は、パンツというかブルマみたいなの(色も紺だし)がラバー素材なのだが、それで脚の可動範囲が向上したかといえば、開脚、前後ともに大したサプライズはないわけで……。逆に言えばラバーってゴムのことだから、脚を前に踏み出して、ラバーパンツのおかげで大きく足を動かせたとしても、ゴムの弾力で放っておくと足が元の位置に戻されてしまうとかが普通に起きてしまうレベル。これなら別に、腰パーツプラのままでもいいじゃんとしか言えない。

今回のライディーンの腰の回転可動。精一杯でここまで……だと?

腰の回転可動に至っては、腰にラバー素材まで使用しているというのに、ちょっと捻るのが精一杯で、ここ、あきらかに20年前のベストメカコレクション版よりも退化している始末。

肘関節。何もわざわざABS樹脂関節を黒で統一しなくても……

各関節の可動も、20年前のベストメカコレクション版よりは深く曲げたりが出来るとはいえ、肘などはいざ曲げてみると、黒いABS樹脂フレームが丸見えで、興がそがれること山のごとし。
スーパーロボットがムーバル・フレームを内蔵しているわけがないのだから、ただでさえ事実上、塗装不可能なABS素材なのだから、せめて関節単位で、腕や肘の色に合わせて成型できなかったのか、バンダイ?

成型色とシール補完で、顔の再現はさすがに完璧。しかしフェイスガードが……

加えてこのキット「1975年のキットと同じ、ゴッドバードへの変形ギミック」と「1981年のキットと同じく、フルアクションでポージングを」を両立させようとして、ものの見事に「二兎を追う者は一兎をも得ず」を体現してしまっている。
まずは、ゴッドバードへの変形時に閉まるべきフェイスガードが、ライディーン時に安定しなくて落ち着かない。オープン時のロック機構がどこにもないからであり、かといってゴッドバードへ変形させればしっかりフェイスガードが閉まるのかと思えば、こちらでも、ピッタリ塞がらずに隙間が出来る体たらく。

オプションパーツ一覧

付属してくるオプションは、基本的にゴッドブロックとゴッドゴーガン用のオプションと、ゴッドバード変形用のオプションの2方向性。
ここまで、あえて黙ってきたが、ベストメカコレクション版と同じくゴッドゴーガン構え用手首が専用でオプションで付いてくるが、これも拳も、手首は全部なぜかラバー素材パーツ。
ここでラバー素材を使う意味が、まったく分からない、理解できない、理解したくない。

オマケに。ゴッドバード形態での、鷹の爪みたいなハンドパーツも、ついでにラバー素材。
なんだろう。バンダイはこの時期、ABS樹脂納入業者と、ラバー素材原料納入業者に、社長の親族でも人質にとられていたのだろうか?
そうでも考えないと、手首にラバー素材を使う意味が、万に一つも思いつかない。
大河さん、そろそろこの辺りで、このキットに何も求めてはいけないのではないかと思い始めてきた。
しかし、現実はその絶望すら凌駕して襲い来る。

ゴッドバード。ゴッド……バード……。

もうヤケだから書いてしまえば、多分これ、ウィングのパーツは大河さんによる付け間違えなんだと思う。
いくらなんでも、ゴッドバードのウィングが、こんな(文字通りの)斜め上に跳ね上がってるわけがないし、多分、パーツを左右で付け間違えるとか、そういうケアレスミスを起こしてしまったんだと思う。
そうとでも思わなければ、これはさすがに納得がいかない。

でも。
ぶっちゃけ、製作ミスは認めるが、それを差し引いてなお、この、なんというか「くつろいで寝そべっているだけのライディーン」を、ゴッドバードとは呼べない大河さんの気持ちも分かって欲しい。
ウィングはともかくとしても、この脚の変形。
変形というか、そもそもゴッドバードへの下半身の変形自体が、普通のロボットの脚の可動範囲の領域のはず。
なのに、歴代の超合金やプラモデルは、それなりにちゃんと脚が曲がって伸びたのに、このゴッドバードの、緩い脚の角度かかもしだすリラックス感はなんだろう?
股関節も膝も、中途半端な曲がり感で、「仕事に疲れたおっさんが、家で畳の上でくつろいでる」的なポーズしかとれない技術力は、とてもじゃないが1985年の時点で、1/100 Zガンダムを完全変形させたメーカーの商品とは思えない。
この「ゴッドバード的ななにか」は、もはやスーパーロボットでも神秘の力でもなんでもない、サンエックスのゆるキャラみたいにしか見えないのだ。

正面から見たゴッドバード(になるはずだった代物)

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