黒澤浩樹  圧倒的な空手家  驚異の下段回し蹴り 格闘マシン  ニホンオオカミ 反骨の戦士

黒澤浩樹 圧倒的な空手家 驚異の下段回し蹴り 格闘マシン ニホンオオカミ 反骨の戦士

他の一切を拒否し「最強」を目指すことのみに生きた男。 敵の脚と心をへし折る下段回し蹴り(ローキック)。 ルール化された極真空手の試合においても、ポイント稼ぎや体重判定、試割判定で無視し、倒すこと、大きなダメージを与えることを目指す姿は、まさに孤高のニホンオオカミ。 また指が脱臼し,皮だけでぶら下がっている状態になったり、膝の靱帯が断裂しグラグラになっても、絶対に自ら戦いをやめない格闘マシン。 総合格闘技やキックボクシング(K-1)への挑戦し戦い続けた反骨の戦士。 黒澤浩紀は、最期まで退くことを知らず死んでいった。


ヴァイオリン & ヴァイオレンス

黒澤浩樹は、1962年9月6日、東京都品川区豊町に生まれ た。
父親は、東京大学経済学部を卒業後、埼玉銀行を経て富士通の役員になり、母親は、共立薬科大を卒業し薬剤師となった人物で、2人で俳句を詠み、同人誌の編集にも携わるような夫婦だった。
子供の頃の黒澤浩樹は体が弱く、ひどいときは学校に月に2日しかいけないこともあった。
しかし小学2年生のときに5年生とケンカするほど負けず嫌いで勝気だった。
またヴァイオリンを習っていたが、他の子に負けるのが嫌で毎日、練習を欠かさなかった。
これは極真空手の入門するまで続けられた。
ヴァイオリンのレッスンの帰りには悪い仲間とゲームセンターにいった。
タバコやシンナーをする仲間もいたが、黒澤浩樹はそういうことはしなかった。
しかしよくケンカをして、警察に連れて行かれることもあった。

小学4年生のとき、ブルース・リーの映画「ドラゴン危機一髪」を観て衝撃を受ける。
モップの柄でヌンチャクを自作し学校へ持って行った。
サイやトンファー、模造刀などを買い、それを持った友人や兄とヌンチャクで戦った。

中学になると「仁義なき戦い」も黒澤浩樹のバイブルとなった。
殺るか殺られるか。
そんなギリギリの状態で生きる任侠の男に憧れた。

俺は極真だ

ある日、無料チケットを持った学校の友人に誘われ、映画「地上最強のカラテ」を観た黒澤浩樹は、スクリーンにくぎづけになってしまった。
鍛え上げられた肉体が氷柱を叩き割り、血まみれになってのド突き合う。
それはブルース・リーのように華麗ではなかったが、気持ちを折り合うようなド突き合いで「仁義なき戦い」にはないストレートさがあった。
このときから黒澤浩樹の頭の中から「極真」の2文字は離れることはなかった。

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黒澤浩樹は、すぐにマンガ「空手バカ一代」を全巻揃え読み漁った。
大山倍達や弟子の豪快なエピソードがたまらなかった。
日に日に思いは高まり、両親に池袋の極真空手の本部道場に通いたいと頼んだ。
家がある品川から池袋は遠い上、当時は治安が悪い地域だった。
両親はもっと近くの道場をすすめたが、黒澤浩樹は大山倍達がいる道場でなければ意味がないと主張した。
「それじゃダメなんだ。
もしケンカになったときに相手が極真をやっていたら俺は負けてしまう」
次の休日、父親に連れられ、山手線に乗って池袋駅でおり、極真会館を訪ねた。
門の前には内弟子が立っていた。
その威圧感に圧倒された。
入り口には大山倍達の大きな写真が飾ってあった。
(うわーっ、もし大山倍達が出てきたらどうしよう。
ひれ伏すしかない)
受付で入会の説明を受け書類をもらって帰っただけだったが、鼓動が高まり緊張しっ放しだった。

翌日の月曜日、母親と共に再び池袋に向かった
道中、黒澤浩樹は、ずっとため息をついていた。
怖かった。
しかし極真には入門しなければならない。
池袋駅に着く前に黒澤浩樹は母親にポツリといった。
「もしケガしても、絶対、止めろなんていわないでね」
道場では、まず
「押忍!」
という挨拶の仕方を教わった。
次の日、学校にいったときはもう戦闘モード。
「俺は極真だ」
そんな気持ちだった。

結局、黒澤浩樹は本部道場に週2~3回、4年間通うことになるが、その間、緊張の連続だった。
大山倍達は
「君たち、強くなりなさい。
そのためには学校と家と道場。
この3つだけを往復していればいい。
そうしたら強くなれるから」
といった。
黒澤浩樹の生活の中心は学校ではなく道場だった。
17時に学校から帰るとそのまま道着を持って池袋へ。
19時、稽古開始。
準備体操。
基本稽古。
移動稽古。
そして21時頃から組手が始まる。
組手、つまりスパーリングは嬉しくもあり、怖かった。
試合のルールと違い、髪の毛を引っ張られ膝蹴りを入れられることもあるような荒く激しいもので、ただひたすら殴り殴られ、蹴り蹴られる。
痛くても我慢する。
「痛い」
なんて口が裂けてもいってはいけない。
たとえケガをしていても隠して戦う。
それが強くなる道だった。
ケガ人や辞めていく者が続出した。
去る者は追わず、来る者は拒まない硬派な道場だった。
組手が終わると整列し、正拳突きと前蹴りを行い、道場訓を読んで稽古は終了した。

高校1年生からウエイトトレーニング開始

ある日、道場で黒帯の先輩が後輩に話しているのが聞こえた。
「強くなりたかったらボディビルやれ」
その日の帰り、黒澤浩樹は五反田のボディビルジムへ立ち寄った。
そして次の日には入会した。
まだ高校1年生、緑帯の黒澤浩樹だった。
やがてベンチプレスが95㎏挙がるようになると黒帯の先輩と組手をしても打ち合えるようになった。

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