【空手家】八巻建志(前編) ~それはふざけた兄が入れたソリコミから始まった~

【空手家】八巻建志(前編) ~それはふざけた兄が入れたソリコミから始まった~

その肉体、その身体能力、その空手は圧倒的。極真空手の全日本大会と世界大会で優勝。100人組手という荒行も達成した。しかしその格闘技を始めたきっかけは、兄がふざけて入れた剃り込み、そしてイジメに対する報復だった。


渡辺茂

世界大会終了後、八巻建志は肉体改造を決意し川崎のスポーツジムに通い始めた。
そこで出会ったのが渡辺茂インストラクターだった。
「無駄な肉がつき過ぎているな。
脂肪なんて無意味だよ。
重りをつけているのと同じことだ。
その身体では勝てない。
筋肉で体重を増やしていかないと本当に強くなれないよ」
渡辺茂は現役のボディビルダーで、過去には極真空手の選手でもあった。
肉体改造は脂肪を落とすことから始まった。
食事から徹底して油分を抜かれた。
肉は、豚・牛肉は油が多いので鶏肉にささみを蒸したもの。
サラダ。
魚。
飲料は水か牛乳。
調味料は一切無し。
黄身を抜いた卵を1日40個。
どうしてもトンカツを食べないといけないときは衣を剥がして食べた。
細心の注意を払った食事によって、半年後には体重は110kgから95kgに絞られた。
そこから筋肉をつけて102kg~103kgを維持。
ウエイトトレーニングも渡辺の指導のもとで徹底して行われた。
「絶対に挙がる。
もっと集中しろ。
もっと筋肉を意識するんだ」
こうして確実に筋力アップしていった。

パニッシャー

ドルフ・ラングレン

1988年5月、ハリウッドからドルフ・ラングレン主演「パニッシャー」への出演依頼があり、7月にはロケ地のオーストラリアへ旅立った。
ドルフ・ラングレンは、身長198cm体重100kg。
極真空手の世界大会経験者で、あの中村誠を追い詰めたほどの実力者である。
八巻建志は、撮影の合間は稽古に充てた。
街のジムでトレーニングをし極真空手シドニー支部に出稽古した。
外国だけあって身長180~190cm級の道場生がたくさんいる。
少々のことでは壊れないだろうと組手はフルパワーで飛ばした。
相手は次から次へ倒れていった。
しかし活きがいいかわりはいくらでもいた。
怒声を上げて突進してくる相手を遠慮なくぶっ飛ばした。
週1回の出稽古だったが、稽古の参加者が1人2人と減っていき、1ヵ月後には全員が来なくなった。
まさにパニッシャー(処罰する者、こらしめる者)だった。

マサカリキック

帰国したときは、すでに極真空手第20回全日本大会まであと1ヶ月だった。
大急ぎで調整を始めた。
ボディの打ち合いの稽古を行っていたとき、この稽古は打たれ強さを養う目的で行われ、2人が互いが交互に拳でボディに叩き込み合うというものだが、八巻建志の攻撃を恐れたパートナーが肘を落としてしまった。
左拳がその肘に当たり親指が複雑骨折。
蹴りと右手1本で戦うしかなくなった。
11月20日、 東京の両国国技館で行われた極真空手第20回全日本大会で、八巻建志は1回戦から準々決勝までの5試合をすべて延長無しの判定勝ち。
内心、
「この大会はもらった」
と思った。
準決勝の相手は石井豊選手。
過去に大きな実績がないノーマーク選手だったが、独特の跳ね上げるような回し蹴り、マサカリキックを振るって勝ち上がっていた。
石井豊は、本部道場でコツコツと稽古を積み上げ、拳は重くマサカリキックは速く鋭く、ディフェンスもうまく、打たれ強かった。
試合は延長2回の末体重判定で石井豊が勝った。
八巻建志はケガをした自分と格下の相手に油断した自分が嫌になった。
落ち込んで、思い詰めて、名前が悪いんだろうと「健二」を「健志」に変えた。
また再び周囲と距離を置くようになった。
試合で当たりそうな先輩や同輩と親しくすると自分のこの甘い心では必ず隙ができる。
一緒に酒を飲み談笑するのは引退してからで十分。
今は勝負に専念しようと決意した。
「次は優勝しかないと私は燃えた」
稽古は厳しくなりガンダムも日夜熱を帯びた。

ベンチプレス230kg 、スクワット300kg 背筋力205kg 100m12秒フラット

25歳の八巻建志の肉体は、パワートレーニングで筋肉の塊と化し、しかも体のキレ、スピードは増した。

身長186.5cm
体重104kg
体脂肪率16.5%
ベンチプレス230kg
ハーフスクワット300kg
背筋力205kg
100m走12秒フラット
胸囲125cm
前腕囲
右32.4cm
左31.9cm
上腕囲(伸展)
右42.5cm
左44.3cm
大腿囲
右71cm
左72cm
下腿囲
右47cm
左46cm
握力
右73kg
左71kg
垂直跳62cm
立位前屈27cm
肺活量6200cc

「渡辺さんに指導してもらっていたジムの最も重いダンベルが40kg。
パワーアップするにつれ物足りないと感じるようになったが、ちょうどその頃、渡辺さんがジムを移るという話になり、渡辺さんがいなくては意味がないから私もそのジムを離れた。
そして東京中を駆け回り重いダンベルのあるジムを探し出した。
60kgのダンベル・・・
おそらく日本で1番重いものだと思うが・・・
私にとって捜し求めていた恋人のようなものだった」

狂気の全日本

極真空手第21回全日本大会の1ヶ月前、稽古を終えて夜帰宅する途中、突然、背筋が波打ちブルブル震えはじめ、今まで経験したことのない猛烈な痛みが走った。
八巻建志は立っていられなくなり公園のベンチに倒れこみ、そのまま2時間動けなかった。
オーバーワークで筋肉が悲鳴をあげたのかもしれないが、何か得体の知れない力が湧き上がってきているような感じがしてならなかった。
12月23~24日、東京両国国技館で極真空手第21回全日本大会が行われた。
八巻建志は、1回戦で左足甲を相手の膝にぶつけ亀裂骨折。
3回戦、闘将:木元正資の突貫攻撃をがっちり受け止め下段で止めて正拳で押し本戦判定勝ち。
4回戦、小柄なテクニシャン:山根誠治をじっくり追い詰め右下段回し蹴りで1本勝ち。

準決勝の相手は滝田巌だった。
身長177㎝、体重88kg。
ゴツゴツした筋肉質の身体にがっちり固めたパンチパーマ。
「目標は世界チャンピオン。
八巻選手?
まったく問題ありません。
単なる通過点です」
(滝田巌)
「私に喧嘩を売るだけあって、さすがに負けん気の強そうな顔をしていました。
睨んでやると睨み返してきました」
(八巻建志)
試合開始の太鼓がなると両者、放たれるように突進し打ち合った。
「上等じゃねえかこの野郎、ぶっ殺してやる」
八巻建志は、川崎の繁華街で喧嘩を繰り返していたころの凶暴な自分に戻り狂ったように攻撃した。
胸元へ正拳を打ち下ろし、下突きでレバーをえぐり、追い詰めて膝蹴り、下段蹴りのラッシュ。
このとき八巻建志はヨダレを垂らしながら攻撃していた。
闘志が燃え盛り、ほとんど狂気の世界にいた。
審判の旗が5本とも八巻建志に上がった。

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