ブルーノートがリリースしたレコードには番号が振られていて、初期の12インチSPレコードは「BN-1]から始まる通し番号が付けられていました。時は流れSPレコードからLPレコードとなり、やがて現在でも人気のシリーズ1500番台がスタートします。
一方、マイルス・デイヴィスはブルーノートからは10インチSPレコードでわずかに3枚しか発表していません。しかも、なんと、この当時マイルス・デイヴィスは重度のドラッグ中毒に陥っていたのです。
ドラッグ中毒のためライブもレコーディングも出来なくなっていたマイルス・デイヴィスに手を差し伸べたのは他でもないアルフレッド・ライオンでした。彼は「年に一度」のレコーディングを約束したのです。
1952年から約束は施行され、53年、54年と3枚の10インチSPレコードをリリースしたところでマイルス・デイヴィスはプレスティッジというレコード会社と契約が決まり、ブルーノートからのリリースは途切れます。
LPレコードの時代となりブルーノートの1500番台のシリーズが始まった際に、先の10インチSPレコードを2枚にまとめ1501番、1502番の番号が振られることになります。
そうです。栄光のブルーノートの1500番台はマイルス・デイヴィスの2枚のアルバムから始まるのです。
マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.1
マイルス・デイヴィス・オールスターズ Vol.2
その後大手レコード会社(コロンビア)に移ったマイルス・デイヴィスはスター街道を爆進していくのですが、アルフレッド・ライオンへの恩義を忘れてはいませんでした。恩返しをするわけですが、契約上ブルーノートからマイルス・デイヴィスのアルバムをリリースすることはできません。
そこでマイルス・デイヴィスは、サックス奏者であるキャノンボール・アダレイのアルバムに参加する形でアルバムをリリースします。
サムシン・エルス
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こうして出来上がった「サムシン・エルス」ですが、まずアルバム・ジャケットの素晴らしさに目を奪われます!文字だけだというのになんとカッコイイことでしょう。そして中身ですが、これがもう名盤そのものです。ジャズは難しい、分かりにくいという意見がありますが、このアルバムの一曲目をまず聴いてみてください。スタンダードナンバーであるあの「枯葉」です。ムードたっぷりで、難しいことは何もありません。
キャノンボール・アダレイ名義のアルバムであるにも関わらず、マイルス・デイヴィス目立っています。吹きまくっています。そして、4曲目の「ワン・フォー・ダディ・オー」の最後には「こんなもんでいいかい?アルフレッド(ライオン)」という声を残してマイルス・デイヴィス退場。キャノンボール・アダレイに花を持たせるかのように最後の曲にはマイルス・デイヴィスは参加していません。
録音終了後、ルディ・ヴァン・ゲルダーがテープを箱にしまいます。アルフレッド・ライオンはその箱に「リーダー:マイルス・デイヴィスと書き記したのだそうです。