80年代初頭を駆け抜けた伝説のバイオレンス映画、遂に復活!「狂い咲きサンダーロード」は俺たちの教科書だった!

80年代初頭を駆け抜けた伝説のバイオレンス映画、遂に復活!「狂い咲きサンダーロード」は俺たちの教科書だった!

「上等じゃないのよ、やってやろうじゃないのよ!」、「今日から、お前ら皆敵だ!」 数々の男泣きする名セリフを残し、再起不能の傷を負わされながらも、黒の戦闘服に身を包み戦いに挑んだ伝説のヒーロー「仁さん」が、遂に帰って来た!


36年ぶりに、あの雄姿がスクリーンに蘇る!

滝口アキラ

長らく逸失したと思われていた、1980年撮影当時の本編16mmネガ・フィルムが、2015年の夏に奇跡的に発見され、映画ファンからのクラウドファンディングにより資金を調達!入念なデジタル修復が行われ、更には高画質の上映用素材も作成。先日のイベント上映に続き、2016年12月10日よりついに一般再公開が実現した伝説のバイオレンス映画、それが今回紹介する「狂い咲きサンダーロード」だ!

見よ、本編タイトルシーンのカッコよさ!

狂い咲きサンダーロード 本編より

公開当時の劇場用パンフ表紙。

滝口アキラ

当時23才の石井岳龍監督が、当時ユニークな番組編成で映画マニアに知られていた、上板東映の小林支配人からの出資を受けて製作された16ミリの自主映画が、そのクオリティの高さから東映系の劇場で公開されたことは、公開当時も大きなニュースとして報道されたので、覚えておられる方も多いのでは?

撮影当時の石井監督とスタッフたち。

滝口アキラ

激しく揺れ動くカメラ、スピード感溢れるアクション!全編に流れるロック音楽は泉谷しげる、そしてパンタ&ハル!更には当時としては珍しい男同士のBL描写(しかも相手は若き日の小林稔侍!)に加え、とても自主映画とは思えない爆破・カースタントシーンの数々!

ラストの大バトルシーン撮影中のスタッフキャスト。

滝口アキラ

正に全編が見所と言えるこの映画なのだが、何といっても最大の魅力は、主人公である暴走族「魔墓狼死」の特攻隊長、仁さんのキャラクターにあると言える。

極悪集団「魔墓狼死」特攻隊長仁さん(中央)と、頼れる仲間たち。

滝口アキラ

破壊と破滅に向かって突っ走る主人公「仁さん」の姿に、何故我々男たちは時代を超えて憧れるのか?
公開から36年の歳月を経て、俺たちの前に不死鳥の様に蘇った「狂い咲きサンダーロード」とは、いったいどんな映画だったのか?今こそ振り返ってみようと思う。

ストーリー

近未来の日本。幻の町サンダーロードに集合した暴走族の頭(ヘッド)たちにより、各グループの解散が決定する。
「俺たち、愛される暴走族になろうってわけよ」そんな決定に反旗を翻し、一人反逆する凶暴な男がいた。極悪集団「魔墓狼死」の特攻隊長の仁だ。
腑抜けた決定に従うことなく、数人の仲間と襲撃・暴力を繰り返す仁たちに業を煮やした頭たちは、仁を襲撃し二度とバイクに乗れないよう、仁の右手首と片足首を切断し町に放り出した。幻覚にうなされる中、彷徨い続け辿り着いた町で、仁は二人の仲間=麻薬中毒の悪ガキ小太郎と、指名手配中の爆弾魔オッサンと出会う。二人の協力により、全身武装の戦闘マシーンとして蘇った仁は、全身を黒の戦闘服に包み再び復讐のためにサンダーロードの町へと舞い戻った。今、サンダーロードに殺戮の嵐が巻き起こる!

80年代初頭に突然出現した、2本の伝説的バイオレンス映画とは?

本作が公開されたのは、1980年の8月30日のこと。その前年の1979年12月には、同じくバイオレンス映画のレジェンドとも言える「マッドマックス」が日本で公開されている。偶然とは言え、この2本がほぼ同時期に出現したことは、何か因縁めいたものを感じさせる。

初公開時のチラシ。なんと同時上映は「聖獣学園」だった!

滝口アキラ

実は、本作の公開当時から基本設定が似ていると言われていた「マッドマックス」の日本公開よりも、本作の製作開始の方が早く、映画完成後に初めて「マッドマックス」を見たスタッフたちは、「何だ、俺たちの方が面白いじゃないか」と思ったとか。
今改めて本作を見返してみると、OPの暴走族の集会に続く仁さんたちの襲撃シーンは、むしろ1979年に公開された「ウオリアーズ」からの影響が強いと思われる。

暴走族の集会を襲撃した仁さんたち。映画「ウォリアーズ」からの影響が強い。

滝口アキラ

筆者のコレクションより。公開当時の関西地区新聞広告。

滝口アキラ

ちなみに、ここに紹介した新聞記事の画像は、筆者のスクラップブックに保存されていた、当時の貴重な資料だ。これらの記事を見て頂くだけでも、当時の熱気を感じて頂けると思う。

筆者のコレクションより。公開当時の読売新聞記事。

滝口アキラ

今見返すと、ラストに登場する黒い戦闘服姿の仁さんを、公開当時からメインに扱っており、当時から「日本版マッドマックス」として宣伝されていたために、その辺も「マッドマックス」のフォロワーとしての印象を受けやすくしていたのではないだろうか。

筆者のコレクションより。公開当時の週刊プレイボーイ記事。

滝口アキラ

若くして逝った名優、山田辰夫よ永遠に!

本作で主人公の仁さんを演じたのが、当時23才の新人俳優だった山田辰夫。惜しくも2009年に53歳の若さで急逝してしまったが、一般的には彼のキャリアの後年にレギュラー出演していたTVドラマ、「はるちゃん」での支配人役としての認知度の方が高いのではないだろうか。

若くして、惜しくもこの世を去った、名優山田辰夫。

狂い咲きサンダーロード 本編より

その役柄は多岐に渡り、暴走族からやくざ、時代劇からゴジラ映画、さらには晩年に出演した「おくりびと」や「沈まぬ太陽」のような人間ドラマまで、その演技の幅広さには実に驚かされる。

当時「劇団GAYA」に所属していた彼の、映画デビュー作だった。

狂い咲きサンダーロード 本編より

そんな彼のスクリーンデビュー作が、実はこの「狂い咲きサンダーロード」であり、とにかく「狂犬」のように暴れ周り、己の信念を貫いて決して妥協しようとしない主人公を、デビュー当時から見事に演じている。本作の主人公がこれだけ長い間愛され続けているのも、小柄な体に甲高い声、狂暴でありながらも、どこか可愛らしさを内包した彼のキャラクターがあってこそだと言えるだろう。

相手がスーパー右翼だろうが、仁さんには関係ない。「今日から、お前ら皆敵だ!」

狂い咲きサンダーロード 本編より

自分の行く先に死と破滅が待つと知りながら、それでも相手の喉笛に喰らい付いて相打ちを狙うかのような主人公「仁さん」の原動力は、いったいどこから来るのだろうか?

単なる勝利や、守るべき物のための戦いなどでは無く、自分の存在理由と真の自由のために反逆することを止めない彼の姿!
狭い籠に閉じ込められた自由より、たとえ囲まれた壁にぶち当たろうとも、外へ出て本当の自由を勝ち取ろうとする仁さんの勇姿には、男と産まれたなら絶対に感情移入せずにはいられない。

バズーカ砲にショットガン!全身殺人マシーンと化した仁さんの反撃が始まる!

狂い咲きサンダーロード 本編より

映画のラスト、サンダーロードの町を舞台に展開する、暴走族+スーパー右翼の連合軍対、仁さん達たった3人の市街戦は本作最大の見せ場だが、ここには「リオブラボー」などの西部劇やマカロニウエスタンと、片腕を奪われてからの復讐という点で、1978年日本公開の「ローリングサンダー」からの影響が強く見られる。
「スターウォーズ」や「サタデーナイト・フィーバー」などが公開された1978年を境に、次第に若者や女性向けに移行しようとする映画界の流れに反逆する様な本作の内容こそ、実は主人公の姿そのものなのではないだろうか?

派手に暴れまわるオッサンと仁さんの姿は、今見ても燃える!

狂い咲きサンダーロード 本編より

片手を奪われた男の復讐劇「ローリングサンダー」は、本作に大きな影響を与えた。

滝口アキラ

まるで、豊かでファッショナブルな80年代へと向かう時代の流れに、あえて逆行するかの様なその姿は、間違いなく70年代の東映実録路線の遺伝子だと言える。
言うなれば、60~70年代に男たちが熱狂したアクション映画の系譜、その灯を守ろうとする熱意と強い意志こそが、本作の主人公「仁さん」の怒りであり原動力だと言えるのではないだろうか。

悪ガキ小太郎と戦闘服姿の仁さん。撮影時の貴重なオフショット。

滝口アキラ

初公開から既に36年という年月が経過しようとも、スクリーンの中で吼える山田辰夫の姿は若々しいままであり、我々当時の少年たちに今でも力と勇気を与えてくれる。

最後まで走る事を止めない仁さん!その姿こそ俺たちにとっての永遠の教科書だ。

狂い咲きサンダーロード 本編より

映画のラスト、瀕死の重傷を負いながらバイクに乗って遠いどこかへと走り去って行った仁さん。最後まで風の様に自由でいようとしたその姿は、きっといつまでも我々の胸に生き続けるに違いない。今回久々に劇場で見返して、そんな想いで胸が一杯になった。

驚くほど綺麗にレストアされた本作のブルーレイは、現在絶賛発売中!

滝口アキラ

本作「狂い咲きサンダーロード」は、既にブルーレイが発売されているが、12月10日(土曜日)よりシネマート新宿において、2週間限定レイトショー公開されているので、未見の方も当時観た方も、是非この機会に劇場に足を運んで、仁さんの不屈の雄姿をその眼に焼き付けて頂きたいと思う。

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