「ハギノカムイオー」。史上最高額(当時)で落札された超スターホースを振り返る!

「ハギノカムイオー」。史上最高額(当時)で落札された超スターホースを振り返る!

「高額馬」「黄金の馬」「華麗なる一族」と呼ばれ、人間のさまざまな思いとともに、ターフを駆け抜けた「ハギノカムイオー」。そのレースは、華やかなものばかりではなかったのです。 人間社会に鮮烈なデビューをした、サラブレッドの一生を振り返って見ましょう。


試練のクラシック戦線

皐月賞(GⅠ)  中山芝2000m 4月18日

無傷の3連勝で迎えた皐月賞。ここでもハギノカムイオーに新たな試練が起こります。
無謀ともいえるゲイルスポート(鞍上;加賀武見)の壮絶な逃げ、追随するハギノカムイオーは超ハイペースの先行争いに巻き込まれます。3コーナー付近でいったん先頭に立ちますが、4コーナーを回って直線に向いた時には、もう残された力はありませんでした。
結果は16着。惨敗でした。

NHK杯(ダービートライアル) 東京芝2000m 5月9日

皐月賞の惨敗後も、陣営の照準は日本ダービー(東京優駿)でした。
NHK杯に望みを託したのです。が、ここでもあのゲイルスポートが逃げに参戦し、皐月賞とまったく同じような展開となり、ハギノカムイオーは馬群に沈んでいきます。
結果は12着。またしても惨敗でした。そして、陣営はダービー出走を断念したのです。
この後、ハギノカムイオーは休養に入り、過熱したカムイオー人気も下火になっていきました。

秋のクラシック戦線へ

NHK杯から約5か月の時を経て、ハギノカムイオーがターフに戻ってきます。
照準は秋の菊花賞。GⅠ初制覇へ向けた戦いが始まりました。

神戸新聞杯 阪神芝2000m 10月3日

4歳秋の初戦は、神戸新聞杯。単勝3番人気。
やはり、春の時のような人気はありませんでした。
しかし、このレースには、日本ダービーの優勝馬、バンブーアトラスが出走しています。負けるわけにはいきません。
スタートから順調に逃げたハギノカムイオーは、他馬の追随を許さず、そのまま1着でゴールし、復活をアピールしたのでした。

京都新聞杯(菊花賞トライアル) 京都芝2000m 10月24日

このレースで、初めての走りをファンに披露します。
スタートから逃げ切るレースを重ねてきたハギノカムイオーが、なんと2番手に抑えたレースを展開します。そして、そのまま4コーナーをまわり、直線抜け出して見事1着でゴールしたのでした。菊花賞に向け、強さと成長を示したレースとなりました。

菊花賞(GⅠ) 京都芝3000m 11月14日

春以来の本命、1番人気を背負ったハギノカムイオーは、大胆なレースを展開します。前半1000mを59秒5、1週目のスタンド前では後続馬を15馬身以上引き離す、暴走とも言える超ハイペースの大逃げを仕掛けたのでした。しかし、3コーナー付近から追いつかれ、最終的に15着と撃沈したのです。
またも、GⅠでの惨敗となりました。
このレースによって、ハギノカムイオーは「落ちた偶像」等のレッテルを貼られつつ、休養することになります。

ハギノカムイオー復活!

年が明けて1983年(昭和58年)、福島県の温泉で療養したハギノカムイオーは5歳になり、GⅠ初制覇に向け始動します。初戦はスワンステークス。

スワンステークス 京都芝1600m 5月15日

菊花賞でファンの期待を裏切り、散々な結果を残したまま再登場したハギノカムイオーを待っていたのは、意外にも、1番人気の本命という人気の高さでした。しかも、単枠指定のおまけつき。ハギノカムイオーはこれに見事応え、本来のスタイルである逃げ切りで1着ゴールインしたのです。このレースで、やはりスピード競馬には強いという印象を残したのでした。
このレースは母「イットー」も制しており、母子制覇の達成となりました。

宝塚記念 阪神芝2200m 6月5日

前走で強さを見せたハギノカムイオーは、ダントツで単勝1番人気となります。そして、横綱相撲を見せるのでした。
スタートから終始先頭を走るも、4コーナー付近で後続の「カズシゲ」に急接近されます。ファンの脳裏には悪夢がよみがえったことでしょう。が、今回のハギノカムイオーは強かった。直線に入ると、猛追した「カズシゲ」を引き離し、なんと5馬身差をつけて優勝。圧巻の走りを見せつけました。
晴れて、念願のGⅠを制した、記念すべきレースとなりました。
そして、このレースで獲得賞金が1億9000万円超えとなり、自身の1億8500万円を上回ったのでした。

関連する投稿


20世紀最後の大スター「オグリキャップ」地方でも中央でも燦燦と輝いた芦毛の怪物!!

20世紀最後の大スター「オグリキャップ」地方でも中央でも燦燦と輝いた芦毛の怪物!!

地方での圧倒的強さをもって中央へ飛躍。ハイセイコー以来の超人気馬として競馬界に君臨し、熱狂的な競馬ブームを巻き起こしたサラブレッド、「オグリキャップ」を振り返る


長い下積みから大輪の華を咲かせた、屈強のサラブレッド「イナリワン」

長い下積みから大輪の華を咲かせた、屈強のサラブレッド「イナリワン」

大井競馬場でデビュー後、4歳まで地方で競走馬生活を送り、5歳になってやっと中央入り、その後GⅠ制覇を果たし、オグリキャップ・スーパークリークとともに「平成3強」と呼ばれるまでになった「イナリワン」を振り返る。


自身の試練と闘いながら、父の無念を背に乗せて挑み続けたサラブレッド「カツラノハイセイコ」

自身の試練と闘いながら、父の無念を背に乗せて挑み続けたサラブレッド「カツラノハイセイコ」

アイドルホース「ハイセイコー」の初仔として誕生しながらも、苦しい新馬の時代を経験し、長い闘病生活を乗り越え、復活を果たしたサラブレッド「カツラノハイセコ」を振り返る


悲劇の出生からスターダムに駆け上れ!! 芦毛の名馬「タマモクロス」

悲劇の出生からスターダムに駆け上れ!! 芦毛の名馬「タマモクロス」

故郷を失い、母を失い、自身も窮地に追い込まれながらも、遅咲きの才能を開花させ、一世風靡した1頭のサラブレッド。ある1人の男によって導かれ、昭和最後の名勝負を残した「白い稲妻」、タマモクロスを振り返る。


キムタクのドラマから生まれたヒット商品やブームを振り返る!

キムタクのドラマから生まれたヒット商品やブームを振り返る!

キムタクこと木村拓哉さんがドラマで着用していた服やグッズは軒並み大ブーム♪ロレックスエクスプローラー、レザーダウンジャケット、ヤマハTW200etc...『ラブジェネレーション』『HERO』『ビューティフルライフ』など大ヒットドラマを通して木村拓哉さんが流行らせモノを振り返ります♪


最新の投稿


懐かしのブリキ缶が大集合!「昭和の缶に、恋してる」レトロ缶企画展開催

懐かしのブリキ缶が大集合!「昭和の缶に、恋してる」レトロ缶企画展開催

東洋製罐グループが運営する容器文化ミュージアムは、企画展「昭和の缶に、恋してる レトロブリキ缶コレクション」を2025年12月15日から2026年2月20日まで開催します。昭和100年を記念し、お菓子や贈答品などに使われた貴重なブリキ缶を展示。缶の構造やデザイン、当時のエピソードも交え、昭和の生活文化とブリキ缶の魅力を再発見できる展示内容です。


「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

「パックマン」「ゼビウス」などナムコット名作がブランケットに!ファミコン外箱を再現した「クラシックゲームブランケット」登場

株式会社KADOKAWA Game Linkageは、ナムコットブランドのファミコンソフト『パックマン』、『ゼビウス』、『ドルアーガの塔』の外箱をモチーフにした「クラシックゲームブランケット」3タイトルを2026年2月16日に発売します。両面印刷で外箱の表裏デザインを忠実に再現し、A5サイズ16ページの冊子も同梱。現在、予約受付中です。


病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

病院も映画館も煙モクモク!?自由すぎる昭和の常識を徹底図解

日本文芸社は、「昭和100年」の節目に、書籍『眠れなくなるほど面白い 図解 昭和の話』を11月27日に発売しました。庶民文化研究家・町田忍氏監修のもと、「病院でもタバコOK」「消費税なし」「過激すぎるTV」など、令和の感覚ではありえない“自由すぎた昭和の本当の姿”を、図解と豊富な資料写真で紹介。世代を超えたコミュニケーションツールとしても楽しめる一冊です。


ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎祭!仲村トオルも清水に降臨

ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎祭!仲村トオルも清水に降臨

映画『ビー・バップ・ハイスクール』公開40周年記念イベント「清水 ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎祭」が、聖地・清水駅前銀座商店街で12/13・14に開催決定!初日は仲村トオルさん登壇のセレモニーを実施。学ラン・セーラー服でのコスプレOKエリアや、名シーンの聖地巡礼ツアー、映画全6作の上映会など、アツすぎる内容で、あの頃の青春がブッ返る!


プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

プロレス界の歴史が動く今こそ読むべき一冊! 『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』2025年12月18日(木)発売!

新日本プロレスの“100年に一人の逸材”棚橋弘至氏による著書『ようこそ、プロレスの世界へ 棚橋弘至のプロレス観戦入門』が2025年12月18日にKADOKAWAより発売されます。引退が迫る棚橋氏が、26年の現役生活で培った視点から、プロレスの魅力、技の奥義、名勝負の裏側を徹底解説。ビギナーの素朴な疑問にも明快に答え、プロレス観戦をさらに面白くする「令和の観戦バイブル」です。