吉田秀彦 相手がどんなに大きくても、またどんな格闘技でも逃げることなく真っ向勝負する柔道家

吉田秀彦 相手がどんなに大きくても、またどんな格闘技でも逃げることなく真っ向勝負する柔道家

柔道では全日本体重別、世界選手権、オリンピックを制覇。全日本無差別でも2位。総合格闘技ではホイス・グレイシー、ドン・フライ、佐竹雅昭、ヴァンダレイ・シウバ、ミルコ・クロコップ、マーク・ハント、石井慧、菊田早苗、ジョシュ・バーネット、田村潔司、中村和裕らと対戦。そして43歳で柔道の現役に復帰!!!


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オリンピックで勝つ宿命

吉田秀彦は小学校4年生のとき柔道教室に入った
この道場の先生、大西康は
10歳の時に柔道と出会い、高校卒業後、富士製鉄(現新日鉄住金)に就職
入社4年目の1964年、東京オリンピックに同僚の神永昭夫が出場し決勝でオランダのアントン・ヘーシンクに敗北した
職場に戻った神永の無念そうなつぶやきが大石の心を動かした
「小さな時から基礎をしっかり鍛えなければ日本は体格のいい外国勢に勝てなくなる」
大石は32歳のとき接骨院を開業すると共にプレハブ道場を開いた
指導方針は
「基礎の徹底」と
「柔道を長く続けたい気持ちにさせる」こと
地道な反復練習の中でもやる気を失わせないように稽古内容を工夫した
そして吉田 秀彦 、谷本 歩実、谷本 育実、 中井 貴裕、 近藤 亜美ら有名選手をを含むたくさんの生徒を育てた
よく大石は吉田に
「最後まであきらめるな」
といった

講道学舎

中学3年生のとき東京の講道学舎に入った
(また同時に世田谷区立弦巻中学校に入学)
講道学舎は
東京オリンピックで日本が外国に負けたことがきっかけになって
全国から柔道の強者を集め磨き上げるために設立された私塾
対象は中学・高校生で全寮制
道場、学校長の推薦
家族の承諾
そしてなにより本人の熱意によって入門が許される
5:30
放送が鳴る
「起床、起床
起床ですので塾生は道場に集まってください」
急いで柔道着に着替え道場に集合する
先生の訓話、
ランニング、うさぎ跳び、腕立て伏せなどトレーニング
柔道の練習
7:00、
寮と道場の掃除
朝食を食べて学校に行く
学校を終え
中学生は16:00から19:00まで
高校生は18:00から19:30まで練習
その後、夕食、風呂、就寝
これが月~土曜日のスケジュール
日曜は
7:40~10:00くらいまで練習
洗濯や掃除などの雑用以外はひたすら寝た

吉村和郎先生

吉田秀彦は
「尊敬する人は?」
と聞かれると
「吉村和郎先生」
と答える
吉村和郎は警視庁に勤めながら
毎日夕方から講道学舎で教えた
とにかくこわくて厳しい先生だった
しかしその人柄は生徒から慕われた
ある日の練習の後、突然、吉村はいった
「明日野球やるぞ」
翌早朝
吉村を先頭に坊主頭の寮生は近所の公園にいった
勝つか負けるかの柔道に明け暮れる少年たちにとって
楽しむスポーツは非常に面白く興奮した
ワーワーと大声で遊んでいると
公園の管理人が走ってきた
早朝、しかも無断使用だったからだ
「逃げろ!」
吉村の声で全員が公園の金網をのぼって逃げた
そして管理人が消えると
また金網をのぼって中に入り野球を始めた
するとまた管理人が追いかけてくる
それを繰り返しているうち疲れてしまい
ついに管理人が追いつくのを待った
三十路の男と坊主頭の子供たちをみて管理人はいった
「あんた誰だ」
「・・・・・です」
吉村は自分の先輩の名を告げた

攻める!!勝つ!!

講道学舎に入った年の8月
全国柔道選手権大会の団体戦で弦巻中学(講道学舎)チームは準決勝で負けた
このとき先鋒で出た吉田秀彦は引き分けたが
内容は
ポイントこそとられなかったが
終始、相手に攻めれ続け
相手の技をかわすことに必死だった
先生から
「敗因はお前にある」
といわれた
翌日の個人戦で準優勝、全国で2位となったが
毎朝の練習で説教され
夜の練習でも怒られ続けた
「お前のせいでみんなが負けたんだ」
「お前はどこでメシを食っているんだ」
講道学舎の柔道に「守り」はなかった
「負けたくない」も許されなかった
あるのは「勝つ」
そして「攻め」のみだった

古賀稔彦先輩

講道学舎の生徒は
弦巻中学から東京世田谷区の世田谷学園に進学する
高校1年になった吉田秀彦は2期上の先輩、古賀稔彦の付き人となった
付き人は先輩の身の回りの世話をしたり練習の相手をしたりする
古賀稔彦はとにかく強く吉田は投げられ続けた
あるとき朝の練習で
吉田は古賀と組んで打ち込み(2人1組で行う投げ技の練習)を軽くサーっと流してやっていた
すると古賀が
「オイ、(先生が)見てるぞ、見てるぞ」
と合図する
すると吉田は急に真剣にやり出す
古賀稔彦はそんな先輩だった

必殺の内股

古賀稔彦をはじめとする先輩や講道学舎の仲間との激しい練習で吉田秀彦は強くなっていった
技と技を連続して出すことを柔道では「連絡技(れんらくわざ)」という
通常、小技から大技、大技から小技という連絡技が多いが
吉田秀彦の柔道の特徴は
通常1発で終わってしまう大技の仕掛けを
2発、3発と連続して出すことである
古賀稔彦が講道学舎を卒業後
高校1年の吉田秀彦は講道学舎の団体戦のレギュラーとなった
レギュラーとなると大きな大会の前には焼肉に連れて行ってもらえた
指導者を含め7人で10万円は食べた
この「栄養会」は講道学舎のステータスの1つだった
吉田秀彦は
178cm85㎏という決して大きくない体だったが
講道学舎の絶対的エースとして
どんなに強く大きい相手だろうが逃げることなく真っ向勝負し
相手を引きずり回し内股で次々投げ倒した
そして金鷲旗、インターハイ、高校柔道の3冠を獲った

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