「サイモン&ガーファンクル」のあまりにも美しいハーモニーは何を歌ったのか?!

「サイモン&ガーファンクル」のあまりにも美しいハーモニーは何を歌ったのか?!

美しいメロディとコーラス。主に60年代に活躍したアメリカを代表するデュオのサイモン&ガーファンクル。彼らは何を歌っていたのでしょうか?代表曲を聞きながら、ひも解いてみます。


はじまり

トム&ジェリー

ポール・フレデリク・サイモン(1941年10月13日 )
米国・ニュージャージー州ニューアーク出身。
1968年の「ミセス・ロビンソン(Mrs.Robinson)」(最優秀レコード賞等、計2部門)を皮切りに、史上最多となる13のグラミー賞を受賞している。

Paul Frederic Simon

アーサー・アイラ・ガーファンクル(1941年11月5日 )
米国・ニューヨークのクイーンズ区出身。
「天使の歌声」と評される美声で「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第86位にランクインしている。

Arthur Ira "Art" Garfunkel

サウンド・オブ・サイレンス(The Sound of Silence)

サイモン&ガーファンクルといえば、先ずはこの曲でしょう。彼らにとって起死回生となった初ヒット曲でもあります。
セールス的には失敗だったファーストアルバムに収録されていますが、そのアルバム発売後、失意のままヨーロッパへ放浪した際にポールはソロアルバムを作成しており、そこにもアコースティックバージョンでサウンド・オブ・サイレンスは収録されています。
その後、前述のようにエレキギターやドラムスをオーバーダビングして当時流行の兆しをみせていた「フォークロック」へと強引に本人たちの承諾なくアレンジ(!?)して発表されました。
リズムがずれているのはこのためですが、大ヒットとなったわけですからプロデューサーであるトム・ウィルソン(ボブ・ディランも担当)の眼は確かだったということですね。
エレクトリックバージョンはセカンドアルバム“サウンド・オブ・サイレンス(原題はアルバムタイトルなだけに、サウンドではなくサウンズとなっています)”と“卒業-オリジナル・サウンドトラック(これはまた別バージョンです) ”に収録されています。

最初にこの曲を聞いた時には、ポップで美しいメロディなだけに漠然とラブソングなんだろうなと思ったものです。しかし、タイトルを改めてみてみると“静寂の音”。何やら哲学的です。
ロマンティックなラブソングどころか、テーマはコミュニケーションの不在といったところでしょうか。歌詞を読んでいると“絶望”という言葉すら頭をよぎります。
しかし、その言葉は歌詞にあるように、音もなく落ちていく雨の雫のようで、そして、その音は静寂の音の中でコダマするという感じがしますね。

アイ・アム・ア・ロック (I am a Rock)

1966年に3位まで上昇したヒット曲。軽快な曲でありながらも詩の内容は“僕は岩、僕は島なんだ”と疎外感が歌われています。
後にポールは、この曲は失敗だったと語り、コンサートでは歌わなくなっています。

それにしても、ヨロイで身を固め部屋の奥深く安全に僕は隠れている。誰も僕に触れないし、誰からも触れられたくないという歌詞には言葉を失います。
最初に聞いた時には、タイトルのRockとはロックンロールのことだとばかり思っていました。岩なんですね。
僕は岩だ。島なんだと歌っています。
そして、なぜなら岩は苦痛を感じないし、島は泣かないからと続きます。

冬の散歩道(A Hazy shade of winter)

12弦ギターのリフをフィーチャーしたロック色が強くなんともカッコいい楽曲です。
1966年、全米チャート13位を記録しています。

A Hazy shade of winterとはまたなんともポール・サイモンらしい詩的なタイトルですね。邦題が何故“冬の散歩道”となったのかは分かりませんが、当時は意訳というか日本独自のタイトルをつけるということは珍しいことではありませんでした。
しかし、邦題から受ける印象と歌詞の内容とでは随分違いがあるように感じます。
歌詞では、移り変わる季節の中で、絶望と希望、悲観と楽観がからみあう思いが綴られています。
例えば、“希望を捨ててはいけない。確かに言うだけなら簡単なことだけど。でも、希望が去ってしまっても新しい希望が築けると信じるだけさ”といった感じです。

3.アメリカ ( America)

この曲はシングルにはなっていません。しかし、素晴らしい。
彼らにはシングルにはなっていないもののポップでヒット性のある楽曲が多くあり、これもそのうちのひとつです。

歌詞に出てくるキャシーとはポール・サイモンの当時の恋人(ソロアルバムのジャケットに写っています)のことです。

若かりし頃のポール・サイモンと当時の恋人キャシーさん。

ポール・サイモン・ソングブック

仲睦まじいカップルが大陸横断バスでアメリカを旅しているなかで微妙に揺れ動く心理を繊細に、なんとも繊細に描いています。
くどいようですが、非常に繊細!
多くの人がアメリカに夢を求めてやってきます。希望を持って。不安を抱えながら。このカップルもそうなのでしょう。
語られる微笑ましく楽しいエピソードさえも胸に詰まります。
まるで映画を見ているかのような、とても視覚的な楽曲です。

明日に架ける橋 (Bridge over Troubled Water)

1970年に発表されたサイモン&ガーファンクルにとって3作目となる全米1位を獲得したシングルであり、彼らにとって最大のヒット曲がこれです。
好き嫌いは別にして、サイモン&ガーファンクルの到達点といってよいかと思います。
楽曲も素晴らしいですが、アート・ガーファンクルは一世一代の名唱ですね。

ただ、ポール・サイモンはインタビューで次のように答えています。

録音中に何かと不満はあったのでしょうが、そんなことは全く感じさせずにスケールの大きな愛を高らかに奏でています。
ここには、不安に怯える自閉した主人公はもういません。ポール・サイモンは乗り越えたのでしょう。とても感動的です。
しかし、本人たちもやりきった感があったのでしょうか、残念ながらこの後彼らは解散してしまいます。

ディスコグラフィー

シングル(米国)
・The Sounds of Silence / We've Got a Groovy Thing Goin' (1965)
・Homeward Bound / Leaves That are Green (1966)
・I Am a Rock / Flowers Never Bend with the Rainfall (1966)
・The Dangling Conversation / The Big Bright Green Pleasure Machine (1966)
・A Hazy Shade of Winter / For Emily, Whenever I May Find Her (1966)
・At the Zoo / The 59th Street Bridge Song (Feelin' Groovy) (1967)
・Fakin' It / You Don't Know Where Your Interest Lies (1967)
・Scarborough Fair/Canticle / April Come She Will (1967)
・Mrs. Robinson / Old Friends-Bookends (1968)
・The Boxer / Baby Driver (1969)
・Bridge over Troubled Water / Keep the Customer Satisfied (1970)
・Cecilia / The Only Living Boy in New York (1970)
・El Condor Pasa (If I Could) / Why Don't You Write Me (1970)
・For Emily, Whenever I May Find Her (live) / America (1972)
・My Little Town / Rag Doll (Art Garfunkel) / You're Kind (Paul Simon) (1975)
・Wake Up Little Susie (Live) / Me and Julio Down by the Schoolyard (1982)

Simon & Garfunkel

アルバム(米国)
・Wednesday Morning, 3 A.M. (1964)
・Sounds of Silence (1966)
・Parsley, Sage, Rosemary and Thyme (1966)
・The Graduate Original Soundtrack (1968)
・Bookends (1968)
・Bridge over Troubled Water (1970)
・Simon and Garfunkel's Greatest Hits (1972)
・The Concert in Central Park (1982)
・Collected Works (1990)
・Old Friends (1997)
・The Best of Simon and Garfunkel (1999)
・Live from New York City, 1967 (2002)
・The Essential Simon and Garfunkel (2003)
・Old Friends: Live on Stage (2004)
・Live 1969 (2008)

関連する投稿


デビュー55周年の南こうせつ「愛こそすべて」のMV公開&「東京フォークジャンボリー in 野音 ~日比谷野音 The Final~」開催決定!

デビュー55周年の南こうせつ「愛こそすべて」のMV公開&「東京フォークジャンボリー in 野音 ~日比谷野音 The Final~」開催決定!

6月2日にリリースしたシングル曲「愛こそすべて」のMVを公開した。また10月1日より使用休止期間に入る東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)のクロージングイベントが9月に開催される。その第1弾が発表され、南こうせつの「東京フォークジャンボリー in 野音 」が開催されることが明らかになった。


北山修、紙ふうせん、トワ・エ・モワ、岡崎友紀…ライブ「あの素晴しい歌をもう⼀度コンサート2025⼤阪」が開催決定!!

北山修、紙ふうせん、トワ・エ・モワ、岡崎友紀…ライブ「あの素晴しい歌をもう⼀度コンサート2025⼤阪」が開催決定!!

⼤阪・オリックス劇場でライブ「あの素晴しい歌をもう⼀度コンサート2025⼤阪」が2025年3⽉3⽇に開催されます。このたび、同ライブにヴォーカルグループ・LE VELVETS(ル ヴェルヴェッツ)の参加が決定しました。


あの頃を思い出す「ラルフ ローレン」2024年秋キャンペーン

あの頃を思い出す「ラルフ ローレン」2024年秋キャンペーン

80〜90年代に流行した「ポロ・ラルフローレン」が再び人気を集めている。ラルフ ローレンは、あの頃を思い出す、ニューヨークをテーマにした映像を発表した。また、ニューヨーク・ヤンキースとのコラボレーションによるジャケットやミドルエッジ世代が着こなせるアイテムやコーディネートなども紹介していく。


「ブートキャンプ」のビリーは、軍隊の隊長ではなく空手家だった

「ブートキャンプ」のビリーは、軍隊の隊長ではなく空手家だった

2000年代にブレイクした軍隊式ワークアウト「ビリーズ・ブートキャンプ」の隊長ビリー・ブランクスは、実は軍隊の隊長ではなく、空手のチャンピオンだった。彼の子供の頃からの障害や70~90年代の空手家としての活躍。ブランクスの結婚と離婚、日本人女性との再婚について触れていく。そして、現在68歳のビリー・ブランクスの活動や画像を紹介。


レオナルド・ディカプリオの10代から30代に至るまでの出演作を特集放送!【『タイタニック』放送記念】レオ様 大スターへの道

レオナルド・ディカプリオの10代から30代に至るまでの出演作を特集放送!【『タイタニック』放送記念】レオ様 大スターへの道

洋画専門チャンネルザ・シネマでは、『ギルバート・グレイプ』で19歳にしてアカデミー助演男優賞にノミネート、『タイタニック』の世界的大ヒットにより、トップスターへと駆け上った“レオ様”ことレオナルド・ディカプリオの、 『タイタニック』 を含む10代から30代に至るまでの出演作5作品を5月8日(水)~10日(金)に特集放送いたします。


最新の投稿


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。


吉田沙保里  強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

吉田沙保里 強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子の霊長類最強のタックル その奥義は「勇気」

公式戦333勝15敗。その中には206連勝を含み、勝率95%。 世界選手権13回優勝、オリンピック金メダル3コ(3連覇)+銀メダル1コ、ギネス世界記録認定、国民栄誉賞、強すぎてモテない霊長類最強の肉食系女子。


消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

消えた回転寿司チェーンの記憶──昭和・平成を彩ったあの店はいまどこに?

昭和から平成にかけて、全国各地で親しまれていた回転寿司チェーンの数々。家族の外食、旅先の楽しみ、地元の定番──いつしか姿を消したあの寿司屋は、なぜ消え、どこへ行ったのか。本記事では、現在は閉店・消滅した地域密着型の回転寿司チェーンを、当時の特徴やSNSの証言とともに記録として振り返る。


【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

【歌謡曲】ありえないシチュエーション!歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲5選!

昭和の歌謡曲には、現代ではお蔵入りしてもおかしくないほど、ありえないシチュエーションを描いた詞が数多くあります。その中には、残酷な人物像や露骨な情景描写もあり、思わず笑ってしまうような歌詞もありました。今回は、筆者の独断と偏見で、歌詞がおもしろくて笑ってしまう歌謡曲を5曲ご紹介します。