ガッツ石松  伝説の男は幻の右でKOしガッツポーズとってOK牧場

ガッツ石松 伝説の男は幻の右でKOしガッツポーズとってOK牧場

プロテストは2回目で合格。世界チャンピオンになるまで10敗以上。そして層の厚いライト級で世界タイトルを5度防衛。間違いなく偉大なボクサーである。


東洋太平洋ライト級チャンピオン

昭和47年
東洋太平洋ライト級チャンピオンへ挑戦した
相手は門田新一
昨年対戦し8RKO負けしていた

「したっけれ
勝つのはオラだ
強いヤツが勝つんじゃねえ
勝ったヤツが強いんだべ
そうだろ?沢登
おめえもそう思うだろう」
そして12R戦い判定で勝ち
「今の目標は生意気ですがブキャナン(当時WBA王者)です」
と試合後に語った

場外乱闘8KO事件

マージャンをしていたとき電話が鳴った
ガッツ石松が出ると白タクを流していた仲間の青木からだった
「兄ぃ、
や、やられ・・・
池袋・・・」
「なにいってんだかわかんねえ
ハッキリいってみろ」
「・・・巻かれてる
別・・・白タクのヤツらだ
チクショー
向こうは10人くらいいやがる」
「クソッタレ
今行く
待ってろ!」
受話器を叩きつけガッツ石松は1人で飛び出した

深夜の池袋をひたすら走った
やがて人だかりをみつけた
15、6人の男がオモチャのように2人の男を弄んでいた
その周りに大勢の野次馬が囲んでいた
ガッツ石松をみつけた青木は
ボコボコの顔を歪めて泣き笑いの表情になった
「兄い!」
「おう、悪かった」
「なんだ?てめえ」
「関係ないヤツはすっこんでろ」
「悪いな、関係あんだよ」
男たちはいきり立った
「邪魔するんじゃねえ」
「ぶっ殺す」
1人がナイフを出して構えニタッと笑った

(卑怯っ)
ガッツ石松は多勢の上に素手で戦わないことにキレた
(カス以下だ)
腹は決まった
スッと腰を落とし構えた
「ウグッ!」
「次ッ!」
「ウッ」
「おめえも!」
「ウゲッ」
東洋チャンピオンの拳は次々と男たちを地面に沈めていった
ガッツ石松は8人までは数えていたがあとはわからなかった
時間にしてわずか1分足らず辺りに男たちが転がってうめき声を上げていた
「そこまでだ!!!」
肩に固く冷たいものが押し当てられた
「あんだ?」
みてみるとそれは警棒だった
次の瞬間、ガッツ石松は数人の警官にガッチリ押さえ込まれた
周りをみると
大勢の警官がいて
数台のパトカーがサイレンを鳴らし赤色灯を回していた
「現行犯で逮捕する」
手錠をかけられパトカーに押し込められた

池袋署の前ではたくさんの記者がいた
そして翌日
”石松8人をKO路上でケンカの助っ人”
”三度笠チャンピオン、路上で8人KO”
などとハデな見出しが躍らせた
この石松の武勇伝はTV、ラジオでも取り上げられた
当然、世間ではガッツ石松を非難する声も上がったが
胸にすくような助っ人ぶりに喝采を送る人もいた
留置所の部屋の中でガッツ石松は膝を抱きガックリ頭を落とした
これからのこと
嫁のこと
嫁のお腹の中にいる子供のこと
ボクシングのこと
不安ばかりだった
しかし翌日、面会に来た青木には笑顔をみせた
「兄ぃ、すまない、俺のせいで」
「怪我は大丈夫か」
その後、自分の房に帰って腹を決めた
(どうなるか、決めるのは俺じゃない
だからどうなるかはわからない
でもたとえどんな結果が出ても俺はボクシングをする
いっぱしになると約束したんだ
資格を剥奪されたらまた挑戦すればいいだけのこと
ここでやめたら負け犬だべさ)
翌日手錠をかけられ護送車で東京地検に運ばれた
そして検察官が言い渡した
「不起訴」
2日ぶりのシャバは快晴だった
迎えに来ていた石松組の面々に解散を宣言
白タクもやめると告げた

そしてその後、米倉ジムに向かった
さすがに敷居が高かった
しかしボクシングだけはやめるわけにはいかない
「ご迷惑おかけしました」
「おう」
米倉健司会長は軽くうなずくだけだった
「あの、これからもよろしくお願いします」
「おめえ警告処分だそうだぜ
コミッショナーだよ」
「え?」
「よーく反省して真面目にボクシングやれってこったろう」
「あのそれじゃあ」
「それからなおめえにもう1つ知らせがある
たった今岩手から連絡があった」
「あっ」
(岩手はガッツ石松の嫁の実家があった)
「女の子だそうだぜ」
「あああっ!!」
「1ヵ月後に試合だ
勝ちを土産に女房子供、迎えに行って来い」
「会長!あのオラ」
「この野郎
わかったら無駄口叩いてないでサッサと練習しろ」

昭和47年12月18日、
後楽園ホールのリングで
ガッツ石松は岩田健二を1Rで沈め
そのまま嫁と子供を迎えに行った
そして東京に帰ると
ボクシングとスナックのバーテンの仕事に励んだ

世界挑戦2

ガッツ石松となる

そしてこの後
「鈴木石松」は「ガッツ石松」に改名することになった
とうとう本名:鈴木有二は欠片もなくなった

エディ・タウンゼント

米倉会長は
エディ・タウンゼントをガッツ石松のトレーナーにした
伝説の名トレーナーである
「OK、ボーイ
あのネ
ボクシング、戦争ネ
戦争、相手殺す
OK?
負けること死ぬことネ」
(そうだ
勝たなくちゃなんにもならねえ
負け方考えていたオラはとことんバカだ)
「大丈夫
きっと勝つネ」
そういってエディはガッツ石松の手を覗き込んだ
「ナイス、ボーイ
この手、チャンピオンの手
OK?」

ガッツ石松は他人に強制されることが大嫌いで
万事独立独歩だった
トレーナーの命令でロードワークに出ると
途中で近道をして水道の水を浴びて全力疾走したようにみせた
「Hey、ガッツ、6時よ」
「エディさん、オレ眠いよ」	
「OK、じゃあ何時?
9時?
10時?
ハイ、10時ね」
「あ、起きます」	
「OK、走るね、GetUp」
エディはあくまで選手がやる気になるまで待った
そうされるとガッツとしても自然と起き上がれた
ガッツは初めて嫌いなロードワークを走り込んだ
こうしてすべて自分の責任においてトレーニングするのでごまかしは自分の損である
石松とエディのフィーリングはピッタリ合った

そして左を嫌になるほど繰り返した
「ガッツ
あんたの左はすっごく強い
でももっと強くなれる
あんたの打ち方は肘が上がっている
これだとパンチの力が抜けるのよ
左の脇を締めて下から上へ突き上げるの
アッパーで打つの」
エディの左手のミットを出したまま石松に左ばかり打たせた
「ミミズだって、体半分ちぎれても、コンチクショーって暴れるでしょ
もっとガッツがあるところみせてよ」
左、左、左、左である
それをバリエーションをつけていく
左ジャブ、左アッパー、左フック、左ボディ
ボディは相手のレバー(肝臓)をえぐる角度で打つ
10発20発と左を打った後、右を1発だけ打たせる
石松はうれしくて猛烈なパワーで右ストレートをぶち込む
パンチが生きるようになるまでエディはミットを受け続けた
ガッツクラスのパンチを受け過ぎると茶碗が持てなくなるがエディはかまわなかった
次はディフェンスの問題
石松はボディが弱かった
「ガッツ
ボディ空いてるね
それは肘でカバーするの
エルボーブロックね」
エディは拳を捻って肘を張ってカバーする防御を教えた

ガッツ石松は練習嫌いだとよくいわれた
確かにロードワークは嫌いだったが
ジムワークは好きで
スパーリングは大好きだった
ただしあくまで自己流にやった
ボクサーの三戒、酒、煙草、女も大歓迎だった
エディはいつもショートホープ、ハイライト、セブンスターを持ち歩くヘビースモーカーだが
ガッツ石松はエディに煙草をせびった
「オオ、ボクに煙草くれいうのガッツだけね」
そういいながら1本あげる	
そして練習はめいいっぱいやった	
「ガッツ
もういい
ストップよ」
そうエディが牽制するほどやった	
「ガッツ、練習キチガイよ」

世界挑戦3

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