ガッツ石松  伝説の男は幻の右でKOしガッツポーズとってOK牧場

ガッツ石松 伝説の男は幻の右でKOしガッツポーズとってOK牧場

プロテストは2回目で合格。世界チャンピオンになるまで10敗以上。そして層の厚いライト級で世界タイトルを5度防衛。間違いなく偉大なボクサーである。


ケン・ブキャナン(3度目の防衛戦)

チェリー・ピネダ2(4度目の防衛戦)

4度目の防衛戦はチェリー・ピネダとの再戦
危なげなく判定で勝った

アルバロ・ロハス(5度目の防衛戦)

5度目の防衛戦はアルバロ・ロハス
10Rに右アッパーでダウン寸前に追い込み
14Rに同じく右アッパーでKO
5度目の防衛に成功した
しかしこの頃から減量がきつくなり始めた
世界戦前の合宿でさえ
夜は女を引っ張り込むガッツ石松は
試合後は
節制などせず
酒や肉やと美食三昧だった
そのため非常にきつかった
この試合では19kgも減量した

名チャンピオン

エステバン・デ・ヘスス(6度目の防衛戦)

入札戦

WBC本部からガッツ石松に試合について打診があった
王者ガッツに挑む挑戦者はエステバン・デ・ヘスス
強打とテクニックをあわせ持ち
かつてロベルト・デュランを破ったこともある
この試合はWBC本部からの指名試合、つまり義務づけられた試合で
その上、試合の日時と場所はオークションで決めることが指示されていた
タイトルの認定権を持つWBC本部の命令は絶対である
WBC本部はメキシコにあり
中南米のボクシング関係者が
利権を得ようと日本からタイトルを奪取しようと策動しているのは明らかだ
この指示を無視すればタイトルを剥奪するだろう
米倉会長は怒りを屈辱を忍んでメキシコシティに飛んでオークションに参加した
相手はメキシコのサリナスプロモーションだった
米倉会長はオークションに勝つ自信があった
経済大国日本が中南米のプロモーターに負けるはずがない
オークションはホセ・スライマンWBC会長のオフィスで行われる
米倉会長は
15万ドルが相場と読み
20万ドルを呈示することを決めたが
ダメ押しでポケットマネー1万ドルをプラスし21万ドルを呈示した
しかし蓋を開けると相手は25万ドルを呈示し
日本側は4万ドルで負け
サリナスプロモーションは興行権を握った
内訳はチャンピオン:20万ドル、挑戦者:5万ドル
試合の場所はサンファン
期日は4月17日
当時の為替で1ドル=300円
石松のファイトマネーは6000万円となる
「まったくひどいもんです
こっちの読みの甘さもあるけど、
25万ドルとは驚いた
プエルトリコ側がそんなに払えるわけがない
これには日本のテレビ局がからんでいるんですよ
こっちの情報が筒抜けの上
同じ日本の資本で争っているんですから馬鹿馬鹿しいったらありゃしない
こんなことやってたら挑戦者のほうが強くなって世界チャンピオンの権威はガタ落ちだよ」
羽田に帰ってきた米倉会長が憤慨やるかたない表情で語った
「なんでオレばかりこんな目に遭わなきゃならないんだ
どうして米倉会長はチャンピオンが挑戦者の地元で試合しなきゃなんないの?
どっちがチャンピオンなんだ」
石松も怒っていたが次第に落ち着いていった
なんといっても6000万円のファイトマネーは悪くない
それにどこで戦っても勝てなくてはチャンピオンではないのだ

6度目の防衛に向け
ガッツ石松は19kgもの減量が必要だった
欲望のままに饅頭だ、ステーキだ、焼肉だとむさぼり食ったツケだった
ロードワークで
以前は走った坂道を登ることができなくなっていた
米倉会長は試合日を5月8日に延期させることに成功した
サンファンは暑い国で夏が苦手な石松には最悪だった
そのためにハワイホノルルでキャンプを張って調整期間を置くことにしたのだ
ホノルルでは
午前はロードワーク
午後はダウンタウンのジムで現地の選手相手にスパーリングをした
そしてプエルトリコに向けて出発
カリブ海は熱帯圏に属し加えて5月は真夏だった
「幻の右で9回から11回の間にKOしてタイトルを守る」
常夏のハワイで暑さに慣らしてサンファン入りしたガッツ石松はぶち上げた
しかし現地の新聞は石松が160ポンド(72.6kg)もあると報じた
本当ならリミットまで10kg減量しなくてはならないことになる
実際、石松は減量に四苦八苦していた
スズメの餌ほどの野菜を食べて後は寝てばかりいた
間もなく日本から応援ツアーがサンファンに入った
約20人のツアーの中には妻子もいた
石松の気持ちはようやく安らいだ
米倉会長はファイトマネーの問題で苦慮していた
200万ドルという途方もない金額で落札したくせに
サリナスプロモーションはなかなか現金を渡さない
強く迫ると懐からピストルをポトリと落として見せた
米倉会長はいざとなったら試合をキャンセルし帰る心づもりを決めた

WBC世界ライト級タイトルマッチ
チャンピオン:ガッツ石松 vs 挑戦者:エステバン・デ・ヘスス
試合当日
石松は骸骨のようにやせ細っていた
9時45分、
計量は10時だったのでチャンピオン側は現場に到着
しかし計量場である鉄格子のはまった殺風景な更衣室は
何の準備もされていなかった
10時、
定刻が過ぎても誰も来ない
「早く誰かと交渉してくれ」
早く腹いっぱい食事したい石松が怒り出し
しまいには米倉会長に嚊みついた
「オレだけ先にやらしてくれよ」
これも相手の策略だったのかもしれない
計量場は更衣室でなくマウンドに特設されたリング上だった
石松はトレーナーに両腕を抱えられるようにリングまで歩いた
10:15分、
ヘススが現れ秤に乗って計量をパスした
石松も1発でパスし
素っ裸で秤に乗ったままバンザイした
その後待機してあったワゴン車に飛び込み
いきなりオレンジジュースをがぶ飲み
胃が受け付けずバケツに吐いた
それからホテルに着くまで20分間
飲み、食い、戻し、食った
地獄の餓鬼のようだった
ホテルに戻ってもバイキング料理を片っ端から皿に盛り
口に放り込んで吐いた

「食べてみな」
少し落ち着いた石松は
とボーイを呼んで日本から持参したおやつを1つあげた
「ウッ」
ボーイは吐き出した
石松は手を叩いて喜んだ
それは梅干だった
21時
会場には30000人の観衆
夜になっても気温は30℃を超えている
ヘススはプエルトリコの英雄だった
アマチュアで33戦32勝
プロで49戦46勝25KO3敗
トレーナーには数々のチャンピオンを育てたアンジェロ・ダンディが付いた
ヘススとダンディが立てた必勝プランは
左を突いて戦って
決して無理してKOは狙わず
確実にポイントで勝つというもの
対するガッツ陣営の作戦は
ヘススはスタミナに難があるから後半勝負というもの
またオークションに持ち込んでの母国試合や数々の優遇策が
逆にヘススにプレッシャーをかけているとも読んでいた
ガッツ石松は縞のカッパに三度笠スタイルでリングに上がった
観衆は異国の風体に興奮しざわめいた
そんな中、米倉会長は密かに不安と緊張がピークに達していた
ファイトマネーがまだ支払われていない
もし試合前にファイトマネーの支払いが無ければ直ちにこのままリングを降りる覚悟だった
ボクシングはファイトマネーの支払いは試合前に現金というのが慣行になっているし
試合が終わってしまうとてんやわんやで滅茶苦茶になってしまうことは目にみえている
リングサイドでは
サリナスプロモーションの代理人と
こちらの交渉役であるリッチー井上が猛烈にやっていた
米倉会長はセコンドをしながらリング下のリッチー井上の様子を見ていた
王者と挑戦者、互いの国歌が演奏される直前
リッチー井上が親指と人差し指で丸をつくってリング上の米倉会長にOKサインが出した
米倉会長はやっとマネージャーの仕事を終えセコンドとして試合に集中できた

宙ぶらりんになってしまう

王座陥落後、ガッツ石松は1度は引退を口にしたが撤回した
解説者として仕事をしてみるとギャラは3万円だった
ヘスス戦で6000万円を得たガッツ石松にとって
1万、2万の計算などできなかった
ジムを経営するには若すぎるし
元石松組員にやらせていた副業は失敗した
例えば
金融業が遠藤に任せていた
帳簿をみると
融資先に「遠藤」の名がある
聞くと小遣いがなくなったからだという
ある3万円の貸し付けについて聞くと
遠藤が3万円を貸したその老婆の家に取り立てにいくと
部屋にはコタツとテレビだけだった
テレビを持っていこうとすると老婆は
テレビだけが楽しみだと泣いて訴えたため帰ってきたという
篠原にやらせていたスナックも
アルバイトの女の子に手を出すわ
客より多く飲むわで
儲からず借金だけを増やしていた
しかしジムにはほとんどいっていなかった
タレントとしてCMや番組で笑いをとるためにテレビ局に通ったが
なにか宙ぶらりんな生活だった

センサク・ムアンスリン

そんな生活が1年続いた後、復帰戦が決まった
1階級重いJ・ウェルター級に転向し
しかもタイトルマッチだ
勝てばいきなり2階級制覇となる
相手のセンサク・ムアンスリンは
プロ3戦目で世界チャンピオンになった怪物だった
ガッツ石松は1ヶ月の準備時間がなかった
当然負けた
センサクのパンチを避けるだけに終始し
6R、ボディにもらったパンチでリングに膝をついた

新井容日(ラストファイト)

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