藤城清治と言えば影絵!
藤城清治さんと言えば影絵。誰もが一度は、どこかで目にしたことがあると思います。
「光と影の詩人」と呼ばれているように、緻密で美しいこれらの作品は、世界的に見ても類のない芸術作品です。
でも、藤城さんはもともと影絵だけではなく、人形劇の上演やぬいぐるみ劇映画の総監督などもされていました。
『ケロヨン』を覚えていますか?あれも藤城さんの作品なのです。
懐かしの『木馬座アワー』
木馬座とは、藤城清治さんが主宰する劇団の名称です。
藤城さんは自社提供で、『木馬座アワー』というテレビ番組を作りました。
この番組が始まる前から、藤城さんはすでにテレビの番組制作に関わっていました。
1953年、テレビの試験放送が始まるとNHKと契約を結び、「せむしの仔馬」(ロシアの童話)のようなお話を影絵劇として放送しました。
1958年には、TBSで『影絵名作アルバム』を作ります。
そうした下地があっての『木馬座アワー』の挑戦でした。
【話の肖像画】影絵作家・藤城清治(4)感情豊かなケロヨンの魅力(1/2ページ) - 産経ニュース
『ケロヨン』カーマニア・カエル登場!
ケロヨンは『木馬座アワー』のコーナー『カエルのぼうけん』の主人公。
主なスーツアクターは花巻五郎さん、声優は新井勢津朗さん。
カエル屋敷に住むヒキガエルの息子で、ボーターラインのTシャツを着用しています。
特に自動車マニアで、自分で設計したカスタムカーでカーレースに参加するなど、自動車に乗るシーンが多く、これは作者・藤城清治がカーマニアであることを反映しているそうです。
今観ても、とてもおしゃれな舞台セットです。
昭和の子どもにとって、洋風な(この言い方も古いですね)インテリアの家は別世界!
スポーツカーも、あこがれのものではないでしょうか?
なんとなく『マッハGoGoGo』の車を思い出させるなと思って調べてみたら、『マッハGoGoGo』も、1967年、同時期に放映されていました。
ピンクのポルシェで走る藤城清治さん
大流行!「ケ~ロヨ~ン」と「バハハーイ」
放送開始当時は「ケロちゃん」という名前でしたが、『ケロヨン』という呼び方が定着した後も、劇中での愛称は「ケロちゃん」と呼ばれました。
劇中の口ぐせ「ケロヨーン」と「バハハーイ」は流行語になりました。
『20世紀少年』でも「ともだち」が、「バハハーイ」と言っていたのを聞いた時、ゾクッとしました。浦沢直樹さんもきっと、ケロヨンを観ていたのでしょうね。
当時、 玩具からお弁当箱、日用雑貨まで、ありとあらゆるケロヨングッズが登場し、ケロヨン・ブームとなりました。
1967年5月に発売されたケロヨンのビニール人形は発売から2カ月で30万個が売れたそうです。
日本武道館での『ケロヨンショウ』
藤城清治 ケロヨンとは
現在もゆるキャラブームですが、さすがに着ぐるみのまま車を運転する強者はいませんよね。
今考えても、相当弾けた企画だと思います。
あなたはこの『ショウ』をご覧になりましたか?
影絵と人形 表裏一体の静と動
手がけたCM・影絵アニメーション・絵本などの数々
ケロヨンの他にも様々な形で、藤城作品は世に発表されていきます。
1973年 宇津救命丸のCM
絵本「マボロシの鳥」爆笑問題 太田光さんの小説とコラボ
マボロシの鳥
藤城さんの影絵の創作方法
藤城さんの影絵の作り方を知りたい!まねしてみたい!と思われる方が多いと思いますが、その技法は緻密で、途方もない労力から生み出されています。
台紙に下絵を描き、黒い影にしたい部分と明るい部分に分け、光が当たる部分をカッターで切り抜きます。下からライトを当てる特製の机で、影を確認しながら作業していきます。
普通の人ならカッターを使うところですが、藤城さんはカミソリの刃を直に持って切り取ります。その方が、指先の延長のように自在に使いこなせるのだそうです。
カミソリの刃を、多い日で300枚も消費することもあるそうです。
光が当たる部分には、トレーシングペーパーを貼ります。
さらに光の濃淡をつけたいと思う部分は、トレーシングペーパーの枚数で調整します。
部分ごとに細かく枚数を指定していくと、たった1枚紙が多くなるだけで、山水画の様に、遠い山並みが現れることに感動しました。
色をつけたい時は、直接台紙にカラーフィルムを張り付けるやり方と、ライトの方に色をつけるやり方を組み合わせ、思い描いた色合いを表現していきます。
例えば青のカラーフィルムだけでも、60色を揃えているそうです。
この細やかな色遣いは、本当に職人技です。
実際に、藤城さんが製作されている様子を追った動画がありました。
文字で説明するより、動画冒頭の20秒ですべてがわかります。
百聞は一見にしかず。ぜひご覧ください。
影絵作家・藤城清治の世界 - Dailymotion動画
『ワヤン・クリ』『ステンドグラス』 幅広い研究と努力
ワヤン・クリ
遊芸人 野放途 » 伝統芸能ワヤン・クリ(影絵芝居)の衰退の現状を伝える。『影の世界』が《シネ・マレーシア2013》で5/27(月)5/31(金)に上映
ノートルダム寺院のステンドグラス
藤城さんは、早くからジャワ・バリに伝わる『ワヤン・クリ』の素晴らしさを研究されていました。ワヤン・クリの人形を見たことがありますが、本当に精巧で、美しかったのを覚えています。
またヨーロッパのステンドグラスの色遣いもとてもよく研究されています。
下の影絵は、小さくてわかりづらいのですか、窓一枚一枚の宗教画がちゃんと再現されています。
圧巻です。
藤城さんの影絵のステンドグラス
震災と向き合う
こうして数々の作品を世に送り出してきた藤城さんですが、近年、その創作活動に変化がありました。きっかけは、東日本大震災でした。
『心象風景とかメルヘンとか描いていたけれど、それだけじゃなくて、実際に地球上に起きていることを描こう』
創作の視点をリアリティの世界に向かわせたのです。
それは藤城清治さんの学生時代の原点に戻ることでもありました。
こうして実際に福島に何度も足を運び、スケッチし、福島の「今」を描き始めたのです。
NHKニュース9の放送
陸前高田の奇跡の一本松
南三陸町防災庁舎 がれきは宝石
スケッチを続ける藤城さん
復興の兆し 七ヶ浜町被災地を描く
防護服で身を包み、放射線の被爆タイマーギリギリまでスケッチ
福島原発すすきの里
生きかえれフェニックス
生きる喜び
藤城清治さんの活動はまだまだ続きます。