【連載】長与千種「レジェンドの告白」
しかしたとえ学校は休んでも
空手の稽古だけは休まなかった
週3回3時間
上は高校生から下は幼稚園児まで40~50人ぐらいが一緒に練習する
自衛隊だから礼儀には厳しいし
練習はキツかった
しかし一家が離れ離れになった後
唯一、長与を認めてくれた場所
居場所だった
白帯から始まり
色帯を進級していき
最終的には初段、
全自衛隊の九州大会に出るようにまでなった
また学校でソフト部に入っていた
キャッチャーで4番
この練習にも欠かさず出ていた
「お母さんに会いにいこう」
長与が学校に行かないため親戚は父親に連絡した
「もう面倒を見切れない」
父は
出稼ぎ先から戻ってきて
小さな家を借りて2人での生活が始まった
最初の夜
長与は父がつくったすき焼きををテーブルごとひっくり返した
「こんなもん食えるか!」
突然、父はいった
「大阪に行こう」
「お母さんに会おう」
長与は
まず母のアパートを訪れた
建物をみた瞬間、胸がいっぱいになった
母はとても小さな古いアパートに住んでいた
その後、
働いている店を父と訪れた
つましいバーで母は客に頭を下げていた
4年ぶりの再会だった
父から何も聞かされていなかった母は驚いたが
娘の突然の訪問を喜んだ
母が仕事が終わった後
3人で焼き肉を食べに行った
「お前には本当に申し訳のないことをした
また家族全員で一緒に生活できるためにはどうしたらいいのか
それを必死になって考えるから
すまなかった」
父と母は謝罪した
「自分から変わらなきゃいけない」
玖島中学校
「自分から変わらなきゃいけない」
鹿児島に戻った長与は父に言った
「もう私、大丈夫だから
元のように働きに戻ってもいいよ」
そうして母の妹夫婦の家に預けられた
長与は「家族の一員」としてがんばった
叔母を「姉さん」と呼び家事を手伝った
そして学校も休まずに通うようになった
【連載】長与千種「レジェンドの告白」