昭和映画史において、独自の輝きを放ち続ける「新東宝」。その膨大なライブラリーの中から、映画ファンの間で再確認が待たれていた傑作3作品が、ついに初めてDVDとして発売されることになった。
今回「新東宝キネマノスタルジア」レーベルから登場するのは、『戦雲アジアの女王』『姑娘と五人の突撃兵』『金語楼の海軍大将』の3本。いずれも1950年代後半の作品であり、当時の熱気と映画的野心が詰め込まれた娯楽映画の真髄とも言えるラインナップだ。全作品ともにHDリマスターが施され、往年の銀幕を彩ったスターたちの姿が鮮やかな映像で蘇る。
数奇な運命を描く歴史巨編『戦雲アジアの女王』
1957年に初公開された『戦雲アジアの女王』は、清朝の王女として生まれながら「男装の麗人」として知られた川島芳子の波乱に満ちた生涯を描いた作品だ。主演の高倉みゆきが、軍服に身を包んだ芳子を華麗に演じ、その美貌とカリスマ性で観客を魅了する。
物語は、動乱の満州を舞台に展開。芳子の恋と、政略結婚、そして3000人の軍勢を率いるに至るまでのドラマが、サスペンスとロマンスを交えて壮大なスケールで描かれる。共演には高島忠夫、宇津井健、丹波哲郎といった、後の日本映画界を支える重鎮たちが若き日の姿で名を連ねており、その豪華なキャスティングも見どころの一つだ。
戦雲アジアの女王
映画ポスター
戦場に咲く愛とアクション『姑娘と五人の突撃兵』
1958年公開の『姑娘と五人の突撃兵』は、宇津井健が若きアクションスターとしての魅力を存分に発揮した一作。中国大陸の最前線を舞台に、友軍救出という決死の任務に挑む少尉の姿が描かれる。
本作の魅力は、迫力ある戦闘シーンと、三ツ矢歌子演じる中国人娘・陳秀麗との淡い恋情が織りなす「戦争娯楽作品」としての完成度にある。脚本には『月光仮面』の川内康範が参加しており、スリルと抒情的な余韻を併せ持つ構成が光る。ニトログリセリンを積んだトラックで敵陣へ突入するクライマックスは、今見ても手に汗握る緊張感に満ちている。
姑娘と五人の突撃兵
映画ポスター
爆笑の渦に包む軍隊喜劇『金語楼の海軍大将』
1959年公開の『金語楼の海軍大将』は、昭和を代表するコメディアン・柳家金語楼の真骨頂が楽しめる傑作喜劇だ。金語楼が演じるのは、敬礼一つ満足にできないドジな水兵・敬太郎。ひょんなことから海軍大将の身代わりを務めることになり、上海の社交場を舞台に大騒動を巻き起こす。
坊屋三郎演じる享楽的な大将との対比や、丹波哲郎、万里昌代ら脇を固める俳優陣との掛け合いは、当時の喜劇映画の黄金期を感じさせる。ドタバタの中にも、当時の世相や風刺が散りばめられ、理屈抜きで楽しめる一級のエンターテインメントに仕上がっている。
金語楼の海軍大将
映画ポスター
貴重な文化遺産としてのDVD化
これら3作品は、2026年7月8日(水)に各3,080円(税込)で発売される。新東宝というスタジオが持っていた「何でもあり」のパワー、そして映画が最大の娯楽であった時代の豊かさを、本パッケージを通して改めて体感できるだろう。
かつて映画館の暗闇で人々が熱狂したあの興奮を、最新のデジタル技術で磨き上げられた映像とともに、ぜひ自宅のスクリーンで堪能してほしい。昭和ノスタルジーの枠を超えた、普遍的な映画の楽しさがそこにはある。