ドラムスは池畑潤二から灘友正幸に交代。力強さはなくなったものの、大江慎也の新たな世界を表現するには最適だったともいえます。
尚、このアルバムから、下山淳(ギター)、安藤広一(キーボード)が加入しています。この二人の貢献度は大きいです。
そうは言ってみても、オリジナルメンバーでこのアルバムが作られていたらとの思いは消せません。「ニュールンベルグでささやいて」「C.M.C」の流れは途切れてしまいましたからねぇ。
GOOD DREAMS
1984年4月にリリースされた5枚目のアルバム「GOOD DREAMS」に添えられたメンバー写真を見て「知らん人がおる」と思ったファンは多かったと思いますよ。
池畑潤二の脱退の時と同じように、新メンバー加入の情報も伝わりにくい状況でしたからねぇ。このアルバムで遂に下山淳と安藤広一がジャケットに姿を現すのですが、今度は井上富雄が居ないことにファンは驚くのでした。
人数こそ増えたものの、気が付けばオリジナルメンバーは大江慎也と花田裕之の2人。「GOOD DREAMS」は、先ずメンバーチェンジに驚かされるアルバムです。
GOOD DREAMS
中期ルースターズ・ファンの間でもアルバム「GOOD DREAMS」はイマイチ評価が低いように思います。ひとつには先に出た2枚の12インチ・シングルの寄せ集めといった趣であること。更にそれらの曲はミックスされており12インチ・シングルの方が良かった(これは好み)ということ。
半分は既存曲で、「Drive All Night(Elliot Murphy)」と「All Alone(サンハウス)」はカバー。でもって「Hard Rain」は「雨」というタイトルで以前からライブでやってましたからファンにとっては目新しいものではありませんでした。
しかし、そんなことよりも問題だと思うのは「Hard Rain」です。大江慎也、花田裕之、下山淳による3本のギターの掛け合いはカッコよくも美しく文句なしです。が、この曲はライブでは後半のアレンジが素晴らしかったのですよ。ところがどうしたことか、スタジオ・テイクにはその後半部分がそっくりカットされています。まぁ、後半部分を含めると8分近くになりますから、アルバムではカットせざるを得なかったのかもしれません。だったら、この曲こそ12インチにしてほしかった!という声は今も昔も残念ながらルースターズには届きません。
だからと言って「GOOD DREAMS」がつまらないアルバムかと言えば、全くそんなことはありません。既存の曲が多いということは、言ってみればベストアルバムの趣き。悪かろうはずがありませんよ!
極めつけとなるのがタイトル・チューン「GOOD DREAMS」です。正にレコードの帯に書かれた「求めた夢_求める夢」というコピーそのまんま。胸が締め付けられるような、狂おしいような、切なく甘美な名曲なんですよ。
上の画像はビデオ「PARANOIAC LIVE」からのものですから、アルバム「GOOD DREAMS」リリース直後のライブですね。観て頂くとお分かりのように、ボーカルは後から録音しなおしています。まともに歌えていないのでボーカルを差し替えないと商品にならんとの判断だったのでしょうが、分かってない!と言わずにはおれません。
歌えていない、そこがイイ!そこが聴きたい。そう、声にならない声こそが図らずも大江慎也が到達した唯一無二の世界だったわけです。奇妙なステージ・アクションと共に大いに好みの分かれるところですね。
Φ PHY
近年ファンになったファースト・アルバムを高評価する方には俄かに信じがたいかもしれませんが、1984年12月にリリースされた6枚目のアルバム「Φ PHY」こそが当時もっとも好セールスを記録したルースターズのアルバムなんですよね。
Φ
好セールスを記録したのに「GOOD DREAMS」に続いて「Φ PHY」からもシングル・カットはされていません。レコード会社はシングル・ヒットはあきらめたのでしょうかね。まぁ、確かにアルバムを通して聴いてこそ良さが分かるのが「Φ PHY」というアルバムですから、シングル・カットなど、どうでもいいと言えばどうでもいい。世にも繊細で美しいロック・アルバムです。是非ともアルバムを通して聴いて頂きたいです。
しかし、「GOOD DREAMS」はシングルにしてほしかった!なんならテレビドラマかなんかとタイアップでもしてほしかった!十分ポップですからね。
が、大江慎也の精神状態は悪かった。それは歌詞のまったく異なる「GOOD DREAMS」のデモを聴くと良く分かります。
う~ん、この歌詞ではヒットは望めんか。しかし、このデモは胸に迫る。繊細過ぎる淡い夢のようとでもいいますか、掴もうとしても掴み切れない何かがここにはある。儚く美しい、唯一無二の存在。そう、まさに「Φ PHY」だ。
レコード会社やプロデューサーにも立場というものもあるでしょう。それは分かる。分かりはするがファンとしては、ありのままの大江慎也を聴いてみたかった!
まぁ、現在ではこうして「GOOD DREAMS」以外にもいくつか公式にデモを聴くことが出来るようになったのでありがたいですけどね。しかし、デモの内容で「DIS.」や「GOOD DREAMS」が完成していたとしたら…それはGOODなのかBADなのか分かりませんがファンの夢ですね。
「DIS.」というアルバムは、寒風吹きすさぶ都会の中に立ち尽くしているといった印象です。対して「GOOD DREAMS」を経て到達した「Φ PHY」は、誰もいない荒野。いや、荒野ではないですね。無の世界とでも言えばいいのでしょうか、風さえも吹かないって感じです。美しいサウンドと不安定で、ちょっとでも触れるとバラバラになりそうなボーカルが聴く者の胸を締め付けます。
「Φ PHY」リリース後に大江慎也は脱退し、中期ルースターズは終わりを告げます。そしてオリジナル・ルースター最後の一人となった花田裕之がボーカルを担当することで後期ルースターズが始まるのでした。