ヴァン・モリソン
もしも、日本では何故か評価されていない偉大なるミュージシャン・ランキングというものがあったとしたなら、確実にトップ5に入ると思われるヴァン・モリソン。
ヴァン・モリソン?聴いたことない!と呟いたそこの貴方、これを機会にぜひ聴いてみてください。
デビューは1965年、ゼムというバンドでアルバム「ゼム・ファースト〜アングリー・ヤング・ゼム」をリリース。収録曲の「グロリア」がいきなりヒットして人気者になっています!
多くのミュージシャンにカバーされている「グロリア」。ジョニー・サンダースがカバーしていたことからパンク世代にも人気の曲ですね。
ヴァン・モリソンは、1966年にゼムを脱退しソロ活動を開始します。今日に至るまで名曲、名作を量産しているヴァン・モリソンではありますが、初期は特に素晴らしいんですよ。
アストラル・ウィークス
初のソロアルバムは1967年に発表した「ブロウイン・ユア・マインド」で、先行シングル「ブラウン・アイド・ガール」は全米10位の大ヒット。はた目には幸先が良いように思えますが、アルバムはヴァン・モリソンの許可なくリリースされ大ヒット曲を収録しているにも関わらず売り上げも評価も散々なものでした。
レコード会社に不信感を持ったヴァン・モリソンはワーナー・ブラザースに移籍し、傑作アルバム「アストラル・ウィークス」を1968年にリリースします。

アストラル・ウィークス
「アストラル・ウィークス」は、リリース当初から評価は高かったものの売上には結びつかず、じっくりと時間をかけてゴールドディスクに輝いています。
では、2008年のライブからですが、アルバム収録曲の「若き恋人たち」を聴いてみましょう。
「アストラル・ウィークス」は、1979年の「Critic's Choice Top 200 Albums」英米編で4位、イギリスの音楽雑誌「MOJO」が1995年に選んだ「The 100 Greatest Albums Ever Made」では2位、2003年に「ローリング・ストーン」誌が大規模なアンケートを実施した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では19位に選出されています。
ムーンダンス
リリース直後から売上、評価共に認められたのが1970年のソロ名義では3作目のスタジオ・アルバム「ムーンダンス」です。
初のセルフ・プロデュース作品ですが、これがまた功を奏したようですね。素晴らしい出来栄えですよ。

ムーンダンス
本作からのシングル「カム・ランニング」が全米39位となるヒットを記録しています。
また、Chad ChildersはUltimate Classic Rockが企画した「ヴァン・モリソンの曲ベスト10」では、本作からの「キャラヴァン」を10位、「クレイジー・ラヴ」を7位、「ムーンダンス」を4位、「イントゥ・ザ・ミスティック」を1位と実に4曲も選ばれています。
「カム・ランニング」も「イントゥ・ザ・ミスティック」も素晴らしいですが、日本人にとって耳障りが良いのは、何と言ってもタイトルナンバーでしょう。
いい曲でしょう?聴きやすいでしょう?日本人好みだと思うのですが如何でしょう?「ムーンダンス」を聴いて何も感じないとしたら、残念ですがヴァン・モリソンはあきらめるしかないかもしれませんよ。
因みに、「ムーンダンス」は1977年にシングル・カットされ、全米92位となっています。
ストリート・クワイア
前作「ムーンダンス」に引き続き大ヒットしたアルバム「ストリート・クワイア」。イギリスでは「ムーンダンス」以上のヒットとなっていますね。1970年のリリースです。
絶好調時のアルバムですから悪かろうはずがないです。ヴァン・モリソンに限らず、不思議と良いアルバムってジャケットもカッコイイんですよね。

ストリート・クワイア
注目すべきは一曲目の「ドミノ」ですね。ヴァン・モリソンが敬愛するミュージシャンであるファッツ・ドミノの事を歌ったこの曲は、全米9位となるヒットを記録しています。
アップテンポな曲です。全米で9位と言えば、大ヒットですよ。しかしなぁ、日本人の感覚でこの曲を受け入れるのは難しいような気がします。いや、もちろん素晴らしい曲ですよ。ええ、いい曲だとは思います。が、大ヒットするようには感じない人が多いように思います。日本でいまいち受け入れられない理由がこの辺にあるような気がするのですよ。
他にも全米23位となった「ブルー・マネー」、同じく95位の「コール・ミー・アップ・イン・ドリームランド」と3枚のシングルが収められていることからも、このアルバムがポップであることが証明されています。
テュペロ・ハニー
ワーナー・ブラザースに移ってからのアルバムジャケットは素晴らしいデザインのものばかりです。素晴らしいジャケットの物には名盤が多い。1971年に発表した「テュペロ・ハニー」。このアルバムにもその格言が当てはまります。
前作「ストリート・クワイア」制作後、ヴァン・モリソンはニューヨークのウッドストックからカリフォルニアのマリン郡へ転居したそうで「テュペロ・ハニー」はマリン郡からほど近いサンフランシスコ録音されたそうです。プロデューサーはドゥービー・ブラザーズで名を売ったテッド・テンプルマンが担当しています。

テュペロ・ハニー
シングル・カットされたのは「ワイルド・ナイト」との2枚。それぞれ全米28位と47位とスマッシュ・ヒットを記録しています。チャート・アクション的には物足りない感じですが、どうしてどうして曲はカッコイイですよぉ。
「テュペロ・ハニー」は「サウンド的にも構造的にも、1970年代前半のヴァン・モリソンの典型的な作品」と言われるだけの事はあって、これぞヴァン・モリソン!ヴァン・モリソンを聴いたぁという満足感を味わえるアルバムだと思いますね。
セント・ドミニクの予言
残念ながら今までのアルバムに比べると1972年にリリースされた「セント・ドミニクの予言」のジャケット・デザインは最高とは言い難い。どこか遠くを眺めながら、アコギをつま弾くヴァン・モリソンの姿に不安を覚える方がいても当然といえます。まるで買ってくれなくてもいいと言わんばかりのジャケットからは意気込みってやつが感じられませんからね。
シングルカットされた「ジャッキー・ウィルソン・セッド」と「レッドウッド・トゥリー」も全米61位と98位。なんかジャケット同様にパッとしない結果に。
素晴らしいジャケットの物には名盤が多いという格言は、逆に言うと凡庸なジャケットは駄作ってことか!と大いに不安に駆られるわけですが、ところがどっこい「セント・ドミニクの予言」は素晴らしい!
なんと大方の予想を裏切って全米アルバムチャートでは、これまでの最高となる15位を記録しているんですよ。

セント・ドミニクの予言
大ヒットとはいかなかったもののシングル・カットされた「ジャッキー・ウィルソン・セッド」がこれまた素晴らしい!
この曲、「カモン・アイリーン」で知られるデキシーズ・ミッドナイト・ランナーズが1982年にカバーしてヒットさせましたから、そちらでご存じの方も多いのかも知れませんね。
如何でしたか?ヴァン・モリソンを楽しんで頂けましたか?もっと多くの方に聴いてもらいたいと思うミュージシャンの一人です。
これ以降のアルバムにも素晴らしものが多数あります。チャンスがあれば是非アルバムで聴いてみてください。きっと満足して頂けると思います。