なぜ日本のラグビーは強くなったのか

なぜ日本のラグビーは強くなったのか

2015年9月19日、ラグビーW杯において日本代表が奇跡とも言える素晴らしい試合を行い、スポーツ史上最大の番狂わせを起こしたのです。そう、世界でも話題になったあの南アフリカ代表に勝った試合。その後も。世界の強豪相手にラグビー日本代表は大健闘。世界中のラグビーファンが驚愕し、往年のラグビーファンは涙しました。しかしなぜ日本のラグビーは、これほどまでに短時間で強くなったのでしょうか。


やってもやっても勝てなかった時代

昭和時代の日本、完全に日本国民の間に定着した野球に続き、サッカーにもJリーグが発足しました。野球ではオリンピックや WBC においてめざましい活躍を見せ、サッカーにおいても今ではワールドカップに出場して当たり前になってきました。日本代表チームが、世界各国を相手に戦う姿を見るのは国民にとって誇りですよね。そしてその檜舞台で、強い日本を見せることが、国民に勇気を与えてくれるんです。

野球やサッカーと並んで、日本国内で人気のあるスポーツがラグビーです。しかしラグビーにおいては、国内の実業団チームのリーグでは素晴らしいプレーを見せてくれていたのですが、世界に出ると全く勝てない弱小チームに甘んじてきました。ワールドカップに出場しても、全く勝てない日本代表チームに悔しい思いをしてきた皆さんも多いことでしょう。

しかし2015年のラグビーワールドカップにおいて、奇跡が起きたのです。この年を境に、突然ラグビー日本代表は強豪国と互角に戦える、強いチームに変貌したのでした。まさに悔しい思いでいっぱいだったラグビーファンにとって、心がすっきりと晴れわたる思いだったことでしょう。では一体なぜ、ラグビーは突然に日本代表はこんなに強くなったのでしょうか。

日本代表ヘッドコーチ、エディ・ジョーンズ

過去の日本代表は、20年間のラグビーワールドカップでわずか1勝しかできない弱小チームでした。その一方で、南アフリカ代表はワールドカップで2回も優勝をしている強豪国。それがラグビーワールドカップ2015では、日本代表が南アフリカ代表との勝利を含めてなんと3勝を挙げたのです。いったいなぜ、負けて当然と思われていた日本代表がなぜ3勝もできたのでしょうか。

まさに奇跡の勝利と賞賛された、南アフリカ戦の勝因は何だったのでしょうか。当時の日本代表でヘッドコーチを任されていたエディ・ジョーンズは、奇跡の勝利を描き切った張本人。そのエディジョーンズが記した本「ハードワーク」には、奇跡の秘密が記されていました。

ジャパンウェイ

エディジョーンズは、日本人とオーストラリア人のハーフですが、初来日は30代になってからでした。日本で育っていないエディですが、最も日本人の本質を理解している一人だと言えるでしょう。指示されたことだけを頑張る日本人選手を見て、エディは失望したそうです。日本ラグビーが本当の力を出し切れない弱さを垣間見た瞬間でした。

そしてエディは、選手たちの中に眠る本来の力を、どうすれば目覚めさせられるかを考えます。その結果導き出されたチーム方針が「ジャパンウェイ」だったのです。エディが意味するジャパンウェイとは、日本人らしさを活かすこと。世界と同じことをしていても、体型では外国人選手外国人と比べて引けを取る、小柄な日本人では勝てない。それでも短所を長所に変えれば、日本人でもチャンスがあるはず。エディが考えついた日本人らしさとは、勤勉さ・責任感・体格の小ささだったのです。

トレーニングのためのトレーニングは無意味

日本人が持つ代表格は勤勉さです。そこでエディは、トレーニングの時間を早朝から一日3回と決めて、時間を区切るようにしました。日本人特有の忍耐力があり、あきらめない精神からくる勤勉さを最大限に引き出そうとしたのです。

さらにエディは、トレーニングに対する意識を変えます。トレーニングの効果を高めるため、トレーニングのためのトレーニングは意味がないことを選手たちに伝えたのでした。勤勉ゆえに与えられたものは着実にこなしていく能力のある日本人。しかし、その理由を意識せずに物事をこなしていると見抜いたのです。目標の設定がなかったり情報の共有がないため、ただこなすためだけのトレーニングに、日本代表でもなってしまっていたのです。そんなトレーニングでは、効果が半減してしまいます。

そこで、意味を持ったトレーニングを実践していきます。まずトレーニングは勝つためにするもので、自分自身を鍛える目的のためではないということを共有させたのです。これで受動的な勤勉さはなくなり、能動的な勤勉さが開花する。この能動的な勤勉さこそ、眠っている日本人本来の力となるのでした。

チームとしての意識改革

しかしトレーニングだけを頑張っても、試合には勝てません。個人の意識が変わってもチームとして変わらなければだめなのです。選手個人がフォア・ザ・チームの精神を保つよう、エディは指導をはじめました。まず日本人が慣例として持っている年功序列という制度を打ち破ります。グラウンド外での行動で、年長者を立てることは大切です。しかしグラウンド内では害となります。ということで、エディは少しでも集中力が切れた選手を見つけたら、年長者・新人に関わらず練習から外したり、外国人選手にも時間厳守のルールを日本人同様に適用したのです。

一切例外を作らず選手たちを公平に扱うことで、緊張感が増した練習になります。「勝つために練習するんだ」という目的に向かい、フォア・ザ・チームの責任感が生まれたのでした。これで日本人本来の力を引き出し、勝利に向かう筋道が整います。後は慢性的な弱さからどう抜け出すか取り組むだけになりました。

日本人の短所として、小柄な体格があります。ラグビーにとって小柄な体格は致命的とも思えますが、エディはそれを弱点と決めつけず、長所として活かすことを考えます。小柄な体格を長所とみれば、それは機敏な動きと低い姿勢を取りやすいこと。大きな選手よりも早く動け、身長の高い選手より低い位置でのプレイが出来ます。ラグビーの試合での後半残り20分、フルに動いていたら体力は限界に近い状態になっています。そんな時徹底的に鍛え抜かれた日本人が、落ちないスピードで走り回ったり、低い位置でタックルを受けたら、いくら頑強な外国人選手であってもついていけないでしょう。これが、体格の小ささを長所とした戦術なんです。

夢を現実に

せっかくの戦術もただの夢物語であっては、弱小チームから抜け出すことができません。本当の強いチームになるため、徹底した勝利への執念とフォア・ザ・チームの精神をとことん植え付けたのでした。こうして、日本人本来の力である能動的な勤勉さが目を覚まし、ラグビーワールドカップの南アフリカ戦においては、ノーサイドまで落ちないスピードや粘り強い低いタックルを要因として、見事な勝利に輝いたのでした。そして絶対に勝つという強い意識が、最後の最後で同点を狙わずスクラムを組んで逆転を目指したということなのでしょう。

関連する投稿


天才・小野伸二が引退。本人も「怪我がなければ…」というフィリピン戦で負った大怪我とは?

天才・小野伸二が引退。本人も「怪我がなければ…」というフィリピン戦で負った大怪我とは?

サッカー元日本代表で北海道コンサドーレ札幌のMF・小野伸二(44)が3日、明治安田生命J1の最終節・浦和レッドダイヤモンズ戦で、現役ラストマッチを迎ました。


「ドーハの悲劇」から30年が経過!ラモス瑠偉公認のコラボアイテムが発売!ドキュメンタリー「ドーハ1993+」も話題に!

「ドーハの悲劇」から30年が経過!ラモス瑠偉公認のコラボアイテムが発売!ドキュメンタリー「ドーハ1993+」も話題に!

オンラインショップ「キーレジェンド」にて、ドーハの悲劇を象徴するシーンをイラストデザインした「ラモス瑠偉」公認のコラボアイテム「VINTAGE CULTURE BASE / FOOTBALL COLLECTION」の第1弾(Tシャツ、プルパーカー)が現在好評発売中となっています。


とにかく明るい丸山桂里奈   数々の栄光と失敗、おもしろエピソード

とにかく明るい丸山桂里奈 数々の栄光と失敗、おもしろエピソード

よく「何にも考えてなさそう」「何も悩みがなさそう」「なんでそんなに明るいの?」といわれる丸山桂里奈だが、決してサッカー人生なにもかもがうまくいったわけではなく、どちらかというと苦労人。だけど明るい理由は「いつかきっと笑ってサッカーをする日が来る。その日のために・・・・」という気持ちだった。


文化放送「くにまる食堂」にて、野人・岡野雅行が「ジョホールバルの歓喜」の裏側を語る!!

文化放送「くにまる食堂」にて、野人・岡野雅行が「ジョホールバルの歓喜」の裏側を語る!!

1998年、日本が初めてW杯の出場を決めたジョホールバルの歓喜。10月17日に放送された文化放送「くにまる食堂」にて、最後に奇跡のシュートを決めた野人・岡野雅行が、あの瞬間について事細かに語りました。


元日本代表MF・小野伸二(44)が今季限りでの現役引退を発表。フランスW杯、ワールドユースなどで活躍した“天才”

元日本代表MF・小野伸二(44)が今季限りでの現役引退を発表。フランスW杯、ワールドユースなどで活躍した“天才”

J1リーグの北海道コンサドーレ札幌に所属する元日本代表MF・小野伸二(44)がこのたび、自身のインスタグラムにて今季限りでの現役引退を表明しました。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。