テレビCM 30年史
明石家さんま、楠田枝里子の司会で1988年にフジTV系 「テレビCM 30年史」という番組があったのをご存じでしょうか?ええ、そうですよね、ご存じない方がほとんでしょう。こんな番組でした。
この番組で人気のイメージソングベスト20が発表されています。この頃のテレビCMはバブル期ということで、制作費を惜しみなく使ったものが多いこともあり、今見ても面白いんですよね。
時間がある方には上の番組をじっくりと見てもらうとして、そうでない方のためにダイジェスト版でご紹介。「テレビCM 30年史」よりイメージソングベスト20を見てみましょう。いい曲ばかりですよ。
男と女のラブゲーム
80年代のCMの特徴のひとつに音楽とのタイアップというのがありました。もうね、テレビCMは歌手にとってのプロモーションの場といってもいいくらいでしたね。大手のCMに起用されると、どれもこれも大ヒットしていた印象があります。
20位のJAL沖縄のCMは石川優子とチャゲ の 「ふたりの愛ランド」 、19位は武田製薬の 「男と女のラブゲーム」 で、共に大ヒットして今やカラオケのデュエットソングの定番となっていますよね。
CMが放送されたのは、「ふたりの愛ランド」1984年、「男と女のラブゲーム」が1986年です。石川優子とチャゲ、芦川よしみと武田鉄矢。どちらも意外な顔合わせでしたが、そこのところが新鮮で良かったですねぇ。
ケンとメリー(愛と風のように)
実は、このベスト20,80年代のものが多くを占めているのですが、1972年の放送という、今回最も古い日産スカイラインのCMが18位に入っています。
歌っているのは小出博志と東郷昌和によるBUZZです。プロデュースしたのは高橋信之で、彼はミカバンドやYMOで知られる高橋幸宏のお兄さんです。で、高橋幸宏の奥さんと言うのが小出博志の妹さんなんだそうです。なかなか面白い関係ですね。
君に胸キュン
奥さんのお兄さんだけでなく、高橋幸宏も負けじとランクインしています。 「君に胸キュン」 。カネボウ化粧品のCMソングに使われたのですが、この曲、YMOのシングルとしては一番売れた楽曲となりました。
当時すでにYMOはスターだったわけで何の驚きもありませんでしたが、問題はモデルです。カワイイじゃないですか。この子は誰だって話になりましたね。ご存じですか?そうです、相田寿美緒です。最近見かけることがありませんが、プロ野球選手であった荒木大輔の奥さんなんですね。1993年の結婚を機に芸能界を引退されてます。
RIDE ON TIME
14位 カネボウ'78夏キャンペーンソング「ミスターサマータイム(サーカス)」、15位 ワコール「魅せられて(ジュディ・オング)」、16位 三洋電機のカラーテレビ「くっきりタテ7」のコマーシャルソング「異邦人(久保田早紀)」。それぞれのCM放送年は、1978年、1979年、1979年です。
14位から16位は新人ベテラン入り混じって70年代後半のCMですね。
そして13位。一部では熱烈なファンが付いていたものの、この日立マクセル UDカセットテープのCMによって一気に認知されることになった日本を代表するミュージシャンの登場です。
1980年のことですが、当時はファンであってもライブ以外で動く山下達郎を見た方は少なかったと思います。今と違ってネットとかありませんからねぇ。これは誰だっ?てなものでしたよ。
Rockn'Rouge
80年代はカネボウと資生堂はCM合戦のようになっていて、どちらも良い曲、良いアーティストを持ってくるんでCMを見るのが楽しみでした。
カネボウは「君に胸キュン」 に続いて1984年の「Rockn'Rouge」が12位にランクイン!CMソングを歌っているのはもちろん松田聖子です。
いやぁ、カワイイ。さすがトップアイドルだ、文句なしっス。
しかし、このタイプのCM、タイアップということになるわけですが、ミュージシャンが新曲を使ってCMに登場するってことで、これはもう立派なプロモーションビデオですねぇ。
そういえば、化粧品のCMっていつのころからか見なくなりました。また、バンバン景気よく流してほしいものです。
いっそセレナーデ
井上陽水は既に全国的に知られていました。知られてはいましたが、フォークブームと共に過ぎ去った人となりかかっていた。なので、この今回11位に選ばれているCMを最初に観た時の印象は、井上陽水ってこんなにカッコ良かったんだっけ?でしたよ。
1984年、「いっそセレナーデ」をイメージソングに使ったサントリー「角瓶」のCMは、曲と共に井上陽水のカッコよさを再認識させたものでもありました。
このCMをきっかけとして第2次陽水ブームが訪れるんですよ。果たして「角瓶」の方はどうだったのか?「角瓶」ブームが訪れたという話は、あまり、聞かない、ような。。。とはいえ「角瓶」は1937年の発売以来今日まで販売の続くジャパニーズウイスキーの長寿製品ですからね。その歴史の一端に井上陽水がいたわけです。
昴
サントリーが11位なら10位はニッカだとばかりに、ライバル会社は負けていません。1980年ニッカウヰスキー「スーパーニッカ」のCMが第10位です。CMソングは谷村新司の「昴」。今では谷村新司を代表する曲として多くの方に愛されている曲ですが、当時はこのタイトル、読めない方が結構いましたよ。
このCM、今見ると谷村新司の若さに驚くばかりですが、それはそれとして雄大な風景は素晴らしいですね。
MUGO・ん…色っぽい
工藤静香にとって5枚目となるシングルが、カネボウ'88秋のプロモーション・イメージソングとして起用さてた「MUGO・ん…色っぽい」です。けっこう忘れられているように思いますが、作詞は中島みゆきですね。
工藤静香はおニャン子だったですよねぇ。今やキムタクの妻であり、2児の母親。その2人の子供たちもモデルとして活躍しています。いやぁ、時のたつのは早いものですね。
燃えろいい女
カネボウのライバル資生堂も黙ってはいられないとばかりに、8位、7位と続きます。8位「燃えろいい女」 でツイスト。7位は 「時間よ止まれ」 で矢沢の永吉ちゃんです。
「燃えろいい女」は資生堂 '79サマーキャンペーン・ナツコの夏のキャンペーン・ソングでした。モデルを務めたのは小野みゆきです。
第7位の 「時間よ止まれ」は、1978年の資生堂のCMソングですが、実は2014年にも再び資生堂のCMソングに採用されているんですよ。
君の瞳は10000ボルト
資生堂の快進撃は続きます。6位のAGF(イメージソングは小林旭の「熱き心に」 )を間に挟んで、第5位もまたもや資生堂。1978年の「資生堂化粧品」秋のキャンペーンソング「君の瞳は10000ボルト」、歌ったのは堀内孝雄です。
この曲、作詞:谷村新司で、作曲:堀内孝雄です。元々この話はアリスにきていたのだそうですが、その時、谷村新司が入院していたため堀内孝雄のソロとして受けることになったのだとか。
輝きながら
第4位。1987年のフジカラー・スーパーHRのCMソング徳永英明「輝きながら」です。モデルは南野陽子。これはちょっと珍しいですね。南野陽子に歌わせれば良かったんじゃないんですかね?!もしくは、徳永英明が出演するとか。
しかしまぁ、どのような事情があったのか分かりませんが、徳永英明の歌に南野陽子のモデルという豪華な組み合わせが誕生したのは喜ばしい事です。
それにしてもこの曲、発売から10年以上経ってから、サントリー「DAKARA」や西部ガス・大阪ガスエコウィルのCMソングに採用された他、1997年9月から西鉄大牟田線の車内チャイムとしても使われています。これはスゴイ!
いい日旅立ち
国鉄の1978年11月3日から始まった「いい日旅立ち」キャンペーン。山口百恵が歌った「いい日旅立ち」が第3位です。
山口百恵のシングルと言えば、阿木燿子・宇崎竜童夫妻による楽曲という印象が強いわけですが、この曲は作詞、作曲共に谷村新司です。アリスが大ブレイクしていたとはいえ、この時期の谷村新司はスゴイですね。
今の君はピカピカに光って
1980年に発売されたミノルタの一眼レフカメラ「X-7」のテレビCMソング「今の君はピカピカに光って」が第2位です。歌っているのは斉藤哲夫。斉藤哲夫は1970年にデビューしていますから知る人ぞ知る存在だったとはいえ当時既に10年選手。実力のあるベテランが遂にブレイク!ということで嬉しい限りですが、話題となったのは曲よりもモデルを務めた宮崎美子の方でした。
とてもよくできたCMですよね。爽やかなお色気というのか、宮崎美子が瑞々しい。このビジュアルに曲もピッタリです。作詞は当時引っ張りだこだった人気コピーライターの糸井重里、作曲・編曲がムーンライダーズの鈴木慶一です。斉藤哲夫は自作曲でない「今の君はピカピカに光って」のヒットに悩んだそうです。いい曲なんだし、ヒットしたんだから良いじゃないかと思いますが、きっと繊細なんでしょうね。
SWEET MEMORIES
さて、第1位は1983年の「SWEET MEMORIES」。これはもう、歌、映像ともに大きな反響を呼びました。好評につきシリーズ化もされたのですが、CMは全編アニメーションで登場人物が全てペンギンというユニークなものです。このペンギンのキャラクターは東宝劇場用アニメ「ペンギンズ・メモリー 幸福物語」として映画にもなっています。
で、イメージソングを歌っているのは松田聖子ですが、当初は画面にクレジットが出ていなかったこと、英語で歌っていたことなどから誰が歌っているのか分からなかったのです。松田聖子と分かった時には驚きました。この曲でファンになった方も多かったのではないですかね?
「イメージソングベスト20」いやぁ、さすがにいい曲ばかりですね。残念なのは、7~80年代に比べると最近はCMとタイアップしたイメージソングは少なくなっているように感じます。寂しいです。CMも音楽もまた元気を取り戻してもらいたいものだと切に願います。