渡辺真知子
渡辺真知子がデビュー曲「迷い道」をリリースしたのは1977年11月1日。時期的には近年DJカルチャーを発端として海外からも注目されるようになったシティ・ポップ真っ盛りのころ。
渡辺真知子も当然その路線と思っているあなたは大間違い。
シティ・ポップ全盛時にあって、渡辺真知子の音楽はまったく逆。思うにシティ・ポップというのは都会的で洗練された音楽なわけですが、渡辺真知子は地方的というか土着的というか、演歌の香りがする。故に等身大というか、親しみやすかったりするわけです。
そんな渡辺真知子の70年代のヒット曲の数々を振り返ります。
海につれていって
記念すべきファーストアルバム「海につれていって」は、1978年5月21日にリリースされました。
このアルバム、何が素晴らしいかって、それはもう先ずジャケットです!隣のお姉さん好きですか?と聞かれて「大好きです」と声を大にして言いたくなるジャケット。そのお姉さんに「海に連れてって」と言われたら、そりゃもう「行きます。行きます。連れて行きます」と声を更に大きくしてしまうジャケットです。

海につれていって
もちろん素晴しいのはジャケットだけではありません。素晴らしいジャケットには名盤が多いという名言(誰の?)どおり、このアルバムは内容も良いです。
なんと言ってもデビュー曲「迷い道」と2枚目のシングル「かもめが翔んだ日」という2大ヒット曲が収録されています。
「現在・過去・未来、あの人に逢ったなら~」で始まる名曲「迷い道」。大ヒットしただけあってメロディもアレンジもよく出来ています。が、何と言っても冒頭の歌詞が素晴らしい!これ、凡人には書けそうで書けないですよ。あ、勿論メロディもアレンジも書けないですけどね。
フォグ・ランプ
ファーストアルバムから半年後の1978年11月1日にセカンドアルバム「フォグ・ランプ」はリリースされました。
シティ・ポップが時代を超えて今でもオシャレに聞こえるのに対して、このアルバムに限らず渡辺真知子の楽曲はそうとは言い難い。アレンジの問題もあるかと思いますが、タイトル曲の「フォグ・ランプ」や「少しはまだ悲しいけれど」などは演歌の香りが色濃く漂っています。
もちろん演歌が悪いわけではない。シティ・ポップとはなんか違うなぁと思うだけの話です。
勿論いい曲には違いなく、渡辺真知子の親しみやすさの秘密は歌の底辺に演歌があるからかもしれません。

フォグ・ランプ
アルバムでは、やはり3枚目のシングルとなった「ブルー」が聴きどころでしょう。しかしまぁ、渡辺真知子は失恋ソングが多い。アルバム「フォグ・ランプ」も失恋の嵐。
なのですが、好みによるとは言え「フォグ・ランプ」は素晴らしい。収録曲は捨て曲なしの粒揃いです。そしてジャケットもいいですね。
「ブルー」ヒットしただけあって今聴いても良い曲ですね。そして、もう間違いなく「失恋ソングを歌わせると日本一だ」と断言してもいいでしょう。
遠く離れて
1979年6月21日にリリースされたサードアルバム「遠く離れて」、その1曲目「自然の中に」は演歌どころか、童謡…いや違うな音楽の教科書にのってそうな曲でド肝を抜かされます。

遠く離れて
「遠く離れて」には4枚目のシングル「たとえば…たとえば」と5枚目のシングル「別れて そして」が収録されています。
明るくポップなジャケットであるにも関わらずこのアルバムもまた失恋ソングのオンパレード。失恋ソングの女王と呼ぶにふさわしいです。
因みに、作詞も作曲も通常は渡辺真知子が自ら行っていますが「たとえば…たとえば」はシングルとしては「かもめが翔んだ日」に続いて作詞を伊藤アキラが担当しています。
渡辺真知子の楽曲全体に言えることかとおもいますが、この曲もまた演歌仕立てのJポップとでも言えばいいのでしょうか?不思議な魅力を持った曲、そしてアルバムです。
因みに収録曲の「うみなり」は、40周年コンサートリクエストで1位となっています!
メモリーズ
好みの問題です。あくまでも好みの問題ではありますが、1979年12月21日にリリースされた4枚目のアルバム「メモリーズ」を渡辺真知子の最高傑作という声は決して少なくありません。
最高傑作かどうかは分かりませんが、これまでの総決算のようなアルバムではあります。

メモリーズ
6枚目のシングル「季節の翳りに」。この曲は「たとえば…たとえば」に続いて作詩を伊藤アキラが担当しています。
伊藤アキラとはよっぽど相性が良かったのか、ここまで彼以外で作詞を担当している作家は他にはいません。
当時の渡辺真知子は将来に対して悩んでいた時期だったそうです。
だからでしょうか、このアルバムは暗いというか、陰りのある曲が多く収録されています。そこが魅力。そこんところがセンチメンタルな若者たちの支持を集めたのでしょう。
Libra
1980年8月21日にリリースされた渡辺真知子の5枚目のスタジオ・アルバム「Libra(ライブラ)」。Libraとはラテン語で天秤という意味らしいです。
ジャケットの渡辺真知子は流し目をしており、いつになく怪しげで、しかもモノクロームのジャケット。加えて1曲目のタイトルが「涙の音」というところからして「まだ立ち直ってないんか?」と不安を覚える方もおられるでしょう。
しかし、心配無用です!「Libra」は会心のアルバムに仕上がっています!!

Libra
「Libra」は、7枚目のシングル「唇よ、熱く君を語れ」、8枚目のシングル「ホールド ミー タイト」という大ヒットしたキラー・チューンに加え、「Love-Safety Zone」のようなコケティッシュな曲から心に染みる演歌風味の「Rainy Day」」とバラエティに富んだ楽曲が収録されています。
「唇よ、熱く君を語れ」はCMタイアップ曲だったためか、作詞を東海林良が担当しています。
走りに走り続けヒット曲を連発した渡辺真知子。華やかな一方で、悩み、苦しみも多かったことでしょう。が、70年代の最後に会心のアルバムをリリースしてくれました。素晴らしいです。
今回ご紹介した5枚のアルバムはどれも必聴に値します。通して聴くと素晴らしさが良く分かりますよ。