ゲームでしか味わえない感動がある
これは『ゼルダの伝説・時のオカリナ』CMのキャッチコピー。
今ほど全年齢的にゲームをしているような時流ではなく、もちろんスマホゲームなんてない頃に
「ずいぶんと大きく出た」キャッチコピーなのですが
これがもうその通りの素晴らしいゲームだったのです。

ゼルダの伝説 時のオカリナ
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ファミ通レビューで初の40点満点を取ったゲーム
4人の「週刊ファミ通」編集者が1人10点満点で評価をつける「クロスレビュー」で
レビュー開始12年目にして初めて、4人全員が満点をつけたゲームです。
レビューをざっと抜粋すると
「まさにゲームに身を委ねる感じだ。」
「見上げるとまぶしい太陽、石を持ち上げると逃げ出す虫……。あたかも自分がリンクになったかのように、ゲームのなかの世界が体験できる。それでいて、謎の難易度が絶妙で、本筋に関係ない遊び要素も満載だからたまりません!!」
「誰もが自分だけは解けたと思わせる難しさ。体験がその後に活かせる良さ。」
短いレビューの中にどれだけ絶賛の言葉を入れ込めるか
苦労がしのばれる内容になってますね。
また、海外のレビューサイトの評価をスコア化するMetacriticというサイトにおいても、2016年時点で最高得点(99点)を獲得しています。

週刊ファミ通 1998年11月27日号表紙
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『ゼルダの伝説』とはどういうゲームか
名前は聞いたことあるけど、プレイしたことはない、という方のために。
『ゼルダの伝説』は、1986年のファミコンディスクシステム版を皮切りに、
以来30年にわたって15本以上作品の出ているシリーズです。
ちなみに「ゼルダ」は、シリーズに出てくるお姫様の名前。
主人公の「リンク」が、アクションと頭脳を駆使して「ゼルダ姫」を助け
世界を征服しようとする悪(ガノン)と戦い、それを阻止するのが、ゲームの基本です。
ゼルダ姫も、マリオシリーズのピーチ姫みたいに
しょっちゅうさらわれるのがお約束のお姫様じゃなく
一緒に闘ったり、アイテムを授けたり、別人格になって主人公を鍛えたりして
いろいろと重要な動きをします。

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初期のテュートリアルが親切で入りやすい
いろいろなダンジョンがあるのはRPGの基本ですが、
ゼルダシリーズの場合、主人公は最初は何も持っていません。
剣も武具も、そこらへんの木をゆすったり草を抜いたりして金(ルピー)を集めて買ったり
いろいろ探索をする過程で手に入ったりします。
ダンジョンに入る前の準備を、操作に慣れることで整えていけるのが
本当に初期のテュートリアルとしてきちんと作られています。
経験値システムではなく、アイテムで成長
FFやドラクエなどのRPGは経験値システムですが
ゼルダシリーズは経験値という概念がありません。
剣や武具だけでなく、いろいろなアイテムをもつことが
ストーリーを進めるためのキーポイントになります。
ダンジョン攻略やさまざまなおつかい、
本筋には関係なく思えるミニゲームやコレクションで入手できる「アイテム」が
今攻略中のダンジョンにとても有効なツールとして活用できるように用意されていて
ダンジョンでどうしても先に進めないとき、
持っているアイテムを、それまで思いもよらなかった方法で使って
解決できたりするんです。
その「謎解き」がゼルダシリーズの「成長」であり
正解を表すメロディが、なんとも言えない快感をもたらすのです。
「時オカ」ならではのポイントその1 コントローラ操作
nintendo64というゲーム機は3Dの世界を広げたマシンです。
64マリオが出た時の衝撃は忘れられません。
そして3Dキャラクタをコントローラで動かすのは、実はとても難しい。
その操作のハードルを上手に超えやすくしてくれたのが「時オカ」でした。
ジャンプボタンがない
マリオシリーズにはAボタンのジャンプは必須ですが
マリオを動かしながらAボタンでジャンプするのは、けっこうせわしない上に
3段ジャンプなんて高度なテクは至難の業です。
「時オカ」のリンクはAボタンを押さなくても勝手に「跳び」ます。
ちょっとした段差や飛び石なら、スティックを傾ければ軽く跳んでくれます。
これがコントローラの操作を格段に簡単にしてくれました。
万能のAボタン
じゃあAボタンは何をするためかというと、これがもう本当にさまざま。
たとえば目の前にはしご(とか、登れそうなもの)があって
Aボタンを押すと登って行ってくれます。
目の前にバクダンがあればAボタンで持つし、持っているバクダンをAボタンで投げます。
水の中にいる時はAボタンで潜ります。
歩いているときにAボタンを押すと回転アタックになります(移動速度がちょいと速くなる)。
もちろん、ゲーム内の人と話すときや、宝箱を開ける時も、Aボタンが活躍します。

3Dを操るために生まれた NINTENDO 64 のニューコントローラ
NINTENDO64ハードウエア紹介
剣の技はBボタンで
それならBボタンは何に使うのか。
剣で戦う時のアクションを出すのがBボタンです。
タテ斬りヨコ斬りはもちろん、Bボタン押しっぱなしで回転斬りも出します。
アクションのストレスを大幅に軽減した「Z注目」
64のコントローラを持つ手の人差し指にあたる部分に「Zボタン」があります。
これが注目したい相手にロックオンするトリガーになります。
3Dのアクションで一番難しいのは、敵に集中して攻撃がしにくいこと。
2Dなら、その場で止まって
あるいは前進後退しながらひたすら攻撃をすればいいのですが
3Dの場合は自分も相手も動くので、非常に操作が難しくなりがち。
「時オカ」から採用された「Z注目」は
常に注目されているターゲットを中心に自分の視点が固定され
自分や相手が動いても、注目を解除しない限りその固定が持続します。
なので、ターゲットを過たず、方向もそれることなく攻撃ができるというわけ。
「Z注目」は3Dアクションゲームに大きな影響を与えました。
現在多くのシューティングゲームで採用されている「エイムアシスト」の
原点にもなっているそうです。
視点の転換
コントローラ的にはとても地味なトピックなんですが、これが意外にいいんです。
普段はリンクのちょい後ろからカメラが追って行って
リンクの操作をサポートする感じですが、
上向きCボタンを押すと、リンクになって「見回し目線」で周囲を見ることができます。
リンクをわざわざ動かさなくても、周囲を見渡せる、すると
いままで見えていなかったギミックが見えたり、
敵の動きが俯瞰できたりします。
その他にも、アクションに伴う映像や、目線で見る風景の変換がとても自然で
切り換えている意識も持たずにすむほどスムーズ。
64マリオは、「マリオを操作する」というイメージですが
「時オカ」は、「自分がリンクになる」という感覚が持てるゲームなんです。
「時オカ」ならではのポイントその2 空気感
TVの中を感じさせない空間の広がり
当時はまだブラウン管のTVでしたが
たかだか幅50cmあるかないかくらいの平面の中で感じる空間の広がりは
ちょっと感動ものでした。
最初のコキリ族の村ののんきな雰囲気から始まり
一番はじめのダンジョンの上下の高さ、狭い穴をハイハイして進む時のきつさ
中ボスやボス戦に挑む時の、出口をふさがれてしまう閉塞感
そしてそれをクリアし、初めてハイラル平原に立った時の得も言われぬ解放感!
あの「どこに行ってもいい、何をしてもいい」と感じる自由さは
まさに「時オカ」の魅力のひとつだと思います。
大人になり、馬に乗って駆けまわれるようになると、解放感はさらに増大します。
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夜の怖さ、敵の近づく気配・・・秀逸なBGM
そうやって広大なハイラル平原に立ちますが、時刻は夕刻。
急いでお城に向かわないと城門が閉まってしまい
平原で夜明かしする羽目になるのですが
夜の平原には敵がいます。
静かな夜の雰囲気が、敵が近づくにつれて、不穏なBGMが少しずつ大きくなる。
こういった「気配」を感じさせる音の工夫が、「時オカ」には随所にあります。
視覚的情報だけでなく、耳からの感覚も研ぎ澄ますことで敵を倒したり回避したり
解ける謎もあります。
これもまたリンクと一体化したと感じられる要因のひとつです。
ビジュアルの明と暗のメリハリ
昼の平原や牧場の明るさ、のんきさや
城下町の賑やかさとは裏腹に
夜のそこかしこの暗さ、そしてダンジョンの不気味さは
それまでの2Dのゲーム画像とは格段に違っていました。
もちろん今見ればカクカクしてるし処理速度も遅いし
美麗でもありませんが
当時の「時オカ」のビジュアルに対する評価は群を抜いていました。
各地の雰囲気、牧歌的な場所と不穏な場所の対比
そして各ダンジョンの立体的な、複雑な構成。
その評価は、美麗さや処理の細かさではなく、
場所やダンジョンごとにきちんとメリハリをつけ
リアルに体感したと感じられる工夫にあるのだと
グラフィック的な技術がはるかに進んでいる現代だからこそ、理解できます。
リンクになってその場を探索し、謎を解き敵と戦うこと
リンクとして色々な場所を駆け抜けることに
プレイヤーが集中して「ひたれる」舞台として
グラフィックが仕立てられているのです。
「時オカ」ならではのポイントその3 時間の操作
日々の時間は普通に流れて行く
「時のオカリナ」なのだから時間が関係しているのは明白です。
ですが、このゲームには普段から時間経過が普通に起こっています。
ハイラル平原にずっと立っていると、
夕刻になるにつれてリンクの影が少しずつ長くなっていきます。
釣りに行くといつの間にか雨が降っていたり
城下町で夜になると野良犬がうろつき始めたり。
でも、1日を無為に過ごしても
カカリコ村でニワトリを追っかけ回しても
城下町のゲーセンでボウリングや的当てに興じてもOK。
世界は救われるのをじっと待っていてくれます。
時間操作(短時間バージョン)
ここで使われるのがオカリナ。
「太陽の歌」は昼夜逆転させる効果があり、目の前のリーデット(ゾンビ)が固まってくれます。
他の歌は時空間操作で、今までなかった足場を出現させたり、
馬を呼び出したり嵐を起こしたり。
大人になって知る歌は自分をその場所へ運ぶワープメロディになります。
オカリナは、直接敵を倒すためのアイテムではありませんが
色々な物事を先に進めて行くための重要なキーアイテムです。

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子どもリンクと大人リンク 7年の時間操作
子ども時代にゼルダ姫に出会い、オカリナに導かれて時の神殿に入ったリンクは
マスターソードを抜くことで「大人」に、
世界を救う「時の勇者」になります。
ですが子どもでないとできないこともあり
何度もマスターソードを抜き差しして、子どもと大人を行ったり来たりします。
忙しいですが、それもまた謎解きの一端なんですね。
シリーズで初めてキャラボイスを採用したゲーム
キャラボイスとは言っても
今のゲームみたいにシナリオを喋ってくれるわけじゃないですが。
リンクは「はっ」とか「やあーっ」としか言わないし
色々とヒントを示してくれる妖精のナビィも
「HEY!」「LOOK!」しか言わない。
でもそれだけでも結構うれしかったりしました。
個人的にツボな大妖精サマ
「時オカ」信者が多いわけ
この「時のオカリナ」のあと、ゼルダシリーズは新作がいくつも出ていますが
どうもこの「時オカ」と比較されてしまうことが多く
なかなか評価が辛くなりがちのようです。
それぞれのゲームにはもちろん良いところも、課題もあるのですが
かなりの長いシナリオにもかかわらず飽きさせない、
やり込み要素満載の割に作業感が少ない、
謎解きや攻略への思い入れなど
ここまでバランスよく作られたゲームは
他にはなかなかないと、私は思います。
リンクになってハイラル救済にのめり込んだ経験は
「ゲームでしか味わえない感動がある」
これを全肯定できるほど、強烈なものでした。
私にとって「時オカ」は、ある意味ゲームの原点であり
ゲーム評価の基準でもあるのです。
そう思っている人は
私の他にもたくさんおられるんじゃないでしょうか。
「ゼルダの伝説 時のオカリナ」は
2011年に3DS版でリメイクされました。
64を持ってない、持っているけどもう起動できないという方も
3DSでプレイできます。

ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D - 3DS
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任天堂の故岩田社長は
「これから時オカを初めて遊べる人が羨ましい」とおっしゃっていたそうですが
かつてプレイした人間でも
やっぱり20年も経っていれば、いろんなことを忘れていて
ほとんど初めてに近い感覚でプレイできました。
そして、あのワクワク感を目一杯堪能できましたよ!
初めての方、それから2度目、3度目の方も
ハイラル王国へ、世界を救いに出かけませんか?