最初はグダグダだった…オールブラックス「ハカ」の歴史

最初はグダグダだった…オールブラックス「ハカ」の歴史

ニュージーランドの先住民族・マオリの舞であり、同国ラグビーナショナルチームが披露することで知られるハカ。今でこそ、国際大会の場で洗練されたパフォーマンスを披露していますが、黎明期から数十年間は、ずっとグダグダな踊りをしていたことはあまり知られていません。


ラグビーファンを魅了してやまないオールブラックスのハカ

ニュージーランドの先住民族・マオリ族が、戦いの前に踊っていた民族舞踊“ハカ”。現在では同国のラグビーナショナルチーム「オールブラックス」が試合前に行う舞として知られており、黒ずくめの大男たちが一糸乱れぬ統率のもと、力強く大声をあげながら踊るその光景は、迫力満点です。

さて、今でこそ、スポーツニュースでオールブラックスの試合におけるハイライトシーンに必ず挿入され、「これを見るだけでも入場料を払う価値がある」とまで評されるハカですが、やり始めた当初は、まったく洗練されていなかったといいます。

オールブラックス 対フランス戦のハカ(2006年)

ハカ (ダンス) - Wikipedia

1905年から始まった

ラグビーでハカが初披露されたのは、1888年のこと。ニュージーランドのマオリ族で構成されたチームにより国際大会で行われたのが最初だと言われています。

ちなみに、ハカには2つのバリエーションが存在し、この時に実施されていた「カ・マテ」は、今もなお踊りつがれている有名な舞。Ka mate, ka mate! ka ora! ka ora!(カマテ カマテ カオラ カオラ)という掛け声で始まるこのマオリ語の歌を簡単に訳すと…

ニュージーランド政府観光局公式サイト より

マオリ族のハカ

畏敬に満ちたハカに迫る | ニュージーランド

グズグズだった黎明期のハカ

オールブラックスの試合に取り入れられ始めたのは、今から100年以上前となる、1905年のこと。イギリス遠征の際に同チームが行って以降、脈々と現在に至るまで受け継がれていくこととなります。しかし、昔はチームの中でちゃんとやる人とやらない人の温度差があったようです。

現に、この1922年・1925年版ハカを見れば分かる通り、振り付けはバラバラだし、ダイナミックさも皆無。チラチラと横の人の動きを見て踊りを真似するという、練習していない人特有の仕草も何人かに見受けられます。およそ、人前でやるクオリティには到達していません。

まったく改善されていない、1967年版と1973年版

オールブラックスの一員としてハカを踊ることは、女王陛下から勲章を賜る以上の栄誉…。

現在ではそんなふうに言われているからこそ、試合前にしっかりと練習時間を取り、本番でも気合十分の踊りを披露しているオールブラックスの面々ですが、今から40~50年前まではまだその「権威化」が確立されていなかったようで、まだ、グダグダのままです。しかし、低クオリティでも披露した際の観客からの歓声はすさまじく、当時から人気が高かったことをうかがい知ることができます。

80年代には、現在のカタチに近くなる

1987年、ラグビー界にとって、一つのエポックメイキングな出来事が起こります。ラグビーワールドカップの初開催です。当時から強豪として名を馳せていたオールブラックス擁するニュージーランドとワラビーズ擁するオーストラリアの共催によってスタートした同大会が現在に至るまで、ラグビーの人気獲得に大きく寄与しているのはご存じの通りです。

ワールドカップで世界中が注目する中、無様な舞は披露できないと考えたのでしょうか。80年代以降、ハカの質は一気に向上。同大会でもパワフルなパフォーマンスで観衆を大いに沸かせています。

90年代ではカッコいいハカが完成!日本ではテレビCMにもなる

90年代に入るともう、今とそん色ない洗練されたハカが披露されています。激しいアクションと険しい表情、競技場に響き渡るような怒号は、私たちがよく知るハカそのものです。

しかし、日本ではまだまだマイナーな存在だったようで、グロンサンDXのテレビCMで俳優の田中実が「がんばってーがんばってーしーごとー!がんばってーがんばってーあーそびー!」と空耳的パロディのハカを踊っていたものの、視聴者的には「なにこれ?」状態でした。
日本においてハカが市民権を獲得するのは、少し前にやっていたアディダスのテレビCMまで待たねばなりません。

こうした広告の効果もあり、今では世界的でもっとも有名な民族舞踊の一つとなっているハカ。2015年には、オールブラックスの英雄ジョナ・ロムーの葬儀において、かつての仲間たちによるハカが披露されています。長きに渡って改良に改良を重ね、今では代表チームの象徴というべき舞となっているからこそ、こうした死者を弔う厳粛なる場で執り行われても、素晴らしく絵になるのでしょう。

(こじへい)

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