MTV Unplugged
今さら説明の必要はないかと思いますが、MTVというケーブルテレビ・チャンネルは、1981年の開局当初は24時間ポピュラー音楽のビデオクリップを流し続ける音楽専門チャンネルでした。
本部ははニューヨークとロンドンにあり、90年代中頃まではロックを中心としたポピュラー音楽の重要なプロモーターとして大きな影響力を持っていました。

MTVの中にいろんな番組が出来るようになるのですが、そのひとつに「MTVアンプラグド」という一世を風靡した人気番組があったのを記憶されていますか?始まったのは1989年で、ボン・ジョヴィのジョン・ボン・ジョヴィとリッチー・サンボラの提案によるものでした。
「アンプラグド」とは、アンプにプラグを差し込まないということで、つまりアコースティックという意味です。
この番組は、普段はエレキ・ギターなどをバリバリ弾きまくっているミュージシャンたちがアコースティック楽器を主にしたアレンジで代表曲を披露するというライブ番組でした。
いつもとは違った表情をみせる楽曲に人々は魅了され、この番組を録音した多くのライブ・アルバムがヒットしました。
ということで、代表的な「MTVアンプラグド」紹介します。
Eric Clapton_Unplugged
「MTVアンプラグド」といえば、やはりコレですね。アンプラグド・アルバムを1990年代前半の流行にしたアルバムといわれている、1992年に発表されたエリック・クラプトンの「アンプラグド〜アコースティック・クラプトン」です。

アンプラグド~アコースティック・クラプトン
全米1位をはじめとして世界中で大ヒットとしたアルバムですが、グラミー賞のアルバム・オブ・ザ・イヤーに輝き、エリック・クラプトンは最優秀男性ロック・ボーカル・パフォーマンス賞も受賞しています。
更に本作に収録されている「いとしのレイラ」が最優秀ロック・ソング賞を受賞というダメ押し付きです。
しかし、オリジナルを知ってる者としては、この「いとしのレイラ」を最初に聴いた時にはあまりの変わり具合に驚きました。
因みにオリジナルはこれです。
Paul McCartney_Unplugged
さて次にご紹介すのは、ポール・マッカートニーです。まだ「アンプラグド」という言葉が一般的ではなく、アルバムが限定発売だったこともあり、もしかするとあまり知られていないのかもしれませんが、1991年1月に放送されたMTVアンプラグドに登場しています。
で、この模様を収録したものがライブ・アルバム「公式海賊盤」です。思いのほか、早い登場ですね。邦題のアルバム・タイトルには「アンプラグド」の文字がありません。

公式海賊盤
アルバムには17曲しか収録されていませんが、実際には22曲演奏されていたそうです。 ビートルズ時代の曲からウィングス時代の曲、ソロになってからの曲やカバー曲。そして、ポール・マッカートニーの処女作「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール」まで演奏されておりファンとしては非常に楽しめる内容となっています。
中でも興味深いのは、ジョン・レノンがカバー・アルバム「ロックン・ロール」で取り上げていたジーン・ヴィンセントの「ビー・バップ・ア・ルーラ」をポール・マッカートニーのあの声で聴くことが出来ることです。
ジョン・レノンのバージョンと聴き比べてみると楽しいですよ。
Rod Stewart_Unplugged
これも是非とも紹介せずにはおれません。ロッド・スチュワートです。ロッド・スチュワートのMTVアンプラグド・ライブは1993年2月5日に行われています。
特筆すべきは、ギターでザ・ローリング・ストーンズのロン・ウッドが参加していることですね。二人はその昔フェイセズという同じバンドに在籍していたんです!これはファンには嬉しいプレゼントでした。

アンプラグド
ロッド・スチュワートのように歌が上手い人をアンプラグドで聴くと楽曲の良さが際立ってたまらないですね。ついつい引き込まれてしまいます。
Nirvana_Unplugged
MTVアンプラグドには他にも大物と呼ばれているミュージシャンが多数出演していた訳ですが、ボブ・ディランやニール・ヤングなどアコースティックな作品を出している人たちよりも、普段は思いっきりロックしている人の方が当然興味深く観ることができます。
その最たる例がニルバーナでしょう。人気絶頂時ということもあり1曲、1曲、言葉のひとつ、ひとつが説得力を持って胸に迫る素晴らしいライブを展開しています。
出演時のスタジオのセットが葬式をイメージしたものとなっていますが、この後を暗示していたかのようで、ライブから半年と経たずにボーカルのカート・コバーンは自殺してしまいます。
アルバムはカート・コバーンの死後最初に発表されたニルバーナのアルバムということもあり、世界的な大ヒットととなりました。

MTV・アンプラグド・イン・ニューヨーク
「MTV・アンプラグド・イン・ニューヨーク」にはカバー曲が多数収録されていますが、通常のライブではなかなか聞くことの出来ない曲を聴くことができる、そんなところも「MTVアンプラグド」の楽しみのひとつですね。
興味深いカバー曲をニルバーナもやっていますが、一番驚いたのはデヴィッド・ボウイの「世界を売った男」です。これが、また、素晴らしい出来栄えなんです!
残念ながら「MTVアンプラグド」は、1999年で終了してしまいます。音楽の好みの多様化と、インターネットで好きな時に音楽を楽しむことが出来る環境が整ったことが大きな原因とか。
それでも、2001年になるとMTVジャパンが独自に日本のミュージシャンを対象とした番組制作するようになり、現在でもMTVやミュージシャンの要望によって不定期に企画され、放送されています。