Glam Rock
1970年代前半から中盤にかけて主にイギリスで流行した音楽、グラム・ロック。男性でも濃いメイクをして、SFチックな衣装をまとうというのが外見的な特徴です。当時のもう一つの流れであったハードロックが男性的な力強さや激しさを前面に押し出していたのとは対極にあります。
それがどのようなものであったがが分かる映画があります。

ベルベット・ゴールドマイン
1998年に制作された「ベルベット・ゴールドマイン」というイギリス映画です。記憶されている方も多いかと思いますが、舞台は70年代のロンドン、主人公はデヴィッド・ボウイがモデルと言われており、まさにグラムの時代を追体験できる映画です。
デヴィッド・ボウイはグラム・ロックだけでなく様々なスタイルの音楽をやっていますが、イギリス人にとってはグラム・ロックを象徴する存在なのでしょうね。
しかし、この映画を観てもグラム・ロックの音楽的な特徴となるとイマイチはっきりとしません。ブギーというのは特徴のよにも思えますが、全部が全部ブギーだったわけでもありませんしね。
ということで、代表的なグラム・ロッカーをご紹介することで、グラム・ロックへ迫りたいと思います。
David Bowie

デヴィッド・ボウイ
グラム・ロッカーとして最初にご紹介しなくてはならないのは、やはりデヴィッド・ボウイでしょう。映画「ベルベット・ゴールドマイン」のモデルでもありますが、何よりもこの映画のタイトルはデヴィッド・ボウイの曲名から取られています。
この時代を代表するアルバムが1972年にリリースされた「ジギー・スターダスト」です。デヴィッド・ボウイは時代ごとに音楽スタイルを変貌させながら数多くの名作、ヒット作を送り出しています。
セールス的には後年の「レッツ・ダンス 」に「ジギー・スターダスト」及びませんし、音楽的な革新性ということでは「ロウ」といった素晴らしいアルバムを発表していますが、それでもデヴィッド・ボウイの代表作は「ジギー・スターダスト」となるのではないでしょうか。
如何ですか「ジギー・スターダスト」は?後年のデヴィッド・ボウイからは想像できない奇抜な衣装とメイク!そこからグラム・ロックは読み取れても、いくら名曲、いくらデヴィッド・ボウイの代表曲といっても音楽的にグラム・ロックとは何なのか?ということは分からないですよね。
それでは次にいきましょう。
Roxy Music

ロキシー・ミュージック
上の写真を見てください。ボーカルのミスター・ナルシストことブライアン・フェリーは、左から2人目のトラ柄のジャケットを着こんだ男です。その左がフィル・マンザネラ で右がブライアン・イーノですね。現在の姿からは流石に想像できませんが、いや、これはこれでカッコいいですね。
音楽的にはどうかと言いますと、当然「アヴァロン」のような洗礼された感じはありませんが、なかなか面白いのが下の映像です。
カメラ目線がもういかにもブライアン・フェリーしています。そしてやたらと派手な衣装で目立っているのがブライアン・イーノですね。
当時はイーノの人気が高すぎてブライアン・フェリーが嫉妬し、イーノを解雇したという有名な逸話が残っています。
Gary Glitter
日本での認知度はあまり高くはないと思いますが、グラム・ロックのファンの中では根強い人気を誇るのがゲイリー・グリッターです。70年代前半にイギリスでは3曲の1位を含む11曲連続でトップ10ヒットを出しています。中でも1972年の大ヒット曲「ロックンロール」がゲイリー・グリッターの代表作といっていいでしょう。
「ロックンロール」はPart 1とPart 2に分かれているユニークな曲です。
Part.1はなんとなくスージー・クアトロにも通じるポップなブギーですね。
そして何と言っても凄いのがPart.2です。これがホントに凄い!コール・アンド・レスポンスだけで出来ているような曲で、ほとんど手拍子と掛け声だけしかありません。しかし、この曲はアメリカで全米7位を記録するという大ヒットとなっています。
Silverhead

シルヴァーヘッド
上の画像は1972年にリリースされたシルヴァーヘッドのファーストアルバムのジャケットです。いかにもなジャケット!見事にグラム・ロックを体現していてファンでなくとも思わずジャケ買いしてしまいそうな出来栄えですね。
シルヴァーヘッドはマイケル・デ・バレスを中心とした5人組で、活動期間は1974年までとまさにグラム・ロック全盛期。ボーカルのマイケル・デ・バレスには華があり、短命に終わったことが惜しいバンドです。
キワモノのように見られていますが、ギターのロビー・ブラントは、レッド・ツェッペリン解散後のロバート・プラントのソロ・アルバムに参加していますし、ベースのナイジェル・ハリスンは、1978年から1982年までブロンディに参加していました。皆、なかなかの実力者なんですよ。
イギリス本国よりも日本での人気が高かったシルヴァーヘッドは、2012年には日本でのみ再結成ライブを行っています。
Amazon.co.jp: シルヴァーヘッド : 恐るべきシルヴァーヘッド - ミュージック
T.Rex

T・レックス
さて、最後はやはりマーク・ボラン率いるT・レックスです!グラム・ロックといえば外すことはできません!!と言うよりも、グラム・ロックそのものです。
マーク・ボランと並ぶグラム・ロックの2大スターであるデヴィッド・ボウイが、グラム・ロック以降どんどんスタイルを変えていったのと対照的に、マーク・ボランはグラムに生き、グラムに死んだといってもいいかもしれません。その存在は眩しいばかりです。
1968年のデビュー当時はティラノザウルス・レックスと名乗っており、マーク・ボランとパーカッションのスティーヴ・トゥックの二人組でした。1970年にアコースティック・ギターからエレクトリック・ギターに持ち替え、バンド名もT・レックスと変更、1971年にベースとドラムを加え4人組となってアルバム「電気の武者」をリリース、このアルバムからシングル・カットされた「ゲット・イット・オン」ともども大ヒットし、グラム・ロックの幕が開けることになります。
さて、5組のミュージシャンを見てきたわけですが、グラム・ロックの音楽的な定義は今一つ分かりづらいですねぇ。ただ、どのミュージシャンも今聴いてもポップでキッチュ。とても軽快なロックンロールを奏でていて、カッコいいです。
衣装はさすがに今では着ることに躊躇しますが、音楽は全然今でも楽しむことができます。
グラム・ロックはポップでキッチュなロックンロール、これでいいように思います。これがいつでも最高なのですから。