「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う

「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う

ウディ・アレンが好きでも嫌いでもそんなの関係ない。とにかく、「映画芸術」みたいなものを語りたいなら外せない映画ではある。とはいえ、そんなに肩ひじを張って観る必要はない。ただ、楽しめばいい。そうすれば見えてくるはずだ。「人生の楽しみ方」が。そんなものが詰まっている映画が、この『アニー・ホール』なのだ。


ウディ・アレンの悪行(?)は日本なら完全にアウトだが・・・

 ウディ・アレン本人は、「カメラの向こうの映画の世界に逃げ込んで生きてきた」とインタビューで話しているようだが、表現の世界で生きる人間がよくのたまう言葉であり、行き着く思考でもあるので、これについて僕は額面通りには受け取ってはいない。勤勉というのとも違い、映画製作が単純に好きで好きで仕方ないのだと思う。
 だいたい、ウディ・アレンの普段の生活が、そんなに苦しくてどこかに逃げ込むしかなかったのだとはあまり思えない。もちろん、この地球上に生きる一人一人の人間には、他人が想像もできない悩みやコンプレックスやストレスがあって、その人の心を蝕んでいるなんてこともあるのはわかる。ウディ・アレンだってそうではないとは言い切れない。でも、思えない。
 ダイアン・キートンと生活したあとに、女優のミア・ファローと事実上の夫婦となり、その後、ミア・ファローの養女と付き合っちゃう(大恋愛後、結婚)という、離れ業をやってのけたことを考えると、逃げ込むなんて言われてもどうなの? と思ってしまう。
 奥さんの養女とネンゴロになるなんて、昨今の日本なら許されるどころか、まあ、軽く芸能界から抹殺されそうだけど、すでにウディ・アレンは超大物だったから問題なかったのかもしれないが、それにしてもである。もちろん、大きな騒動にはなった。批判もさんざんされた。でも、そのさなか、マスコミに放った一言がまた強烈だ。
「僕は娘を愛したのではない。一人の女性を愛したのだ」
 ここまで堂々と言ってのけられると、もう誰も何も言うことはできない。石田純一も驚きの潔さである。
 とはいえ、ミア・ファローの自伝にあるアレンの言動のひどさは話題にもなったようで、でも、その後も元気に映画製作にいそしんでいることを考えると、ある意味、本当に幸せなおっさんだなあとも思う。
 精神の破綻を理由に、ほとんど奥さんのような人の養女とやっちゃって、奥さんにひどいことをさんざん言って、でも「映画製作は逃げ込む場所だ」みたいなこと言っても、なんら評価が下がることなく、芸術家として十分に成功しつづけてしまう・・・これを幸せと言わずしてなんといえようか。
 芸術家なら、ちょっと精神が病んでるから、あっけらかんと何をしてもいいなんてのは、映画芸術の神様から愛されたからとはいえ、凡人にはいささか納得しづらいとはいえる。
 でも、ウディ・アレンが憎めないおっさんなのは間違いない。そういう部分でもこの人はつくづく得なのだと思う。
 

ミア・ファロー。美しいですな。

ダイアン・キートンの魅力全開! とにかく可愛いダイアンなのだ。

 ダイアン・キートンという女優は、世界の女優の美しさ度みたいなことから考えると、それほど高いところにいるわけではないと思う(余計なお世話だが)。しかし、この映画ではどうしてこんなにチャーミングなのだろう。生き生きしていて、本当に素敵だ。それもこれも、ウディ・アレンの監督としての成せる業か、恋人だからこそ、その魅力を最大限に引き出せたのか。まあなんにしてもアカデミー賞の受賞は文句ないところだろう。
 ちなみに、アカデミーの主演女優賞には4回のノミネートされ、『アニー・ホール』で受賞。ゴールデングローブ賞では8回ノミネートされ、『アニー・ホール』と『恋愛適齢期』で受賞している。

美しさ度がどうのこうのと言いましたが、この笑顔は最高ですね。すみません。

とにかく、仕掛けが多すぎて、そのすべてにツッコミを入れられるなら、かなりなもんだけど、やっぱりそれは無理で、だから素直な気持ちで楽しむだけなのだと思う。

 普通の日本人が、この映画の中の仕掛けすべてにツッコミを入れるのは基本的には無理だとは思う。無理だと思うなんて言いきってる僕自身はほとんどわからず、さまざまな情報を得たうえで、そんなことを言ってるので、まったくもって説得力はないのだが、改めてそれらの仕掛けを知ってから観ていると、この映画は本当にさらに楽しいのだ。

 まあ、なんにしても、人生の楽しみ方すべてを教えてくれる映画だと思う。
ちなみに、「その根拠は?」なんて問うようなマネはしないでほしい。
 ニュアンスなのだ。人生は数多くのニュアンスの積み重ねで成り立っている。
ロジックがどうこうなんて言ってると、幸せはきっと遠いところに行ってしまうはず。
 そんな心構えで、『アニー・ホール』を観ればいいのだと思う。
 

アルビー&アニーの二人が映画の行列待ちで出くわす、したり顔の男(左)。映画論やメディア論をこれ見よがしに女性に語っているのを聞いて、アルビー・シンガーは我慢できなくなる。そのしたり顔の男は、メディア論の重鎮マーシャル・マクルーハン(右)の理論を否定するも、本人が出てきてしまうという仕掛け。ここには劇中のアルビー・シンガーがお客さんに語り掛けるという掟破りもあり、まったくもって楽しめる。

そして、公園で談笑する二人のばかばかしい会話で、「トルーマン・カポーティのそっくりさんがいる」とか言うと、カポーティ風な人が通り過ぎる場面では、それは実は本人だったりとか、本当にどこまでも楽しませてくれます。でも、正直、初めて見たときはそれが本人かどうかなんてわからなかったけど・・・。まあ、何度も観ればいいんです。それでも楽しめる映画なので。

では、こちらをどうぞ!

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