「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う

「人生の楽しみ方」を教えてくれるウディ・アレンの傑作映画『アニー・ホール』は、観ておいて本当に損はないと思う

ウディ・アレンが好きでも嫌いでもそんなの関係ない。とにかく、「映画芸術」みたいなものを語りたいなら外せない映画ではある。とはいえ、そんなに肩ひじを張って観る必要はない。ただ、楽しめばいい。そうすれば見えてくるはずだ。「人生の楽しみ方」が。そんなものが詰まっている映画が、この『アニー・ホール』なのだ。


ウディ・アレンとボブ・ディランの「グッド・シンキング」

 ウディ・アレン最高のエピソードといえば、『アニー・ホール』でアカデミー賞の作品賞と監督賞、さらに脚本賞を受賞したにもかかわらず、欠席してみせたこと。こんな痛快なことはない。2016年、ボブ・ディランもノーベル文学賞の授賞式に欠席した。素晴らしい。男子たるもの、それぐらいの気概が必要だ。「権威に背を向けよ! ボーイたちよ」と誰が言ったかはともかく、長いものに巻かれないこと、これこそがこの世界に生まれ落ちて、僕らが成すべきことだ。
 ウディ・アレンはそういう意味でそうとう「グッド・シンキング・ガイ」 だ。まあ、グッド・ルッキングではないよなあ。身長167センチで髪は薄くてメガネをかけて神経質そうで、爽やかさのカケラもないんだから(ただ、アジア人には親近感があるかもしれないが)。
 でも、まあ、アカデミー賞の欠席は、本当に素敵だ。

とりあえず、ウディ・アレン。
この感じ、あんまり友達にはなれそうにない。

ちなみに、アカデミー賞受賞式の夜は、ニューヨークの「マイケルズ・パブ」という行きつけのジャズ・クラブで得意のクラリネットを吹いてたとか。そんな伝説的な話、男ならぜひ作ってみたいでしょ。そんなウディ・アレンの最高傑作と言われる映画がこの『アニー・ホール』。まあ、真っ当な映画を期待してるなら観るのはよした方がいい作品。個人的には好きだけど、「『ランボー』が最高!」という人にはおすすめしない、とりあえず。

「マイケルズ・パブ」の貴重フォト。
ネット時代に乾杯!

「破裂するまで何十億もかかる。それまで楽しまなきゃ」と笑い飛ばしてみる

 ウディ・アレンを手放しで好きだなんて言ってる人間はだいたいが、自意識過剰のうぬぼれ屋に過ぎない。学歴がどうとか、ロジックがどうとか、周りの人間がバカで自分はこんなに賢いとか思ってる人間が好きになるのだ。いや、違うか。
 こういう側面もある。いわゆる文化人思考の人間。なんでも評論してしまう癖があって、人間はこうあるべきだとか、世界はこんなふうにできているとか、だからこうじゃなきゃいけないとか、面倒くさい人たちがきっと好きなんだ、この映画を。うーん、違うか。
 そう、こんな映画が好きなのは、「宇宙は膨張している、ふくれあがって破裂したらすべてはおしまいだ」とか言ってしまう子供時代を送った人間だ。あっ、それ、この映画に出てくる主人公アルビー・シンガーの子供のときのセリフだった。

主人公アルビー・シンガー、子供の頃。
口元に膨張せんとする宇宙が宿ってる。

このセリフがイカしてる。そう、膨張してるんだ。いったい、なにが膨張してるって? 1977年。40年前。主人公に、それも子供にそんなこと言わせてるウディ・アレン。膨張してるのは人間の業欲なのかもしれないし、悪意なのかもしれないと最近思うじゃないか。予言的だと思えて、頭がシビれる。それは映画冒頭のシーンだ。その子供の言葉を聞いた医者のセリフがいい。
「破裂するまで何十億もかかる。それまで楽しまなきゃ」
 こう言って笑い飛ばす。まさに気持ちいいぐらいに。
 このシーンですでになんだかこの映画を好きになる。
 いや、好きになる人と、「意味不明・・・」と言って観るのをやめる人がいるはずだ。

 まあ、とにかくこの映画について何かを語ろうとすると、支離滅裂になる。それは仕方のないことだ。だって、この映画だって決して理路整然としてるわけじゃない(と思う)。もしかしたら、エラい映画評論家やロジック好きのうんと賢い人は、「この映画はそう見せて実は計算されつくしてる」なんて言うかもしれないけど、そんなことはどうでもいい。どうでもいいっていうか、わかる人だけそう思えばいい。

 そういえば、数年前に「そんなの関係ねぇ!」ってギャグが流行ったけど、最近、この言葉の偉大さと奥深さに僕は気づいてしまった。そう、関係ないのだ。みんな、なにか自分に関係あると思いすぎて、思いたくて、関係し続けたくて、自分の首を絞めていることに気がつかない。息苦しく生きてることに気づかなくなってる。それもこれも、この宇宙時代に宇宙が膨張していることにみんな気づかないからだ。
 ウディ・アレンはもしかしたら、そんなことを40年前に言いたかったのかもしれない。それをアンサーで、小島よしおは返してみせた・・・。まあ、そんなことはないか。

『アニー・ホール』の冒頭シーンを楽しんで

 ところで、『アニー・ホール』のウィキによると、「ロジャー・イーバートは『おそらく誰もが好きなウディ・アレン映画だ』と述べている」とあるが、それはウディ・アレンが好きな人が前提ということだ。まあ、ウディ・アレンの容姿にまったく関心がないブラピファンのお姉さん方には、まったく理解できない映画であることは間違いない。
 ウディ・アレン映画でもっとわかりやすく誰もが心寄り添える恋愛映画もたくさんあるような気もするが、きっとそっちが好きな人もいるだろう(『ローマでアモーレ』なんてそんな感じじゃなかったかなあ)。でも、アメリカで最も有名で信頼される映画評論家であったらしい人(ロジャー・イーバート)が言うのだから、この『アニー・ホール』についてはいちおう襟を正して観てもらうのが、ある意味正当な映画文化への寄り添い方であるとは思う。

なんといっても、「ハリウッド業界が最も好きな映画ランキング100」でも堂々の18位ですから。詳細は下のリンクで!

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 しっかし、この素晴らしいインターネット時代の21世紀では、映画の冒頭のシーンがこの場で観れてしまう(いいのだろうか・・・)。1977年公開時には誰も想像がつかなかっただろう。ひとまず、この冒頭シーンを観て、自分の態度を決定されんことを望む。
 こんな顔の男に、頭っからペラリペラリしゃべられるのはうんざりだと言う人は必ずいるはずだ。そんな人はワザワザ、TUTAYAにDVDを借りに行ったり、名作だからといってAmazonで大人買い(量ではなく踏ん切りの意味で大人)する必要はないのである。

さて、関心が出てきた人にはこの先も読んでいただこう。

『アニー・ホール』が生まれた時代

 『アニー・ホール』は、1977年の映画である。昭和でいうと52年。
 アメリカでジミー・カーター大統領が就任し、ロッキード事件の丸紅ルート初公判があり、青梅マラソンで初の死者が出るとか、小学館から『コロコロコミック』が創刊されるとか、全米女子プロゴルフ選手権で樋口久子が優勝して日本人初の世界タイトルを獲得するとかがあって、さらに、ニューヨークが大停電したり、王さんがホームラン世界新記録の756号を達成したり、ダッカ日航機ハイジャック事件が発生したり、喜劇王チャップリンが死んだ年なのだ。

監督、脚本、主演をこなし、後世に残る大きな成功をおさめたのはチャップリンとウディ・アレンぐらいだと言われる。チャップリンの成功の記録は下のウィキペディアで。

チャールズ・チャップリン - Wikipedia

『アニー・ホール』・・・その物語。

 舞台は、ニューヨークとロスアンゼルス。
 神経質で自閉症気味なのに、マシンガントークのコメディアン、アルビー・シンガーと、ちょいと女優でシンガー志望(?)のアニー・ホールとの恋愛映画(たぶん)。
 とにかく、アニー・ホール役のダイアン・キートンが最高だ。最高だなんて簡単に書いてしまうとたいていは、まあ伝わらないと思うけど、案の定、伝わってないと思うが、とにかく観てほしい。なんといっても、アカデミー賞主演女優賞だし。上の方で権威的なものに背を向けよ的なことを言っておいて、アカデミー賞受賞を振りかざすのも何かと思うけど、わかりやすいので書いてみた、情報として。いずれにしても、こんなに魅力あふれる女性アニー・ホールが、なんでアルビー・シンガーのような風采の上がらないめんどくさい男を好きなのかを観察するのも面白いのである。

 二人の出会いは、テニスコート。この手のタイプ(アルビー・シンガーのことだ)の人間がテニスをやるなんてのは、長年テニスをやってきた僕としては、少々考えにくいが、でもテニスで出会うという設定は当時を象徴しているのだろうか。
 アニー・ホールはダンロップの木製のラケットを手にしていた。当時は貴公子ビヨン・ボルグ、悪童コナーズ全盛、テニスが世界中で流行していたときだ(たぶん)。ウディ・アレンはある意味、抜け目ないのだと思う。 

 で、そこで二人は出会うわけだが、基本的にはアニー・ホールがアルビー・シンガーを誘っている。というか、興味があったのだろう。積極的に自分の車に乗せ、恐ろしく下手な運転で自分の家の前に連れていき、部屋にどう? と可愛く誘う。その一連の、二人のやりとりは文句のつけようもなく楽しく、素敵なのだ。 
 

黒のフェルト帽、黒のヴェスト、男物のシルクタイを合わせた白のオックスフォードシャツ、ウエストから広がっているカーキ色のバギーパンツ・・・映画の中で、「運転は世界一下手だけど服はいい」とアルビーに言われ、アニーは笑いながら「グラミー・ホールにもらったのよ」と言う。おばあちゃんにって・・・。いやいや、良い脚本です。

 しかし、アニー・ホールが「ワインでもどう?」と誘い、アルビー・シンガーの返した言葉がぶっ飛んでていい。セラピーの予定がどうのこうのと。アメリカは昔からセラピーに通うことがそれほど問題視されないとはいえ、15年も通ってたと聞かされながらも、アニー・ホールが「マジで?」と言いながら笑顔なのがいい。日本だったら、15年もセラピーに通ってる初対面の40歳の男を家に上げる女性はほぼいないだろう。

 そんなこんなで、部屋では二人の言葉は尽きない。アニー・ホールはとにかくテンションが高い。そして、アニー・ホールが棚からワインを取り出して、部屋から屋上のようなところに出る。ニューヨークの建物と花をバックにワインをつぐ。ああ、素敵だ。ニューヨークに憧れる人間にはよだれの出そうなシーンだ。

気軽にこんな場所に出れるアパートメントに住んでみたいと思いませんかってんだ、ホントに。

 こんなふうに二人の出会いを書いてるけど、その前にいろいろな “くだり” がある。
 映画の待ち合わせでなんだかんだ、キッチンでロブスターをつかんでなんだかんだ、ベッドでなんだかんだ、まあ、とにかくいろいろある。いずれにしてもアニー・ホールは魅力的だ。
 そして、アルビー・シンガーはいろんな女とベッドを共にしてる。こんな男がモテるなんて世も末だと思うかもしれない。それでも、この映画は進行していくのだ。

ロブスターをつかんでみせる・・・こんな様子を写真におさめるなんて実に “イマ” 的ではないだろうか。40年前の映画だというのに。これもまさに予見的だと言える!!

 この先、この物語をずっとこんなふうに語り続けたら、観る必要はなくなってしまうかもしれない。というか、なんとなく内容がわかってしまって興味をなくしてしまうかもしれない。だからというわけではないが、「その物語」についてはこのくらいにしておいた方がいいのかもしれない。
 「~かもしれない」なんて語尾を三回も重ねるとなんだかスゴくもったいぶってるような気になるけど、実際、そうなのだ。もったいぶっている。もったいぶりたくなる映画なのだ。
 だから、ここらへんで、もう「アニー・ホール」については、語らない方がいいかもしれない、と思う。

キャスト&スタッフ・・・

 この映画に関する限り、いやどんな映画でもそうだが、キャスト&スタッフのクレジットに関心がある人間がどれだけいるだろう。まあ、もちろん、将来、女優になりたいとか、監督になりたいとか、編集やりたいとか、美術やりたいとか、プロデューサーやりたいとか、ぼんやりでも明確にでも思ってる人は目を皿のようにしてエンドクレジットを見るかもしれない。でも、たいていは、映画館でエンドクレジットの最後まで残っているようなお客さんはそんなに多くないのだ。だから、ここで、スタッフ&クレジットを載せることが本当に必要かどうかを一瞬考えてしまうけど、この映画に関しては、そういうものにこだわるような人間が好む映画のような気がするので、載せておこうと思う、いちおう。

<キャスト>
アルビー・シンガー・・・ウディ・アレン
アニー・ホール・・・ダイアン・キートン
ロブ・・・トニー・ロバーツ
アリソン・ポーチニック・・・キャロル・ケイン
トニー・レイシー・・・ポール・サイモン
パム・・・シェリー・デュヴァル
ロビン・・・ジャネット・マーゴリン
ミセス・ホール・・・コリーン・デューハーストウディ・アレン
デュエイン・・・クリストファー・ウォーケン

<スタッフ>
監督 ウディ・アレン
脚本 ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン
製作 チャールズ・H・ジョフィ/ジャック・ローリンズ
製作総指揮 ロバート・グリーンハット
撮影 ゴードン・ウィリス
編集 ウェンディ・グリーン・ブリックモント/ラルフ・ローゼンブラム

 ちなみに、‟撮影” をやりたいという裏方志向の人なら、ゴードン・ウィルスの名前を発見して、観ておかなければいけないと自分に言い聞かせるだろう。『ゴッド・ファーザー』3部作すべての撮影を手掛け、世界に衝撃を与え、そして、ウディ・アレンとコンビを組み、何作も手掛けた、70年~80年代アメリカを代表する名キャメラマンなのだ。「ウディ・アレンの映画」というより、「ゴードン・ウィルスの撮影」ということで観る人がいたりする(と思う)。それって、うん、とてもロマンチックなことだと思う。世界が美しく見えないかい?

ウディ・アレン作品の素晴らしさと多作さについて

 ウディ・アレンの作るものが素晴らしいということに僕は異存はない。何が素晴らしいかって、アイディアに満ち溢れていて、ロマンチックで、心に寄り添ってくる。とはいえ、ほとんど毎年映画を作っている究極の多作監督なので、すべて観ているわけでは、もちろんない。でも、たまたま観ているものがよかったのか、ウディ・アレンの作品を僕はいつも安心して楽しむことができる。時間が許されるなら、デビュー作からゆっくりと全部観たいとも思っている。
 それにしてもウディ・アレンの尽きないアイディアと創作意欲は本当にスゴいと思う。映画評論家の川本三郎氏は、「ウディ・アレンの美徳は、一見ダメ男のようでいながら実は誰よりも勤勉なことだろう」と言っている。もっともこれは映画製作だけでなく、小説を書き、クラリネットを吹き、恋をするという、喋るのと同じぐらいの落ち着きのなさでいろいろなことをこなしていくからだといってもいい。

ウディ・アレン - Wikipedia

ウディ・アレンの悪行(?)は日本なら完全にアウトだが・・・

 ウディ・アレン本人は、「カメラの向こうの映画の世界に逃げ込んで生きてきた」とインタビューで話しているようだが、表現の世界で生きる人間がよくのたまう言葉であり、行き着く思考でもあるので、これについて僕は額面通りには受け取ってはいない。勤勉というのとも違い、映画製作が単純に好きで好きで仕方ないのだと思う。
 だいたい、ウディ・アレンの普段の生活が、そんなに苦しくてどこかに逃げ込むしかなかったのだとはあまり思えない。もちろん、この地球上に生きる一人一人の人間には、他人が想像もできない悩みやコンプレックスやストレスがあって、その人の心を蝕んでいるなんてこともあるのはわかる。ウディ・アレンだってそうではないとは言い切れない。でも、思えない。
 ダイアン・キートンと生活したあとに、女優のミア・ファローと事実上の夫婦となり、その後、ミア・ファローの養女と付き合っちゃう(大恋愛後、結婚)という、離れ業をやってのけたことを考えると、逃げ込むなんて言われてもどうなの? と思ってしまう。
 奥さんの養女とネンゴロになるなんて、昨今の日本なら許されるどころか、まあ、軽く芸能界から抹殺されそうだけど、すでにウディ・アレンは超大物だったから問題なかったのかもしれないが、それにしてもである。もちろん、大きな騒動にはなった。批判もさんざんされた。でも、そのさなか、マスコミに放った一言がまた強烈だ。
「僕は娘を愛したのではない。一人の女性を愛したのだ」
 ここまで堂々と言ってのけられると、もう誰も何も言うことはできない。石田純一も驚きの潔さである。
 とはいえ、ミア・ファローの自伝にあるアレンの言動のひどさは話題にもなったようで、でも、その後も元気に映画製作にいそしんでいることを考えると、ある意味、本当に幸せなおっさんだなあとも思う。
 精神の破綻を理由に、ほとんど奥さんのような人の養女とやっちゃって、奥さんにひどいことをさんざん言って、でも「映画製作は逃げ込む場所だ」みたいなこと言っても、なんら評価が下がることなく、芸術家として十分に成功しつづけてしまう・・・これを幸せと言わずしてなんといえようか。
 芸術家なら、ちょっと精神が病んでるから、あっけらかんと何をしてもいいなんてのは、映画芸術の神様から愛されたからとはいえ、凡人にはいささか納得しづらいとはいえる。
 でも、ウディ・アレンが憎めないおっさんなのは間違いない。そういう部分でもこの人はつくづく得なのだと思う。
 

ミア・ファロー。美しいですな。

ダイアン・キートンの魅力全開! とにかく可愛いダイアンなのだ。

 ダイアン・キートンという女優は、世界の女優の美しさ度みたいなことから考えると、それほど高いところにいるわけではないと思う(余計なお世話だが)。しかし、この映画ではどうしてこんなにチャーミングなのだろう。生き生きしていて、本当に素敵だ。それもこれも、ウディ・アレンの監督としての成せる業か、恋人だからこそ、その魅力を最大限に引き出せたのか。まあなんにしてもアカデミー賞の受賞は文句ないところだろう。
 ちなみに、アカデミーの主演女優賞には4回のノミネートされ、『アニー・ホール』で受賞。ゴールデングローブ賞では8回ノミネートされ、『アニー・ホール』と『恋愛適齢期』で受賞している。

美しさ度がどうのこうのと言いましたが、この笑顔は最高ですね。すみません。

とにかく、仕掛けが多すぎて、そのすべてにツッコミを入れられるなら、かなりなもんだけど、やっぱりそれは無理で、だから素直な気持ちで楽しむだけなのだと思う。

 普通の日本人が、この映画の中の仕掛けすべてにツッコミを入れるのは基本的には無理だとは思う。無理だと思うなんて言いきってる僕自身はほとんどわからず、さまざまな情報を得たうえで、そんなことを言ってるので、まったくもって説得力はないのだが、改めてそれらの仕掛けを知ってから観ていると、この映画は本当にさらに楽しいのだ。

 まあ、なんにしても、人生の楽しみ方すべてを教えてくれる映画だと思う。
ちなみに、「その根拠は?」なんて問うようなマネはしないでほしい。
 ニュアンスなのだ。人生は数多くのニュアンスの積み重ねで成り立っている。
ロジックがどうこうなんて言ってると、幸せはきっと遠いところに行ってしまうはず。
 そんな心構えで、『アニー・ホール』を観ればいいのだと思う。
 

アルビー&アニーの二人が映画の行列待ちで出くわす、したり顔の男(左)。映画論やメディア論をこれ見よがしに女性に語っているのを聞いて、アルビー・シンガーは我慢できなくなる。そのしたり顔の男は、メディア論の重鎮マーシャル・マクルーハン(右)の理論を否定するも、本人が出てきてしまうという仕掛け。ここには劇中のアルビー・シンガーがお客さんに語り掛けるという掟破りもあり、まったくもって楽しめる。

そして、公園で談笑する二人のばかばかしい会話で、「トルーマン・カポーティのそっくりさんがいる」とか言うと、カポーティ風な人が通り過ぎる場面では、それは実は本人だったりとか、本当にどこまでも楽しませてくれます。でも、正直、初めて見たときはそれが本人かどうかなんてわからなかったけど・・・。まあ、何度も観ればいいんです。それでも楽しめる映画なので。

では、こちらをどうぞ!

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