人間の底知れぬ欲深さを描いた『マルサの女2』。いまこそ必見!80年代最高の脱税エンターテインメント!?

人間の底知れぬ欲深さを描いた『マルサの女2』。いまこそ必見!80年代最高の脱税エンターテインメント!?

日経平均株価が3万円を超えようとかというバブル景気真っ只中の1988年。『マルサの女2』は、前年大ヒットした『マルサの女』の2作目として公開された。「スッキリしないラストシーン」などの賛否もあったが、1作目同様、多くの観客を集めた。90年代以降の日本社会を予見していたともいえる伊丹十三監督の80年代最高の脱税エンターテインメント(!?)『マルサの女2』をご紹介!


本当に信じられるものは何なのか!? 救いのない時代を予見した『マルサの女2』。

 1988年といえばまさにバブル景気真っ只中。誰もが浮かれ、誰もが日本は永遠の栄華に酔いしれるんだと信じていたころ(そうでもないかな)。日経平均株価が終値3万159円(12月28日)という、まったくもって驚くべき時代だった。
 しかし、そんなバブルはあっという間にはじけ(当たり前のように)、宗教法人オウムによる地下鉄サリン事件で誰もがどんなことに巻き込まれてもおかしくないと感じ、911の同時多発テロで民主主義の神話が崩れ、311の東日本大震災による原発安全神話も幻想だとわかったいま、本当に信じられるものは何なのかと私たちは自問自答している。
 そんな時代を予見したのが、『マルサの女2』だったのかもしれない。宗教法人の実像を暴き、哀れな人間の欲の深さと、底知れぬ悪意と、思考しない愚かさを描いた本作。伊丹監督は、救いのない時代がもうすぐそこまで来てると示してみせたのかもしれない。

『マルサの女2』とは?

『マルサの女2』は、伊丹十三監督による1987年に公開して大ヒットした『マルサの女』の2作目。1作目の翌年に公開し、前作同様、大ヒットした。脚本も伊丹十三が手掛け、主演には伊丹の妻である女優宮本信子が務めた。丹波哲郎をはじめ、三國連太郎、津川雅彦などの豪華大物俳優陣が出演している。

キャスト&スタッフ

板倉亮子:宮本信子 花村:津川雅彦 佐渡原:丹波哲郎
伊集院:大地康雄 三島:益岡徹 金子:桜金造
秋山:マッハ文朱 山田:加藤善博 鬼沢鉄平:三國連太郎
赤羽キヌ:加藤治子 受口繁子:柴田美保子 猫田:上田耕一
チビ政:不破万作 サダオ:きたろう ハカセ:佐藤昇
奈々の父親:市村昌治 奈々:洞口依子 元僧侶:笠智衆 ほか

製作:伊丹プロダクション 監督・脚本:伊丹十三
音楽:本多俊之 撮影:前田米造 編集:鈴木晄
カースタント:タカハシレーシング 
スタント:ジャパン・アクション・クラブ
SFX:白組

約13億円を稼ぎ出し、じつは『マルサの女』よりも興行収入は上だった!?

評価が分かれた『マルサの女2』だが、じつは興行成績は13億円で、1作目より上だった。1988年の日本映画興行収入ランキングでは6位となっている。ちなみに第1作目は12.5億円で1987年のランキングで4位だった。

< 1988年 日本映画興行ランキング >

1位 『敦煌』 45.0億
2位 『優駿』 18.0億
3位 『いこかもどろか』 16.0億
4位 『あぶない刑事/七福星』 15.0億
5位 『ドラえもん・のび太のパラレル西遊記/他』 13.6億
6位 『マルサの女2』 13.0億
7位 『ビーバップハイスクール高校与太郎狂騒曲/他』 12.5億
8位 『マリリンに逢いたい』 11.0億
9位 『帝都物語』 10.05億
9位 『またまたあぶない刑事/他』 10.05億

ストーリー

地上げ屋同士の熾烈な攻防戦が吹き荒れる、バブル期の東京。オフィスビルの建設ラッシュを機に、政治家・建設業者・商社・銀行が結託して巨額の利益を上げんと欲望を燃え上がらせていた。 そんな中、代議士の漆原は天の道教団の管長・鬼沢に目をつける。鬼沢は宗教を隠れ蓑に風俗業など数々の商売をし、さらにヤクザを操り地上げの嵐を吹き荒らしていた。しかもそれらの商売による収益を宗教法人に入金して課税を免れていた。 「宗教活動以外での所得は課税対象となる」という税法を盾に、やり手査察官・板倉亮子を始めとする国税局査察部・通称マルサは、鬼沢の内偵調査を行う。亮子は大蔵省のエリート官僚・三島を引きつれ、鬼沢の身辺調査に入るが、教団信者やヤクザ達の妨害に遭い、調査は難航。ようやく脱税のシッポを掴んだマルサは強制調査に着手し、鬼沢の取調べが行われるが、鬼沢は頑として脱税を認めず、むしろ居直って地上げの正当性を主張する。 そんな中、鬼沢の手下が射殺される。査察部は脱税を隠蔽するために鬼沢が「トカゲの尻尾」のように切り捨てたのではないかと疑うが、やがて鬼沢本人が狙撃される事件が発生。危うく難を逃れたが、鬼沢も「トカゲの尻尾」、つまり使い捨てられる駒でしかなかったのだ。 鬼沢の地上げした土地では、ビルの着工を前に地鎮祭が行われる。鬼沢を背後で操って、自らは手を汚すことなく利益を得た大臣・代議士・企業幹部が談笑する。その姿を少数の同僚と伴に、フェンス越しに隠れて見つめていた亮子は、やりきれなさに唇を噛む。 一方、鬼沢は自分の墓に巨額の財産を隠していた。最後に笑ったのは鬼沢であった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%81%AE%E5%A5%B32#cite_note-1

マルサの女2 - Wikipedia

宮本信子が演じた、「正義と行動力の人」、やり手査察官の板倉亮子は、それまでの日本の映画やドラマにはいないキャラクターだったのではないだろうか。とにかく、カッコいい ‟大人" に見えました。

東京大学出身の大蔵省キャリア官僚役の益岡徹とのコンビも秀逸。この凸凹コンビのやりとりも気持ちよかったですね。

のちに『釣りバカ』でスーさん(気のいい社長)を好演していた三國連太郎のまあ悪い演技は、ある意味最高でした。
「いいか、お前たち。地上げのコツは、ただ二つ。愛情と脅しだ」
ホント、関わりたくない感じです。

宗教法人の滑稽さと危うさを描いてみせてます!

取り調べ中に狙撃される鬼沢(三國)。多くの人間を利用し、騙し、使い捨ててきた鬼沢も巨悪の前では「トカゲのしっぽ」でしかなかったという悲しいお話。

どうにもスッキリしないラストシーンだが、決して表に顔を出さない巨悪に支配された日本社会を象徴するものだったのかもしれない。ただの痛快エンターテインメントで終わらないところが、この映画の価値を高めていると言えます。

次ページは伊丹十三監督の全作品映像(予告編+全編など)特集!!

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