映画「青春かけおち篇」とは?

1987年2月7日公開。
監督:松原信吾
原作・脚本:つかこうへい
音楽:つのだ☆ひろ

キャッチコピーは「強くても女です!だから…あなたに奪われたい」
ポスター日本映画(7) - 映画と演劇書オンライン・ショップ CINEMA JAPAN
主題歌は内藤やす子「涙の色」
主なキャスト

康夫 風間杜夫
けん

北城セツ子 大竹しのぶ
けん

早乙女 田中健
けん

北城和夫 杉浦直樹
けん

北城則子 岸田今日子
けん

松田 柄本明
けん

義郎 永島敏行
けん

留吉 名古屋章
けん
ストーリー

セツ子の見合い
康夫は実家の板金工場で名前ばかりの係長。趣味はのカメラにしかやる気を見いだせない。康夫の恋人セツ子の実家はレストランを経営していて、両親は一人娘のセツ子には甘い。それをいいことにセツ子の家に居候を決め込んでいた。(実家の板金工場を継ぐ足の悪い弟が居る。幼いころの自分のイタズラで弟の足を悪くしたと思い込んでいるために、余計に居心地が悪いのだ。)
康夫は、実家の相続権を義郎に譲り、セツ子の家の婿になる!コック見習いからはじめる!と一念発起する。セツ子の実家である北城家でも、両親の和夫も則子も康夫を気に入っていて、婿入りを希望していた。

康夫が嫌なら見合いは断ると言う和夫に、「見合いの1回や2回経験したほうがいい!」と康夫。心が広い!さすがやっちゃん♪とセツ子も和夫も喜ぶ。
けん

見合いへ向かう車も康夫が運転。終わったら康夫とセツ子の結婚の前祝いをパーッとやろう!とテンションがあがる車内。
けん
一念発起した康夫だったが、セツ子に31歳で年商30億(!)の貿易商・早乙女との見合い話が持ちこまれおかしなことになっていく。聞けば早乙女は15年もの間、セツ子を想い続けていたらしい。
「い~い男だねぇ~!」早乙女を気に入った和夫は、一気に康夫のアラが見えはじめ、何かにつけて文句や嫌味を言うようになった。セツ子は女としての喜びを感じ、心ここにあらずな状態。翌日からデートに出かけて行くセツ子を止めたり怒ったりすることもできない情けない康夫。そんな「頼りないところ」が北城家の婿にピッタリ!と、母の則子は康夫に普通じゃないほどちょっかいを出し始める。

「康夫くん、すき焼きのタマゴは1個にしてよ!ボロボロこぼして、君、口破けてんじゃないの!?」
けん

和夫のレストランで働きはじめるが、「皿が擦り切れるまで磨かせて!まだ婿養子って決まってないんだから!」と和夫の嫌味が炸裂。
けん

厨房の康夫など気にもせず早乙女とデートを重ねるセツ子。
けん

「うちの家風には康夫くんがピッタリなの♡」迫ってくる則子にタジタジの康夫。
けん
何故か駆け落ち!
ついに早乙女がセツ子に正式にプロポーズした。養子に入るという条件がのめない早乙女に、「婿をとる」と信念を燃やす則子はプロポーズを断る。
早乙女が帰ったあと、放心するセツ子と和夫。「君さえいなきゃねぇ~、いっそ死んでくれない?」「あんたが悪いわけじゃない、早乙女さんが良すぎるんだよ~」和夫の苛立ちは康夫に向けられる。
「しょーがないじゃない!私にはやっちゃんがいるんだから!」セツ子もふてくされる。康夫に対する文句が止まらない2人も、則子の一言で静まり返る。
「セツ子がどうしても(康夫との結婚が)嫌なら、この家を出て行ってもらいます!康夫君に嫁をとらせてこの家を継いでもらいます!」

仕事でカナダに行くことが決まり、結婚し一緒に着いて来てほしい早乙女。則子にキッパリ断られ傷心のまま北城家をあとにした。
けん

「ぼんやりしててハッキリしないこうゆうタイプが北城家の家風にピッタリ!」言い切る則子。情けなくなる康夫だった。
けん
部屋に戻った康夫は、和夫やセツ子に言われた言葉で傷つき、また写真を撮る旅に出ようとする。セツ子は「一緒に逃げよう!私を奪ってよ!」唖然とする康夫。「なんで逃げるんだよ?誰から奪うんだよ?」セツ子は「これが青春よ!駆け落ちよ!」と誰に反対されているわけでもないのに…勢いと「駆け落ち」という言葉に酔いながら、2人は夜汽車で京都に向かった。

「女は奪われたいものなのよ!」
けん

「駆け落ち=夜汽車で京都」のセツ子。勢いに飲まれ、康夫もソノ気!そして夜汽車に乗りこんだ。
けん
旅館の面々
最初は「あの2人は絶対に駆け落ち!」私たちで守ってあげよう!くらいの勢いがあった旅館の女将をはじめとする従業員たち。

「誰か迎えにきても絶対に守り通す!」と女将から従業員にお達し。
けん

自分もワケありの恋愛で…と手首を見せる従業員のタケ子。
けん
4日を過ぎても、追ってや迎えが来ない。部屋でダラダラ過ごす2人を見て、「本当に駆け落ち?」と疑い始める従業員たち。最初は好意で朝食に付けていた生卵も、もう付けないことが決まった。
タケ子の恋人の若い板前などは、あからさまに2人をからかいにきた。

「あの2人、本当に駆け落ちですかね?」疑い始めるタケ子と女将。
けん
そして心中!
京都に来て宿を取り、数日が過ぎた。当たり前な話だが追っ手や心配して2人を捜索している気配もない。康夫とセツ子はお互いを罵り合うばかり。女将をはじめ宿側も2人の駆け落ちに疑いを持ち始める。状況を好転させるため、康夫は実家に電話をして迎えに来るよう頼むが「場所は京都で宿もわかってるのに何で?そもそも駆け落ちする必要もないのに。」と全く相手にされない。
そこへ早乙女から、「大阪空港にいる。一緒にカナダに来て欲しい」と電話が入る。早乙女が迎えに来てカナダへ行くか、迎えに来ず死ぬなら心中!と2人はガス栓を開けた。

「どうして誰も迎えに来ないのよ!」イライラして叫ぶセツ子。
けん

「やっちゃん、助けて~!」
けん
☆その頃・・・☆

則子の勢いに硬直する和夫。
けん

仕方なく父親同士で2人を迎えに行くことに。
けん

「あんた、俺を裏切ったね!」
けん
爆発まで・・・
「駆け落ち」の次は「心中」に酔う2人。康夫はガスが足りない!と旅館の板場にガスボンベを取りに行く。そこに早乙女の運転手の松田が「裏切り者」として康夫を殺しにノコノコやってきたが、勢いに乗る康夫に引っ張りこまれる形でガスの充満する部屋に連れて行かれる。
キャバレー帰りでご機嫌で旅館に到着した和夫と留吉もガスの充満する室内で意識朦朧で早乙女を待つことになる。

「逃げんな!」ガスにビビッて逃げ出そうとする松田を引っ張り込む康夫。
けん
関西ガスに電話し、だいたい5~6時間でガス中毒。3時間くらいでやめるとアホになる」と聞いた一同は「アホは嫌だ」と怖くなる。もうガスを止めようという意見にセツ子だけは猛反対。早乙女が来るまでは絶対にダメ!と言いながらもフラフラ。

「何でこんなことに…」父親たちも松田もワケのわからない展開に呆然。
けん
ようやく駆けつけた早乙女が、畳に投げ出されたままだった松田が持ってきた出刃包丁を蹴飛ばしてしまう。包丁が畳の上を滑りボンベに向かっていく。そして大爆発が起こる。早乙女を含めた6人は揃って入院した。

出刃包丁がボンベにあたり、「あ!」全員が声を出すかどうかのところで爆発した。
青春かけおち篇 : 作品情報 - 映画.com
一年後・・・
1年後、康夫は婿養子に入り、セツ子は女の赤ちゃんを産んだ。則子はもう康夫は用無しとばかりに、「康夫くん、あなた1年くらい実家に戻ってたら?」と顔も見ようとしない。和夫と康夫は顔を見合わせ苦笑いするのだった。

康夫とセツ子の間に、かわいい女の子が誕生。
けん

「しょせん僕らは種馬なんだよ」
けん
大竹しのぶと風間杜夫のテンポの良い掛け合いや、「誰かの勢い」に全力でみんな巻き込まれてしまうというストーリーに笑いっぱなしでした。「かけおち」と言えば、「親や周囲に反対され一緒になれない2人が、別の土地に逃げるように移り隠れるように生活する」と、暗いイメージがあり、最初はそのタイトルから恋愛モノかと思っていたのでビックリしました。
ビックリといえば、脇を固める役者が素晴らしいです。この突拍子もないストーリー展開をあまり疑問に思わずに最後まで笑えるのは個性的な俳優陣の演技あってこそではないかと思うのです。
私的、見どころシーン!
☆【和夫(杉浦直樹)】
当時、サスペンスドラマやNHKのドラマ、オカタイ役のイメージが強かった杉浦直樹。
この「青春かけおち篇」では、突拍子もないメチャクチャな台詞の多いセツ子の父親役を演じています。
数多くのドラマ・映画・舞台に出演し、2011年に80歳で亡くなりました。

「君さえいなきゃねぇ~…いっそ死んでくれない?」
けん

「轢けばいいじゃないの、男なら!」
けん
☆【タケ子(渡辺えり子)】
当時から強烈な個性で目をひいた渡辺えり子(現在は渡辺えり、に改名)。
「青春かけおち篇」では康夫たちが駆け落ちした京都の旅館の従業員役。「駆け落ちして心中をしたけれど死にきれなかった」風を装っていました。大竹しのぶとの悪口の言い合いも笑わせてもらいました。

不敵にニヤッと笑うタケ子が印象的。凄みのあるのに可笑しいんです!
けん

現在の渡辺えり子(渡辺えり)。変わってないですよね~!
渡辺えりオフィシャルブログ「夢見る力」Powered by Ameba

実は包帯はハッタリだった!
けん
☆【松田(柄本明)】
「社長の早乙女のためならなんだってやる!」「栃木の人間は絶対人を裏切らないからね!俺を裏切ったら何するかわからない」と、ほかのキャラクター同様にメチャクチャな言動を繰り返す運転手の松田役を、柄本明が怪演していました。

散々威勢が良かった松田もガスの充満する部屋ではおとなしくなる
けん