日本シリーズ史上最も劇的!杉浦享の代打サヨナラ満塁ホームラン(1992年)

日本シリーズ史上最も劇的!杉浦享の代打サヨナラ満塁ホームラン(1992年)

1992年、黄金期の西武に野村ヤクルトが初挑戦した日本シリーズ第一戦。延長12回1死満塁で打席に立ったのはベテラン杉浦享。日本シリーズ史上最も劇的なホームランと言われる仕事人の一振りを紹介。


日本シリーズ史上最も劇的なホームランを放った仕事人・杉浦享。

黄金期の森・西武に野村・ヤクルトが初挑戦した1992年の第一戦。
白熱したゲームは3対3のまま延長12回に突入。

1死満塁の場面でバッターは既にこの年限りの引退を表明していた40歳の杉浦享。
日本シリーズ史上最も劇的なホームランと言われる仕事人の一振りを紹介。

1952年6月8日生まれ
愛知県西尾市出身
身長:177cm、体重:94kg
左投左打
愛称:ブーちゃん

【通算成績】
1782試合、1434安打、224本塁打、打率.284

杉浦享(すぎうら とおる)

一振りに賭けるそのいぶし銀の職人のような姿から、ヤクルトの選手別応援歌では「必殺シリーズ」のテーマ曲が若松と共に応援歌の前奏として使用された。
(若松は「必殺仕掛人」、杉浦には「必殺仕事人V」のテーマ)

このシーズンでの引退を表明していた杉浦享

池山隆寛、広沢克己ら若手の台頭により、1990年に野村克也の監督就任前後から左の代打の切り札として活躍。
しかし、1992年はケガにより18試合の出場にとどまり、またシーズン中に40歳に達していた年齢が引退を意識させた。
「もう一度優勝してから引退したい」が口癖だったが、この1992年にリーグ優勝を果たし14年ぶりの美酒も味わった。
これで悔いなくバットを置けると杉浦は既に現役引退を表明していた。

1992年10月17日、西武vsヤクルト 日本シリーズ第一戦は大接戦に。

西武の先発は渡辺久信、ヤクルトの先発・岡林洋一。
ヤクルトが中盤まで3-1でリードするも、西武が終盤の7回と9回に1点ずつ奪って延長戦に持ち込む。
西武は潮崎哲也から鹿取義隆という必勝リレーでつなぎ、一方のヤクルトはエース岡林が孤軍奮闘。

そして迎えた12回裏のヤクルトの攻撃。
秦真司がツーベースを打ち、続く笘篠は敬遠で一塁が埋まる。
すると野村監督は岡林の代打としてネクストバッターサークルに控えていた杉浦を下げて角富士夫を打席に送る。
その角はバントを失敗し1アウトになるが俊足、飯田哲也が内野安打で満塁に。

一死満塁のビックチャンスを迎えると、そこで野村克也監督が送った代打はシーズン打率.182。
不振を極め、引退を表明したかつての主砲・杉浦享であった。

杉浦享「代打サヨナラ満塁ホームラン」全球紹介

百戦錬磨のストッパー・鹿取義隆と、一振りに賭ける必殺仕事人・杉浦享。
ベテラン同士の見応えある対決を全球紹介。

見送る杉浦。
打つ素振りを見せているが、杉浦は常に必ず初球は見逃すようにしていた。
その投手のタイミングを計るため、そして2球目以降の配球を読みやすくするためと本人は理由を話している。

【初球】141kmの外角ストレート

内角をズバリと突くキレのあるストレート。
杉浦は思わず腰引いてしまうが、内角ギリギリに決まって2ストライク。
たった二球で追い込む鹿取。

【2球目】136kmの内角ストレート

インハイに外そうとしたストレートが真ん中に。
甘く入ってきた失投を仕事人・杉浦は逃さない。
引退表明した男のスイングとは思えないスピードで振られたバットは、ボールをピンポン玉のようにライトスタンドへ一直線に運んだ。
まさに必殺!一振りで試合を決めた。

【3球目】真ん中に入ったストレートを…

まさか、杉浦のカッコいい「バット投げ」がこんな場面で見られるとは…
テレビの前で鳥肌が立ったのを覚えている。

【動画】杉浦享「代打サヨナラ満塁ホームラン」

杉浦享、試合後のヒーローインタビューコメント

少し照れたような表情で控えめに語る姿が、謙虚で朗らかな人柄をよく表していた。

ヒーローインタビューでの杉浦享

西武・鹿取が振り返る杉浦との勝負

結果的に2球連続ストライク後の3球目で勝負が決したため、「西武バッテリーは勝負を急ぎ過ぎた。」や「鹿取は杉浦を舐めすぎた」との批評もあった。
だが、3球目は外そうと思って投げたが甘く真ん中高めに入ってしまった失投である。

鹿取は巨人時代に杉浦との相性が良くなかったので油断していなかったと語っている。
日本シリーズの振り返り番組があると必ずと言っていいほどこの勝負映像が出てくるため、一番嫌な思い出だという。

1979年に読売ジャイアンツに入団。
1987年には63試合のリーグ最多登板でジャイアンツのリーグ優勝に貢献。
西武に移籍した1990年には優秀救援投手に贈られる「ファイアマン賞」を受賞。
1997年に現役引退。

鹿取義隆(かとり よしたか)

この1992年日本シリーズ、ヤクルトは西武に3勝4敗と惜敗。

杉浦の値千金「代打サヨナラ満塁ホームラン」で初戦を白星で飾ったヤクルト。
2戦目以降も森祇晶監督率いる常勝・西武に必死に食らいつく。

全7試合中4試合が延長戦。
西武が王手をかけた後の第5戦から残り3試合すべて延長戦という熱戦となった。

最終戦も最後の最後までどちらか勝つか勝敗が見えない中、地力で勝る西武が押し切り、4勝3敗で3年連続11度目の日本一に輝いた。

この1992年の日本シリーズはいまだにプロ野球ファンから『史上最高傑作』などと呼ばれている。

「代打サヨナラ満塁ホームラン」により引退を撤回。

杉浦はこの活躍で野村監督からの強い慰留があり、引退を撤回。
翌1993年も現役を続行した。

そして、1993年ヤクルトは2年連続でセ・リーグを制すると、日本シリーズの相手は再び西武ライオンズ。
またしても大接戦が続いた両チームの対戦は前年とは逆にヤクルトが4勝3敗で西武を倒し、15年ぶり2度目の日本一を達成した。

1993年ヤクルトスワローズ日本一達成の瞬間

そして杉浦は念願だった「日本一」を花道に今度こそバットを置いた。
現役23年、ヤクルト一筋であった。

プロ野球引退後の杉浦享。

必殺仕事人・杉浦享は1993年を最後にバットを置き、1994年から1996年までヤクルトの二軍打撃コーチを務めた。

球団を退任後はヤクルト本社に異動し、ヤクルト本社食品事業本部直販営業部次長を務めている。

ピシッとスーツで決めた杉浦享。
きっと今も渋い仕事振りを見せていることだろう。

現在の杉浦享

最後に。
日本シリーズ史上最も劇的なホームラン。
杉浦享「代打サヨナラ満塁ホームラン」で締めたいと思う。

今も多くの人に記憶に残る仕事人の『一振り』。
感動をありがとう。

杉浦享「代打サヨナラ満塁ホームラン」

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