動乱の1968年、ポスト・ビートルズを虎視眈々と狙って異色に満ちたグループが結成される。イエスもその最大の一つ

動乱の1968年、ポスト・ビートルズを虎視眈々と狙って異色に満ちたグループが結成される。イエスもその最大の一つ

世界的な学生動乱期にあたる1968年は、ビートルズの晩年期にあたり、「ポスト・ビートルズ」を目指して、英国では非常に多くのバンドが独自のサウンドを創りだし競争をしていた。 イエスはメンバーの出入りも多く、アンダーソンを中心に置いたセッションバンドである色彩が強い。同業プログレのキング・クリムゾンが、オーナー=ロバート・フィリップをコアにしたバンドで、アルバムごとに、面子が入れ替わったのと同じように。


イエスの誕生から黄金期まで

イエス誕生

イエスのファースト・アルバム

1968年、ウォーリアーズというバンドでボーカルをやっていたアンダーソンが、ベースのクリス・スクワイアに、ギターのピーター・バンクスとキーボードのトニー・ケイが加わったところに、ドラムスのビル・ブラッフォードが合流して、イエスが産声を挙げた。
幸運なことは、1968年の秋、当時のイギリスツアーをキャンセルしたスライ・アンド・ファミリー・ストーンの空きを丸々埋めてイギリス国内の各クラブに出演できたことがあげられる。
加えて当時のロック・スーパー・トリオのクリーム解散コンサートの前座を務めたことも幸いした。おかげでイエスの知名度とその独特なサウンド造りは有名になり、メジャーの米アトランティックレコード社と契約。

セカンドアルバム;時間と言葉

黄金時代に向けた豪華メンバーの集結

ウェイクマン/スクワイア/ハウ//ブラッフォード/アンダーソン

イエスのスーパーメンバー

1970年には、ギターのスティーブ・ハウが、また続いて1971年には、キーボードのリック・ウェイクマンが参入。そして同年に名作でかつ大ヒット曲「ラウンナ・バウト」が収録されている「こわれもの-Fragile」が発売された。
ついで翌1972年にはイエス代表作との評価を受ける「危機-Close eo the Edge」がリリースされる。1971年から1972年はバンドとしても充実しており、2回のイギリスツアーや全米ツアーが敢行され、「サード・アルバム」と「こわれもの」が米国において「ゴールド・ディスク」を受賞した。

こわれもの-Hragile

危機-Closeto the Edge

イエス黄金期のメンバーもここまで

1972年に「危機」の録音終了直後、看板ドラムスのビル・ブラッフォードがキング・クリムゾンに突如加入した。「プログレッシブ・ロック4天王」感での電撃移籍で、当時は大きな話題を提供した。
因みに、当のキング・クリムゾンもメンバーの出入りが激しく、ブラッフォードは、キング・クリムゾンのオーナにしてギターでリーダーのロバート・フィリップにくわえ、ベースでボーカルのジョン・ウェットンなどと「暗黒の世界」や「RED」を生んだ。

イエスのドラムス=ブラッフォードはキングクリムゾンの名作に参入

大作志向の果てに

海洋地形学の物語

1972年の「危機」は、LP1枚でわずか3曲という構成だったが、1973年のコンセプトアルバム「海洋地形学の物語」は、LP2枚たった4曲というイエスの大作主義の象徴的ともいえる存在である。1曲が25分から30分。
しかもこの「海洋地形学はの物語」は、リーダー=アンダーソンが当時傾倒しいたヒンズー教の書籍からヒントを得た、一種宗教的神秘主義の影響も見てとれる。この志向に嫌気がさしたウェイクマンが1974年に脱退した。

英国での人気上昇

リレイヤー ツアー

ウェイクマンの後任には、スイス人のパトリック・モラーツがキーボード担当に。モラーツは、フュージョン系の要素をもっており、アルバムの「リレイヤー」は、全英4位、全米5位にランキングされる。
一方バンドの混迷とは裏腹に、1973年のメロディーメーカーの人気投票では、前年の順位を逆転して、グループ部門では「イエス」、キーボード部門ではリック・ウェイクマンがトップに躍り出る。

リックウェイクマン復帰

究極

さて、モラーツのフュージョン路線と、メンバーの方向性に齟齬ができたこともあり、モラーツ自身は脱退。そこでワンポイントとしてウェイクマンが招聘され、アルバム「究極」をスイスで録音。全英1位に躍り出る。シングルカットされた「不思議なお話しを」はトップ10に入った。

イエス、第一回目の解散

オーナー=アンダーソンの脱退と解散

エイジア-詠時感^~時へのロマン

1979年にパリで行われたリハーサルでは、メンバー同士の音楽的対立もあって空中分解。そんな中、リーダーのアンダーソンが去り、加えてセッション万として参加していたウェイクマンも脱退。
急遽ボーカルにトレバ―・ホーンとキーボードにジャフ・タウンズを入れてアルバム「ドラマ」を録音リリースしたが、評判は今一つ。アメリカとヨーロッパでのツアー後、イエスは事実上の解散状態に陥る。
1980年から1983年の3年間は名実ともにイエスは解散状態であった。この間メンバーの成功をあげるとすれば、ギターのハウとキーボードのダウンズだろう。
ふたりは、ELPのカール・パーマーやキング・クリムゾンのジョン・ウェットンとともにスーパー・バンドの「エイジア」を結成し、ファースト・アルバムの「詠時感-時へのロマン」が世界で1500万以上売れ大々的なヒットとなった。

活動開始

イエス再結成

アルバム:90125/シングル:ロンリーハート

1983年リリースのアルバム「90125」からシングルカットされた「ロンリー・ハート」全米をはじめ各国で大ヒット。再結成のイエスは大成功となる。実は正式には再結成に向けての前であるが若干の紆余曲折があり、「シネマ」と「ドラマ」というアルバが録音が一部流動的なメンバーで実施されている。
このヒットから5年間、イエスはメンバーの変動はしていない。その訳は1987年のアルバム「ビッグ・ジェネレーター」の録音とリリースのみがこの間の活動であったからという。
なお、1988年には16年ぶりに来日公演を果している。因みに1987年から、元メンバーでドラムスのビル・ブラッフォードは、日本のジャズ・ギタリストである渡辺香津美と「スパイス・オブ・ライフ」など2枚のCDを録音している。

イエス分裂-オーナー=アンダーソンの分派発動

アンダーソンの裏イエス=スーパー・バンドは大成功

ABWH-閃光

1988年のツアーが終わった時点で、アンダーソンは自分のお気に入りバンド「ABWH]という黄金期のイエスと同じメンバーであうビルブラッフォード、スティーブ・ハウ、リック・ウェイクマンとのカルテットを結成する。原因は、当時のイエスのキーボード、ラビンとの確執があったという。
さてABWH,セッションのベースに、キングクリムゾンや渡辺香津美バンドでもおなじみに米人トニー・レビンやジェフ・バーリンを招聘したりした。アルバムは「閃光-ABWH」やライブ・アルバムがリリースされた。
アンダーソンの分派活動といえども、イエスの足跡に重要な地歩をあたえた。
ところで本元のイエスは、ギターのサポートであるビリー・シャーウッドの加入を得て、新しいプロジェクトを進行させ、4枚組大作の「Yesyears」とそこからのシングルを発表したのみであった。

イエスの本流サイドのLPでは4枚組となる大作

Yes-years

閑話休題

イエス再統合

たそがれたか、高齢者バンドの宿命

低迷期が続く

再結成後の結晶:Union

アルバム、シングルもヒットしたのは分派側「イエス=ABWH」であったが、次のアルバムを制作する段になって、両者の統合が進む。
アンダーソンがラビンに曲の依頼を依頼したりはじめ、左右のメンバーが次第に統合されてくる。そこで完成したアルバムは、「UNION」(邦題:結晶)である。サポート・メンバーにはレビンやシャーウッドを加えて総勢8人、ワールドツアーも敢行される。
なおツアー終了後、ドラムスのブラッフォードが脱退。ハウは解雇に。ウェイクマンも脱退。1994年アルバム「トーク」をリリース。ツアー後ラビンとケイが脱退。その後ハウとウェイクマンが出戻り。
非常に出入りが激しい中、1996年にアルバム「キーズ・トゥ・アセンション」と翌年の1997年に、「キーズ・トゥ・アセンション2」がリリースされる。この二つのアルバム収録後、ツアーが予定されていたが、マネジメントの失態でキャンセル。結果としてウェイクマンが脱退するという予想外の展開に。

再び活動停止状態と2世の加入;リックの長男=オリバー

2世誕生

1997年の二枚目のアルバム「オープン・ユア・アイズ」に続き、1999年には「ラダー」2001年「マグニフィケイション」がリリースされるも、全英、全米ともパッとせず、「マグニフィケイション・ツアー」のに入る。
ツアー終了義、ウェイクマンの再加入が発表されるが、ライブ・ツアーのみで新しいレコーディングはない。ついで2004年に、オーナーであるアンダーソン不在のまま、混成メンバーでライブに参加。これが契機となったか、2008年まで再び活動停止に陥る。
ただ実は、アンダーソンの体調不良、病気によることが大きい。しかしその後、2016年以外のライブには、アンダーソンがイエスの舞台に現われことはめっきりなくなった。
なお2005年にはウェイクマンことリックがイエスの活動不参加を表明。しかしリックの長男、オリバー・ウェイクマンが2008年より一時的に父親の代役を務めるも定着しなかった。

その後のイエス、そしてベース=クリス・スクワイヤの死

デビュー当初から一貫したベーシスト=スクワイア逝去

カナダ人ボーカリストであるベノア・デイヴィッドを加入させ、2010年にはアルバム「フライ・フロム・ヒア」を、また2112年には「ヘブン・アンド・アース」をリリース。
2013年、デビュー時の初代ギター=ピーター・バンクスが死去。
2015年急性骨髄性白血病を患った、バンド創業期からの一貫したベーシスト=クリス・スクワイヤが逝去。しかし本人の遺志を尊重してバンド活動の継続を表明。
2016年は、度ごとのメンバーの組み合わせで春のヨーロッパツアー、秋のワールドツアーが組まれたが、アルバムの制作などは行なわれていない。

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