ファイナルファンタジー2とは
ファイナルファンタジー2は、1988年12月17日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)からファミコンソフトとして発売されたRPG(ロールプレイングゲーム)です。
ファイナルファンタジー1の発売が前年の1987年、ドラゴンクエスト1の発売が1986年のことですから、ちょうどRPGというジャンルが世の中に認知され始めた時期の作品です。
「経験値」や「レベル」という概念が存在しない、今から見ても異色のキャラクター成長システムを採用していることもあって、「ファイナルファンタジー2は難しい」と言われることもしばしばです。
しかし、シリーズに欠かせない存在となった「チョコボ」や「シド」は、このファイナルファンタジー2で初めて登場しますし、複雑な人間模様や命の儚さ・尊さを描いた分厚いストーリーの魅力は、30年近い時を経た現在でも、まったく色あせることはありません。

ファミコン版ファイナルファンタジー2のパッケージイラスト
パッケージが『圧倒的にカッコ良い』ゲームたち!|おしょ~の激コアゲームライフ
ファイナルファンタジー2の登場人物
魔界から魔物を呼び寄せて世界征服に乗り出したパラメキア帝国の皇帝。そのパラメキア帝国の侵略に抵抗する反乱軍は、フィン王国において立ち上がったものの、帝国の総攻撃によりフィン城を奪われ、辺境の町アルテアへと撤退を余儀なくされてしまう。
帝国の襲撃により帰るべきところを失ったフィン王国の若者、フリオニール、マリア、ガイの3人は、反乱軍の指導者ヒルダとその側近ミンウに助けられたことをきっかけに、パラメキア帝国との闘いへと踏み出す。
それは、幾人もの同志たちの犠牲を乗り越えねばならない、つらく苦しい戦いのはじまりでもあった。。。
というのが、ファイナルファンタジー2の大まかな導入ストーリーです。

主要4キャラ
牛歩5年目 FINAL FANTASY Ⅱ
主な登場人物を以下に挙げておきます。
実際のプレイでは、フリオニール、マリア、ガイの3人は最初から最後までパーティに固定で、4人目がストーリーの進行にあわせて入れ替わっていきます。
〇フリオニール:本作の主人公。フィン王国の若者。帝国の襲撃で帰るところを失い、反乱軍に志願した青年。
〇マリア:本作のヒロイン。フリオニールやガイとともに育ったフィン王国の少女。フリオニールとは義理の兄妹。行方不明になった実の兄レオンハルトのことを気にかけている。
〇ガイ:フリオニールたちと行動をともにする巨漢の若者。言葉がたどたどしい。
〇レオンハルト:フリオニールやガイと兄弟のように育った、マリアの実兄。帝国に襲撃された際に行方不明となる。
〇パラメキア皇帝:世界征服を企む軍事国家パラメキア帝国の総帥。
〇ヒルダ:フィン王国の王女。反乱軍の指揮を執っている。
〇ミンウ:ミシディア出身の偉大な白魔道士。ヒルダの片腕として反乱軍の参謀を務める。
〇ヨーゼフ:雪原の町サラマンドに住む反乱軍の協力者。
〇ゴードン:カシュオーン王国の第2王子。祖国が襲われた際に兄スコットを見捨てて逃げたことを悔いている。
〇レイラ:海賊船の女船長。最初はフリオニールたちを騙して追いはぎをしようとするが、改心してからは反乱軍の一員としてともに闘うようになる。
〇リチャード:ディスト国の竜騎士。竜騎士団唯一の生き残り。
異色のキャラクター成長システム

ファイナルファンタジー2の戦闘画面
FC ファイナルファンタジー2 - YouTube
当時のRPGでは、敵を倒して経験値をためてキャラクターのレベルを上げて、というのが常識でした。(ドラクエシリーズは一貫してこのシステムを採用していますよね。)
でも、ファイナルファンタジー2は、「ジョブ(職業)」の概念はもちろん、「経験値」やキャラの「レベル」という概念もなく、各キャラが戦闘中にとった行動や受けたダメージなどによって、対応する各能力値が個別に少しずつ成長していく、という珍しいシステムを採用していました。
例えば、戦闘中に武器を使って攻撃すれば「ちから」が上がり、ダメージを受ければ「たいりょく」が上がり、魔法を使えば「ちせい」や「せいしん」が上がる、といった具合です。
このシステムによって、それぞれのキャラを、力の強い「戦士」系にするか、魔法が得意な「魔道士」系にするかなど、プレイヤーが好きに決められるようになり、きわめて自由度の高いキャラクター育成が可能となったのです。
もっとも、これは逆に言えば、明確な目的意識を持たずに漫然と戦闘を重ねても、キャラは大して強くならない、ということでもありますので、RPGはドラクエしかプレイしたことのなかった当時の小中学生の多くにとっては、なかなかハードルが高かったように思います。
実際、「ちせい」が上がれば「たいりょく」が下がる、「せいしん」が上がると「ちから」が下がるなど、両立しない能力値もあるので、ドラクエの「勇者」のような超強力万能型キャラを育てるのは相当難しく、適当にプレイしていると、キャラがみんな「中途半端な赤魔道士」みたいになってしまうこともよくありました。

ちからが あがった!!
ディスコグラフィー | ファイナルファンタジー | SQUARE ENIX
各能力値(ステータス)の上がり方
主な能力値と戦闘中の行動との関係をまとめてみました。
HPの最大値:戦闘開始時よりHPが減ることで上昇
MPの最大値:戦闘開始時よりMPが減ることで上昇
ちから:「たたかう」を選択することで上昇
すばやさ(回避率に影響):回避率(回避確率)が高い状態で戦闘することで自然に上昇
たいりょく(HP最大値増加時の上がり幅や物理防御に影響):戦闘開始時よりHPが減ることで上昇
ちせい(黒魔法の威力・成功率の高さに影響):黒魔法を使うことで上昇
せいしん(白魔法の威力・成功率の高さに影響):白魔法を使うことで上昇
まりょく(MP最大値増加時の上がり幅や魔法防御に影響):戦闘開始時よりMPが減ることで上昇

マリアのステータス画面
ディスコグラフィー | ファイナルファンタジー | SQUARE ENIX
武器・盾・魔法の熟練度
武器、盾、魔法には、それを用いた際の攻撃や防御の威力・効果に大きく影響する「熟練度」が設定されていました。
この「熟練度」も、戦闘中に用いることで上昇していくようになっていました。
武器の熟練度(武器系統ごとに設定):武器を使って「たたかう」ことで上昇
盾の熟練度:盾を装備して戦闘すると上昇
黒魔法の熟練度(魔法ごとに設定):その魔法を使うと上昇
白魔法の熟練度(魔法ごとに設定):その魔法を使うと上昇
ちなみに、魔法は、店や宝箱、敵などから「ファイアのほん」といったアイテムの形で入手し、移動中に「〇〇のほん」をキャラに対して使うことで、当該キャラがその魔法を使えるようになる、という仕組みでした。
魔法についても「熟練度」が採用されたことにより、他のファイナルファンタジー作品に見られるような「ファイラ」「ファイガ」といった名称の上位魔法は存在せず、すべての魔法が「ファイア 5」「ケアル 8」のように「基本名称+熟練度の数値」で表されていました。

魔法の一覧画面
れとろげーむまにあ: ファイナルファンタジー2の世界の人口を数えてみた
回避率と防具の重さ
ファイナルファンタジー2は、「回避率」を上げることがきわめて重要なRPGでした。
回避率は、ステータス画面で「2-46%」のように表示され、前の数字が「回避レベル」、後ろのパーセンテージが「回避確率」を表しています。たとえば、回避率が「8-99%」なら、99%での回避判定が8回行われるので、敵が8回ヒットの攻撃を繰り出してきても、高確率ですべて回避できることになります。
とりわけ重要なのが「回避確率」で、敵の攻撃を回避する確率はもちろん、攻撃順序や「すばやさ」の上昇率にも影響する値です。
ここで注意が必要なのは、画面で見ることのできない隠しパラメータとして、防具(鎧、兜、小手)には「防具の重さ」が設定されており、重い防具を装備すると、回避確率が著しく下がってしまうという点です。
この点、盾は武器と同じ扱いになっており、重さも設定されておらず、むしろ、盾を装備して盾の熟練度を上げることで回避確率を上昇させることができるという、防具の中で最も有用なものでした。
回避レベルは、敵の攻撃を受けることで上がっていくので、あまり意識しなくても大丈夫なようになっていますが(実際には、後述する裏ワザの乱用により回避レベルを適切に上げられなかった人が多数いましたが)、回避確率は、「重い防具は装備しない」「盾を使い込んで熟練度を上げていく」といったことを意識的に行っていかないと、いつまでたっても上がりません。
ファイナルファンタジー2は、ゲームバランスが、極端なくらい、防御力よりも回避率を重視する傾向に偏っていますので、ドラクエと同じ調子で、「〇〇のよろい」「〇〇のかぶと」といった高価で防御力の高い重装備で身を固めてばかりいると、ちっとも回避率が上がらず、その結果、敵からの攻撃(特に石化などの特殊攻撃)を回避できなくなって、ストーリー後半のダンジョンで大苦戦することになってしまいます。
このように、「防御力を捨ててでも、軽い装備で回避率を上げる方が実ははるかにお得」「重い装備は基本的に不要(というか不利)」という点も、当時の小中学生には馴染みがなく、このゲームを難しく感じさせる一因だったと思います。

武器・防具の装備画面
ファイナルファンタジー2 攻略プレイ日記 その11 | ゆりゅりとげーむで暇つぶし - 楽天ブログ
キャラの能力を上げる裏ワザ
このようなキャラクター成長システムにあわせて、当時、いろいろな能力アップの裏ワザが考え出されました。有名なところを挙げてみましょう。
〇わざと味方を攻撃する「パーティアタック」
→意図的に味方のHPを減少させ、最大HPの上昇を狙う。
〇ゴブリンなどのザコ敵に「チェンジ」(敵と自分のHP・MPを入れ替える魔法)をかける
→自分のHP・MPを一気に減少させ、最大HP・最大MPの上昇を狙う。
〇アンデッド系モンスターに「アスピル」(敵のMPを吸収する魔法)をかける
→アンデッドの場合は逆にこちらのMPを吸い取られることを利用し、最大MPの上昇を狙う。
〇A・Bキャンセル
→「たたかう」コマンドを選んだ後、Bボタンでキャンセルしても、熟練度が上がることを利用。
A(選ぶ)・B(キャンセル)の連打を繰り返せば、熟練度を簡単に上げられる。
ただし、4人目のキャラはキャンセルができないので、この技は上3人にしか使えない。
裏ワザの弊害
もっとも、パーティアタックなどで最大HPだけをやみくもに上げても、最重要パラメータである「回避率」はまったく上がりません。
むしろ、HPが高い→敵が逃げやすい→敵から攻撃を受ける回数が減る→回避率(回避レベル)が上がらない、という弊害を招くのです。
同様に、A・Bキャンセルによる熟練度アップについても、攻撃力がムダに高い→敵が簡単に死ぬ→敵から攻撃を受ける回数が減る→回避率(回避レベル)が上がらない、という弊害があります。
実際のところ、ファイナルファンタジー2で全滅してしまうのは、特殊攻撃による石化などの「状態変化」による場合が多く、これは回避率を上げておかないと防ぐことができません。
また、ブラッドソードを装備している敵は、1ヒットで最大HPの1/16のダメージを与えてくるので、こちらのHPがいくら高くても、8回ヒットの攻撃を2度受けたら死んでしまいます。
つまり、パーティアタックやA・Bキャンセルなどの裏ワザは、一見楽チンなように見えますが、実は「回避率を上げる」という最も肝心な点からすると、百害あって一利なしなのです。
当時のゲーム雑誌や攻略本でも、これらの裏ワザが紹介されて広く定着しましたが、乱用すると回避率が上がらなくなり、ゲーム後半で逆に難易度を大幅に上昇させてしまう、ということまでは、あまり知られていませんでした。
ファイナルファンタジー2は、回避率の重要性を理解して、きちんと回避率を上げていればそんなに難しくありませんが、逆に、回避率を無視すると、いくら他の能力を高く育てても、あっという間に全滅してしまう可能性がある、という、ちょっと変わったゲームバランスのRPGなのです。
ファイナルファンタジー2は難しくない!
最初にも書いたとおり、一般に、「ファイナルファンタジー2は難しい」とよく言われます。
確かに、「回避率」というあまり馴染みのないパラメータを重視しなければならない点や、漫然と戦闘を繰り返していても中途半端なキャラしか育たないことなどを考えると、必ずしも万人向けのRPGとは言えないかもしれません。
しかし、実際には、パーティアタックやA・Bキャンセルなどの不適切な裏ワザを乱用しすぎたことによって、かえって本来よりも難易度を高くしてしまった人が多く、そこから「裏ワザを使ってもクリアできないくらい難しい」というような誤解が広まっただけではないでしょうか。
ワードメモリーシステム
ファイナルファンタジー2では、ストーリーを進める上でも、「ワードメモリーシステム」というちょっと変わったシステムが採用されています。
これは、人々との会話に登場した重要な言葉を覚えるシステムで、覚えた言葉を選んで人々に尋ねると、新たな情報が得られることが多い、というものでした。
ちなみに、「のばら」は、反乱軍の合言葉で、フリオニールたちが反乱軍の同志からさまざまな秘密を教えてもらったりするのに使われました。

ワードメモリーシステム
FINAL FANTASY IIの要素 ~14番目のエオルゼア~ – A Realm Reborn
重厚なストーリー
特色あるキャラクター成長システムが注目されたファイナルファンタジー2ですが、ストーリーも、単純な勧善懲悪ではなく、当時のRPGとしては異例とも言える、複雑な人間模様や命の儚さ・尊さを描いた重厚な内容が盛り込まれていました。そこから、ファイナルファンタジー2は、その後のシリーズにおける「ストーリー重視」の先駆けになった作品であるとも言われています。
ここでは、印象に残る名場面をいくつか紹介します。
オープニング画面が終わったと思ったら、いきなり何の前触れもなく戦闘シーンに突入し、まったく歯が立たずに全滅させられる、という導入も、とても衝撃的なものでした。

ファイナルファンタジー2のオープニング画面
れとろげーむまにあ: ファイナルファンタジー2の世界の人口を数えてみた

オープニングの戦闘シーン
[FC] FINAL FANTASY II
ストーリーの途中で犠牲になって死んでいくキャラクターが多く、悲しいシーンが続くのも、ファイナルファンタジー2の特徴です。
後に移植されたゲームボーイアドバンス版やPSP版のファイナルファンタジー2では、クリア後に、ストーリー本編の途中で死んでいった4人のキャラ(ミンウ・スコット・ヨーゼフ・リチャード)のその後を描いたパラレルストーリー「Soul of Re-Birth」(ソウル・オブ・リバース)をプレイすることができます。

さらばミンウ!
[FC] FINAL FANTASY II
そうかと思ったら、こんな迷(?)場面もあります。

ヒルダ王女の誘惑
[FC] FINAL FANTASY II
パラメキア帝国の指揮官・ダークナイトとしてフリオニールたちの前にたびたび現れていた男の正体は、なんと、マリアの兄レオンハルトでした。
マリアの説得むなしく、パラメキア帝国の新皇帝になることを自ら宣言するレオンハルト。
しかし、そこに倒したはずの前皇帝が復活し。。。
ファイナルファンタジー2の中でも、最も濃い人間ドラマが立て続けに展開されるところです。

マリアと対峙する兄レオンハルト
FFⅡ攻略法 その24

パラメキア皇帝復活!
FF2 パラメキア城 こうてい復活 [FC版] - YouTube

リチャードの最期
FF2 パラメキア城 こうてい復活 [FC版] - YouTube

レオンハルト加入
ファイナルファンタジー2 攻略プレイ日記 その49 | ゆりゅりとげーむで暇つぶし - 楽天ブログ
パラメキア皇帝との最終決戦
そして、いよいよパラメキア皇帝との最終決戦。

パラメキア皇帝との最終決戦
【アラサーFF】ファイナルファンタジーⅡプレイ記④ 目隠し皇帝。 - ニートブログむらくもの野望

最期に捨て台詞を吐くパラメキア皇帝
静かな余韻を残す屈指の名エンディング
ファイナルファンタジー2は、エンディングも、「めでたしめでたし」と手放しで喜ぶような単純なハッピーエンドではありません。
「また4人で暮らしましょう」と喜ぶマリアに対して、「俺たちはいろんなことを知り過ぎた。もう昔には帰れない。」と何ともニヒルなセリフを吐くレオンハルト。
「なぜ?待って!兄さんを止めて!」と悲痛な叫びを上げるマリアに対して、フリオニールもまた「俺には止められない。レオンハルトの言ったとおりだ。」とレオンハルトに同調する。
そして、去りゆくレオンハルトに対して、「いつの日か、きっと!」とだけ声をかけるフリオニール。
このレオンハルトが去っていくという結末は、それまでに犠牲となって死んでいった者たちの想いが交錯し、物語に静かな余韻を残します。
最近では、ファイナルファンタジー10のエンディングが心に残る内容として高い評価を受けていますが、ファイナルファンタジー2も、10に負けず劣らず、深く印象に残る屈指の名エンディングとなっています。

レオンハルトのニヒルなセリフ
FCファイナルファンタジー2 ラストバトル&エンディング - YouTube

俺には止められない・・・
FCファイナルファンタジー2 ラストバトル&エンディング - YouTube

去りゆくレオンハルトを見送るフリオニール
FF2 ラスボス戦~ED - YouTube

死んでいった者たちの想い
FF2 ラスボス戦~ED - YouTube
チョコボとシドも初登場
ファイナルファンタジーシリーズではすっかりお馴染みとなった「チョコボ」と「シド」。
彼らが初登場したのは、実はこのファイナルファンタジー2でした。

チョコボみーっけっ!

飛空船は貸すだけだぞ!
シドの最期(FF2) : 【ゲーム】ファイナルファンタジーの名シーン【FF】 - NAVER まとめ

シドの遺言
FFⅡ攻略法 その23
ファイナルファンタジー2をプレイしてみよう!!
ファイナルファンタジー2の魅力が少しでもお分かりいただけましたでしょうか?
ファイナルファンタジー2は、プレイステーションやゲームボーイアドバンス、PSP(プレイステーションポータブル)にも移植されており、最近ではiOS/Android版もリリースされて、スマートフォンでもプレイすることができます。
一度もやったことがないという人も、昔遊んだなあという人も、この機会にプレイしてみてはいかがでしょうか?
きっと、初めての人には新鮮な感動を、昔プレイした人には懐かしい想い出を、プレゼントしてくれることでしょう。