【スタイル・カウンシル】パンクのカリスマから80年代お洒落サウンド仕掛け人へ。ポール・ウェラーの音楽的変遷。

【スタイル・カウンシル】パンクのカリスマから80年代お洒落サウンド仕掛け人へ。ポール・ウェラーの音楽的変遷。

ポップはもちろんジャズやソウル、ファンクなどあらゆる音楽を取り込んでスタイリッシュに昇華させ、80年代のお洒落人間の御用達ミュージックとして絶大な人気を誇ったスタイル・カウンシル。オーガナイザーであるポール・ウェラーはパンク・ヒーローからなぜ変遷していったのか?そして、80年代と見事にリンクしたスタイル・カウンシルの音楽の魅力とは何だったのか?


スタイル・カウンシルのポール・ウェラー(Paul Weller:手前)とミック・タルボット(Mick Talbot)

ザ・ジャム時代のポール・ウェラー

1977年、パンク・ムーヴメントのまっただ中にデビューしたポール・ウェラー率いるバンド、「ザ・ジャム」。

1979年にイギリスの権威ある音楽誌ニュー・ミュージカル・エクスプレスのNMEアワードのベスト・グループに選ばれると1982年の解散までその座を他に譲ることはなかったイギリスの国民的人気バンドだ(ちなみに77年のベスト・グループはセックス・ピストルズ。78年はザ・クラッシュ)。

ザ・ジャム時代のポール・ウェラー

ポール・ウェラーが人気絶頂のさなかにザ・ジャムを解散したのは、最高の状態のままバンドの幕を引きたいという思いが一番強かったはずだ。それと同時に、ギター、ベース、ドラムスというスリーピースでの表現に行き詰まりを感じており、自分の音楽の可能性をさらに追求していきたいという気持ちもあったのに違いない。

現にザ・ジャムの最後のアルバム『ザ・ギフト(The Gift)』では、ホーンセクションを導入し、ファンクやモータウンの要素なども取り入れた今までにないサウンドに仕上がっていたし、最後のワールド・ツアーになった「TRANS GLOBAL UNITY EXPRESS TOUR」でもホーン・セクションを率いて演奏している。

その頃のことをポール・ウェラーは次のように振り返っている。

スタイル・カウンシルの誕生

ポール・ウェラーが「試したかった」こととは何だったのだろうか?

ポップはもちろんジャズやソウル、ファンクなどあらゆる音楽を取り込んでスタイリッシュに昇華させること。あらゆるカッコイイ音楽をクロスオーバーすること。そして、ファッションやライフ・スタイルまでを変革すること。

そして、生まれたのがスタイル・カウンシルだった。

ポールが相棒に選んだのは、ミック・タルボット(Mick Talbot)。ネオ・モッズ・バンド「マートン・パーカス」のメンバーとしてデビューした後、ライヴのみながら一時期デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズにも参加していた若手オルガン・プレイヤーだ。

スタイル・カウンシルは、1983年3月にシングル「スピーク・ライク・ア・チャイルド(Speak Like A Child)」でデビューを飾ることになる。

スタイルの最先端へ

スタイル・カウンシルの音楽は、80年代のアンテナ人間たちに大きく受け入れられていった。そのジャジーでスタイリッシュな音楽性ばかりではなく、彼らのファッションや存在そのものに憧れの目が向けられていったのだ。「スタイル評議会」というグループ名にふさわしく彼らは音楽を中心とするあらゆる「スタイルの最先端」となっていった。

そして、1983年の8月にリリースされた3rdシングル「ロング・ホット・サマー(Long hot summer)」は本国でスマッシュ・ヒットとなった。バブルまっただ中の日本でも当時流行のカフェバーでかかりまくり、ファッションにこだわるお洒落な若者たちを中心に大いにもてはやされ始めた。そのほとんどはザ・ジャムなどまったく知らない若者たちだった。

スタイル・カウンシルはあくまでポール・ウェラーとミック・タルボットのユニットということに変わりはなかったが、この頃には、ワム!(Wham!)のバック・コーラスをしていたD.C.リー((D.C.Lee)と当時若干17歳のドラマーのスティーヴ・ホワイト(Steve White)がほぼ固定のメンバーとして参加するようになっていった。

D.C.リー(左から2人目)とスティーヴ・ホワイト(右から2人目)

ザ・ジャム信者の苦悩

R&Bやソウルを前面に打ち出したスタイル・カウンシルの音楽は、イギリス本国、そして日本の熱狂的なジャム信者を大いに戸惑わせた。ポール・ウェラーのやることは盲目的に信じたい。しかし、メッセージはともかくそのサウンドの「軟弱」さはゴリゴリのジャム信者にはもろ手を挙げて受け入れられるものではなかった。

1983年11月にリリースされた「ソリッド・ボンド・イン・ユア・ハート(Solid Bond In Your Heart)」がもともとはザ・ジャムの曲として制作されたものだったことを知ると、ザ・ジャム信者たちは大きな喪失感に包まれたものだ。

しかし、時代にマッチしたスタイル・カウンシルの音楽はすでに流れをとめられないくらい大きなものになっており、ザ・ジャム信者たちはノスタルジーの中に取り残されていった。

スタイル・カウンシルの快進撃

ここからのスタイル・カウンシルは、スタイリッシュ・ミュージックの象徴として快進撃を続ける。
1984年2月にはシングル「マイ・エヴァー・チェンジング・ムーズ(My ever changing moods)」をリリース。大ヒットとなる。

関連する投稿


新しいモッズ像を創造し定着させた、ポール・ウェラー率いるスタイル・カウンシルのイキなセンス。

新しいモッズ像を創造し定着させた、ポール・ウェラー率いるスタイル・カウンシルのイキなセンス。

キング・オブ・モッズとして今なおイギリス国民から尊敬されているポール・ウェラー。その彼が80年代に率いたスタイル・カウンシルは、本国以上に日本でバカ受けしました。その理由はオシャレなサウンドとファッションセンス。今でも魅力的です。


ジミヘンからスプリングスティーンまでがカバーした日本ではあまり知られていないボブ・ディランの名曲「見張塔からずっと」の聴き比べ

ジミヘンからスプリングスティーンまでがカバーした日本ではあまり知られていないボブ・ディランの名曲「見張塔からずっと」の聴き比べ

サイケの時代にもグラムの時代にも、AORの時代にもパンクの時代にも、グランジの時代にさえもその第一人者からカバーされ続けるボブ・ディランの名曲「見張塔からずっと」。日本では余り知られていないこの曲は、2004年にイギリスの音楽評論家が「デイリー・テレグラフ」で行った「ベスト・カヴァー・ソングTOP50」で堂々の第1位となっているんです。


ロックにおいて必要最小限のメンバー構成とされている3ピース。たった3人で素晴らしい音楽を奏でるバンドをご紹介します

ロックにおいて必要最小限のメンバー構成とされている3ピース。たった3人で素晴らしい音楽を奏でるバンドをご紹介します

3人のメンバーが、ギター、ベース、ドラムスをそれぞれ演奏し、そのメンバー中からボーカルを兼ねている場合が多い3ピース。ロックバンドとしては最小編成といえます。たった3人なのですが、今も昔もこの3ピースという形態には素晴らしいバンドが多いのです。


祝デビュー40周年!新作『A KIND REVOLUTION』をリリースしたポール・ウェラーの名曲をまとめてみました!

祝デビュー40周年!新作『A KIND REVOLUTION』をリリースしたポール・ウェラーの名曲をまとめてみました!

40年前にパンク・ムーヴメントを背景にデビューしたポール・ウェラーも、今年で59歳。ザ・ジャム、ザ・スタイル・カウンシルを経て、ソロになって以降も素晴らしい作品を作り続けている、我らがモッド・ファーザー!最新作『A KIND REVOLUTION』を発表したこのタイミングで、これまでリリースされたシングルの中から、名曲の数々を振り返ってみましょう!


UKパンクの最重要バンドにして世界最高峰のビートバンド、ザ・ジャムの魅力はライブにあり!

UKパンクの最重要バンドにして世界最高峰のビートバンド、ザ・ジャムの魅力はライブにあり!

パンク・バンドとしてデビューしながらも、幅広い音楽性を取り入れUKロックの歴史を塗り変えてしまったザ・ジャム。その最大の魅力はライブ!ザ・ジャムのデビューから解散までを音と映像でリアルに追体験できる「ファイヤー・アンド・スキル」と「アバウト・ザ・ヤング・アイデア+ライヴ・アット・ロックパラスト 1980」をご紹介します。


最新の投稿


「黒い三連星」が10cmの可動フィギュアに!G.M.G.シリーズにガイア、オルテガ、マッシュが参戦

「黒い三連星」が10cmの可動フィギュアに!G.M.G.シリーズにガイア、オルテガ、マッシュが参戦

『機動戦士ガンダム』の人気パイロット小隊「黒い三連星」の3人が、メガハウスの可動フィギュアシリーズ「G.M.G.(ガンダムミリタリージェネレーション)」に登場!約10cmのサイズながら驚異の可動性とリアルな造形を両立。ガイア、オルテガ、マッシュがノーマルスーツ姿で、2026年7月下旬に発売予定です。


80年代の伝説「Sugar」全アルバムが最新リマスターで配信解禁!シティポップ再評価の決定版

80年代の伝説「Sugar」全アルバムが最新リマスターで配信解禁!シティポップ再評価の決定版

「ウエディング・ベル」のヒットで知られる女性コーラス・バンド「Sugar」。彼女たちが残した全オリジナル・アルバム4作品が、最新デジタルリマスター音源で一挙配信開始されました。高度なコーラスワークと先進的なサウンドは、現代のシティポップやフューチャー・ファンクとも共鳴。色褪せない名盤の魅力を紐解きます。


ドラマ『俺たちの旅』50周年!中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々が再集結する2026年秋ツアー決定

ドラマ『俺たちの旅』50周年!中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々が再集結する2026年秋ツアー決定

1975年の放送開始から50年。伝説の青春ドラマ『俺たちの旅』の主要キャスト4名(中村雅俊、秋野太作、田中健、岡田奈々)によるスペシャルコンサートの2026年秋ツアー開催が決定しました。各地で完売が相次いだ熱狂を受け、内容を一新。名曲と共に、今だから語れる秘話が詰まった夢のステージが再び幕を開けます。


『eフィーバーキン肉マン』発売決定!聖地・沼津に実機展示&「なすなかにし」試打動画も公開予定

『eフィーバーキン肉マン』発売決定!聖地・沼津に実機展示&「なすなかにし」試打動画も公開予定

株式会社SANKYOから新機種パチンコ『eフィーバーキン肉マン』が登場。2026年4月の導入に先駆け、静岡県の「キン肉マンミュージアムin沼津」にて先行実機展示がスタートしました。キン肉マン好き芸人「なすなかにし」の試打企画や、QUOカードPayが当たるSNSキャンペーンも実施される注目の新台です。


連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

連載45周年!葛飾区で『キャプテン翼』と11人のエピソード展開催。小野伸二や影山優佳も参加

漫画『キャプテン翼』の連載開始45周年を記念した特別展が、2026年2月6日より葛飾区で開催されます。小野伸二氏や影山優佳さんら「翼ファン」11名が、作品から受けた影響を名シーンと共に紹介。南葛SCの選手との交流やベイブレード大会など、聖地・葛飾ならではの多彩なイベントも同時展開されるファン必見の催しです。