ジョン・ウェズリー・ハーディング
日本で知られているボブ・ディランの代表曲といえば、「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」それとも「天国への扉」でしょうか?日本においてはボブ・ディランの知名度に比べ曲はあまり知られていないようです。
しかし、音楽大国アメリカやイギリスとなると随分話が違います。
影響は計り知れず、その証拠にボブ・ディランの曲をカバーするミュージシャンは後を絶ちません。

ボブ・ディラン
例えばアルバム「ジョン・ウェズリー・ハーディング」に収録されている「見張塔からずっと」という曲は様々な大物ミュージシャン達によってカバーされているんです。
日本ではほとんど知られていない曲だと思いますが、意外なミュージシャンがカバーしたこの曲をご紹介します。アレンジがそれぞれで楽しめて面白いですよ。

ジョン・ウェズリー・ハーディング
ジミ・ヘンドリックス
1967年と言えば、ビートルズがアルバム「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」をリリースした年で、サイケデリック真っ盛り。
そんな年にそれまで最先端を走ってきたボブ・ディランは交通事故によりリタイアしていたとはいえシンプルでのんびりとしたアルバム「ジョン・ウェズリー・ハーディング」をリリースしました。
「見張塔からずっと」もそんな感じで地味な曲です。が、その曲に目を付けたのが乗りに乗っていたジミ・ヘンドリックスでした。
ジミ・ヘンドリックスはこの曲を思いっきりロックにアレンジし1968年のアルバム「エレクトリック・レディランド」に収めています。
ボブ・ディラン自身がこのジミ・ヘンドリックスのバージョンを「この曲の権利の半分くらいはヘンドリックスのもの」というほど絶賛し、以降「見張塔からずっと」といえばジミ・ヘンドリックスのアレンジが基本となっています。
ニール・ヤング
「見張塔からずっと」という曲はつくづく大物からカバーされる曲だなと思います。ある意味ではボブ・ディランと同等の影響力を持つニール・ヤングからもカバーされています。
ライブでは頻繁に取り上げていますが、公式にはボブ・ディランのレコード・デビュー30周年を記念して行われたライブでこの曲を披露しており、ライブアルバム「30〜トリビュート・コンサート」にその模様が収録されています。
グレイトフル・デッド
サイケデリック・バンドの雄、グレイトフル・デッド。彼等もまた「見張塔からずっと」をカバーしています。
決して交わることがないように思えたボブ・ディランとグレイトフル・デッドは、1987年に「Alone & Together」というスタジアム・ツアーを行っています。
ボブ・ディランのバックをグレイトフル・デッドを務めているのですが、この模様は「見張塔からずっと」も収録されたライブ・アルバム「ディラン&ザ・デッド」として記録されています。
デイブ・メイスン
ボブ・ディランの影響を受けているのはイギリスのミュージシャンも同様です。トラフィックのメンバーでもあったデイブ・メイスンがソロとなりAOR色を強めて人気絶頂となった時にリリースしたライブアルバム「ライヴ~情念」に「見張塔からずっと」は収録されています。
デイブ・メイスン、上手すぎ!洗礼されまくったアレンジですね。これは素晴らしいの一言です。
ブライアン・フェリー
ブライアン・フェリーのボブ・ディラン好きはロキシー・ミュージック時代から知られていました。1973年にはボブ・ディランのカバー曲「はげしい雨が降る」をシングルでリリース(全英10位)していたほどです。
そんなボブ・ディラン好きが高じて2007年には全曲ボブ・ディランのカバー曲からなる「ディラネスク」というアルバムまでリリースしています。
ここには「見張塔からずっと」も収録されています。
ジミ・ヘンドリックスのおかげで勇ましい曲と変貌を遂げた「見張塔からずっと」を一本筋の通ったヘナヘナ男ブライアン・フェリーが歌うとは!
しかし、これがまた味があってジャスト・フィットです。
ポール・ウェラー
パンクバンド「ザ・ジャム」として1977年にデビューしたポール・ウェラーも、今や「モッド・ファーザー」と呼ばれ大きな尊敬を集める存在となっていますね。
そんな彼が2004年にリリースしたアルバム「スタジオ150」で「見張塔からずっと」をカバーしています。
そういえば、ザ・ジャムと同時期にデビューしたアンディ・パートリッジ率いるXTCのファースト・アルバムにも「見張塔からずっと」が収録されています。
U2
イギリスと言うか、アイルランドを代表するバンド、U2もまたボブ・ディランの影響下にあったようです。
1988年のドキュメンタリー映画でもあったアルバム「魂の叫び」に「見張塔からずっと」は収録されています。
尚、このアルバムではボブ・ディラン以外にもビートルズの「ヘルター・スケルター」やビリー・ホリデイへのトリビュートとして「エンジェル・オブ・ハーレム」などを聴くことが出来ます。
エリック・クラプトン&レニークラビッツ
さてイギリス勢で最後にご紹介するのはエリック・クラプトン。エリック・クラプトンとボブ・ディランは古くから親交があり1976年のエリック・クラプトンのアルバム「ノー・リーズン・トゥ・クライ」の中の「サイン・ラングウィッヂ」という曲で共演しています。
今回ご紹介する「見張塔からずっと」のこのバージョンは、ボーカルをレニークラビッツがとっておりなかなか珍しいショットとなっています。
クラプトン臭漂う特徴的なギターが心地よいですね。ボーカルも聴いてみたいところですが、流石の貫録といったところでしょうか!
パール・ジャム
再びアメリカのミュージシャンに目を向けると、ちょっと意外な感じもしますがパール・ジャムもカバーしてるんですね。
ボーカルのエディ・ヴェダーは、ソロのライブでも「見張塔からずっと」を歌ってるくらいですからやはり好きなのでしょう。
タジマハール&ジョーン・オズボーン
「見張塔からずっと」は白人ロッカーだけに愛されているわけではありません。ローリング・ストーンズのTVショウ「ロックンロール・サーカス」に参加していることでも知られているブルース・マン、タジ・マハールもカバーしていますね。
そして男性ばかりがカバーしている訳でもありません。女性だってカバーしているんです。
ジョーン・オズボーンはそのひとりです。
タジマハールの迫力あるボーカルも素晴らしいですが、女性の声で歌われると一味違って聴こえますね。
ブルース・スプリングスティーン
ボスことブルース・スプリングスティーンはデビュー当時は第二のボブ・ディランと呼ばれたりもしていました。だからと言うわけではないのでしょうが、やはり歌っています。
もう何というか、余裕たっぷりのカバーですね。ライブではこの曲に限らず「風に吹かれて」や「アイ・ウォント・ユー」などボブ・ディランの曲をいくつも取り上げています。
まだまだ多くのミュージシャンがカバーしている「見張塔からずっと」。とても紹介しきれませんが、それにしてもこれほど大物ミュージシャンに愛される曲というのは珍しいのではないでしょうか。
流石に2004年デイリー・テレグラフで行われた「ベスト・カヴァー・ソングTOP50」で第1位となっただけのことはありますね。
これからも多くのミュージシャンがカバーすることでしょう。