中井祐樹 片目を失いながらも相手を叩きのめすなんて信じられない 

中井祐樹 片目を失いながらも相手を叩きのめすなんて信じられない 

小さな巨人、柔術ヒーロー、ラストサムライファイター、中井祐樹は体格は小さいのに本当に勇敢すぎる。片目を失いながらも相手を叩きのめすなんて信じられない。大きな代償を支払うことになったけれど、どの格闘家よりも多くを成し遂げたことは誰にも否定できない。


格闘技を楽しんでね!

もうだいぶん前のことですが、兵庫県の神戸で格闘技イベントがあり観戦に行ったときのことです。
教え子なのか、中井祐樹さんがセコンドについておられた試合がありました。
他の試合では、大声で技術的なアドバイスや鼓舞するセコンドもおられたのですが、中井祐樹さんはジッと黙ってなにかをと見つめておられました。
暗闇の中のその眼が今でも印象的です。
イベントが終わり駅のホームで電車を待っていると、なんと中井祐樹さんが前に並んでおられます。
練習か試合で痛められたのか、それとも少しなにか障害を持たれているのか、ただでさえ小柄な体を曲げて足を引きずるように歩いておられ、ますます小さく見えてしまいました。
そして電車に乗り込むと、座席に座られ、すでにカバーははなくなってしまい本体もボロボロになった文庫本を読んでおられます。
(いきなり後ろから殴ったらどうなるんだろうか?)
斜め後ろに立ち、そんなことを思っているとターミナル駅に着きました。
東京に帰られるであろう中井祐樹さんに、ここで声をかけないと一生後悔すると、迷惑を考えないようにして挨拶させていただきました。
「失礼ですが、中井祐樹さんですか?」
「はい」
後は感動と興奮で、しゃべりまくってしまいました。
いろいろ話していただいた後、最後にこういっていただきました。
「・・くん、格闘技を楽しんでね」
あの言葉と笑顔、忘れられません。
中井祐樹さんにお会いできたことは今でも一生の宝物になっています。
この後、地元にあったパレストラ(現:パラエストラ、中井祐樹の立ち上げられた道場)に見学にいったとき、プロの選手にそのことを話させていただくと、いかにもその方も中井祐樹を尊敬されておられるようで、いろいろすごいところを教えていただきました。
関西の悲しい性なのか、最後にテレビ番組の企画で中井祐樹さんが藤原紀香さんに三角締めをかけられ喜んでいたという話も教えていただきました。
ますますファンになりました。
今でも電車で読まれていた本を知りたくて仕方ありません。

高専柔道

七帝(ななてい)柔道

七帝(ななてい)柔道は
毎年7月に、
北海道大学、東北大学、東京大学、、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の旧帝国大学の柔道部で行われる柔道の試合のことである。
(毎年1回、各大学持ち回りで開かれるため、7年に1度地元開催となる。)
ただし一般的な(講道館)柔道とはルールが異なる寝技中心の柔道である。
七大学柔道大会は昭和27年に始まったが、その母体である高専柔道大会は第2次大戦以前から行われていたので、それを含めると100年以上の伝統を誇る柔道である.
本来、柔道は立技と寝技を同等に修得して初めて完成されるが
講道館柔道は投技を掛けてもつれたときのみに寝技への移行が許される。
これに対し七帝柔道はいつでも寝技へ引き込むことが認められ、試合が始まるや投げ技を掛けることなくどちらかが引き込んで寝技になることも多い
もちろん立技で投げれば投げの一本勝ちも認められる。
このような環境下、講道館柔道はより投げ技を、高専柔道はより寝技が発達させてきた。
現在、柔道やブラジリアン柔術、総合格闘技などでも使われる三角絞め、袖車絞め、オモプラッタなどは、高専柔道で開発された技術もある。
また柔道では禁止されている脚への関節技、膝十字なども高専柔道で開発された。
戦後の七帝柔道でも、SRT(スーパーローリングサンダー、遠藤返し)などの新技術が多く開発されている。

15人 vs 15人の団体戦

試合は15人の団体戦で、勝ったものが勝ち残って次の人間と戦っていく。
いわゆる抜き戦である。
試合時間は、先鋒から3将(13番目の選手)までが6分、副将と大将は8分である。
「有効」「効果」といったポイントはなく「一本勝ち」のみ。
寝技で膠着しても審判は「待て」をかけず延々と寝技の攻防が続く。
だから1試合終えるのに2時間以上かかることもある。
試合者が会場の縁で攻防していると主審は「そのまま」と試合を止め試合場中央で同じ体勢に組み合って試合再開となる
15人を終えて大将決戦になり引き分けになると両校が代表選手を選んで8分の代表戦を行う。
これも引き分ければまた代表を選び代表戦を延々と繰り返す。
何度でも勝負が決するまで繰り返し続ける。
(昭和39年の第13回大会の決勝戦、北大vs九大では、代表戦を繰り返し、延々4時間以上かけて深夜10時を過ぎても決着がつかず大会初の両校同時優勝が決まった。)
試合ごとにお互いに先鋒から大将までの15人の布陣表を審判部に提出する
各大学は抜き役(勝ちにいく役)と分け役(引き分けにいく役)の役割を明確に分けて選手を育てる。
抜き役は必ず取らなければいけないし分け役は必ず引き分けなければならない。
分け役の1分けは抜き役の1勝に相当する。
抜き役と分け役には、上下の区別はまったくなく、共に敬意を払い、互いの役割を果たすことによってチームが勝つのだという意識を共有している。
抜き役の中でもとくに強い選手を巨大戦艦になぞらえて「超弩級」と呼ぶ。
戦前の高専柔道では、全日本で優勝した野上智賀雄(京都帝大)、木村政彦(拓大予科)らがいる。

伝説の柔道家、木村政彦も高専柔道出身

日本柔道史上最強とうたわれる木村政彦は、立ち技はもちろん、その寝技でも、ブラジリアン柔術の祖、エリオ・グレイシーを完封して勝利した。
戦後の七帝戦でも、三本松進(東大)、岡本啓(京大)、川西正人(北大)、甲斐泰輔(九大)らがいる。
三本松はモントリオールオリンピック金メダルの上村春樹と講道館ルールで戦い試合場のど真ん中で投げ一本勝ちしている。
川西は全日本学生優勝大会で明治のキャプテンを大外で叩きつけた。
甲斐は、巨漢ながら緻密な寝技を身につけ、七帝戦本番で1試合で5人も6人も抜く怪物だった。
甲斐は入部が遅かったため七帝戦には2年生から出場したが、4年生までの3年間で抜いた数は24人。
これは今後も破られることはないだろう大記録である。

中井祐樹は大学から高専柔道を始めた

寝技は立技よりも天賦の才に左右される部分が少ないといわれ、かつ短期間で技術の向上ができるといわれている。
例えば中井祐樹は大学から始めわずか4年後には突出した寝技技術を身につけた。

そして6年後には日本の総合格闘技界の歴史を変えた。
「VTJ95(バーリ・トゥード・ジャパン・オープン95)」の準決勝で、ジェラルド・ゴルドーの悪質な反則攻撃に耐え抜いた末、勝利し、決勝ではヒクソン・グレーシーに負けたものの、その勇姿は歴史に残るものだった。
そしてこの日の試合で中井祐樹は右目を失明したのである。

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